LegalForce 大木晃|契約審査プラットフォーム「LegalForce」の躍進を支えるシリーズDの大型資金調達!達成の手法に迫る

創業手帳
※このインタビュー内容は2022年08月に行われた取材時点のものです。

累計資金調達額約179億円、急成長中のリーガルテック企業

法律に関する業務や手続きなどにIT技術を組み合わせ、新たな価値や仕組みを創出するリーガルテック市場が急成長しています。

そのなかでもひときわ注目を集めているのが、2017年創業のLegalForce(以下リーガルフォース)です。契約書レビュー業務で直面するリスクの抜け漏れをはじめ、レビュー品質の向上や効率化など、多岐にわたる課題を解決する契約審査プラットフォーム「LegalForce」を開発・運営しています。

同社を財務面から支えているのは、経理財務責任者としてジョインし、現在は経営企画担当の執行役員を務める大木さんです。参画後に担当したシリーズDラウンドにおいて、約137億円の大型資金調達を実施しました。

今回は大木さんが同社に参画するまでの経緯や、経理財務の専門家として重視している理念について、創業手帳代表の大久保がインタビューしました。

大木 晃(おおき あきら)
株式会社LegalForce 執行役員 経営企画担当
東京大学経済学部卒、University of Texas at Austin (MBA)修了。野村證券投資銀行部門において、グローバルIPO等の株式引受業務やM&Aアドバイザリー業務に従事。2021年5月よりLegalForce入社、2022年4月より執行役員 経営企画担当 現職。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計200万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら

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大手証券会社での経験をきっかけに、スタートアップへ参画

大久保:大木さんは、経理財務責任者としてリーガルフォースにジョインされたと伺っています。まずは参画するまでの経緯についてお聞かせ願えますか。

大木:大学卒業後に新卒で野村證券に入社し、投資銀行部門でキャリアを積みました。

同社での在籍期間中に海外留学の機会に恵まれ、在学中に授業の一貫でスタートアップとともにプロジェクトを進める機会があり、このときの経験がスタートアップに興味を持ったきっかけです。企業規模が比較的小さいため手触り感があり、ファイナンス以外の領域にも挑戦できる環境や働き方が非常に面白いと感じました。

その後、時機を見て転職活動を始めたのですが、前提条件として定めたのは、私自身の強みであるファイナンスの専門性が活かせること。その観点から、財務責任者の必要性が高いフェーズであるシリーズB〜Cラウンドの企業を主な対象とした上で、新しい領域にも挑戦したいという想いがありました。

こうした過程でリーガルフォースと出会い、「ここで挑戦しよう」と決意して2021年に参画した次第です。

大久保:大木さんのご経歴からすると、複数の企業を紹介されたと思うのですが、リーガルフォースに決めたのはどういう点だったのでしょうか?

大木:リーガルフォースを選んだ理由は3つです。

1つ目は、リーガルフォースの製品に魅力を感じたこと。

弊社では、契約審査の品質向上と効率化を実現する契約審査プラットフォーム「LegalForce」の開発および提供をしていますが、紹介された際に製品の成長可能性を実感しました。前職で契約書のチェック作業などもしていましたので、極めて優れたサービスだとひと目で理解できたことが大きかったです。

2つ目は、リーガルフォースの企業としての成長と、リーガルテックという新しい市場の発展がリンクしていること。

弊社が属するリーガルテック市場は、法律業務や手続きにIT技術を活用し、新たな価値や仕組みを提供する企業や団体で構成されており、世界的に規模を拡大しています。

必然的に、弊社の成長が市場の発展と直結している側面があり、新しいカテゴリーを作る醍醐味が味わえるなと。特にファイナンスの観点から言えば、「新ジャンルのビジネスを、どのように投資家に訴えかけながらアピールしていくか?」といった部分で、他の分野では味わえない経験ができそうだという期待を持てました。

3つ目は、現経営陣のメンバーと一緒に働きたいと思えたこと。

面談を通して、一人ひとりの人間性や考え方、働きぶりに惹かれました。これが最後の決め手となった次第です。

自身の強みを最も活かせる業界やフェーズを選ぶ重要性

大久保:野村證券という大手企業からスタートアップへの転身となったわけですが、最初は仕事の進め方などで戸惑いを感じることもあったのではないでしょうか?

大木:正直に言いますと、かなりありましたね。「働き方が違うんだな」と目からウロコの毎日でした。振り返ってみると、私の場合は2つの要因が影響していたと考えています。

まず1つ目が、大手企業からベンチャーへの転職だったこと。

野村證券には10年ほど在籍したのですが、従業員一人ひとりの担当領域が明確に規定されており、その中で「いかに自分のパフォーマンスを上げていくか?」に集中できる環境が整っていました。基盤が大きな組織ならではのメリットでもあります。

一方、働き方という観点から見たスタートアップの傾向として挙げられるのが、自分自身で「どこまで担当するか?」を決めるところから始めることです。自分でどの業務を担うかを定め、深堀りしていき、完了すると新しい領域にスイッチしていく……その繰り返しで、自ら幅を広げていきます。

そして2つ目が、社外からアドバイスをする立場から、事業会社で意思決定をする立場になるという変化があったこと。

私が野村證券で担当していたのは、投資銀行部門での株式引受業務(IPOや公募増資など)やM&Aアドバイザリー業務でした。顧客に対して、「弊社としてはこちらの提案がベストだと考えていますが、いかがでしょうか?」というスタンスで、あくまでも主体はお客様です。助言するアドバイザーの立場を貫く必要があり、意思決定はしませんでした。

リーガルフォースに移って以降、最終的になにかを決めるのが当たり前になりましたので、主体者としての責任を感じています。もちろんこれはスタートアップに限った話ではないのですが、私の経歴上、アドバイザーと意思決定者の立場の違いは大きかったですね。

大久保:留学時にスタートアップとともにプロジェクトを進めた体験談として、「ファイナンス以外の領域にも挑戦できる環境や働き方が面白い」とお話しいただきましたが、大手企業とスタートアップでは対極とも言えそうですね。

大木:はい、それぞれで良さがありますよね。

私自身は大手よりベンチャーでの働き方に手応えや面白さを感じる性格でしたので、各担当者が知恵を出し合い、一緒に考えながら作り上げていく環境のほうがやりがいを持てています。

これから発展していくステージで、整備されていないからこそ、もう一歩踏み込みながら取り組んでいく必要がある。そんな毎日が楽しいです。

大久保:大手からスタートアップへの転身において、大木さんのように楽しむための大事なポイントをお聞かせいただけますか。

大木:誰もが強みを持っていますので、まずその自身の強みを最も活かせる業界やフェーズ、役割を選ぶことが大切だと考えています。とりわけスタートアップでは、この要素が重要ではないかなと。

なぜなら、企業規模が小さい分、従業員一人ひとりが事業や組織に与えるインパクトが大きいからです。だからこそ、より貢献できる環境に移ったほうが働いていて楽しめます。このポイントには、ぜひこだわっていただきたいです。

シリーズDラウンドを担当し、約137億円の資金調達を実施

大久保:リーガルフォースへの参画後、ご担当された資金調達についてお聞かせください。

大木:ジョインしたのはシリーズCラウンドを終了した後で、その時点での資金調達額がおよそ40億円弱。私はシリーズDから担当し、約137億円の調達を実施しました。現在の累計資金調達額は約179億円となっています。

大久保:前任者からの引き継ぎはスムーズでしたか?

大木:従前の資金調達は執行役員開発本部長の川戸が担当していたのですが、個別に相談も行うなど非常に円滑に引き継ぐことができました。

大久保:開発の責任者が資金調達まで担っていたというのは、かなりめずらしいケースですよね。

大木:スタートアップは少人数ですので、業務に対して十分な人員を充てられるわけではありません。川戸はオールラウンダーで、担当者不在の業務を幅広く担当していました。

大久保:開発と資金調達という畑違いの分野を両立できる優れた人材が在籍しているのは、企業の強みにもなるくらいすごいですね(笑)。実際に川戸さんから引き継いだ後、株主の方々との温度差などはありましたか?

大木:会社自体が大きくなってきたフェーズでしたので、株主と川戸との間でも、「兼任で資金調達の責任者を続けるのは難しくなってくるだろうから、そろそろファイナンスの専門家を採用したほうがいい」という話をしていたそうです。株主の方々とも、川戸とも、関係構築や業務上において問題になった要素は一切ありませんでした。

大久保:現時点での株主は10社と伺っていますが、累計資金調達額から考えても1社ごとの規模が大きそうですね。

大木:シリーズCラウンドまでジャフコ グループをはじめ、WiL、京都大学イノベーションキャピタル、DIMENSION、それからメガバンク系の三菱UFJキャピタル、みずほキャピタル、SMBCベンチャーキャピタルに出資いただいています。

今回のシリーズDでは、新たにソフトバンク・ビジョン・ファンド、ゴールドマン・サックス、セコイア・キャピタルに参画いただきました。

成熟したコミュニケーションが成立する風通しの良い社内環境

大久保:資金調達を通して、関係者が増えてくると説得しなければならない局面も出てくるのではないかと思います。株主とコミュニケーションを取るにあたって、重視していることがあればお教えいただけますか。

大木:普段から「いかにして株主と良好な関係を構築するか?」という点が、あらゆる面で重要だと思います。まず基本として、定期的なコミュニケーションは欠かせません。

なにより気を遣うべきなのは、悪い意味でのサプライズがないように心がけることでしょうか。突然マイナスの話が出てきてしまうと、それだけで株主の方々は身構えてしまいますので、常に前もって相談しながら進めていくことが大切です。

説得というよりも、どうすべきかを一緒に考えながら、すり合わせて決めていくという表現が正しいかと存じます。

大久保:財務関連メンバー以外との付き合い方についてはいかがでしょうか?

大木:弊社では、日常的に垣根を超えてディスカッションしており、それぞれの立場から意見交換する場面が多いんですね。代表取締役社長を務める角田も、周囲の意見を聞いてから最終的な意思決定をするタイプで、良い意味で自分の考えに固執しません。

重要な事案に関しては、各々が意見を出し合い、最適解を導き出すのが弊社の方針です。

大久保:財務関連の意思決定事項で、意見がまとまらなかったとき、財務責任者としての対応はどうされていますか?

大木:たとえばアグレッシブに投資したい意見に対して、財務サイドの人間からすると「それは難しいだろう」という相違がある場合は、私から率直に「会社の状況的に、そこまで投資することはできない」と伝えるようにしています。

たとえ反対意見があがったとしても、あくまでも会社をより良くするためのディスカッションですので、しこりを残す人間は社内にいません。常に成熟したコミュニケーションが成立している風通しの良さも、弊社の強みだと思っています。

改革や提案の前に大事なのは、現状を把握すること

大久保:最後に、財務のプロフェッショナルとして「財務面の改革を行う際に、なにから手をつけたらいいか?」についてアドバイスをお聞かせください。

大木:ケースバイケースですので一概には言えないという前提なのですが、私の経験からお伝えすると、参画から3ヶ月後くらいまでは会社への理解が深まるように努めました。結果的に、この姿勢が功を奏したと実感しています。

最初から肩肘を張って「こうしたらどうだろう?」と提案していくのではなく、まずはリーガルフォース社の現状把握に徹しました。的はずれな提言をして、現場を混乱させたくなかったからです。

3ヶ月ほど経過し、ビジネスモデルや、これまでの財務状況、社内のオペレーションをきちんと理解できた段階で、資金管理の効率化をはじめ、借入れを進めたり、ビジネスの後方支援関連を調整。その後、資金調達につなげていくための計画策定などを行いました。

なにをするにおいても、その企業の状況に自分自身をアジャストさせていくことが、実は一番大事なのではないかなと考えています。

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(取材協力: 株式会社LegalForce 執行役員 経営企画担当 大木 晃
(編集: 創業手帳編集部)



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