収受印が2025年1月から廃止に!今後の対応やトラブルの回避策とは
収受印廃止に向けて早めの対応を進めよう
税務行政のデジタル化が進み、様々な業務が効率化されています。その取組みのひとつとして、2025年の1月から収受印が廃止となりました。
収受印が廃止になることで、今度はどのようにして申告したことと、申告した日付を証明すればいいのかを考えなければいけません。
ここからは、収受印廃止でどういった対応が求められるのか、事前に必要な準備を紹介しています。
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この記事の目次
そもそも収受印とは
行政の手続きで、収受印を目にしたことはありますか。収受印とは、申告書や申請書、請求書などの税務署に提出、もしくは送付した文書の控えに押される受領印です。
郵送で提出した場合には、控えと返信用封筒を同封すると収受日が明記された印が押された控えが後日返送されます。
収受印について目にしていても、特別に意識したことがない人もいるかもしれません。
収受印の役割は、第一に提出したことの証明です。申請書や届出書は提出したかどうか後からわからなくなるケースがあります。
そういった時でも、収受印が押された控えがあればすぐに確認できます。
次に、収受印が押された申告書の提出を求められるケースです。
具体的には金融機関で融資を受ける時や、補助金等の申請や保育園の入園手続きで収受印が押された確定申告書の提出が求められます。
収受印は税務署が確実にその日付で受け付けた文書であることを証明するために、重要な役割を果たしてきました。
【2025年1月から】収受印廃止の概要
国税庁では、納税者の利便性を向上するため申告手続きのオンライン化や押印の見直しを進めています。ここでは2025年1月からの収受印廃止についてその概要をまとめました。
紙の申告書等は正本のみを提出
収受印が廃止になることで、2025年1月以降は、収受印の押なつは行われなくなりました。申告書を提出する時には、提出用の正本だけを提出します。
つまり、控えへの押なつはないので、必要に応じて自分で控えの作成や記録、保管するのです。
当面はリーフレットを交付
2025年1月の収受印の廃止にともなって、現場での混乱も予想されています。
そこで当面の間の対応として、窓口では希望に応じて申告書を収受した日付や税務署名を記載したリーフレットを交付しています。
これは、今般の見直しの内容や提出した事実の確認方法を法人や個人に案内する内容です。
郵送で申告書などを提出した時に返信用封筒を同封した人に対しても当分の間はリーフレットを同封して返送が行われます。
収受印が廃止となった背景
今まで大きな役割を果たしてきた収受印ですが、2025年1月からは廃止となりました。
昔と比較して電子申請が普及して紙の書類を提出する機会は減ったものの、それでも紙を使用する手続きはたくさんあります。
ここでは、収受印廃止になった背景についてまとめました。
税務行政のDXが推進されている
インターネット技術の発達や社会の変化により、多くの企業でDX化が進んでいます。
これは、国全体でのデジタル化を推進することでより利便性が高い社会を実現することが目的です。
それにともなって2023年6月には政府が「デジタル社会の実現に向けた重点計画」を公表しました。
行政手続きもDX化の例外ではなく、申告手続きのオンライン化、事務処理の電子化や押印の見直しが進められています。
収受印の廃止もこういったDX化が背景にあります。
マイナンバー制度や電子帳簿保存法も税務行政のDX化の取組みのひとつです。今後も税務行政のDXが推進されると予想されています。
e-Taxの利用が浸透している
国税に関する各種手続きをインターネットで行うシステムe-Taxも普及が進んでいます。
e-Taxは主に個人と法人の確定申告を中心に浸透しはじめ、2022年度のe-Tax利用率は法人税の申告で91.1%、所得税の申告で65.7%でした。
今度も確定申告などe-Taxの利用率の割合を引き上げていく方向で進むと予想されます。こうしたデジタル化推進の一環として、収受印が廃止になったと考えられます。
収受印廃止によって想定されるトラブル
収受印が廃止になることで、個人も法人も今までの仕事から変更になる点はあるのか。ここからは収受印が廃止になって想定されるリスクをまとめました。
税務署等からの問い合わせ
収受印は今まで申告書や届け出を提出した証明として使われてきました。今後、書類を提出したにもかかわらず、提出されていないのではと問い合わせられる可能性もあります。
こうしたケースについて、国税庁でもQ&Aで回答しています。
提出したかどうかがわからない場合には、納付状況やほかの証拠書類を確認しつつ税理士、納税者からの聴き取りのほかリーフレットと提出年月日を記載した申告書控えを提示して提出したと証明することになりました。
つまり、企業は税務署からの問い合わせに備えて証拠書類を保管しておかなければいけません。
期限内の提出日付をめぐるトラブル
収受印は、提出したことを証明する役割とその提出日を証明する役割があります。提出日にがいつであるかによって適用を受けられる時期が変わる書類は少なくありません。
具体的には、消費税の課税事業者選択届出書や適格請求書発行事業者の登録申請書・登録の取消しを求める旨の届出書といった書類です。
これまでであれば、収受印の日付で提出した日を確認していました。
これからは収受印出の確認できなくなるため、どの日付で受け付けるかによるトラブルが発生する可能性があります。
税制優遇適用への影響
税制優遇の中にも、期限内申告を条件としているものがあります。
例えば、所得税の事業所得・不動産所得などの青色申告の特別控除は期限内に申告するかどうかで控除額が変わるのです。
収受印が押されなくなることによって、優遇措置の対象となるかどうかでもめるかもしれません。
また、加算税や延滞税の計算でもどの時点を採用するかで同様のトラブルが発生すると考えられます。
金融機関の融資や補助金・助成金申請への影響
収受印が廃止になることで、融資や補助金や助成金を申し込む時の書類に影響する可能性があります。
申請時に提出する申告書には収受印が押されたものを指定される可能性があり、収受印がないと納税証明書や所得証明書を別途取得しなければならないかもしれません。
ただし、国税当局から金融機関や補助金、助成金を担当している行政機関に対して、事前に収受印廃止について事前に説明を行っています。
その中で国税庁からは2025年1月以降は、収受印が押なつされた申告書等の控えを求めないように喚起されました。
収受印廃止によるトラブルの回避策
収受印が廃止されることによって、紙の申告を続けてきた企業には大きな影響が考えられます。これから混乱やトラブルを避けるためにどのように対応すればいいのか。
トラブルの回避策をまとめました。
書留郵送で申告書を提出をする
収受印を使って、提出したことを証明できない場合には、記録が残る郵便で提出する方法が考えられます。書留やゆうパックであれば、郵送した記録を残すことができます。
書留は正式名称を書留郵便といって、発送や受取の日時、場所などの配達証明が可能です。
申告書等の提出書類の一部は、「いつ発送したか」で判断する発信主義が採用されています。そのため、書留を使って発送日を記録に残すことが重要です。
ただし、書留やゆうパックは郵送したことの記録であり、何を提出したのか証明できるわけではありません。
宛先については記録できるものの中身を記録できるわけではなく、本当にその書類であると証明できません。
申告を確認する方法を把握しておく
紙に押なつする収受印が廃止になったとしても、申告を確認する方法はほかにもあります。
収受印がなくなってからどのように確認すればいいのか事前に把握しておいてください。ここでは、申告を確認するための方法を4つ紹介しています。
ただし、紹介するどれかひとつの確認方法を利用すれば十分であるとは限りません。以下の確認方法の中から、ケースバイケースで利用できる方法を選択してください。
1.申告書等情報取得サービス
申告書等情報取得サービスは、e-Taxソフト(Web版)にログインして利用できるサービスです。ログインすると過去の申告書などのPDFデータを取得できます。
これは、e-Taxでの情報だけでなく紙の申告書の情報も取得可能です。手数料もかからずにPDFを取得できるので、データもしくは紙で保存したい時にも役立ちます。
ただし、申告書等情報取得サービスは、直近の3年分しか取得できません。また、申請から取得までに数日かかります。
申告書等情報取得サービスは申告書等データのダウンロード可能期間は、メッセージの格納から180日以内です。
期間を経過した後はメッセージボックスから自動削除され、再度必要な時には改めて取得申請しなければいけません。
申告書等情報取得サービスを利用する時には、申告後に必ず申請してダウンロード、保管するまでをひとつの流れとして実施するようにしてください。
あらかじめマニュアルを作成して情報の取得、保管まで行うようにおすすめします。
2.保有個人情報の開示請求
保有個人情報の開示請求とは、個人情報保護に関する法律に基づいた行政への情報開示請求のことです。ただし、これは個人の申告書等に限ります。
個人情報の開示請求を行うには、開示請求書に必要事項を記載して、その情報を保有している行政機関の個人情報保護窓口に直接提出するか送付します。
オンライン申請でも可能です。開示請求する時には、本人確認書類が必要です。
窓口で提出する場合には、運転免許証、健康保険の被保険者証か個人番号カード、住民基本台帳カード等などの住所および氏名が記載されている書類を提示、または提出します。
開示請求書を送付する場合には、先ほどの本人確認書類の写しに加えて住民票の写しの提出が必要です。個人情報の開示請求は開示請求手数料が発生します。
保有個人情報が記録されている行政文書1件につき300円、オンライン申請であれば200円を納付します。開示/不開示の決定に時間がかかるので早めに手続きしてください。
3.税務署の申告書等の閲覧サービス
申告書等の閲覧サービスは、提出済みの申告書や申請書、届出書などの閲覧ができるという行政サービスです。
これは、申告書等を作成するために過去に提出した内容を確認する目的のサービスです。
申告書等が業務センターや外部書庫等に保管されている場合があるため、事前に税務署宛てに連絡するように推奨されています。
ただし、閲覧サービスでは紙やPDFでの交付は受けられません。記録が必要な場合には、原則書き写しですが、一定条件を満たせば写真撮影も可能です。
閲覧サービスを利用する時には本人確認書類が必要ですが、手数料は発生しません。
しかし、写真撮影や書き写しの内容が原本と同じであることを証明するといったことは実施していないため、あくまで確認として利用することになります。
4.納税証明書の交付請求
納税証明書の交付請求は、確定申告書を提出した時の納税額や所得金額、未納の税額がないことの証明書を請求する手続きです。
納税証明書は郵送や窓口のほか、e-Taxで交付請求が可能です。
手数料として、納税証明書に応じて計算した手数料が発生します。
未納の税額がないことや滞納処分を受けたことがないことの証明書であれば、枚数×400円(オンラインであれば370円)が手数料の金額です。
納付した税額や未納税額の証明、所得金額の証明の場合には、税目数×年度数×枚数×400円(オンラインであれば370円)が手数料になります。
e-Taxでの申請に切り替えて受信通知を保管する
収受印の廃止にともなって、企業も申請方法や申請した内容の管理方法を見直しが必要です。
e-Taxでの電子申告を使えば送信された申告データの受信通知が自社のメッセージボックスに格納されます。
受信通知で確認できるのは、申告書を提出したものの氏名や名称、受付番号や受付日時です。これらの情報が受領した証明として使えます。
ただし、メッセージボックスの内容は保存期間を経過すれば削除されます。内容を確認したらPDFなどでデータを保存しておいたほうが良いでしょう。
また、受信通知から申請等証明書の交付の請求を行えます。
まとめ・収受印廃止への対応でトラブルを防ごう
収受印廃止は、国税庁や金融機関を通じて周知、広報が進められています。しかし、廃止を知らない、まだ収受印廃止への対応を決めていない企業もあるかもしれません。
今まで紙で届け出や申請を行ってきた企業にとっては、収受印廃止は電子申告に切り替えるきっかけになります。
今後も行政サービスのDX化は推進されていきます。企業も対応するために、手続きや書類の保管の行程を見直すようにしてください。
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(編集:創業手帳編集部)