「中小企業の社長さん、経営は戦いです!」コロナ禍で戦いに勝つために、不足資金の計算方法を教えます【松本氏連載その2】

創業手帳

倒産寸前の中小企業700社の再生を支援。9割の会社を成功に導いた“事業再生のプロ”松本光輝氏に聞く

コロナ禍で倒産しないために、中小企業の経営者が今やるべきこと~事業再生のプロ直伝~【松本氏連載その2】

(2020/10/22更新)

「事業再生請負人」として、17年間にわたって700社以上の倒産寸前の会社に携わり、9割の会社を事業再生に導いた松本光輝氏に、コロナ禍で売上げ減少や資金繰りのひっ迫に悩む中小企業の経営者への生き残りの道筋を指南していただくシリーズ企画。

今回は売上げの減少に見舞われた状況の中で、どのように資金不足を乗り越え、利益を確保していくか。資金不足が見込まれる「時期」と、その時の「不足資金」の算出方法や、資金調達のアイデアなどを詳しくお伺いします。

松本光輝

松本光輝(まつもと こうき)
株式会社事業パートナー 代表取締役

1948年生まれ。独協大学経済学部経営学科を卒業後、飲食業の2代目として、バブル期には17店舗を経営し、年商8億円企業に拡大。バブル崩壊後に25億円の負債を抱え、自ら事業再生を経験。その際の知識、経験を生かして、2003年から事業再生専門コンサルタントに。17年間に請け負ってきた中小企業700社の9割を事業再生に導き、数多くの中小企業経営者を救済してきた。2020年7月、あさ出版より『社長! コロナを生き残るにはこの3つをやりなさい』を出版。

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売上げを上げるよりも難しいのは利益を上げ続ける仕組みを作ること

大久保:前回、コロナショックを生き残るためには現金を手元に確保しておくことが重要だというお話をお伺いしました。その上で、事業を継続させていくためには、どのように経営を見直していくことが必要でしょうか。

松本:2023年までは景気の回復が見込めない状況で会社が生き残るためには、最低でも3年間、資金を不足させないように経営していかなければなりません。そのためには、「利益」を上げ続けることが必要です。

多くの中小企業経営者は「売上げ」にばかり目が行ってしまいますが、大切なのは「利益」なんです。

私が常々経営者の皆さんに伝えているのは、「売上げを上げることは難しくない。短期的に利益を上げることもそれほど難しくはない。難しいのは、継続して利益を上げ続ける仕組みを作ること」だと。

しかし、相当経営の勉強を重ね現場の経験を踏んだ人でなければ、見通しを立ててその仕組みを作ることはできません。

中小企業の社長さんは、自分が長年続けてきた仕事のことはよく知っています。独立して社長になったり、親から受け継いだ事業を続けていたり。でも経営を本格的に勉強した人は少ない。資金繰り表は作っていないし、経営計画書なんて見たこともない。それでは経営者として会社を存続させていくことはできません。

現在のように売上げの減少に見舞われた状況の中で、どのように資金不足を乗り越え、利益を確保していくか。今からでも遅くないです。「師」を見つけて経営を学んでください。

売上げ高20%・50%・80%減少を想定して「不足資金」を算出

大久保:資金不足に経営者はどのように立ち向かえばいいのですか。

松本:まずは、売上げが落ち込んだら、どのくらい資金不足が生じるかを計算することが必要です。資金不足が見込まれる「時期」と、その時の「不足資金」がわかれば、事前に対処できます。

その方法をご説明しましょう。
まず最初に、売上げが①20%減少、②50%減少、③80%減少。この3つのケースを想定します。売上げが仮に1000万円でしたら、それぞれ800万円、500万円、200万円が減少額です。仕入れ額もそれぞれ、20%減少、50%減少、80%減少として計算します。

次に、減少した売上高から仕入額や製造原価を差し引くと、「粗利益」が出ます。この粗利益から給料や家賃などの販売管理費を差し引いて出るのが、「営業利益」ですよね。

売上げ-仕入れ(原価)=粗利益
粗利益-販売管理費=営業利益

売上げが20%の減少でしたら営業利益はまだ多少出るかもしれませんが、50%減、80%減となれば、営業利益はマイナスになります。

大久保:現在は多くの経営者がそうした状況を想定せざるを得ない状況ですよね。

松本:そうなんです。営業利益のマイナスがどのような事態を招くかは、容易に想像がつくことでしょう。
1年間の営業利益のマイナス額が計算できたら、2023年までのマイナス合計額を計算してみてください。合計額の資金が現在の会社の中に確保できていれば、資金不足は生じません。
しかし、一般的な中小企業では、その金額を確保することは不可能です。おそらく99%の中小企業では資金不足が発生することになるでしょう。

大久保:3年後までの売上げ減少を見越し、資金不足が続くことを前提に考えを進めていかないといけないんですね。

「不足資金」の調達方法に今までに考えていなかった選択肢も検討

大久保:2023年までの3年間の営業利益のマイナス額、資金不足の額が見込まれたら、今度はどのような作業に取りかかればいいんでしょうか。

松本:2023年末までは、国内だけでなく世界全体の消費マインドが落ち込む状況が考えられます。売上げを増加させる努力を行っても、普通の中小企業では思うような成果は見込めません。今は余分な出費を控えて、社内資金を減らさないことに注意を向けることが大切です。

資金不足の合計額が算出できたら、各種経費、仕入れ価格や量・質などの見直しを行って、可能な限り経費を削減して、資金不足となる金額を減少させる計画を立ててください。その上で、再度、不足する資金額を算出してみます。

それができたら、「不足資金」をいかにして調達するかを考えます。方法は4つあります。
1つ目は、使っていない不動産など遊休資産を処分して現金に換える。今後しばらく、不動産価格の上昇は見込めませんから、できる限り現金化しておくのが賢明です。

2つ目に、資金を銀行から借りる。今は、かつてないほど返済条件が好条件です。

3つ目は、自分を含めた新たな出資者を募って増資する。

4つ目に、私募債を募る。自社で有価証券を発行し、それを少数の投資家に引き受けてもらう私募債は、調達コストが少なく、半年おき、1年おきの償還や、数年後の一括償還という形式を取ることもできます。

経営は戦いです。戦いというのは、攻めるだけが能ではありません。時にはじっと耐え忍ぶ、場合によっては一時撤退も検討して。待つことによって体力をつけていれば、来たるべき時にチャンスを掴むことができます。耐えて待つことも、経営にとっては重要な要素になることを、経営者の皆さんには心しておいてほしいです。

「利益を増やす」のではなく、「赤字を出さない」という考え方を

大久保:資金不足を埋めるために可能な限りの方策を検討することが大切だと。その上で、売上げの減少に立ち向かうには、やはり、経費の見直しが必要になりますよね。

松本:売上げが減少するなら、できる限り支出を減らす。シンプルな発想ですが、今までのやり方を根本的に見直し、大きく変える必要があります。

押さえておいていただきたいのは、「すべての経営を“費用対効果”で見直す」ことです。

たとえば、売上げ1000万円で営業利益率が10%の場合、営業利益は100万円です。つまり900万円は仕入れや経費にかかっている状態です。この例で、売上げが100万円減って900万円になってしまったらどうなるか。仕入れ値や経費がそのままなら、営業利益はゼロになってしまいます。

売上げの減少分を新たな販売先で補ったり、主力商品以外の売上げを伸ばしてカバーすることは、中小企業にとって容易なことではありません。

黒字の営業利益を確保するためには、売上げが減った分、仕入れ費用や経費を見直す方が、時間もかかりませんし確実な方法です。販売先開拓や品質の向上など、売上げを増加させようと思ったら多大なエネルギーが必要になります。

それに比べて、経費を減らすことは社内だけでできます。社長の覚悟次第。その気になれば今月からでも取りかかれます。コロナ禍の不況がしばらく続く時代、「利益を増やす」のではなく、「赤字を出さない」という考え方を持たなければなりません。

人件費の見直しは「労働分配率」に着目して進める

大久保:経費の削減というのは今の状況で多くの経営者も意識はしていると思いますが、なかなか有効な対策は打てていないですよね。どのような経費を減らすことから取り組むのがいいのでしょうか。

松本:仕入れ原価や製造原価の削減は、最も経費削減効果が大きいものです。例えば、支払条件の長期間への変更や、粗利益を商品別にすべて計算して粗利益の高い商品を売る計画の作成、他社との共同での商品開発・配送ルートの見直し、仕入れ業者の一社集中化をはじめ、さまざまな方策が浮かび上がってきます。

大久保:販売経費の大きな割合を占める「人件費」については、どのような手立てを講じるべきでしょうか。

松本:粗利益高に対する労務費の割合である「労働分配率」に着目する必要があります。現在の従業員を解雇せずに済むためには、どれだけの粗利益を挙げなければならないのか。売上げではなく、粗利益の中から給料を支払うという考え方を持つことが大切です。

もし、粗利益を上げることができないのであれば、従業員に見合った他の活用の仕方を考えなければなりません。それもできなければ、社長の責任において、必要な人数を他の会社へ転職させるか解雇するという決断も必要になります。厳しい言い方になりますが、経営者は会社を倒産させてはならない。そのためには、ときには本意に反することも断行する鋭気も必要です。

これから3年間は、甘いことは言わず、仏心も出さす、ただ1点、船を沈没させて全員を不幸にしないことだけを考えて、社長は会社の舵取りを行っていかなければなりません。

大久保:中小企業の経営者は、今までに直面したことのない厳しい決断を迫られるわけですね。

松本:仕入れ業者の一社集中化ひとつをとっても、長いつきあいがあるという理由だけで続けてきた業者の関係は見直さなければなりません。今までのやり方を根本的に変えていく勇気が必要なんです。

大久保:売上げ、利益の減少に立ち向かうために、大ナタを振るわなければならない覚悟が必要だと。それを踏まえた上で、経営者にとって、コロナ禍の状況を生き残るための資金の確保について、さらにお話を聞かせていただきたいと思います。

(次回へ続きます)

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(取材協力: 株式会社事業パートナー/代表取締役 松本光輝
(編集: 創業手帳編集部)

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