ミライエ 島田 義久|低コスト処理を可能にした新時代の”堆肥化設備”ー今後の事業展望を語る
堆肥化設備を提供している株式会社ミライエ代表の島田義久氏にインタビュー
私たちが日常的に排出しているゴミ。実は年間1人あたり0.4トンも排出しているのを知っていますか?
また、私たちが普段から食べている肉や卵を1キロ生産するためには、その6倍もの家畜糞尿が発生しています。
こういった生ゴミや家畜の糞尿をリサイクルできれば、廃棄物が減って環境保全に役立つだけではなく、資源を有効活用することにも繋がりますよね。
近年、ゴミなどの廃棄物を積極的にリサイクルしていこうという流れが強くなっており、政府でも様々な施策を打ち出しています。
今回は、生ゴミや糞尿の堆肥化設備を開発・製造している株式会社ミライエ代表・島田義久氏にインタビュー!これまでの経緯や今後の事業展望などについて、お話を伺いました。
1970年生まれ。広島大学中退後、靴の製造メーカー勤務を経て、第一コンサルタント(現ミライエ)に入社。新たに環境事業部を立ち上げ、環境機器の開発を進める。取得した特許が多数あり、発明表彰経済産業局長賞を受賞。MITベンチャーフォーラムや日経スタアトピッチ受賞など著名な団体からも高い評価を得ている。
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この記事の目次
堆肥化設備を低コストで導入可能にした画期的なサービス
島田:私たちが普段食べている肉や卵を1キロ生産するためには、6倍である6キロ以上の家畜糞尿が発生します。
畜産の現場では、毎日大量の糞尿を堆肥化処理しなければなりません。しかし、そこには大きな2つの問題があります。それは「悪臭」と「処理コスト」です。
当社では低コストで処理できる”堆肥化装置”と、世界で初めて消耗品コストゼロを実現した”脱臭装置”を開発・製造しています。
島田:従来の堆肥化装置は1台数千万円という高額なものでしたが、当社の装置は100万円くらいからでも導入可能です。
なぜなら、装置をモジュール化しているからです。必要な数のモジュールを連結できるため、処理規模に合わせて使うことができます。
小規模事業者や部分的に導入して効果を試したいといったニーズにも合致していますね。
島田:最近増えているのは”自治体からの引き合い”です。
これまで、家庭から出る残飯などは「燃えるごみ」として焼却処分されていました。しかし、政府の方針の変化もあって「堆肥としてリサイクルしたい」という流れが加速しています。
ゴミのリサイクルに注目が集まっていることで、自治体からの発注が増えている印象です。
飛び込み営業からWeb集客への移行で軌道に!
島田:堆肥化装置の事業を始めて15年になりますが、当初はどうやって集客してよいか分からず、年間数百件の飛び込み営業をしていた時期もあります。
しかし、飛び込み営業は非効率すぎて、なかなか事業が伸びませんでした。それからWebで集客するようにして事業も安定しましたが、それまでは大変でしたね。
島田:当社の顧客は畜産業や産廃業に従事する企業・官公庁の方ですが、特有のニオイを発する施設を運営していることで、肩身の狭い思いをしている方が多いです。
当社の脱臭装置によってそれが解消されると、現場で働く方の表情も変わります。伸び伸びと働くことができている姿を見ると、とてもやりがいを感じますね。
島田:つぎの3つの理由から、今後も伸びていくのではないかと感じています。
①国内だけで年間1億トンを超える有機ゴミが発生しており、その処理に数兆円の費用が投じられている。当社のソリューションはこの処理コストを大きく低減できる。
②当社ユーザーの業界は事業再編(統廃合)が活発で、設備投資も盛んである。
③環境規制は年々厳しくなっている。
実際に集客数・受注率は年々伸びています。今後は、さらにギアを上げていくつもりです。
事業継承で重要なのは「腹を割って話すこと」
島田:当社は、父が測量設計の会社として50年前に創業したのが前身です。私の代になってから、堆肥化装置の製造に専念するよう事業転換しました。
島田:20年前の構造改革で公共工事の削減が進んだことによって、売上は5年間で1/3にまで減少。大赤字に陥りました。私が事業承継したのはその頃です。
なので、継ぐことよりも継いだ後の方が大変でした(笑)。毎週バンクミーティング(※)を行ない、1日中お金のことを考えていましたね。
結果的に測量設計部門は廃止して1名だけ社員を残し、再起を図ることにしました。
測量設計が主業のときはほとんど地元の官公庁から受注していましたが、今は逆に売上の99%が県外のお客様です。
事業承継でやっておくべきだと感じるのは、腹を割って話すことですね。親子の場合だと、子から親に代替わりの話をしにくい雰囲気があります。
しかし、そこで腹を割って話しておくことによって現状や今後どのように事業を進めていくかが明確になり、引き継ぎしやすいです。
(※)バンクミーティング・・・融資返済が困難になった企業に対し、取引のある金融機関が今後の対応について話し合うこと。
大きな視座と世界に向けて発信する姿勢が必要
島田:2025年のIPO(※)を計画していますね。地方からの上場はたしかに少ないですが、近年は様々な情報や人脈が地方にも広がってきていますし、地方で取り入れられる事業スキームも増えています。
また、そうした企業を応援したいという声が増えてきていることも大きいですね。
現在は大手企業を中心とした販売網の構築、数年後の海外市場への挑戦なども計画しており、事業の拡大に向けた提携を加速させています。
(※)IPO・・・未上場の会社が新たに株式を公開すること。
島田:当社では早い段階からインサイドセールス部門を置いて、WEB集客に注力してきました。そのおかげでコンバージョンレートや単価が大きく改善しています。
また、コロナや畜産疫病の発生で現場訪問が難しくなっているため、WEB商談だけで数百万円の装置を導入するお客様も。
今後は、非対面でも安心して導入いただけるための施策をさらに打ち出していこうと考えています。
島田:日本単体でみると高齢化によってますます人口が減り、国内の市場は縮小していきます。
ですが、反対に世界の総人口は増え続けているため、世界を相手に稼ぐプレイヤーが求められるようになるでしょう。
また、SDGsなど世界が協調して地球規模の課題に取り組む流れも進んでいます。これから起業する方は事業を大きな視座で捉え、世界に発信していく姿勢が必要です。
(取材協力:
株式会社ミライエ/代表 島田義久)
(編集: 創業手帳編集部)