終活ブームやコロナ禍は、エンディング業界に何をもたらしたか【清水氏連載その3】

創業手帳

第2創業で上場!大ピンチの零細出版社を急成長企業に生まれ変わらせた鎌倉新書の清水会長に聞く、成長基調へのヒント

2012年の新語・流行語大賞トップテンにランクインした「終活」という言葉。今では日常的に使われる言葉であり、シニアが自ら「そろそろ終活を始めないと…」などと口にすることも珍しくはありません。

この終活を、鎌倉新書では「人生の終わりに向けて前向きに準備することで、今をより良く生きる活動」と定義しています。同社の清水祐孝会長にインタビューする連載の最終回である今回は、この終活ブームやコロナ禍がエンディング業界に与えた影響について、同社が行う全国調査などを参考にしながらうかがいました。

清水祐孝

清水 祐孝(しみず ひろたか)
株式会社鎌倉新書 代表取締役会長CEO 
証券会社勤務を経て、1990年に父親の経営する株式会社鎌倉新書に入社。同社を仏教書から、葬儀やお墓、宗教用具等の業界へ向けた出版社へと転換。さらに「出版業」を「情報加工業」と定義付け、セミナーやコンサルティング、さらにはインターネットサービスへと事業を転換させた。現在『いい葬儀』『いいお墓』『いい仏壇』『Story』など、終活関連のさまざまなポータルサイトを運営し、高齢者の課題解決へ向けたサービスを提供している。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計150万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら

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お墓については、8割が「家族に迷惑をかけない」ことを重視

大久保:昨今の終活ブームで、エンディングに対する考え方はどのように変化しているのかを教えてください。まず、お墓についての意識はどうでしょうか。

清水:当社が2020年10月に発表した「お墓の準備に関する全国調査」の2020年版は、新型コロナウイルスの影響は受けていないものですが、この5年以内に自身か配偶者が喪主を経験している、もしくは今後務める可能性の高い人を対象としています。

そのなかでお墓に対する意識を聞いているのですが、「お墓に関して家族に迷惑をかけたくない」が80.3%で最も多く、次いで「お墓は家族が来やすい場所にしてほしい」が77.5%、「お墓は静かで落ち着いた場所であってほしい」が73.4%で上位を占めています。また、回答から、男性よりも女性のほうがお墓に対して、具体的なイメージをもっているように見受けられました。

大久保:なるほど。前回のお話で、お墓の形が多様化していて、墓石を置かない樹木葬のようなスタイルや、ロッカー式などの納骨堂も急増しているとお聞きしました。家族に迷惑をかけないとか、来やすい場所に、という意見は、このような新しいお墓の形への移行を進めることになるのかもしれませんね。

清水:そうですね。まず知っておいていただきたいのは、現代日本でもっとも一般的である「家墓(いえばか)制度=〇〇家の墓というものがあり、そこに親族一同が入るお墓」は明治時代頃に作られたものということです。その頃は、先祖代々、住む場所を変えるということはほぼなく、決まった場所で一生を過ごすという時代でしたから不都合はありませんでした。

でも今はどうでしょうか。終戦後の高度成長で、それまでは農業や漁業などの1次産業中心だった産業構造が変わり、都市化や交通網の発達が進み、親子がずっと同じ地域に住むという大前提は崩れました。例えば秋田で生まれ育った子どもが大学から東京に出て、そのまま就職するとしましょう。「毎回秋田にお墓詣りに行くのも大変だから」ということで、お墓を秋田から東京に移したいという希望が出てきます。

大久保:なるほど。でもそんなに簡単にお墓を移すことは可能なんでしょうか。

清水簡単とは言えませんが、きちんとした手続きを踏めばお墓を移動することは可能です。それだけ現実的に「お墓が遠くてお参りできないから移動したい」という声が多いということが言えると思います。

また、もうひとつの問題として家の継ぎ手があります。1948年の合計特殊出生率(ひとりの女性が生涯で産む子どもの平均数)は4.4だったのですが、1960年には2.0に低下します。この数字はさらに低下を続け、2020年には1.15という数字になっています。

4~5人子どもがいればひとりぐらい男の子がいましたが、ひとりっ子では必ずしも男の子が産まれるとは限りません。古い考え方なのは承知の上ですが、女の子はお嫁に行ってしまうという意味で、男の子がいないとなると「〇〇家」というのは維持できないという話になってしまうんですね。

大久保:明治時代には想像もできなかったことが、現代では起こっているんですね。

清水:その通りです。だからといって、じゃあもうお墓は要らないよね、という風にはなっていませんよね。ゴミの日に遺骨を出そう、という人はなかなかいないように、社会のあり方は変わっても、我々の故人を偲ぶという気持ちは変わっていません

自然に還るイメージの「樹木葬」が、遺族に好まれるワケ

大久保:確かにそうですね。そういった社会の変化の最たるものとして、このコロナ禍に突入したという風にも感じますが、コロナ禍ではお墓選びという点についてはどのような影響があったのでしょうか。

清水:まず単純に、毎年春頃に行う「お墓の消費者全国実態調査」での比較でいえば、みなさんがお墓選びで最も重視される「お墓の種類」において、実際に購入されたお墓の種類として2010年の調査開始以降、2019年で初めて樹木葬が一般墓を上回っています。そして、2020年調査(2021年1月実施)でも引き続き樹木葬が46.5%で1位でした。また、全体よりも5.0ポイント伸長しており、人気の傾向がこのまま続きそうです。

大久保:樹木葬の、どういった点が好まれているのですか。

清水:選ばれた方の声として、「やがて跡継ぎがいなくなるため」や「自然に還るイメージが持てる」、「お墓の掃除が不要だから」などがあります。また、花に囲まれたお墓が故人に似合うと思ったからという声もありました。

大久保自然に還るというエコなイメージと同時に、掃除不要という合理的な理由も成り立つのが面白いですね。先ほど触れられたように、家の継ぎ手がいなかったり、お墓を守る子孫がいない状況でも気にしなくていいですし、コロナ禍で、頻繁な外出・遠出や大勢での墓参などがあまりできないような状況でも、樹木葬であれば問題なさそうです。

清水:そうですね。いずれにせよ、お墓の形について、これが正解、あれは間違いということはありません。ただ、食料品や衣服などと違って、頻繁に買うものではないので、悩まれる方は多いです。そういった方たちにきちんとした情報を提供し、希望に合ったものを選べるようにサポートするのが我々の役目だと思っています。

ただ、お墓参りをしている、したいと思っている頻度は「1週間に1回程度」や「1カ月に1回程度」との回答が2019年よりもそれぞれ3.1ポイント、10.1ポイントも増えているんです。

大久保:通常は、お盆や春秋のお彼岸というのがお墓参りのタイミングと思われますが、それよりも頻繁にされているということですね。

清水:たしかに、2019年調査では「半年に1回程度」が6割近かったのですが、それが4割弱にまで減り、逆転したような形です。不安や見通しが立ちづらい昨今では、お墓が家族の心の拠りどころになっているといえるでしょう。コロナ禍だからこそ、故人を弔いたいという気持ちの現われかもしれません。

ただ、例えば生前に「俺の骨は海にまいてくれ」という方は一定の割合でいらっしゃいますが、その希望が叶えられているか、というとそうでもありません

大久保:えっ。そうなんですか。

清水:はい。やはり残された側の意向ですよね。残された側も「確かにそれは合理的だね」と割り切ることは難しく、全部海にまいてしまったら、どこで手を合わせたらいいんだろう、という流れになります。もちろん毎日手を合わせるわけではないけれど、思い出すための何か、つまりお墓はやはり必要だよね、ということになるケースも多いですね。自分が見る自分と、家族が見る自分は違うんですね。亡くなっても無になるわけではなく、亡くなる人間にも役割があるということです。

エンディング業界でも少しずつ進む、オンライン化

大久保:そううかがうと、死というものに対する考え方が変わるような気がしますね。葬儀についてはどうですか? コロナ禍による意識の変化などはあったのでしょうか。

清水:2020年8月から9月にかけて行った「コロナ禍におけるお葬式の実態調査」によれば、緊急事態宣言下では三密を回避するために直葬・火葬式が急増し、その後は規制緩和に従って、家族葬や一日葬が増えてきています

大久保:一日葬とは、どういうものですか? 近年、家族葬が増えていると聞いていましたが、それともまた違うものなのでしょうか。

清水:お通夜を行わずに、告別式と火葬を1日で執り行う葬儀です。家族葬と違って、知人や友人などの生前故人と関わりのあった人も幅広く参列できるものとなっています。それでも通夜振る舞いの飲食を伴わないケースが多いので、感染リスクを避けられますし、そもそも1日で葬儀を終えるので、同じ場所で長時間滞在せずに済むことから、コロナ時代に合っているといえますね。

また、参列者の多いお通夜を省略するため、ご家族が故人と過ごす最後の時間をしっかりと持てますから、納得感も高いでしょう。葬儀社からも、今後は家族葬や一日葬が主流になると思うという声があります。

大久保:コロナ禍を通じて、働き方ではリモートワークがかなり普及した感もあり、営業や商談、カスタマーサポートなどもオンラインでいいじゃないかという風潮が広がっています。葬儀に関しては、オンラインシステムは導入されているのでしょうか?

清水:葬儀の打ち合わせについては、オンライン相談を導入したという葬儀社が22.5%ありました。一般的な営業活動ほどではないでしょうが、このあたりは比較的取り入れやすかったようです。

いっぽう、オンラインによる供花・弔電・香典の受付の導入率は16.7%でした。参列者からすれば接触を避けられますし、受付も少ない人数で対応しやすくなりますから、今後さらに導入が進むのではないでしょうか。感染予防のために遠方からは来られなかったり、弔問自体を控えられる方も多いので、もっと活用されてもよいかもしれません。

大久保:初詣のお賽銭もキャッシュレスで行える時代ですから、葬儀とはいえ、オンラインで済ませられる部分は頼ってしまって良さそうですね。

清水:葬儀の中継をオンラインで行う仕組み自体は、10~15年前からあったともいわれるのですが、コロナ禍でも導入は13.3%に留まりました。やはりそこは、直接別れを告げることが重んじられるのでしょう。

葬儀は、古くは親族や故人の友人・知人が一同に会する、地域やコミュニティにとってのひとつのイベントでもありました。それこそ昔は終身雇用制度が当たり前でしたから、会社は第二の家族といった顔もありました。総務の方がお手伝いに来たりしてね。

今は葬儀なんて無用だ、という声があったりもしますが、「じゃあ葬式はやらないでハガキで知らせよう」と実行した結果、「何故知らせてくれなかったんだ、線香をあげさせてくれ」という連絡がパラパラと来て週末ごとに来客があり、そのたびに家を掃除してもてなして、を繰り返した結果、「葬式でいっぺんにやればよかった」と後悔したという失敗談を聞いたことがあります。

このコロナ禍だからこそ、葬儀の役割や、なぜするのかということを基本に立ち戻って今一度考えることが必要かもしれませんね。

昨今、増加傾向のお別れ会では、オンラインやVRの活用も

大久保:そのほか、最近のエンディング業界での特筆すべき変化はありますか?

清水:近年、身内だけが集まる家族葬が増えていたことから、葬儀に参列できなかった方が集う、お別れ会や偲ぶ会を個人でも開催するケースが増えていました。当社でも、お別れ会をプロデュースする「Story」というサービスを提供しており、2014年から通算100組以上のお別れ会を開催させていただいています。コロナ禍においては、さらに三密を避けるために葬儀が最少人数でのものとなったということで、改めてお別れ会に関するお問合せが増えています。

大久保:お別れ会でも三密は避けねばならないと思いますが、どのように開催されるのですか?

清水:従来は、ホテルの宴会場や、フリースペースでのブッフェスタイルが多く、個性的なものではライブスタジオやバス車内、サーキット場、故人の母校などの例もありました。コロナ禍においては三密を避けるため、集わずに遠隔でメッセージを募ったり、個人の思い出を編集した動画を介して偲ぶといった工夫をしています。今後はこれこそ、オンラインでの開催であったり、VRの活用なども考えられるかもしれません。

大久保:短期間でかなりの変化があったのですね。コロナがリモートワークや脱ハンコの動きを後押ししたように、神聖で不可侵と思われていたお葬式にまつわることにすら、オンラインの波が押し寄せているのには驚きました。エンディング業界も、時代の変化には抗えないのですね。

清水会長は、葬儀業界に2000年からいち早くインターネットを活用したサービスを導入し始め、ポータルサイトを中心とする新たなビジネスモデルを創り上げられました。さらに、その領域をエンディング業界として広げ、相続や遺品整理、介護などについてもポータルサイト運営やサービス提供をされています。今後目指す姿をお聞かせください。

清水:そうですね。今までお話ししたように、社会や家族のあり方は、今の家墓制度や葬儀の形式が作られた明治時代から、実に大きく変わってきています。しかし、人々の故人を思う気持ちは変わりません。そのギャップを埋めるお手伝いができたらと思います。

先ほど申し上げた通り、お墓の形や葬儀の形式に正解も間違いもありません。ただ、昔に比べてさまざまな選択肢が出てきているために、選ぶことが難しくなっている側面もあると思います。そういった観点から、さまざまな情報を提供し、それぞれのお客様に寄り添い、皆さまにもっとも満足していただけるものを選ぶサポートをすることが、我々が実現できる使命であると考えています。

大久保:常に新しい感覚で業界をリードされている鎌倉新書のご活躍を、今後も楽しみにしています。ありがとうございました。

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(取材協力: 鎌倉新書 代表取締役会長CEO 清水祐孝
(編集: 創業手帳編集部)

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