ゼロから始める飲食店のメニュー作り 押さえておきたい基本を解説

飲食開業手帳

飲食店全般に共通するメニュー作りのポイントを紹介します

(2020/09/10更新)

飲食店をはじめるにあたって、「メニュー作り」は序盤の重要なタスクです。メニュー作りは、店のコンセプトや、客単価、原価率などさまざまなポイントを踏まえながら取り組む必要があります。

この記事では、飲食店全般に共通する、メニュー作りの基本的なポイントを解説します。メニュー作りに取り掛かろうと考えている経営者の方は、ぜひ参考にしてみてください。

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店のコンセプトを明確にする

メニューを決める前に、まずは「店のコンセプトを定めること」が何より重要です。メニューの価格や種類、客層は、店のコンセプトや雰囲気、提供したい価値にダイレクトに結びつくからです。

ターゲットにする客層を明確にし、店のコンセプトに沿ったメニューを用意することで、店に統一感や個性を出すことができ、利益を生みやすくなります。

出店する地域の周辺調査をする

店のコンセプトを定める際に欠かせないのが、出店する地域の周辺調査です。

  • どんな人達が多く住んでいる地域なのか
  • どんな飲食店が集まっているのか
  • 周辺のお店の価格帯は

といった、店を取り巻く相対的な情報をつぶさにリサーチし、「その立地で、本当にターゲット層の客は集まるのか?」を見極めます。

例えば、高級フランス料理店を開くにあたり、一人暮らしの大学生や会社員が多く住む地域に出店する場合と、高層ビルが立ち並ぶ街の一角に構えるのとでは、ターゲットとなる客層の取り込みやすさが大きく変わってきます。客もまた、周辺の飲食店と比較しながら相対的に店を評価するものです。地域にあったお店を作れるかどうかが、売上を左右する大きなポイントになると言えます。

周辺調査を行った結果、思い描く店のコンセプトとの間にギャップを見つけた場合は、コンセプトを練り直す必要も出てくるかもしれません。メニューの種類や価格などを具体的に決める前に、しっかり周辺調査を行い、集客のイメージを固めておきましょう。

メニュー作りのポイント

店のコンセプトが固まったら、メニューの種類、構成、価格を考えていきます。

メニューは多ければ多いほど良いわけではない!

店で提供するメニューの種類をなるべく増やした方がいいかと言われれば、必ずしもそうではありません。新しくできたラーメン屋に入った時、メニューに醤油、豚骨、味噌、塩、うどん、そばなど、あらゆるメニューがあったらどう感じるでしょうか。

メニューの種類や提供価格に幅がありすぎると、店のコンセプトがぼやけてしまいがちです。コンセプトに沿って、提供するメニューを厳選する意識でメニューを考えることをおすすめします。メニューを絞ることで、ストックしておかなければならない食材の種類が減り、廃棄ロスの削減につながるメリットもあります。

看板・定番・利益率の高さ…メニューの種類にバランスを

メニューの種類によって、店にもたらす効果・役割が異なります。多くの飲食店で取り入れられているメニューの種類・効果には、以下のようなものがあります。

メニューの種類例
  • 看板メニュー・・・客がそのメニューをめがけてやってきてくれるような一品。店のブランディングや宣伝につながる。
  • 定番メニュー・・・同じジャンルの飲食店に必ずといっていいほど置いているメニュー(居酒屋ならビール、中華料理店なら餃子など)。顧客のニーズを満たしやすい。
  • 利益率の高いメニュー・・・原材料費や、調理のコストがかからないメニュー。店の利益への貢献度が高い。
  • 期間限定メニュー・・・季節ごとの一品など、一定期間で変わるメニュー群。継続して来店してくれる客を飽きさせない効果がある。

経営者として、こだわり抜いたメニューだけで勝負したい!と、原価率の高い看板メニューばかりを提供すると、来店者の数が増えても利益が出にくい店になります。逆に、利益重視で原価率の低いメニューをメインで構成しようとすると、客の満足度を高めることが難しくなります。
メニューの構成は、種類や役割を使い分け、トータルで客の満足度と売上のバランスが取れるように考えると良いでしょう。

メニューの総数からカテゴリーごとの品数を決める

メニュー数を考える上で有効なのが、メニューの総数を決めてから、カテゴリーごとの品数を当てはめていく形です。

メニューの総数は、店の形態や規模によって変動するので、規模感がつかめない場合は同業の店を調査するなどして相場を把握しましょう。

メニューの総数が決まったら、カテゴリーごとに品数を割り振っていきます。カテゴリーの分け方は複数のパターンが考えられます。一例を紹介します。

  • 頼む順番で分ける(前菜、副菜、主菜など)
  • 調理法で分ける(揚げ物、煮物、焼き物など)
  • 食材で分ける(豚肉料理、魚料理、パスタなど)

客の選びやすさや、店側のオペレーションのしやすさといった視点で、店に合うカテゴライズの方法を選ぶと良いでしょう。

メニューの価格設定のポイント

メニューの種類、数が決まったら、いよいよメニューの価格設定です。

メニューの価格は客単価から考える

まずは、メニューの価格を決める際に最も重要な指針の一つ、「原価率」の計算式を確認しましょう。

-原価率の計算式-

    原価率=原価(仕入れ値)÷売上高(提供価格)×100

一般的な飲食店の原価率の平均は30%程度と言われています。これは、メニュー単体の話ではなく、一人あたりの想定客単価を考えた時に、平均で30%前後に収めることが望ましいという目安です。

異なる原価率のメニューを組み合わせて、トータルで原価率を調整する方法を、「メニューミックス」と言います。大まかな客単価を想定し、原価率の高いメニュー、低いメニューのバランスを考えながら、一品ごとの価格を定めていきましょう。

「先入先出法」余った食材も考慮した原価率計算を

飲食店で原価率を計算する際に考慮しなければならないのが、仕入れた食材が余った場合の計算です。原価率の計算を正確に把握するためには、持ち越した食材の原価も考慮する必要があります。

前月から持ち越した原価と、翌月に持ち越す原価を考慮して原価を計算する「先入先出法」を使うと、より正確に原価率を計算することができます。

計算の手順は以下の通りです。

  • 繰越持ち越しを含めた、実際の売上原価を算出する
  • 算出した売上原価を、原価率の計算式に当てはめる

1の実際の売上原価は、以下の計算式で出すことができます。

-先入先出法の原価計算式-

    前月の持ち越し原価(前月使わなかった食材の原価)+当月の仕入れ原価
    -翌月繰り越し原価(今月仕入れた食材で使わなかった分の原価)

この売上原価をもとに、先程の公式を当てはめて売上原価率を出すことで、実際の原価率がわかります。

さらに!「歩留まり」も考慮する必要あり

飲食店の原価率を計算する上で、「歩留まり」も考慮する必要があります。歩留まりとは、仕入れた食材のうち、食べることができる部分の割合のことです。

例えば、10キロ30,000円の肉を仕入れたとして、脂身や筋、骨など客に提供できない部分が3キロ分あったとすると、実質7キロ30,000円で肉を仕入れたことになります。

歩留まりを考慮に入れた上で原価率を計算しないと、売上と店に残る利益を正確に把握することができないので、注意が必要です。

メニューの原価率把握に役立つ「レシピ表」

メニューの価格を決める際に重要な原価率について、正確に把握しようと思うと、さまざまな要素を考慮する必要があることがわかります。1つのメニューに様々な食材を使う場合は、さらに計算が複雑に。

複雑な原価率の把握をサポートしてくれるアイテムとして、レシピ表を作成するのもおすすめです。レシピ表は、使用する食材や調味料の使用量のほかに、各材料の仕入原価も記載した表です。

メニューごとにどれくらいの仕入原価が発生するかを計算するために有効なだけでなく、従業員が正確な分量でメニューを作りやすくなる利点もあります。

価格は客が把握しやすい数字に揃えると吉

メニューの価格を考える時、客にとって把握しやすい数字に設定することも心がけたいポイントです。

  • 全てのメニューの下二桁を揃える(1980円、780円、380円など)
  • カテゴリーごとに中心価格を作る

といった例が考えられます。メニューの下二桁を揃えることで、バラバラの価格設定をする場合に比べて感覚的にトータル価格を把握しやすくなります。

中心価格は、カテゴリーの中で一番高いメニューと一番安いメニューの中間にあたる価格のことです。例えば、1500円の天丼を中心にして、上天丼が2000円、ミニ天丼が1000円といった価格をつけるイメージです。中心価格帯の商品を多く設けることで、客が価格の相場を把握しやすくなります。

価格の種類や幅ができすぎないように、メニュー同士の価格のバランスも考慮することをおすすめします。

まとめ

メニュー作りの基本的なポイントを解説しました。メニューを作るために意識しなければならないポイントは、店の種類や規模によって異なります。メニューの構成は、お店の利益に直結するので、可能な限り慎重に考えたいところです。
今回紹介したポイントを参考に、自身の店にとって最もバランスが取れたメニューづくりに取り組んでみてください。

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(編集:創業手帳編集部)

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