クエスチョンサークル 宮本寿|アインシュタインもドラッガーも知っていた「問い」が持つ真の力とは
起業家は「問い」から始めよう!
「問い」の力を活用した組織開発プログラム「クエスチョンサークル」。
会社名には「問い」によって「仲間」をつくるという思いをこめているといいます。
代表の宮本氏に、起業家はどのように「問い」を活用すべきか、また「問い」を上手に使って組織や事業を高めていく方法についてお聞きしました。
株式会社クエスチョンサークル 代表取締役
1975年静岡県生まれ。明治大学商学部卒業。
リンクアンドモチベーション、グロービスを経て、2007年株式会社メロスパートナーズ設立。ベンチャー/成長企業に対する組織開発プロジェクトのファシリテーション、及び経営層/マネジメント層を対象としたアクションラーニングコーチとして活動。
2019年株式会社クエスチョンサークル設立。現在は「クエスチョン思考」と称した思考法の体系化や普及を通じて、クライアント企業の組織開発やビジネスリーダーの支援型リーダーシップ開発を支援している。
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計250万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら
※この記事を書いている「創業手帳」ではさらに充実した情報を分厚い「創業手帳・印刷版」でも解説しています。無料でもらえるので取り寄せしてみてください
答えを持たない問いをしよう
大久保:まず、宮本さんが起業した経緯を教えていただけますか?
宮本:会社員としてグロービスに勤めていた頃、堀義人さんの自由な生き方に憧れたんです。
「最近3つのことを自分に約束している。1つ目、会いたくない人には会わない。2つ目、やりたくないことはやらない。3つ目、食べたいものを食べる」とおっしゃっていて、内心「代表だからできるのであって、普通の勤め人はそんなことできないよ」と思いながらも、心に響いたんですよね。
自分の中の「もっと自由にやりたいことをしたい」という気持ちに気づかされました。
大久保:堀さんと一緒に水戸に行ったことがありますが、確かに自由を感じる方でしたね。宮本さんがいた頃は、どのぐらいの規模だったのですか。
宮本:そうですね、約14年前で大学院が立ち上がった頃です。今よりは小規模でしたが200人ぐらいは社員がいたと思いますね。
その後独立し、12年間フリーランスのコンサルタントや研修の講師として活動しました。組織作りや人材育成の分野で活動していましたが、フリーになって5年ほど経ったときにアクションラーニングやコーチングを学ぶ機会がありました。率直に「これは有効だな、もっと多くの人に届けたいな」と感じ、事業化したんです。
あるプロジェクトのファシリテーターを経験したときに気づいたのですが、コンサルタントという立ち位置とは違って、ファシリテーターとして問いを使うことで、一緒に動いているメンバーが自分で考えてくれるようになったんですよね。これは自分にとって非常に大きな気づきでした。
大久保:我々も起業家の方々に対して創業相談をしているんですが、「税金はこう払って、資金調達はこうするといいですよ」というところは話せますけど、本人がどんなことをやりたいかということは決めてあげられない。
質問もただ聞けばいいだけではなくて、核心をついた質問をしなくてはいけないのかな、と思ったりしています。
宮本:核心をつく質問も大事ですが、我々が大切にしているのは、どちらかというと本人に考えさせ、自分で気づいてもらうような質問なんです。「ジョハリの窓」という言葉を聞いたことがある方も多いと思いますが、上の図でいうと右上の「盲点の窓」に注目してください。
「本人は知らないけれど、質問者は知っている」内容の質問をすることは、ある意味諸刃の剣なんです。問われる側は見透かされたという気持ちになってしまうかもしれません。
我々が大切にしているのは右下の「未知の窓」で、「本人も質問者も知らない」内容の質問です。問う側は、必ずしも答えを持っていなくていいんです。「この観点はどう?」「あなたならどう考える?」という、双方が一緒に考える質問ですね。考えるきっかけになりますし、問われる側が自分で気づける方が大事なのです。
問いを掘り下げるのではなく昇華させてみよう
大久保:確かに誘導尋問のような質問だと、人によっては気を悪くすることもありそうですね。ほかに問いについて、気をつけたほうがいいことはありますか?
宮本:上の図を見てください。例えば顧客や部下などに解決したい問題があり(水面の上の見えている問題)、それを相談されたときに、実はもっと本質的な問題が隠れていることって高確率であるんです。氷山に例えると、水面下に本質的な問題が隠れているということですね。
問題を相談されたときに、ただその問題を解決するという関わり方ではなく、水面下に隠れている本質的な問題は何か?ということを「問いの力」を使って一緒に考え、探り出すことが大切です。
商談の場面では、営業側が自分たちのソリューションに誘導してしまうと、顧客側は誘導された感が出てしまいます。顧客や部下と共に、真の問題を一緒に発見できると、信頼してもらえ、唯一無二のパートナーになれるのです。
大久保:やりたいことがあって、「これで世界を変えてやる!」と思っている起業家はこの問題はこうだ!と決めつけてしまいがちかもしれないですね。真の問題がその下にあるということにはなかなか思いが至らないかもしれません。
例えば会社にお金がないとなったときに、なぜお金がないのか?コストに問題があるのか、それとも売上げなのか。打開策は資金調達なのか投資してもらうのか、となりますよね。この例のように、問題から質問を掘り下げていくことは正解なんでしょうか。
宮本:そうなんです。私たちは原因を掘り下げることは得意なんです。一方、目的を昇華していくことが実は非常に大事です。「Why」という問いには2種類あって、一つは原因を掘り下げていく「なぜ」。もう一つが目的を昇華していく「何のために」です。
例えば、先ほどの「お金がない」場合、何のためにお金が必要なのか?お金があったらどんなことをしたいのか?といった質問が挙げられます。
その目的が、事業拡大のための投資であれば、資金調達という手段ではなく、事業パートナーとアライアンスを組むという選択肢が見えてくるかも知れません。
別の例を挙げますと、例えば部下が遅刻したとします。普通であれば「なぜ遅刻したの?」と聞きますが、「昨日遅くまで残業していたから寝坊しました」と返事が返ってきても、本人も残業せざるを得なかったりするため、原因が分かっても改善されないことはよくあります。
一方、「明日の商談のためにどんな準備をしておきたい?」と聞いておくと、「他社で取り組んだ成功事例をご説明できるよう準備しておきたいです」となるかもしれません。
このように、朝早く出社する目的を作ってあげられるような問いをしてあげると、遅刻しなくなるかもしれません。
問題解決の前に、まずは真の問題を発見するべきである
大久保:なるほど。人ってどうしても視野がせまくなりがちなので、いいですね。自問自答も効果的なのですか。
宮本:自分で問うことももちろん有効です。ただ、「自分から出る問い」というのはどうしても自分の思考の枠からは出づらいんです。他者から問われる問いは思考の外から出てくるので、自分の思考は広がりやすいんですね。
大久保:質問をする前に、初心者としてどのようなことを心掛けるといいのでしょうか?
宮本:そうですね。「質問」も大事ですが、その前にまずは「傾聴」と「尊重」が大事です。これができていると質問がとても機能します。また、相手を知ることと自己を開示することですね。自分をオープンにしないと、相手も素直に問いに答えることが難しくなります。
大久保:最後に何かメッセージをいただけますか。
宮本:では、問いに関する著名人の言葉を少しご紹介しますと、アインシュタインは「ある問題を解決するために1時間を与えられたとしたら、最初の55分は適切な問いに答えようとしているかどうかを確認する」と言っています。いきなり問題を解決しようとするのではなく、まずは問題発見をするべきであり、そのために適切な問いが重要だと指摘しています。
またドラッガーも「経営における最も重大な過ちは、間違った問いに答えること」だと言っています。起業家の方々には、問いの力を最大限に活用して、より強固な組織作りに取り組んでいただきたいですね。