注目のスタートアップ

Lea Bio株式会社 浜中 康晴|ベトナムの医師・患者向け医療アプリの事業開発が注目の企業


ベトナムの医師・患者向け医療アプリ事業を展開し、注目されているのが、浜中康晴さんが2019年に創業したLea Bio株式会社です。

これまでの日本の医療は、医師の長時間労働により支えられてきました。今後、医療ニーズの変化や医療の高度化、少子化に伴う医療の担い手の減少が進む中で、医師個人に対する負担がさらに増加することが予想されています。
こうした中、医師が健康に働き続けることのできる環境を整備することは、医師本人だけではなく、患者さんに対して提供される医療の質・安全を確保すると同時に、持続可能な医療提供体制を確立していく上で重要なことです。

国による医療体制の違い、医師の労働環境の違いは多かれ少なかれありますが、医師が働く環境の早急な改善を必要としているという点では、浜中さんが現地の医療状況を目の当たりにして起業を決意したベトナムでも同様です。
ベトナムでは先進国から医療支援は受けているものの、医療インフラが整っていないために、受けた支援がうまく機能していない状況だと浜中さんは言います。その結果、都市部の病院に患者が集中し、病院は押し寄せた患者の対応に追われてしまい、支援で届けられた医療機器や、伝えられた医療技術の知見などを活かす間もなく、本当に治療が必要な患者たちに適切な診療が行き届いていません。

このような状況下、医師の働き方を変えて健康状態を守り、質の高い医療を広く行き渡らせていくためには、デジタルの力や情報の力を活用して非効率な事務作業を効率化し、医師が一人でも多くの治療を必要としている患者さんたちと向き合い、本来必要な対話や診療を行えるようにしていくことが肝要です。
今、こうしたベトナムにおける医療分野でのDX化を支援する挑戦に、大きな注目が集まっています。

Lea Bio株式会社が手掛ける、ベトナムの医師・患者向け医療アプリの特徴は、医師と患者間の信頼関係を作り、ミスコミュニケーションを無くすツールであること、そして医師の非効率な事務作業や不要な診察を減らすことで医師の労働環境を改善するツールだということです。

このアプリによって得られる大きなメリットは、無駄な時間の削減と、本当に必要なコミュニケーションの時間を創出できるという点です。

事前問診(カルテ作成)や、定期的な病院通いを必要としている患者の医療空白を埋める為の健康チェック(日々の心身状態の記録)を患者側が自らアプリに入力し、医師側がそれをアプリ上で事前チェックすることで、来院時の無駄な時間を削減したり、本当に必要なタイミングでの来院を促すことが出来るようになり、今まさに治療を必要としている一人でも多くの患者を救うことに寄与します。

Lea Bio株式会社の浜中康晴さんに、事業の特徴や今後の課題についてお話をお聞きしました。

・このプロダクトを開発するに至った経緯について教えてください。

私たちが開発しているのは、ベトナムの医師と患者さん向けの医療アプリ「MEQUY」です。

私は大学卒業後、理学療法士となり、お子さんのリハビリのサポートに取り組んできました。

なぜ日本ではなく、ベトナムで使用するアプリを開発しているのか不思議に思われるかもしれませんが、ジョブチェンジして勤めた製薬メーカーでベトナム人研究者と出会い、現地の公立病院を訪問したことがきっかけです。そこで見た光景は、混雑して待合室にも入れず、階段の踊り場で小児科の順番を待っている、子どもと母親の疲れ切った姿でした。話を聞くと、4時間以上待っているとのことでした。

ベトナムの医療の状況は訪問前から聞いていましたが、聞いていた以上に悪化していて、大きなショックを受けました。病院での患者さんや付き添いのご家族の姿を見て、私の理学療法士時代の経験、製薬メーカーでの経験で、この国に何か貢献できるのではないかと心が奮い立ち、起業を決めました。

プロダクトの開発目的は、当初は、診察を待つ患者さんたちの状況を改善することでしたが、医師や患者さんからニーズを聴き取る中で、もっと深い課題があることに気づきました。それは医師不足のため過酷な状況下で長時間勤務せざるをえない医師たちの労働環境でした。

私たちは、「情報の力で世界の子どもに平等な医療を届ける」をビジョンに掲げていますが、少しでも早くこれを達成するには、まず医師の労働環境の改善が急務だと考えました。医師の残業時間を減らすには、非効率な作業にあてる時間を削減すればいい。医師が必ずすることと言えば、問診とカルテの作成です。ベトナムの医療はあまりデジタル化されていないので、私たちは医師が問診とカルテの作成を効率的に行えるアプリを開発し、医師の労働環境改善に取り組みました。

・このプロダクトの特徴は何ですか?

「アプリ」と言うと、すべてをデジタルに置き換えることをイメージされるかもしれませんが、私たちが調査する中で分かったのは、医師も、患者さんであるお子さんやご家族も、実際に会って互いに会話したいと望んでいるということでした。そのため、診察室で対話する時間の質を高めることをプロダクトの目的としており、あえてデジタルで完結させていないことが特徴です。

具体的にご家庭でしていただくことは、スマホを使い事前問診に回答することです。事前問診の内容は、患者側に分かりやすい言葉で、病院ごとにカスタマイズできます。患者さんの回答はそのままではカルテに記載できないので、一般的な表現をカルテに記載できる医療用語に翻訳(置換)する機能を持たせました。医師がカルテに一から入力する手間をなくし、自動で作成されたカルテの内容を確認することで、医師の事務作業の時間を削減させました。

こうして、診察時に余裕が生まれますし、事前問診で得た情報と後ほどご説明する患者記録によって、対話の場がより良いものになると、患者側の医師への信頼感が増し、医師の立てた治療方針に対して真面目に取り組みやすくなります。こうして、お互いに信頼関係が生まれ、患者さんのコンディションの改善にもつながっていきます。

また、病院では新規患者の受診、定期的な再診、病状悪化のための受診がある一方、病院にかかる必要がないのに受診しているケースがあります。そういった不要な受診を減らすことで、医師の負担を減らし、必要とする人への診察機会が増えるようにと、アプリにヘルスチェック機能を入れたのも特徴の一つです。

具体的にご家庭でしていただくことは、日々の経過状況をスマホで記録することです。日々の入力から、患者さんの状態がグラフ化されるので、過去の状態を振り返ることで、今出ている症状は様子を見ていていいものなのか、ためらわず受診すべきものなのかという、受診の判断をサポートします。

・どういう方にこのサービスを使ってもらいたいですか?

医師と患者さん、ご家族の双方に使っていただきたいと思います。医師には非効率な時間の削減に役立てていただき、ご家庭ではヘルスチェックや、次の受診までの期間(医療空白)を安心して過ごしていただくために役立てていただければと思います。

・このサービスが解決する社会課題はなんですか?

ベトナムで働く医師の労働環境を改善することです。ベトナムでは医師が不足しており、医師は長時間残業をしています。ベトナム人の医師は真面目な方が多く、患者さん全員を診たいと頑張っているので、私が知る大病院では、朝5時から、土曜日も開院しています。そうでないと患者さんを全員診ることができないからですが、他の病院で勤めたほうが報酬が良いと知っていても、患者さんのことを思い、簡単には辞めません。そんな先生方を支えることに貢献していきたいと思っています。

・創業期に大変だったことは何でしょう?またどうやって乗り越えましたか?

現地とのコネクション作りです。そもそも海外のプレーヤーである私に対して、本気でベトナムの医療現場を救う気があるのか、医師たちも半信半疑だったと思います。医師たちに認めてもらうために、ずっと誠実であることを心がけ、対応し続けました。当時を振り返ると、私の誠実さと度胸、本気度が見られていたのかなと思います。

本気であることを伝えるために、コロナによるロックダウン下のベトナムに、医師と対面で会えないことは知りつつも渡航しました。オンラインを使ったミーティングなら日本にいてもできるし、ベトナムの滞在費用は無駄かもしれませんが、あの時期のベトナムに行き、現地からオンラインでミーティングをしたことで気持ちが通じ、医師たちから「力を貸すよ」と言ってもらえました。

Dao Viet Hang 医師。Hanoiの大学病院で助教授をされている医師であり、我々の製品開発においてとても熱心にサポートいただいている

・今後どういう会社、サービスにしていきたいですか?

「情報の力で世界の子どもに平等な医療を届ける」をビジョンとしていますので、ベトナムでの普及で満足せず、人口が非常に多く、ベトナムと同じくらい医療格差のあるインドに、私たちのアプリを5年以内に届けていきたいと考えています。

直近では、2022年の5月末から6月にかけて、Lea Bioのベトナム現地法人を立ち上げます。病気のお子さんの保護者向けコンテンツや、医師からの治療方針や患者への思いなどを紹介するコンテンツをHPで提供していく予定です。

将来的には、定期的なセミナーの開催や、患者さん同士のコミュニティを作り、情報交換の場を提供していきたいと思います。

・今の課題はなんですか?

マンパワーが不足していることです。私たちのビジョンに共感して一緒に働いていただけるメンバーを探しています。開発、マーケティング、広報、ユーザーサポートのポジションに就いていただける人材を募集しています。

・読者にメッセージをお願いします。

私の場合、ニーズ調査や仮説を検証する時期がコロナ禍と重なってしまい、時期的な要因による苦労がありましたが、それでもやはり自分の足で歩かないと本当のニーズは分からないし、仮説の検証はできないものです。

ベトナムに来てバイタリティあふれる人たちと出会い、パワーをもらっていますが、ベトナムに来て思うのは、「行動しかない」ということです。

私もまだまだ未熟ですが、事業を始めようという方には、とにかく動くことが重要だとお伝えしたいです。がむしゃらに、外れていようが、当たっていようが、笑われようが、怒られようが、信念があればやっていけると思いますので、信念を持って行動していただきたいと思います。

会社名 Lea Bio株式会社
代表者名 浜中康晴
創業年 2019年
事業内容 ヘルスケア領域の企画、開発、制作、販売、情報提供およびコンサルティング業務
サービス名 MEQUY(ミクイ)
所在地 神奈川県藤沢市辻堂元町3丁目7番地20
代表者プロフィール 大学卒業後、小児専門病院で理学療法士として勤務その後、国内外の製薬企業にて臨床開発の業務に従事し2019年 Lea Bio株式会社を設立。
2022年5月ベトナムにてLea Bio Vietnamを設立
読んで頂きありがとうございます。より詳しい内容は今月の創業手帳冊子版が無料でもらえますので、合わせて読んでみてください。
カテゴリ 有望企業
関連タグ LeaBio ベトナム ヘルステック 医療 東南アジア 浜中康晴
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