「副業と失業保険の関係について教えてください!」読者の質問に社労士の榊氏が答えます
副業をしているなら知っておくべき重要ポイント!
創業手帳には、Twitter、Facebook、創業相談などでいつもさまざまな質問が寄せられます。今回はその中から、同じようなことでお悩みの方も多いかもしれない「副業と失業保険」について取り上げます。
「副業でも開業届は出すべき?」「会社員をやめる時はどうすればいいの?」「失業保険はもらえるの?」 このような疑問について、社会保険労務士の榊裕葵氏に教えていただきました。
東京都立大学法学部卒業。2011年、社会保険労務士登録。上場企業経営企画室出身の社会保険労務士として、労働トラブルの発生を予防できる労務管理体制の構築や、従業員のモチベーションアップの支援に力を入れている。また、ベンチャー企業に対しては、忙しい経営者様が安心して本業に集中できるよう、提案型の顧問社労士としてバックオフィスの包括的なサポートを行っている。創業手帳ほか大手ウェブメディアに人気コラムの寄稿多数。「日本一わかりやすい HRテクノロジー活用の教科書」(日本法令)を2019年上梓。
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副業でも開業届は出すべき?
榊:法的な意味におきましては、開業届は、「開業をしてから1か月以内」に提出をするという決まりになっています。しかし、実務上は、どのタイミングをもって「開業をした」と言うべきなのかに解釈の余地があります。
たとえば、ヤフーオークションやメルカリへの出品であれば、不要になった私物を不定期で販売し、お小遣い稼ぎをするという程度であれば、「開業」には当たらず、開業届も不要です。
しかし、反復継続的に仕入れを行い、それをヤフーオークションやメルカリへ出品して、差益を得るということを繰り返すのであれば、「開業」に当たるということが言えるでしょう。
なお、実際に初回の売上が発生したタイミングではなく、「転売ビジネスで反復継続的に利益を得よう」と、自分が決断したときが、開業届を提出すべき期間の1か月の起算点となります。
自分が決断したとき、というのは少なからず主観的な要素が介在する余地がありますので、実務上は、結局のところ、開業届を提出するタイミングというのは、「モヤっとしている」というのが正直なところです。
また、開業届の提出が遅れたことや、提出しなかったことに対する罰則は定められていませんので、第三者が見て、明らかに不合理とはならないようなタイミングで開業届を提出していれば、法的に問題になることはないと考えて良いのではないでしょうか。
開業届を提出する際には、青色申告承認申請書も同時に提出でき、手続きの手間を省くことが可能です。青色申告承認申請とは、確定申告において青色申告をするために必要な手続きです。副業では収入が20万円を超えると確定申告が必要となるのですが、通常の白色申告よりも青色申告のほうが税務上の優遇措置が受けられるため、個人事業主の半数以上は青色申告で確定申告しています。「冊子版創業手帳」では、白色申告と青色申告の違いや、税務上の優遇措置について詳しく解説しています。青色申告は税務上の優遇措置を受けられますが、白色申告には帳簿が簡素になるというメリットがあります。両社の違いをしっかりと理解し、自身がどちらで申告するほうがお得なのか判断すると良いでしょう。
副業していても失業保険はもらえる?
榊:副業を行っている会社員が、本業の会社を退職した場合、失業保険をもらうことはできないというのが考え方としては出発点になります。
退職後も副業を行っている状況においては、たとえ副業の売上がゼロや僅少であったとしても、法的には失業しているとは言えませんので、失業手当の対象外となるのです。
ただし、退職前か、退職後の雇用保険の受給が可能となる期間内に廃業届を提出すれば、何も仕事を行っていない状態となりますので、失業保険の受給は可能となります。
しかし、廃業届を提出したものの、実態としては副業のビジネスを継続していたというような場合は失業保険の不正受給となりますので、そのようなことは絶対に行わないようにしてください。
退職以外にも病気などで働くことができなくなってしまうことがあります。「冊子版創業手帳」では、経営者向けの情報ではありますが、働けなくなった場合を想定してどのような備えをしておくべきか、またリスクに備えるための共済制度などについて詳しく解説しています。
起業準備中は失業保険がもらえる可能性あり
榊:注意点は様々ですが、今回は本稿のテーマである失業保険との関係に絞って回答します。
起業準備期間でも失業手当を受け取ることができる場合があります。まだ起業の下準備や情報収集の段階で、再就職をすることも可能性として考えられるというような状況の場合は、失業保険の対象となりますので、管轄のハローワークにご相談ください。
また、失業手当の給付日数が一定以上残っている状況で再就職が決まった場合に支給される再就職手当は、起業をした場合にも支給対象となりますので、対象となる場合は、忘れずに支給申請をするようにしましょう。
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(編集:創業手帳編集部)
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