離職票と退職証明書の違いは?それぞれの発行手順や企業の法的な義務についても解説

創業手帳

離職票と退職証明書は公的効力の有無に違いがある!


従業員が企業を退職する場合、企業側は離職票と退職証明書を発行します。
従業員が退職する際は離職票・退職証明書以外にも様々な手続きを必要とするため、あらかじめ書類の違いや発行手順などは押さえておきましょう。
特に離職票と退職証明書は公的効力の有無など、違いがあることを理解しておいてください。

今回は、離職票と退職証明書の違いについて解説しつつ、発行手順や企業側の法的義務なども解説していきます。

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離職票と退職証明書の違い


まずは離職票と退職証明書の違いについて、解説していきます。主な違いは以下のとおりです。

離職票 退職証明書
正式名称 雇用保険被保険者離職票
必要性・役割 失業保険を給付する際に必要 転職先に退職を証明するために必要
発行元 ハローワーク 企業(雇用主)
提出先 ハローワークから受け取ったら退職者へ送付 退職者に発行
提出・申請期限 退職日の翌々日から10日以内 2年以内
書式 統一書式あり 企業ごとに異なる
法的義務・公的効力 あり なし
再発行 可能 可能(2年間)

離職票とは

離職票とは、従業員が退職してから再就職を果たすまでの期間で失業手当を受け取るために必要な書類です。ここでは離職票の特徴について詳しく解説していきます。

離職票の役割・必要性

離職票は上記でもご紹介したように、退職者が失業手当を受け取るために必要な書類です。
失業手当は雇用保険の被保険者が定年または契約期間の満了などで離職した場合に、失業期間中でも生活の心配をせずに新しい仕事が探せるようにするための給付金になります。

基本的には退職後すぐに働ける人が受給できるものであり、病気やケガ、出産などを理由に退職した場合は失業手当の対象外となります。
また、退職後に起業することが決まっている場合も受け取れません。そのため、失業手当の対象外となる場合は離職票が不要となります。

離職票は2種類の書類に分かれています。ひとつは「被保険者資格喪失届」、もうひとつは「被保険者離職証明書」です。
各書類に必要項目を記入して両方提出することで、失業保険の受給申請を行えるようになります。

離職票の発行・提出方法・提出期限

離職票の発行は、まず退職者に離職票が必要かどうかの確認を取ることから始まります。退職後、すぐに就職することが決まっている場合は離職票が不要です。
離職票が必要であることを確認できたら、企業は離職証明書と資格喪失届を作成し、退職者に証明書の内容などを確認してもらいます。
企業が記入した内容に問題がなければ、退職者自らの署名と捺印をしてもらい、事業所の所在地を管轄しているハローワークへ書類を提出します。
ハローワークに提出する際は、以下の書類も準備してください。

  • 労働者名簿
  • タイムカード・出勤簿
  • 賃金台帳
  • 辞令および他の社会保険の届け出(控)
  • 離職理由がわかる書類(就業規則、役員会議事録など)

必要書類を提出するとハローワーク側が審査を行い、記載された内容に問題がなければ離職票が発行されます。
ハローワークから離職票を受け取ったら、すぐに退職者本人へ郵送、または受け取りに来てもらうようにします。
離職票の発行に必要な離職証明書をハローワークに提出する期限は、退職日の翌々日から10日以内です。

離職票の記載事項・書式

離職票の記載事項はハローワーク側である程度作成されているものの、一部退職者が記載する項目もあるため、空欄になっているところもあります。
退職者が記載する項目は以下のとおりです。

  • マイナンバー
  • 失業手当を振り込む口座の指定
  • 離職理由
  • 具体的事情(退職に至った理由)
  • 離職者本人の判断
  • 署名・捺印

企業も離職票を受け取ったら、具体的事情と離職者本人の判断の項目に記載しますが、ここで企業側と退職者の意見が食い違っていた場合、ハローワークが企業側へ事実確認の連絡を行います。
その後調査を進めていき、どちらが正しいか判断していくのです。

離職票の法的義務・公的効力

離職票の発行・交付は雇用保険法第76条3項で定められており、企業側の義務となっています。
法律では退職者が59歳未満で、離職票が不要な場合を除きすべての退職者に対して発行しなくてはならないと記載されています。
上記でもご紹介したように、離職証明書と雇用保険被保険者資格喪失届を退職日の翌々日から10日以内にはハローワークへ提出しなくてはなりません。

万が一ハローワークへ提出していなかったり、発行された離職票を退職者へ渡さなかったりした場合は、企業側に6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられてしまう可能性もあるため、注意が必要です。

離職票の再発行

万が一退職者が離職票を紛失してしまった場合でも、再発行してもらうことは可能です。企業側へ再発行の依頼が来た場合、再発行申請を行うことになります。
再発行申請はハローワークに「雇用保険被保険者離職票再交付申請書」を提出するだけで手続きは終わります。
申請書自体はハローワークのホームページからダウンロードすることが可能です。

また、一度離職票が発行されている場合はハローワークで履歴を確認できます。そのため、退職者は直接ハローワークに再発行申請が行えます。

離職票と離職証明書との違い

離職票と離職証明書の主な違いは、その役割です。離職票を発行するためには離職証明書を作成する必要があり、発行した離職票を使って失業手当を受け取る形になります。
発行元も離職証明書は企業側で、提出するとハローワークから離職票が発行されます。

離職票 離職証明書
正式名称 雇用保険被保険者離職票 雇用保険被保険者離職証明書
必要性・役割 失業保険を給付する際に必要 離職票を発行するために必要
発行元 ハローワーク 企業
提出先 ハローワークから受け取ったら退職者へ送付 ハローワーク
法的義務 あり あり
公的効力 あり あり

退職証明書とは

退職証明書とは、退職者が「企業から退職した」ことを証明するために必要な書類です。
退職証明書は離職票と異なる部分が多いため、具体的にどのような違いがあるのか解説していきます。

退職証明書の役割・必要性

退職証明書の主な役割は、退職したことを証明することにあります。
退職証明書が必要になってくる場面は様々ですが、例えば国民健康保険・国民年金の加入手続きを行う際などに必要です。
加入手続きは離職票があれば進められますが、離職票は発行まで時間がかかってしまう場合もあります。
しかし、退職証明書を代わりに提示することで手続きを進めることも可能です。

また、退職者が転職先の企業から退職証明書を求められた場合にも必要となります。これは、転職先の企業が退職した理由などを確認するために、任意で請求しています。
ただし、必ずしも退職者から求められる書類ではないため、発行の希望がなければ作成する必要はありません。

退職証明書の発行方法・発行期限

退職者から退職証明書の発行申請が来た場合、労務担当者が手続きを開始します。
退職証明書に必要な項目を記載していきますが、記載する内容は退職者から求められた事項のみです。
記載内容は、発行申請があった際に直接電話口で、またはメール・郵送などの手段を使って指定してもらう必要があります。
作成する際の注意点として、離職票と退職日や使用期間、賃金、退職の理由などは一致している必要があります。矛盾が起こらないように注意してください。

退職証明書の発行義務は2年以内と定められていますが、請求されてから何日以内までといった決まりは特にありません。
ただし、遅延することなく交付する必要があります。もしも退職日前に発行申請が来た場合は、退職日の当日に渡せるようにしてください。

作成した退職証明書はコピーを取っておき、企業側でも保管しておきます。保管しておけば万が一退職者が書類を紛失した場合でも、スムーズに対応することが可能です。
また、労働関係の重要書類は5年の保存期間が設けられているため、5年間は保管しておいてください。

退職証明書の記載事項・書式

退職証明書は離職票とは異なり、公的文書ではないため記載項目の規定などは特にありません。退職者から指定された項目のみを記載していくことになります。
主な記載項目は以下のとおりです。

  • 発行元の事業所名・事業所住所・事業主名
  • 証明内容(退職した事実)
  • 使用期間
  • 退職者が務めていた業務(職種)
  • 担当事業内での地位(部署・役職)
  • 支給していた賃金
  • 退職事由

なお、記載項目だけでなく書式も基本的には自由となっているため、書き方などは各企業によって異なります。

退職証明書の法的義務・公的効力

退職証明書は公的文書ではないものの、労働基準法第22条で定められているため、退職者が発行申請を行ったら退職証明書を発行するのが企業側の義務です。
正当な理由もなく退職証明書を交付しなかった場合は、30万円以下の罰金が科せられる可能性があります。
退職証明書は従業員が退職してから2年間は発行義務がともなうため、退職後しばらく経ってから発行申請があったとしても、2年以内であれば発行するようにしてください。

退職証明書の再発行

退職者が退職証明書を紛失または破損した場合でも、書類の再発行を企業に依頼できます。しかも発行の回数などは法令などで定められていません。
つまり、退職者が希望すれば何回でも証明書の発行に応じる必要があります。ただし、2年間の発行義務が過ぎている場合は発行対応に応じなくても良くなります。

離職票と退職証明書に関するよくある質問


ここまで離職票と退職証明書、それぞれの特徴と違いについてご紹介してきました。続いては、離職票と退職証明書に関するよくある質問についてお答えしていきます。

紛失した場合はどうしたらいい?

退職者が離職票や退職証明書を紛失してしまった場合、再発行することが可能です。
離職票の場合は退職者が直接ハローワークに再交付申請書を提出することで再発行してもらえます。
退職証明書も退職後2年以内であれば、企業は退職者からの発行申請に対応する必要があります。
再発行を希望するケースもあるため、退職証明書を作成したらコピーを取り、保管しておいてください。

離職票はいつ届く?

離職票が退職者の手元に届くまで、退職日から約2週間(10~14日)はかかるとされています。
発行するためにはハローワークに企業で作成した書類を提出し、交付された離職票を企業から退職者に送付する必要があります。
これらの手順を踏まないと離職票は退職者の手元まで届きません。企業側の対応が遅れてしまうと、その分離職票の受け取りも遅くなってしまいます。

離職票発行の対応が遅れてしまうと退職者から問い合わせが来ることもあるため、早めの対応を心掛けてください。

離職票の代わりになるものはある?

離職票は発行するまでにどうしても時間がかかってしまいます。
取り急ぎ国民健康保険や国民年金の手続きを行いたい場合には、離職票の代わりとして退職証明書を活用することも可能です。

離職票や退職証明書は退職者自身でも作成できる?

結論からいえば、離職票や退職証明書は退職者本人が作成・発行することはできません。
いずれの書類も、法律で企業やハローワークによる発行が義務付けられているためです。
ただし、離職証明書と退職証明書には退職者本人の記載が必要な項目もあります。

また、退職証明書は離職票とは異なり、公的文書ではないものの退職したことを証明する大事な書類です。
企業側は角印などを押印することで、証明書としての効力を高めつつ退職者が作成したものではないことを示すようにしてください。

まとめ・離職票と退職証明書は請求されたらどちらも発行しなければならない!

離職票と退職証明書は役割や発行方法、記載項目など様々な違いがあったものの、いずれも退職者が希望した際には発行しなければいけない書類です。
企業側の対応が遅れてしまうと退職者も困ってしまうため、迅速な対応を心掛けるようにしてください。

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(編集:創業手帳編集部)

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