リテールメディアとは?活用メリットから国内外の事例まで詳しく紹介!

創業手帳

新たなビジネスモデルとして注目される「リテールメディア」


近年になって、「リテールメディア」という単語を耳にする機会が増えました。
テクノロジーの進歩によって、小売企業が自社の一次データを活用した多様な広告メニューを提供できるようになりました。
リテールメディアは、小売企業の新しい収益を生み出すだけではありません。
消費者のニーズに合った施策を提供し、購買体験をより高めるためにリテールメディアが有効な手段として注目されています。

リテールメディアの基本から活用法まで紹介しているので、新たなビジネスモデルへの活用を検討してください。

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リテールメディアとは?


リテールメディアは、小売りを意味するリテールと媒体の意味を持つメディアを組み合わせた造語です。直訳すると小売企業が運営している広告媒体を意味しています。

リテールメディアは、大きくオンラインとオフラインの2タイプに分類されます。
リテールメディアで収益を出すためには、自社の商品やサービスに対して適切な媒体を選択することがポイントです。

以下ではリテールメディアの種類とその特徴をまとめています。

分類 オンライン オフライン
媒体の種類 ECサイト

専用アプリ デジタルサイネージ ポップ広告
特徴 顧客が興味を持つ商品に基づいて関連商品を表示する ユーザーの行動データから最適化された広告を表示する ディスプレイ、プロジェクターなどの映像表示機器を使って発信する 店頭で顧客の視線を集めて購入意欲を高める

リテールメディアの市場規模・動向

日本におけるリテールメディア市場は急速に拡大しています。
株式会社CARTA HOLDINGSの調査によると、2024年のリテールメディア広告市場は4,692億円、前年比125%となる見通しです。
さらに、これからもリテールメディアは高い水準の需要が継続するとみられ2028年には2024年比約2.3倍の1兆845億円規模に成長すると予測されています。

近年は、消費者のオンライン購買の割合も増加しているため、実店舗がある小売企業も意欲的にリテールメディアに参入しています。
アプリやデジタルサイネージのようにリテールメディアを支えるテクノロジーも進展し、新しい事業者の参入が増加していくでしょう。

リテールメディアが注目されるようになった背景


リテールメディアが注目されるようになった背景には、社会の変化や消費行動の移り変わりがあります。どういった背景があるのか、以下で詳しく紹介します。

個人情報保護の強化

2023年にGoogleは、プライバシー保護の強化を目的としてユーザーの行動、興味といった個人情報を第三者が追跡する技術である「サードパーティクッキー」の段階的廃止を表明しました。

クッキーとは、ウェブサイトをユーザーが訪れた時にユーザー情報を一時的に保存するデータファイルです。
ユーザーが特定のウェブサイトを訪問した時に第三者がユーザー情報を収集するためのクッキーがサードパーティークッキーです。
サードパーティークッキーが廃止となることで、Web広告のターゲティングに活用してきた企業の広告配信の精度が危ぶまれるようになりました。

そこでサードパーティーに代わって注目されるようになったのが企業が自社で収集、保有しているファーストパーティークッキーです。
ファーストパーティークッキーを活用するリテールメディアは、プライバシーを守りながら広告やプロモーションを展開できる戦略として注目を集めています。

DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進

DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進は、リテールメディアにとって追い風となりました。
DXは、デジタル技術の活用によってビジネスや社会、ライフスタイルを変化させることを指します。
リテールにおけるDXには高度なマーケティングによって、来店予測や店舗分析などがあります。

DXが進み、ビッグデータ解析やAIといった技術を導入することで広告、マーケティング戦略は急速に進化しています。
例えば、過去の購入履歴や閲覧履歴の分析によって、その人により訴求できる商品やキャンペーンを広告として表示可能になりました。
DXの推進によって、よりリテールメディアを導入しやすい環境が整ったといえます。

オンラインによる購買体験の拡大と技術発展

オンラインでの購買体験が拡大していることもリテールメディアが注目される理由です。消費者の生活は、デジタル化が進み、オンラインショッピングが普及しています。
SNSを活用した越境ECが成長し、国境を越えた購買の需要が高まったことや輸送ネットワークの発達で配送速度が高まったことでよりオンラインショッピングは快適さを増しています。

AIによるパーソナライズも進んだことで、これからもオンラインでの購買が拡大してリテールメディア市場も成長していくでしょう。

リテールメディアを導入するメリット


リテールメディアの導入によって恩恵受けるのは、小売業者だけではありません。広告主や消費者にとっても多くのメリットがあります。
ここからはそれぞれ立場ごとのメリットを紹介します。

小売業者・流通業者のメリット

小売業者や流通業者にとって、リテールメディアの導入はファーストバーティーデータを使った新しい収益源の確保です

加えて、顧客IDや購入商品の情報から顧客ニーズに合った広告やクーポンを配信できるので、消費者の購買意欲促進や販路拡大につながります。
これは広告主であるメーカーのビジネス拡大にも貢献するため、長期的なパートナーシップを築き上げるにも効果的な施策です。
多くのメーカーの協賛を獲得できればさらに収益の拡大が期待できます。

メーカー・広告主のメリット

メーカー、広告主はリテールメディアを使うことによって、より精度が高いターゲティングが可能です。
消費者の行動データや購入履歴を活用すれば、商品のアピールに活用できるでしょう。

リテールメディアを活用した広告は、ターゲットを絞って配信できるため、無駄な広告出費を削減できます。
広告効果を検証する精度を高められ、PDCAを回してよりクオリティが高い広告を配信できます。

消費者のメリット

消費者にとってのリテールメディアは、自分の好みや関心に合わせた広告、プロモーションを適したタイミングで受け取れる点がメリットです。
必要な情報がすぐに手に入るので、より購買は簡単で満足度の向上が期待できます。

さらに、広告やクーポンといった割引情報をを獲得できるので、よりお得に買い物が可能です。
リテールメディアによって広告の精度があれば、関心が低い広告や配信は少なくなります。
その結果として、購入体験の価値が向上してショッピングを楽しみやすくなることも大きなメリットです。

リテールメディアの活用事例


リテールメディアは、すでに私たちの生活になじみ深いものになりました。
リテールメディアにはECモール内の広告から、デジタルサイネージ、アプリのように多くの事例があります。
ここからは、リテールメディアの活用事例にどういったものがあるか紹介します。

Amazon(アマゾン)

ECモールの中でもAmazonを利用している人は多く、リテールメディアを目にする機会もたくさんあります。
Amazonのリテールメディアでは、顧客の検索意図に沿った関連商品の広告が検索結果に表示されます。
顧客の関心が高い商品が表示されるため、広告と思わずにクリックしてしまう人も多いはずです。

さらにAmazonでは包括的なレポートやインサイトを提供しているため、広告の効果測定と最適化に役立ちます。
広告宣伝費の予算を削減している企業は多く、顧客データと広告を効果的に関連付けられるAmazonは広告投資の効果測定がしやすい点も強みです。

Walmart(ウォルマート)

大手のリテールメディアは、、大手メディアプラットフォームとの提携も積極的に進めています。
Walmartのリテールメディア部門であるWalmart ConnectはTikTokやSnapchatと提携をはじめました。
コンテンツフィード内のビデオ広告やライブコマースからすぐに購買できる機能が実装されています。
店舗での広告については、約5,000店舗に17万台のデジタルサイネージを設置しました。

独自の顧客データを活用して日時や地域を特定し、セルフレジのスクリーンなどでもブランドメッセージの配信や商品販促を実施しています。

ヤマダデンキ

大手家電量販店ヤマダデンキは、国内外の販売店舗や住宅展示場を這わせて販売チャネル約11,000店、顧客数は6,000万件を誇ります。
これを活用しヤマダデンキ店舗でのデジタルサイネージやアプリ連動のプッシュ広告を開発、広告枠の販売をスタートしました。
チラシ情報と連携した店舗内クーポンやお買い得情報をリアルタイムに配信しています。

ヤマダホールディングスは、2024年5月にANAホールディングス発のスタートアップavatarin株式会社と業務提携を結んだことでも話題となりました。
ヤマダホールディングスの「くらしまるごと」戦略において、家電流通業界に特化した接客AIサービスの創出を目指しています。

遠隔接客者へのサポートAIや接客スキルのデータ化によって、需要の取りこぼしを減らしてターゲットに高い精度のアプローチができるようになりました。

東芝

リテールメディアの活用は、中小企業や地域に根差した小売店がより大きな市場で勝負するチャンスを生み出す可能性もあります。

東芝テックが提供しているリテールメディアプラットフォーム構想では、小売店の挑戦を強くバックアップしています。
東芝テックが展開しているクーポンデリやスマートレシートなどのソリューションとメーカーや小売企業のオウンドメディア、SNSを統合して運用から販促の配信までをワンストップで進めるプラットフォームがリテールメディア構想です。

具体的には、購入データや検索履歴データ、購入のタイミングといった情報からセグメントを抽出して高い精度でのパーソナライズが可能です。
また、実店舗での回遊データや店舗来店前後の行動データも使って商品開発やマーケティングに応用できます。

ファミリーマート

ファミリーマートに2020年より設置されているFamilyMartVisionは、全国47都道府県、10,000店以上に設置されています。
商品やサービス以外にもエンタメ情報や音楽、お笑い、ニュースといった映像コンテンツが盛り込まれ、コンテンツを見るために来店する顧客が出るなど話題性があるツールです。

さらに、2024年3月からは地域や立地特性など細分化された単位での配信プランや、AIカメラによる視認分析のメニューも正式に公開しています。
ファミリーマートの全国約16,300店の店舗網と1日約1,500 万人が来店する顧客基盤を活用した事例です。

リテールメディア活用で注意すべきこと


リテールメディアは、使い方次第で新しいビジネスチャンスになる可能性を秘めています。しかし、活用の仕方が悪ければ想定した結果にはならないかもそれません。
リテールメディア活用をはじめる時に注意すべきことをまとめました。

費用対効果に考慮する

リテールメディアはリテール企業が保有する顧客データを活用するため、費用対効果が高いプロモーションが可能です。
しかし、効果的に運用するには、初期費用やコストの対する利益を分析しなければいけません。

具体的には、売上や来店数といった明確なKPIを設定し、無駄な運用コストが発生していないかを確認します。また、得られた成果に対して改善する部分がないか分析します。
定期的に効果測定を行って費用対効果が高い施策に集中すること大切です。

顧客情報管理に注力する

リテールメディアの活用は、基本的にリテール企業が独自に集めた情報を利用して行います。当然のこととして、顧客情報の管理や保護は厳重に実施しなければいけません。
顧客情報が漏洩することがないようにセキュリティ対策は徹底します。

また、プライバシーに配慮して収集した個人情報に対して透明性がある運用が求められます。
情報収集のタイミングで、データをどのように活用するのか収集したデータの使用目的を明確に説明しておいてください。

広告を適切なタイミング・内容で配信する

リテールメディアの活用は顧客に対して適切なタイミング、内容であることも必要です。過剰に広告配信すれば、顧客にストレスを与えてしまうかもしれません。
顧客が必要がない、無価値な情報を配信されたと感じれば、企業に対してのイメージも悪くなります。
顧客の趣味や関心を軸にした配信を、顧客が快適なタイミングで配信できれば、関係性の構築に貢献します。

これは、中長期的な目線で企業のブランディングにも寄与する施策です。
企業本位になるのではなく、あくまで顧客体験をメインにして広告やプロモーションを運用することが大切です。

まとめ・国内でもリテールメディアに取り組む企業が増えている

リテールメディアを活用する時には、まず誰に配信するのかを選定し、媒体やプロモーションの方法を選びます。
顧客に最適化された広告は、商品の売上向上、収益の増大につながります。
リテールメディアと簡単にいっても、その媒体や活用手段は多種多様です。効果を最大限発揮するには、成果を検証して分析と対策を実施してください。
どういった手法があって、自社のビジネス、顧客にどれが適しているかを考慮してリテールメディアを選定してください。

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(編集:創業手帳編集部)

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