注目のスタートアップ

JR各社が相次いで新卒採用を縮小、じわりと進む事業構造変化

company

旅客鉄道業界のお盆商戦は外出・帰省自粛の影響により大きな打撃を被りました。お盆期間(8月7日-17日)におけるJR6社の新幹線、特急・急行列車の利用客数は前年同期比マイナス76%となりました。

各社は旅客事業の業績回復に向けてさまざまな施策を講じています。

例えば、JR東日本では2021年3月末までの期間を対象として、新幹線を含む全列車の限定座席をインターネット経由で予約すると半額になる割引キャンペーンを展開しています。他社も相次いで半額を超える大幅割引キャンペーンを打ち出しており、窮地を凌ぐべく努力を続けてきました。

ただ今のところ、独自の割引キャンペーンの効果は限定的で、経営環境は依然として苦しい状態が続きます。観光庁のGo Toキャンペーンの効果も限定的です。経営陣からは、もはやコロナ禍が落ち着くまでの急場凌ぎでは間に合わず、事業構造の抜本的な見直しに迫られているとの声も聞こえてきます。

厳しい経営状態を表すように、JR西日本、JR九州は相次いで、来春の新卒採用計画を縮小すると発表しました。

両社に共通するのは、総合職採用数は維持して、駅業務員や運転士、技術者などの専門職人材を削減する方針を打ち出していることです。

コロナ禍以前より、単純作業の割合が多く、正確性が求められる専門職種は、テクノロジーの進化に伴って、ロボットや自動化システムに領域を奪われると言われてきましたが、コロナ禍によりこの必然的な流れが加速した形です。

JR各社の事業は公共性の高さ故に、純粋な経済合理性だけでは割り切れない部分があります。官民一体で、延いては国民的な議論として、次世代の鉄道事業の姿を見直す好機が訪れているのかもしれません。

編集部のコメント

編集者
先日、地上波バラエティ番組の中で、鉄道好きの小学生の男の子が将来の夢は電車運転士だと誇らしげに話していました。彼が就職する10年後、運転士は人間の仕事として残っているのか、それともロボット・システムに代替され、より安全・正確な仕組みに変化しているのか。

数年前に英国オックスフォード大学が発表した「消える職業・なくなる仕事」を眺めると、さまざまな職種が人の役割ではなくロボット・システムに代替される未来が見えてきます。同論文は、今後10~20年程度で、米国の総雇用者の約47%の仕事が自動化されるリスクが高いという結論に至ったとしています。

事業環境の移り変わりがのスピードがなんと早いことか。世界的な金融緩和の中、行き場を失った資金が株式市場に流れ込み、ダウ平均、ナスダック指数などが史上最高値水準にありますが、これをけん引するのもDX(デジタルトランスフォーメーション)関連銘柄、ITテクノロジーによって産業構造を変えるような事業者です。

投資家・起業家の立場としては、変化のスピード、数年先が見通せない状態は、難しさであると同時に商機です。きめ細かな情報収集と柔軟な思考・仮説構築によって、荒波をエンジョイしたいものです。

冒頭に紹介した彼の電車運転士になりたいという夢が、何らかの形で実現することを祈っています。

読んで頂きありがとうございます。より詳しい内容は今月の創業手帳冊子版が無料でもらえますので、合わせて読んでみてください。
カテゴリ 有望企業
関連タグ JR西日本 テクノロジー ロボット 投資 採用 次世代 自動化 起業家 雇用
創業手帳
この記事を読んだ方が興味をもっている記事

有望企業の創業手帳ニュース

関連するタグのニュース

AIとロボットで有機農業を推進する「トクイテン」が3.7億円調達
2023年10月26日、株式会社トクイテンは、資金調達を実施したことを発表しました。 トクイテンは、AIやロボット技術を活用した有機農業の栽培全体の自動化を進めています。 収穫・液体噴霧・防虫など、ロ…
副業マッチング・サービス運営の「シューマツワーカー」が4億円調達
2020年7月14日、株式会社シューマツワーカーは、総額約4億円の資金調達を実施したことを発表しました。 副業マッチング・サービス「シューマツワーカー」や、テレワークが中心のフリーランス・エンジニアを…
領収書・請求書の会計ソフト入力自動化の「経理バンク」とRPA定着支援サービス「Robo Runner」がRPA事業で業務提携
2020年10月27日、株式会社経理バンクは、Peaceful Morning株式会社と、業務提携契約を締結したことを発表しました。 経理バンクは、領収書/請求書からの会計ソフト入力の自動化を実現する…
ワインEC事業やワイン管理・投資のオンラインプラットフォームなどを手がける「WineBank」が1.5億円調達
2023年11月8日、株式会社WineBankは、1億5,000万円の資金調達を実施したことを発表しました。 引受先は、マネーフォワードベンチャーパートナーズ株式会社が運営管理するHIRAC FUND…
外国人採用支援サービスの「MUSUBEE」と日本語学校の「進和外語アカデミー」が提携し採用サービス「MUSUBEE介護プラン」をリリース
2020年10月15日、MUSUBEE株式会社は、進和外語アカデミーと提携し、「MUSUBEE介護プラン」の申し込み受け付けを10月14日から開始することを発表しました。 MUSUBEEは、特定技能外…

大久保の視点

国際団体エンデバージャパン「EndeavorJapanSummit 2024」を現地レポート!
パネルセッション例:中村幸一郎(Sozo Ventures ファウンダー・著名な投資家)、ヴァシリエフ・ソフィア市副市長(ブルガリアの首都) 「Endeav…
(2024/10/9)
「JX Live! 2024」JX Awards大賞はNYでイチゴが大ヒットの古賀大貴さん(Oishii Farm 代表)
2024年10月9日、虎ノ門ヒルズフォーラムにて、「JX Live! 2024」が新経済連盟主催で行われました。 「JX Live!」は、「JX(Japan…
(2024/10/9)
「スタートアップワールドカップ2024」世界決勝を現地速報!優勝はEarthgrid(米代表・プラズマでトンネル掘削)
2024年10月4日、世界最大級のビジネスピッチコンテスト「スタートアップワールドカップ(SWC)2024」の世界決勝戦が、米国・シリコンバレーで開催されま…
(2024/10/5)
創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら

注目のニュース

最新の創業手帳ニュース

創業時に役立つサービス特集