圧倒的なデータ蓄積と分析精度の健康管理アプリで注目! AIでヘルスケア領域に革新を起こす、棚橋繁行の挑戦
ライフログテクノロジー株式会社の棚橋繁行代表に創業エピソードを聞きました
(2019/08/19更新)
ライフログテクノロジー株式会社は、健康管理アプリ「カロミル」の提供を中心に、「AIやテクノロジーを駆使して、世界中の人々の健康を食事から変えていく」という理念のもとヘルスケア事業を展開しています。
2016年2月に創業し、今年7月には総額1億7,000万円の資金調達を達成。成長を続けている注目のスタートアップです。そんなライフログテクノロジー代表の棚橋繁行氏に、創業エピソードや今後の展望について話を聞きました。
1977年生まれ、神奈川出身。大手金融システムのプログラム開発、インターネットマーケティングの支援を経て、2016年ライフログテクノロジー株式会社を共同設立、代表取締役に就任。家族に糖尿病、腎臓病を患う者があり、食事と健康に興味を持ち、1998年栄養士免許取得。もっと簡単に食事を管理する仕組みを創るため、食と健康の相関に注目し、社会の健康寿命の延伸に関わる事業の構築に奮闘中。
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この記事の目次
食品のメーカー名までわかる精度の高さが強み
棚橋:スマホで写真を撮るだけで、健康に関する食事、体重計、血圧計、血糖値計のデータを自動で見える化する「カロミル」というサービスを自社で開発・提供しています。撮影した写真を保存しているフォルダの中から、AIが食事など健康に関するデータを自動的に抽出して、アプリに反映するという仕組みです。
通常のヘルスケアアプリは、記録のために毎回アプリを立ち上げる必要がありますが、カロミルは写真を撮っておくだけでアプリが勝手に情報を拾ってくれます。このカメラロールのデータを自動で解析する技術について特許を取っているので、他社に真似できないシステムになっています。
棚橋:我々は単に食材だけでなく、作ったメーカーといった細かな情報まで分析できるよう、あらゆる食品のデータをひたすらAIに学習させていて、「データの精度の高さ」が一番の強みです。
例えば、既存のヘルスケアアプリで、サラダを撮影した際に、「生野菜サラダ」という分析結果が出たとします。しかし、実際はサラダと言っても、ツナが入っていたり、中身によって栄養価が全く異なります。カロミルの場合は、これが「これは〇〇(コンビニメーカー名など)の△△サラダ(正確な商品名)です」というところまでわかるのです。
もう一つ、「1週間単位で栄養の分析ができる」点も特徴です。健康のためには毎食バランス良い食事を摂ることが理想ですが、現実問題として難しいですよね。カロミルは、1週間分の栄養データの進捗が見えるようになっていて、例えば「今週平日は飲み会が多かったから、土日は食事を制限しよう」、といった、長いスパンで帳尻合わせができるような仕組みを提供しています。他社のヘルスケアアプリにないポイントです。
棚橋:データの学習は、ユーザーの希望をなるべく反映する形で蓄積させていっています。リクエストの多いものについて、まずユーザーが検索できるデータベースに情報を掲載した後、AIに本格的に学習させるという流れです。
最近のニーズでいうと、やはりコンビニの商品が多いですね。健康志向の商品が増えてきていることもあってか、新商品の情報を分析してほしい、という依頼が増えています。
多様なヘルスケア領域で、汎用的なサービスを作るために
棚橋:僕が腎臓病になったり、父親が糖尿病だったり、もともと食事と健康について興味関心を持っていました。特に自分の腎臓が悪くなって食事制限をしなければいけなくなった時、「栄養管理の難しさ」を実感しました。当時、既にヘルスケアアプリはあったのですが、レストランや加工品といった細かなデータまで知ることができなかったのです。
そこで、私が感じた不便さをカンタンに解決できる事業ができないかと考えていた時に、共同創業者の阿万から「詳細なデータが溜まれば、サービスを作れる」という話を受けて、この事業を立ち上げました。
棚橋:最初は、画像解析の精度を上げることが難しかったです。データを蓄積させるためにかなり投資をしましたね。また、これからも、どこよりもデータ解析の精度が高いという状態を維持し、他社に追いつかれないようにするための課題も出てくると思います。
ユーザーの声をどこまで拾うか、という線引きも難しいです。ユーザーの希望に合わせすぎるとオリジナル性が失われてしまいますし、ヘルスケア領域は多様なので、そもそも万人受けする汎用的なサービスを作りにくいという特徴があります。
なので、技術を作ったあとも、それをどんな形でユーザーに使ってもらうのか?という点を常に考える必要がありますね。汎用的に誰でも使えるサービスにするためにはどうすればいいか、を見極め、スタンダードを作っていくことにチャレンジしています。
棚橋:最近は、データがある程度集まってきたので、食事だけでなく、体重計や血圧計の写真を撮るだけでアプリにその情報が反映されるような機能をつくったり、カバーできる範囲を広げていっています。
会社としてどんどん新しいサービスを打ち出していこうということはあまり考えておらず、自分たちが貯めたデータや技術がいつの間にか他社でも使ってもらえているという状態を作るのがいいなと思っています。協業の輪がどんどん広がるといいですね。
棚橋:ありがたいことに、新規の提携の話をたくさんいただいています。代理店としてカロミルを紹介したい、社員の健康管理のために自社で導入したい、大学で共同研究をさせてほしいといった、幅広い領域でお話をいただいています。
また調達の達成は、事業が進んできた証でもあり、次回ラウンドで投資を検討していますと言ってくださる方もいます。
サービスを通じて、AIと人が共存させる未来
棚橋:引き続き、技術開発については精度をどんどん上げていきます。栄養指導など、新たな領域のAI開発も行っています。個人個人の栄養状態を見て食事の構成のアドバイスをするといった、管理栄養士やパーソナルトレーナーさんがやっていることを、AIでもできるようになる技術です。
食事部分の計算など一部の業務を我々のAIにまかせてもらって、管理栄養士やトレーナーのみなさんが、人にしかできないサポートや支援部分に注力しやすいよう支えるサービスを提供する考えです。今度、AIができる仕事の範囲はどんどん増えていく世の中になると思いますが、AIが人の仕事を奪うのではなく、AIとの共存を考えています。
棚橋:起業はやっぱり面白いですね。いざ自分で事業に乗り出して、進めるべき一つ一つ解決していく過程で、助けてくれる人や新しいサービス見つけることができるので楽しいです。
最近は、比較的簡単に起業できる時代になっています。チャレンジ・トライしてみたいと考えている人は、やらずに後悔するよりは、まず動いてみると変わってきます。
ヒト・モノ・カネを揃える大変さはもちろんありますが、大変な経験には価値があります。企業で働く場合とは、違うステージの体験ができるので、チャレンジができるならやってみると選択肢が広がると思います。
(取材協力:
ライフログテクノロジー株式会社/棚橋繁行)
(編集: 創業手帳編集部)