『言いかえ図鑑』著者 大野 萌子|売上40万部以上!ベストセラー作家誕生のきっかけ

創業手帳
※このインタビュー内容は2022年06月に行われた取材時点のものです。

家事や育児のすきま時間で資格の勉強を始めた専業主婦が、売上40万部以上のベストセラー作家になるまで

『よけいなひと言を好かれるセリフに変える言いかえ図鑑』という書籍。ご存知の方も多いのではないでしょうか。産業カウンセラーとして数々の企業で研修を行ってきた大野萌子氏のノウハウがぎっしり詰まったこの書籍は、40万部以上を売り上げるベストセラーとなりました。

そんな大野氏ですが、実は最初は起業することも、本を出版することも全く考えておらず、大学でもカウンセリングとは関係ないことを学ばれていたそう。ところが、ふとしたことで始めた資格の勉強が、その後の大野氏の人生を大きく変えることになりました。

今では一般社団法人日本メンタルアップ支援機構代表理事となった大野氏が、起業家への一歩を踏み出すきっかけは何だったのか、人気書籍をいくつも生み出してきた作家になれた秘訣は何かなど、創業手帳が幅広く伺いました。

大野 萌子(おおの もえこ)
一般社団法人 日本メンタルアップ支援機構代表
一般社団法人日本メンタルアップ支援機構(メンタルアップマネージャⓇ資格認定機関)代表理事、企業内健康管理室カウンセラーとしての長年の現場経験を生かした、人間関係改善に必須のコミュニケーション、ストレスマネジメント、ハラスメントの分野を得意とする。防衛省、文部科学省などの官公庁をはじめ、大手企業、大学、医療機関等で、5万人に講演・研修を行った実績あり。著書、メディア出演多数。

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日本メンタルアップ支援機構とは?

ー日本メンタルアップ支援機構のサービスについて教えてください。

大野:企業向けの研修と企業内で行うカウンセリング、「メンタルアップマネージャ」の資格付与の3つの事業を行っています。

ー研修はどういった規模・業種の企業に対して行うものなんでしょうか。

大野:基本的にはどんな企業さまでもウェルカムです。介護事業所などですと、3人〜5人程度に研修をすることもありますし、官公庁で何百人という単位の人たちに対して一斉に研修をすることもあります。最近では歌舞伎町の有名なホストグループの方々にビジネススキルの研修をすることもありました。

ーホストの方も研修を受けられているんですね。それは意外でした。

大野:ものすごく真面目に研修を受けられていましたよ。ホストの場合、活躍できる期間が短いので、その先のことを考えて人材育成されているようです。

主婦業のすきま時間に資格勉強を開始

ー大野さんは最初からカウンセリングにご興味をお持ちだったのでしょうか。

大野:いえ、大学時代は文学部日本学科で、心理学は学んでいませんでしたし、そこまで強く興味を持っていたわけではありませんでしたね。新卒で就職した日本通運でも総務部で経理の仕事を担当していました。

ーそれはまた意外でしたね(笑)。それではいつ頃からカウンセラーへの転身をお考えになったのでしょうか。

大野結婚して最初の会社を退職し、子供ができて幼稚園生ぐらいになると、幼稚園に行っている間は自分の時間ができました。その時間を勉強に充てようと思ったんです。

ちょうどそのとき、ママ友との人間関係などで悩んでいたので、「どうせ資格の勉強をするなら人の気持ちに関わることがいい」と思い、当時は関連する唯一の公的資格だった産業カウンセラーの資格取得に向けて勉強を始めました。今では6万人以上の産業カウンセラーがいますが、当時は研修に行っても「産業カウンセラーって何ですか」と言われるくらい、知名度がなかった資格です。

ーそれでは、半ば偶然選んだ資格勉強の道だったわけですね。

大野:そういうことになりますね。当時は産業カウンセラーのキャリアプランが整備されていなかったのと、自分自身に具体的なキャリアビジョンがあるわけでもなかったので、資格を取得してからは産業カウンセラー養成講座のお手伝いから仕事を始めてみました。

独立しようという気は全くなかったんですね。

パートのような感覚で産業カウンセラーとして独立

ー最初は助手から入られたのですね。

大野:最初は助手だったのですが、関わっているうちに段々とステップアップしていきまして、18年間産業カウンセラー養成講座の講師をしていました。

ー18年間の活動では、具体的にはどのような指導をされていたのでしょうか。

大野:産業カウンセリングの実技指導と、「職場のメンタルヘルス」という理論の指導を主に担当していました。

ー実際に企業に入り込んで産業カウンセリングのお仕事はされていなかったのでしょうか。

大野最初は産業カウンセラー協会に単発で来た仕事をたまに請け負うようなイメージでした。本格的に企業研修をこなすようになったのは、産業カウンセラーの資格を取得してから10年後あたりからです。

防衛省や厚労省などで研修をしていました。厚労省の外郭団体では介護人材育成コンサルタントとしても稼働していました。産業カウンセラーの資格を取るときにキャリアコンサルタントの資格も一緒に取得したので、その資格を生かして働いていましたね。介護人材育成コンサルタントの仕事は月に3回だけ稼働すればよかったので、子育てと両立しやすかったのが理由で仕事に応募して、採用された形でした。

ー当時の雇用形態はどのようなものだったのでしょうか。

大野:業務委託でしたね。だから独立していたといえば独立していた、とも言えます。でも私としては、「独立起業」というイメージよりも、パートをしているような感覚でしたけど。

日本メンタルアップ支援機構を設立

ー日本メンタルアップ支援機構を設立された経緯についてお聞かせください。

大野:全ての仕事を産業カウンセラーの協会からいただいていたわけではなくて、研修会社とも契約を結んでいたんです。一番多いときでは11社くらいと契約していました。

でも、研修会社を通して契約すると、少なくないマージンが取られてしまうんですね。だから研修で11社やっても報酬はそこまで増えない代わりに提出しなければいけない報告書は増えてしまう。もうこれは1人でやっていくのは無理だなと感じたので「チームを作りたい」という思いから法人設立に至りました。

ー信用獲得という面もありますよね。

大野:そうですね。個人事業主のままでやっていたら、大手のお客さまとはなかなか契約できなかったかもしれません。

ー起業するにあたっては、何か勉強をされたりしたのでしょうか。

大野起業する1年前から起業したい人向けの講座に通い始めました。何をしたらいいかもわからない状態だったので、私の場合は講座に通ってよかったですね。でも、すごく高額な講座などもあるので、見極めはすごく難しいと思います。

ーなるほど。最初はどういったアイデアで起業しようとお考えになったのでしょうか。

大野:最初はメンタルアップマネージャという資格を付与する事業をメインで考えていました。私自身、資格を取ってから何をしたらいいかわからなかった時期があったので、当時の私のような人の居場所づくりができたらなという思いと、私と一緒に動いてくれる人がほしいという思いから資格を考案しました。

メンタルアップマネージャは1日講習を受ければ取れる資格で、履歴書に書いていただくこともできます。

ーメンタルアップマネージャ資格のアイデアはどのように浮かんできたのですか。

大野:起業講座に通っているときに課題を出されて、そこで考えました。

ー資格を取ったら講師はできるのでしょうか。

大野:講師をするためには基礎資格のほかに、さらに上の資格を取得する必要があります。

ーちなみに、株式会社ではなく一般社団法人を選んだのはなぜでしょうか。

大野:資格を付与する事業を行う団体なので、株式会社よりも一般社団法人のほうが適当かな、と判断したためです。

売上40万部以上のベストセラー作家として

ー大野さんは、40万部以上売れている『よけいなひと言を好かれるセリフに変える言いかえ図鑑』の著者としても知られています。最初の著作を出版した経緯についてお聞かせください。

大野:2014年に最初の『「かまってちゃん社員」の上手なかまい方』を出版しましたが、この本は企画を持ち込んで生まれました。

ー最初は持ち込みだったんですね。

大野:メンタルヘルスに関する研修をし始めたときに、周りの講師は皆鬱になってからの対策について教えていたんですけど、私は「それではダメじゃないか」と思っていました。孤独になるから鬱になってしまうわけで、鬱になる前の段階で孤独になるのを防ぐためのコミュニケーションスキルのほうが重要じゃないかな、と考えていたんです。周りが鬱になってからの対策についてばかり教えるなか、私は一人でコミュニケーションスキルについて教えていました。

企業にカウンセリングをするなかで聞く悩みのほとんどが人間関係に関することでしたので、「コミュニケーションスキルを向上させれば、鬱になる人も減るのではないか」という仮説を立てました。

そこからはメンタルヘルスの研修を打診されるたびに「コミュニケーションスキルの研修もさせてもらえませんか」と都度交渉するようになり、その提案を受け入れてくれることもありました。その中で、社員600名程度の金融機関からお声がかかったんです。その企業には休職者が11名いたのですが、支店長から新入社員まで段階的にコミュニケーションの研修を実施したところ、2年半で休職者がゼロになりました。

そうした経験を経て、コミュニケーションスキルについて溜まった知見を書籍として出してみようと思い、出版社に企画を持ち込んだところ、採用された、という経緯です。

ー企画が面白かったのでしょうね。

大野:企画もそうかもしれませんが、経歴が珍しかったのもよかったのではないかな、と思います。その後、いくつか出版社に企画を持ち込んでいますが、最初の本以外の企画は全て不採用でした。2冊目以降の本は全て出版社から依頼されて書いたものです。1冊目の書籍が名刺代わりになりましたね。

ー『よけいなひと言を好かれるセリフに変える言いかえ図鑑』についても、出版社から依頼されたのでしょうか。

大野:知り合いのライターさんから声がかかったんです。2020年6月からパワハラ防止法が施行されるに際して、「何か書いてみないか」という提案でした。ハラスメント教育って負の側面もあると思うんです。あれもやっちゃいけない、これもやっちゃいけないでは、企業内で積極的なコミュニケーションを取ることができなくなってしまう。でも、そもそもハラスメントはコミュニケーション不全が原因の場合が非常に多い。だから本末転倒になってしまわないかな、と思いまして。

そこで、コミュニケーション不全にならないように、「こういうときは、こう言う」というフレーズのサンプル集みたいなものを作りたい、という企画ができて、今回の『よけいなひと言を好かれるセリフに変える言いかえ図鑑』になりました。

ー40万部も売れたのはすごいですよね。皆さんが気になっていたのでしょうね。

大野:そうかもしれませんね。ハラスメントにならずにいかにコミュニケーションを活性化させるか悩まれている方にはぜひお読みいただきたいです。

起業して成功するためにはどうすればいい?

ー法人設立後に、何かピンチはありましたか。

大野:幸い、これといったピンチはないですね。おかげさまでずっと右肩上がりの成長を続けています。

ー書籍が売れたことが広告になっているのでしょうね。

大野:それはありますね。売上としても非常に大きいです。

ー起業する人が気をつけておいたほうがいいポイントなどありますか。

大野:カウンセラーとして独立される方に多いのが、オフィスやソファなど最初から立派なものを準備してしまうことです。売上がないのに高いオフィスやソファは必要ないと思います。まずは小さく始めて固定費は低く抑えておくことをおすすめしたいです。

ー大野さんはもともと「起業しよう」という思いはあまりなかったわけですが、漠然と「起業したい」と思っている人も多いかと思います。でも「何から始めたらいいかわからない」という場合、大野さんのように資格取得から始めてみるのはどうでしょうか。

大野:いい選択肢だと思いますよ。まずは資格取得から始めてみるのも。私の場合、経理にいたので、まずは簿記を取ろうとしたのですが、面白くないので勉強を続けられませんでした。だから好きなことを勉強するというのも重要かもしれませんね。産業カウンセラーの勉強は楽しくて自然と続きましたから。

ーなるほど。楽しいことを探すのが大事、ということですね。

大野逆のことを言うようですが、これと決めたらすぐにやめないことも重要です。私が産業カウンセラーになった後に就いた産業カウンセラーの助手の同僚も、3年続けたら半分以下になっていましたから。介護人材研修でも、「まずは3年続けてみましょう」といつも言っています。3年続けたらそれなりに偉くなれますからね。そうすると、社内のルールを変えることもできますし。起業も同じだと思います。

ー本日はベストセラー本『よけいなひと言を好かれるセリフに変える言いかえ図鑑』の著者で起業家でもある大野さんに貴重なお話を伺うことができました。


「悪気はなかったのに、相手をイラつかせてしまった」。そんな経験がある方は多いのではないでしょうか。
産業カウンセラーとして2万人以上のコミュニケーション力向上を請け負ってきた大野さんが、イラッとさせるちょっとした一言を好かれるセリフに変える実例を示した『よけいなひと言を好かれるセリフに変える言いかえ図鑑』。売上40万部以上のベストセラーで、続編の発売も予定されています。ぜひお手に取って読んでみてください。

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