業務委託契約書の作成方法と記載すべき内容、注意点を解説!

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業務委託契約書の必要性とは?企業とフリーランスが円満に契約するための方法


業務委託契約書は企業とフリーランスが協力して仕事をする時によく使う契約書です。
業務委託は企業が業務を円滑に進めるために効果的な方法で、業務委託契約書の存在は大きいものです。
その内容に問題があるとトラブルになることもあります。

業務委託契約を交わす際には、お互いの関係を良好に保ち、安全に業務を遂行できるように書類の作成方法を知っておきましょう。
業務委託契約書の役割や契約締結の流れと契約書作成の方法を解説します。

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業務委託契約書とは


業務委託契約書とは、業務委託の際に受発注する双方が交わす契約書です。
業務契約は企業内の業務の一部を外部の個人や法人に委託する方法であるため、業務ごとに契約を交わす必要があります。
委託企業は安全に業務を任せるために、受託側は与えられた業務を遂行して適切な報酬を得るために重要な書類となります。

業務委託契約書は具体的にどのようなものなのか、基本的な使い方を確認しておきましょう。

企業とフリーランスが一緒に働く際に使うことが多い

業務委託契約書は、一般的に委託する企業と受託するフリーランスが交わすことの多い書類です。
業務の範囲や内容によっては、企業が法人の専門業者に委託することもあります。

企業は内部のリソースではまかなえない業務の一部を切り出して外注し、その業務をフリーランスなどが受注します。
その際に、業務の内容・報酬・契約期間などを決めて、書面にしたものが業務委託契約書です。
委託企業と受注者は同じ目標のためにともに働きますが、雇用関係はありません。あくまでも、契約書内で定められた業務や期間だけの関係になります。

業務委託契約の種類

業務委託契約には3つの種類の契約方法があります。
通常は業務委託契約と呼ばれていますが、正式な法律用語ではなく、法的にはこの3種類の契約方法が定められています。
契約方法の種類によって扱う業務や報酬発生の条件が違うため、契約時には注意が必要です。

委任契約

委任契約は、委託者が受託者に法律行為を委任する契約です。
法律上で定義されているわけではありませんが、法律行為とは意思表示によって権利の発生や消滅など一定の法的効果が生じる行為を指します。
法律行為という労務に対して報酬が発生する契約であり、成果が得られなくても報酬の支払いが必要です。

法律行為としては、売買契約・賃貸借契約・社団法人の設立手続き・訴訟行為などが挙げられます。
委任契約で受託するのは、弁護士や司法書士、税理士などです。訴訟代理を弁護士に依頼する、確定申告を税理士に依頼するといったケースで委任契約を結びます。

準委任契約

準委任契約は法律行為以外を委任する契約です。コンサルティングやセミナー講師、システムの保守管理、警備や医師による医療行為など、幅広いジャンルで用いられます。

委任する内容以外は委任契約と同じで、報酬も成果に関わらず発生します。
例えば、コンサルティングを頼んだ場合、受託者は課題の分析や提案などのコンサルティング業務を行いますが、その成果が出なかった場合でも、委託者は報酬を支払わなければいけません。

請負契約

請負契約は、受託者が業務を完成させ、成果物を納品することで報酬が発生する契約です。
委任契約や準委任契約のように成果が出なくても報酬が発生する契約とは異なります。

請負契約で扱うジャンルも準委任契約と同様に幅広く、プログラマーやライター、デザイナーなどがフリーランスで、また、建築業や製造業などでも使われる契約です。
プログラマーの場合にはプログラムやアプリを納品、製造業者は製品を納品することで報酬が発生します。
また、受託者は、契約に基づいて成果物の修正などにも対応します。

業務委託契約の締結の流れ


業務委託契約では、業務委託契約書を作成して締結するまでにいくつかの段階を踏む必要があります。
委託企業と受託側の双方が認識を同じくし、契約満了までトラブルなく円滑に業務を遂行できるように、正しい手順で進めることが大切です。

業務委託契約締結までの流れとそれぞれの工程での作業内容を確認しましょう。

契約内容の相談・見積書作成

業務委託契約を結ぶ際には、最初に契約内容について話し合い、双方で納得できるようにすり合わせをすることが必要です。
内容に合意できたら、見積書を作成して業務委託契約で発生する報酬などを確認します。

あらかじめ話し合っておきたい契約内容は、以下のようなものがあります。

  • 業務内容の詳細と対象となる業務の範囲
  • 契約の種類
  • 報酬額と経費の扱い
  • 契約期間
  • 成果物の納品方法と検収方法
  • 納品が遅延した時の対応
  • 契約キャンセルと解約について

一つひとつの契約内容によって必要な決めごとも異なるため、ここに書かれていないことでも気になる問題がある場合には相談してください。
あいまいなことはできるだけなくし、不安材料を排除することが重要です。

契約書作成・内容の確認

契約内容と報酬について双方で合意できたら、契約書を作成します。
契約書は委託者と受託者のどちらが作成することもできますが、相手に任せきりにするのはNGです。
契約書を作成する際には、話し合いで合意した内容を漏らさずに記載し、先方に確認してもらいます。
作成を任せた場合には、合意した内容が漏らさず正確に記載されているか詳細を確認してください。

契約書の確認が終わると契約を交わす段階に移るため、ここで最終確認として問題がないか見定めることが必要です。
お互いに納得できるまでコミュニケーションを取り、後々後悔することのないようにします。

業務委託契約書の製本

双方の納得できる契約書ができたら、最後に業務委託契約書を製本します。
製本した契約書は、委託企業と受託側の双方がそれぞれに保管するため、同じものが2部必要です。
契約書の内容が差し替えられるリスクを避けるため、割印をしておきます。また、請負契約に関する業務委託契約書には収入印紙の貼付も必要です。

収入印紙の貼付

収入印紙の貼付は、印紙税法で定められており、請負契約の場合のみ必要となります。成果物の納入がない委託契約と準委任契約では原則印紙は不要です。

収入印紙の金額は契約金額に応じて定められており、国税庁ホームページで確認できます。
必要となるのは、1万円以上の契約で、以下のように段階ごとに印紙税額が変わります。

記載された契約金額 印紙税額
1万円~100万円以下 200円
100万円を超え200万円以下 400円
200万円を超え300万円以下 1,000円
300万円を超え500万円以下 2,000円
500万円を超え1,000万円以下 1万円
1,000万円を超え5,000万円以下 2万円
5,000万円を超え1億円以下 6万円
1億円を超え5億円以下 10万円
5億円を超え10億円以下 20万円

業務委託契約書は電子化も可能

業務委託契約書は紙ベースではなく電子データでのやり取りも可能となっています。
契約書を電子化することで、利便性が良くなり、コストも軽減できるため、ひとつの選択肢として検討してみましょう。

業務委託契約書を電子化すると、オンライン上で契約を取り交わすことができます。
対面で契約の場を設定する必要がないため時間や手間が省けて、その後の管理もしやすくなります。
また、交通費や郵送料がかからず、収入印紙代もかかりません。

電子契約の収入印紙

電子契約では、請負契約で必要とされた収入印紙の貼付が必要なくなります。負担を少しでも軽減したい場合には、電子契約も視野に入れておくと良いかもしれません。
特に、頻繁に契約を交わす企業では、1件あたりは安くても件数が重なると負担は大きくなるものです。

業務委託契約書で定める内容


業務委託契約書を正しく作成するためには、どのような内容を記載するのか知っておくことが重要です。
基本的に記載すべき重要な内容やトラブルになりやすい点についてまとめました。

業務内容

業務内容は、委託する業務を明記する項目です。業務委託契約書の中でもっとも重要な項目のひとつであり、正確に記載しないと誤解が生じやすい部分でもあります。

まずは何をするのか、業務の内容や範囲を細かく具体的に書くことが必要です。
委託する側としては何をどこまで請求できるかを明らかにでき、受託側としては自分の義務や責任の範囲を明らかにし、無駄なく業務にあたれるようになります。
また、委託業務がどの時点で完了となり、追加業務が発生するかどうか、発生する時の対応方法なども決めておきたい部分です。

報酬の支払い条件

報酬の支払い条件も重要な項目です。報酬の支払い日や支払い方法などを記載します。
また、業務中に発生する交通費などの経費についても報酬に含まれるか決めておくことが大切です。
どのような経費が発生するか、できるだけ予測を立て、双方で納得できる対応を検討しましょう。

また、規模の大きな業務について契約する際には、着手金の有無や支払いを分割にするか、一括にするかなども交渉が必要となります。

知的財産権の帰属

知的財産権の帰属は、制作物の著作権や所有権をどちらが所有するか定める項目です。
委託企業が今後、成果物をどれだけ自由に利用できるかが左右される項目なので、慎重に決定しなくてはなりません。

システム開発や記事執筆などでは、通常は業務を委託したクライアント側が知的財産権を所有することになります。
しかし、受託側が独自の技術などを譲渡したくない場合、話し合いで一定の範囲を受託側に留保することもあります。

損害賠償の義務

損害賠償の義務は、万が一に備えて決定しておきたい項目です。損害が生じるトラブルが発生した時、損害を与えた側が与えられた側に行う賠償について定めます。
責任の範囲や期間、金額の制限を設けておくことで、無制限に賠償請求されるリスクを回避できます。

秘密保持条項

業務委託の過程で開示された情報の秘密保持の約束についての項目です。業務の過程で双方が入手した情報を、お互いが流出や流用されないために記載します。
一般的には、委託する企業が自社の情報を漏らされないように受託側に要求するものですが、受託側が業務で使用する情報について秘密保持を希望することもあります。
その場合には、双方の義務として、それぞれの秘密保持について契約書に明記することが必要です。

秘密保持の項目は、個人情報や業務上で知りえた機密事項の漏洩を防ぐ意味で必要なものですが、過剰な義務を課すことのないようにしてください。

納品期限や検収期間・条件

納品時や納品後に起こるトラブルを防ぐために重要となるのが、納品期限や検収期間、条件の項目です。
委託する企業はきちんと納品されるために、受託側は納品後速やかに支払いが果たされるために、適切な内容を決めておく必要があります。

納品期限は契約の段階で無理のないスケジュールで設定しておきます。また、納期に遅れる事態も想定して対応の手順や方法も明記しておくことが大切です。

瑕疵担保(かしたんぽ)期間

瑕疵担保とは、成果物の欠陥やミスがあった時の保証のことです。業務委託では、納品と検収が済んだあとでも成果物に欠陥やミスが見つかることがあります。
そのような時に修正などの対応を行うことを保証した期間が、瑕疵担保期間です。

委託する側としては瑕疵担保期間は長いほうが安心ですが、受託側にとっては瑕疵担保期間は短いほうが安全です。
そのため、双方の希望をすり合わせして業務内容によって決定することが必要となります。通常では、1カ月程度で設定することが多いようです。

有効期限と中途解約

業務委託契約は一定期間の契約となることが多いため、契約書には契約が終わるタイミングと条件について記載する必要があります。
有効期限は契約が満了するタイミングですが、これは業務内容によってそれぞれ違うため、双方で条件を話し合う段階で協議しておかなければいけません。
長期的な業務となる場合には、自動更新についても契約に盛り込む必要があります。

請負契約の中途解約は原則として委託側からの場合、損害の賠償と引き換えにいつでもできると民法で定められています。
また、受託側からは委託側が破産開始手続きの開始決定を受けた時のみ、中途解約が可能です。
これ以外のルールや条件を設ける際には別途記載が必要ですが、どちらかに不利益のある内容にならないように注意しなければいけません。

委任契約の場合には、民法では当事者のどちらからでも中途解約が可能となっています。
そのため、希望があれば有効期限までは契約解除しない、契約解除したい場合も事前予告期間を設けるなどの条文を加えることが必要です。

所轄裁判所

所轄裁判所の項目は、何らかのトラブルが起こった際に使う裁判所を記載します。
裁判になった場合は裁判所へ出向くことになるため、できるだけ利便性を考えて選ぶことが大切です。

業務委託契約書を作成する時の注意点


業務委託契約書を作成する際には、その内容を決める際に注意が必要です。
場合によっては本来の業務委託と内容がかけ離れていたり、どちらかの負担が大きくなっていたりすることがあります。
内容によっては違法と判断されることもあるため、注意点を押さえて適切な内容で作成してください。

偽装請負になっていないか

業務委託では、形式上だけ業務委託契約にして、実際には雇用関係として働かせる「偽装請負」が問題になっています。
偽装請負は、雇用で発生する法的義務から逃れる違法行為です。
そのため、偽装請負に当てはまるような契約内容になっていないか、契約書を作成する際には十分注意する必要があります。

業務委託契約書を作成する際には、請負契約であることを明記し、委託企業が受託者に対して指揮命令をしないことや結果に対して報酬を支払うことなどを記載することが大切です。

報酬や経費は明確で適切か

報酬や経費についての決めごとは、特に慎重に扱わないとトラブルの原因になることがあります。
報酬であれば、支払う総額だけでなく明細も記載し、事前に作成した見積書と紐づけておくことが大切です。
経費についても、交通費や業務のために購入したツール代金などをどうするかも明確にしておいたほうが良いでしょう。

業務内容や範囲は明確で適切か

業務内容や業務の範囲も、あとでトラブルの原因になることがあります。
契約で決めたものと業務内容が異なることがないように、事前の話し合いで何をどこまで行うのか明確にしておき、契約書にはっきりと記載しておかなければいけません。

まとめ

業務委託契約書は企業とフリーランスが安全に活動するために重要な書類です。
業務委託契約書を作成する際には、委託企業と受託するフリーランスがどちらも不利益を被らないようにします。

記載すべき内容は適切な条件で漏らさず記載し、双方が円滑に業務を進められるように心がけてください。
自社が損するのを避けるだけでなく相手にも不利益を押し付けないようにすれば、お互いに気持ちよく仕事ができます。

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