領収書とレシートの違いは何?インボイス制度での扱いなど徹底解説

創業手帳

領収書とレシートの税法上の違いは?経費精算に使えるかなども解説します。


取引きにおける仕入れといった諸経費が発生する場合には、領収書やレシートだけが発行される場合があります。
経費として扱う場合には領収書を求めることが多くありますが、領収書とレシートにはどのような違いがあるのでしょうか。
また、2023年10月より施行されたインボイス制度における領収書とレシートの扱いについても知っておきたいところです。

今回は、領収書とレシートの違いや取扱いについて解説します。

インボイス制度への対応については、あわせて「インボイス実務チェックシート」もご活用ください。インボイス登録は行ったものの、どのような対応が必要なのかイマイチわからない方向けに、チェックシート形式でどんな対応が必要なのかをまとめました。売り手(インボイス発行側)用と、買い手(インボイス受領側)用シートが別立てでわかりやすくなっています。無料でご利用いただけます。


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この記事の目次

領収書とレシートの税法上の違いはない


レシート(receipt)は、日本語では「領収書」という意味になり、領収書とレシートに主な違いはありません。
領収書もレシートも税法上では同様に扱えます。

海外には領収書発行の慣例はない

海外では「領収書の発行」という慣例がありません。レシートは領収書と同じ扱いになります。
領収書は、日本が独自で行っているものです。

領収書とレシートの主な形式上の違い4つ


領収書とレシートに税法上の違いはありませんが、以下のような形式上の違いが存在します。

1.宛名が記載されているか

領収書には宛名が記載されますが、レシートには宛名がありません。
レシートに記載されているのは、発行者・日付・取引内容・単価です。
領収書はこの取引内容を包括した上で、合計金額の情報を宛名付きで発行しています。

2.社印が押印されているか

領収書には社印が押印されています。一方、レシートはレジシステムから発行されるものであるため、社印の押印がありません。

3.発行を求める場合があるか否か

レシートは、取引きがあった時点で自動的に発行されるものですが、領収書は受領者からの要望に対して発行するものです。

手書きで発行されるケースがあるか否か

前述のように、レシートはレジシステムから機械的に印字されますが、領収書は手書きを求められることが多いです。

領収書とレシートの記載事項について


領収書とレシートでは、記載事項にも若干異なる点があります。

領収書の記載事項

領収書に記載されている内容は、主に以下のとおりです。

  • 発行した日付
  • 宛名
  • 金額を領収した旨
  • 取引金額(合計)
  • 但し書き(用途)
  • 発行者の住所、社名、担当者
  • 社印、担当者印
  • 5万円を超える取引きの場合は、収入印紙の貼付

レシートの記載事項

レシートに記載されている内容には、以下のものがあります。

  • 発行した日付
  • 取引金額(項目ごと)
  • 商品の名称(すべて)
  • 発行者の住所、社名、担当者

各企業における領収書とレシートの扱いについて


領収書とレシートの扱いは、企業によって異なる場合があります。

手書きの領収書が重視される理由

まず、手書きの領収書が重視されるのはなぜなのか、理由を見ていきます。

企業の慣習のため

企業では、昔から手書きの領収書に押印されたものを優先して使用する慣習がよく見られます。
社印が押印されていることで信用度が強くなると考えられているためです。

レシートの印字は消えやすいため

レシートは多くの場合、レジシステムに感熱紙をセットし印字する形態を採っています。
しかし、感熱紙の印字は長期的に保たれるものではなく、経年劣化により消えやすい性質であることから、手書きの領収書を選ぶケースもあります。

宛名が記載されるため

領収書とレシートの違いのひとつに、宛名が記載されていることがあげられます。レシートでは、誰が購入したかを判別するのが難しいです。
そのため、領収書の方が悪用されるリスクが低いと考えられています。

各企業の社内規定に従い扱うべき

領収書を使用するかレシートを使用するかは、社内規定に記されていることがあります。そのため、どちらを選ぶかは社内規定に従うようにしてください。

税法上の領収書とレシートの注意点


税法上では、領収書とレシートはどのように扱われるかを解説します。

経費計上する際の領収書とレシートについて

前述のように、領収書とレシートの違いのひとつが宛名の有無です。経費計上にあたっては、取引きの詳細が記されていれば問題なく、宛名の有無は深く関係していません。
これは、不特定多数の顧客に対して商品やサービスを提供する書類には、宛名の省略が認められているためです。

手書きの領収書は改ざんされる可能性があるため、レシートの方が信用度が増すという見方もあります。

経費計上に必要な記載項目

経費計上をする際には、以下の項目が記されていれば良いとされています。

・取引きした日付
商品やサービスの購入など、金銭の授受が行われた日付です。

・宛名
あればより良いですが、上記のようなケースでは省略しても問題ありません。

・取引きした金額
取引金額を明記します。この時、消費税額と税抜き金額、合計金額を分けて記載します。

・取引内容
領収書の場合は、取引きの目的(「飲食代として」、「備品購入代として」などの但し書き)が必要です。
レシートの場合は、購入した商品やサービスの内容が必要です。

・発行者の名称、住所
領収書やレシートを発行した者の名称や住所の記載が必須です。

・収入印紙の貼付(一定条件を満たす場合)
取引金額が5万円を超える場合、金額に応じた収入印紙の貼付が必要です。

社印がなくとも問題はない

税法上では、社印がなくとも経費計上には問題ありません。前述したように、企業における慣習として、社印の押印がある方が信用度が増すと思われているためです。
企業の社内規定で求められる場合は、それに従い社印を求めるべきです。

領収書とレシートの二重発行はできない

領収書とレシートを両方受け取ると、二重発行となり経費の請求が重複して行われる可能性があるため、税法上では認められていません。
二重発行を行った場合、受領者のみならず、発行者も罪に問われる可能性が高いです。
そのため、領収書を求める際には、レシートは発行者に返すのが通例です。

領収書もレシートも発行されない場合

商品やサービスの提供形態によっては、領収書もレシートも発行されない場合があります。例えば、公共交通機関や自動販売機の利用などです。
このような場合、出金伝票を作成すれば処理ができます。出金伝票は、取引きした日付や金額、取引きの内容、発行者を記録する伝票です。

ただし、出金伝票は領収書やレシートと比べると信用度が低いため、できるだけ多用しないようにしてください。

レシートの方が信頼性が高い場合がある

前述の経費計上に必要な項目を見れば、レシートに記載されている内容でも充分に証拠書類となりえることがわかります。
レシートには購入した品目と、それぞれの金額が詳細に記載されています。そのため、何にいくら使用したのかが一目瞭然であり、税法上での信頼性が高いです。

確定申告を行う場合の領収書とレシートの扱い

確定申告では、証拠書類を保存しなければならない期間が決められています。青色申告や白色申告に関わらず、領収書やレシートは5年間の保存が必要です。

なお、受け取った書類を電子データとして保存することで、保管スペースの省略や紛失のリスクを回避できます。

インボイス制度における領収書とレシートの扱いについて


2023年10月より施行されるインボイス制度における、領収書とレシートの扱いを説明します。

インボイス制度の概要

インボイス制度は、「適格請求書等保存方式」を指し、軽減税率を踏まえて、税率や税額が正確に記載されている請求書などの書類を保存しなければならない法律です。
インボイス=適格請求書には記載すべき項目が決められており、その項目が不十分である場合、適正な処理がなされていないことになります。

インボイス発行には課税事業者として登録が必要

インボイスを発行するためには、インボイス発行事業者として登録する必要があります。インボイス発行事業者は、課税事業者として消費税の納付を求められます。

インボイス制度と仕入税額控除

仕入税額控除とは、売上げとして預かった消費税額から、仕入れで支払った消費税額を差し引き、差額のみを消費税として納付すれば良い制度です。
この仕入税額控除は企業にとっては節税手段のひとつですが、インボイス制度が施行された際には、インボイスの発行を受けなければ適用されません。

なお、免税事業者がインボイス発行事業者として課税事業者になる場合、預かった消費税額の2割を納付すれば良い「2割特例」が適用されます。

インボイスに記載すべき事項

インボイスに記載すべき事項は、以下のように定められています。

  • 適格請求書発行事業者の名称と登録番号
  • 取引きを行った日付
  • 取引内容
  • 取引きの税抜き価格、税込み価格を税率ごとに区分したもの
  • 税率ごとに区分した消費税額
  • 発行者側の名称

領収書やレシートをインボイスとする場合

領収書やレシートでも、必要事項が記載されていればインボイスとして扱えます。ただし、その場合は簡易インボイスとされることが多いです。

簡易インボイスとは

簡易インボイスとは、不特定多数に商品やサービスを提供する業種において発行が認められている、インボイスの項目を簡易にしたものです。
簡易インボイスでは書類の発行を受ける側の名称の記載が省略できるほか、適用した税率の記載のみ、消費税額の記載のみ、また、その両方の記載のいずれかを選べます。

簡易インボイスは以下の業種で発行可能

簡易インボイスの発行が認められているのは、以下の業種です。

  • 小売業
  • 飲食店業
  • 写真業
  • 旅行業
  • タクシー業
  • 駐車場業
  • その他、不特定多数に商品やサービスを提供する業種

領収書やレシートは電子データ化しても良い?

領収書やレシートを紙で受け取った場合、スキャンやスマートフォンなどの撮影で電子データ化することは可能です。
この場合、改ざんを防ぐためのタイムスタンプの付与や訂正履歴の保存など、いくつかの要件を満たす必要があります。

インボイス対応の領収書やレシートを発行する場合

レジシステムをインボイス対応にしておく

レシートをレジシステムで発行する場合、インボイス発行事業者の登録番号に加え、通常の税率と軽減税率それぞれに対応した機種を設置しておくことが大切です。
この対応が行われなかった場合、発行者側が自ら修正し再発行しなければなりません。

手書きで領収書を発行する時の注意点

手書きで領収書を発行する場合、従来の項目に加え、それぞれの税率に応じた合計金額と消費税額を区分して記載する必要があります。
インボイス発行事業者の登録番号も忘れずに記載してください。

領収書やレシートのインボイス発行・受領の注意点


経営者であれば、インボイス制度を適用した領収書やレシートの発行者と受領者どちらの立場にもなりるでしょう。その際、注意すべき点は何なのか見ていきます。

領収書・レシートを簡易インボイスとして発行する側

レシートに記載する項目を確認する

前述で示したとおり、レシートにはインボイス発行事業者の登録番号を記載できるようにしておきます。
また、適用した税率を含めた合計、また適用した税率のみ、もしくはその両方の記載いずれかの記載を行うように設定してください。

簡易課税制度の利用を検討する

2年前の事業年度の課税売上が5,000万円以下の小規模事業者においては、簡易課税制度が利用できます。
これは、消費税の計算がしにくい小規模事業者のための措置で、簡易的な消費税計算で納付を可能にするものです。

簡易課税制度の適用を受ければ、消費税の申告の際に手間を圧縮できます。

インボイス・簡易インボイス発行が免除されるケース

適格請求書発行事業者であっても、インボイスもしくは簡易インボイスの発行が免除される場合があります。

そのケースは、以下のような時です。

  • 公共交通機関における3万円以下の運賃
  • 卸売市場における生鮮食品などの売買
  • 組合などに委託した農林水産物の売買
  • 自動販売機における3万円以下の商品の販売
  • 切手を使用し郵便ポストに投函する郵便サービス

領収書やレシートを簡易インボイスとして受領する側

インボイス制度対応でないと仕入税額控除できない

領収書やレシートを受領する側は、インボイス制度に対応した書類でなければ、仕入税額控除を受けられません。
この時、必要項目の記載の有無をチェックすることに加えて、発行者側が適格請求書発行事業者であるかどうかも知っておく必要があります。

領収書やレシートがなくても良い例外

上記「インボイス・簡易インボイス発行が免除されるケース」で説明したとおり、この項目で記載されたケースでは領収書やレシートは例外的に受け取る必要がなくなります。
これらの費用を仕入税額控除に適用したい場合、帳簿に記載の上保存しておけば、適用の対象になります。

電子データ化した場合の原本の扱い

領収書やレシートを電子データ化した場合、原本は保存の必要がないとされています。
従来より施行されている電子帳簿保存法と同様であるため、今一度領収書やレシートの電子データ化について確認をしておきましょう。

まとめ

領収書とレシートは、書式などの違いはありますが、基本的には同じ役割を担うものです。領収書と同様に、レシートも経費計上の際に利用できます。
税法上では領収書よりもレシートの方が信用度が増す場合がありますが、企業によっては社内規定で手書き領収書のみを有効としているケースがあるため、注意が必要です。

領収書とレシートの違いや利用方法を把握し、適切な発行や受領をしてください。


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(編集:創業手帳編集部)

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