日本政策金融公庫のスタートアップ支援資金が大幅拡充!変更点を解説

創業手帳

2024年度から大幅に拡充したスタートアップ向けの融資制度をうまく活用しよう!


日本政策金融公庫では、中小企業や小規模事業者向けの融資制度を提供しています。
財務省が管轄している政府系金融機関のひとつで、資金調達を受けたい場合に利用が可能です。

そのような日本政策金融公庫では、スタートアップ支援資金を提供しています。
起業したばかりの経営者に役立つ資金調達方法となり、目標実現のために有効な手段です。
スタートアップ支援資金に関しては、2024年度から制度が拡充しており、資金が必要な事業者にとっては朗報です。

そこで今回は、2024年度から大幅拡充した日本政策金融公庫によるスタートアップ支援資金についてご紹介していきます。
活用をして資金調達を実現したい方、スタートアップ向けの融資制度について知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。

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日本政策金融公庫によるスタートアップ支援資金とは?


最初に、日本政策金融公庫によるスタートアップ支援資金について解説していきます。
概要をはじめ、利用条件や融資限度額、返済期間など、気になる内容を解説していくので、ぜひチェックしてください。

スタートアップ支援資金の概要

スタートアップ企業の成長を支援することが目的の日本政策金融公庫が提供している資金制度をスタートアップ支援資金といいます。
政府は、2022年に「スタートアップ育成5か年計画」を策定しており、最終的にはユニコーン企業を100社創設し、スタートアップ企業に関しても10万社創出することを目指しています。
日本がアジアでも最大のスタートアップハブとして世界でも有数のスタートアップ集積地となることを目指しているのです。

利用条件

スタートアップ支援資金を利用するための条件は以下の通りです。

  • 事業計画書を策定して事業の成長をはかる
  • 下記のいずれかに該当する
     ①一般社団法人日本ベンチャーキャピタル協会の会員または、独立行政法人中小     企業基盤整備機構もしくは、株式会社産業革新投資機構が出資している投資事     業有限責任組合などから出資を受けている
     ②JーStartupプログラムもしくは、JーStartup地域版プログラムに選ばれた方

通常であれば、財務書類といった書類を中心にして審査が実施されます。
しかし、スタートアップ支援資金は通常の融資とは異なるため、活用したい場合は上記2つを満たした上で、財務書類や事業計画を基にした審査が実施されます。

融資限度額

融資限度額は、直接貸付で20億円となっています。
金利は、当てはまる条件によって異なるので、以下をチェックしてみてください。

・上記利用条件の①に当てはまる方(2024年11月1日時点)
特別金利:0.80%~1.60%(上限2.5%)

・上記利用条件の②に当てはまる方(2024年11月1日時点)
特別金利:0.80%~1.60%(上限2.5%)
基準利率:1.45%~2.25%(上限2.5%)

信用リスクや融資期間によって所定の利率が適用される仕組みです。担保を徴しない場合は、利率の引き下げ措置が行われます。

返済期間

返済期間は以下のようになっています。

  • 設備資金:20年以内(うち措置期間10年以内)
  • 運転資金:20年以内(うち措置期間10年以内)

担保に関しては、相談の上で決定されます。申込企業が発行する新株予約権を公庫が取得することで無担保での供給が可能な仕組みもあります。
また、無保証人制度となるため保証人を用意する必要はありません。

幅広いステージを支援してくれる

企業のステージは以下の4つの時間軸に分類されています。

・シード
起業前の準備段階となるステージで商品開発や体制の構築に奔走する段階です。
赤字が続くケースもあり、実績や信用力も低いため資金調達法が限られ、資金確保の方法が事業継続の鍵となります。

・アーリー
起業に向けて準備を進め、事業計画や製品を実際に形にして会社を運営する起業直後となるステージです。
設立費用や運転資金、設備投資など、必要なコストが増える段階ですが、事業を開始してから間もないため、赤字が続くケースも多いです。
「死の谷」ともいわれるステージで、製品がリリースできたとしても公庫の新規開業資金などで調達した資金がなくなりはじめる頃なので、この段階で倒産してしまう企業も多くなります。

・ミドル
アーリーでの基盤を成長させるステージとなり、製品やサービスが市場での認知を獲得しはじめる段階です。
安定した事業を継続させるためにも、優秀な人材の確保やマーケティングに注力する必要があり、今まで以上に資金を調達しなければいけません。

・レイター
企業が一定の規模に達し、事業拡大や新規事業の展開を考えるステージです。市場での地位を獲得して成長やIPOを目指す段階でもあります。

アーリーからミドルへの成長期に資金の確保が難しく、日本政策金融公庫における融資制度でもカバーできていない点が課題となっていました。
しかし、スタートアップ支援資金といった制度を設けることで、アーリーからミドルに移行する場合でも乗り越えられるサポート体制が整い、レイターまで成長しやすい環境の提供が可能となっています。

日本政策金融公庫のスタートアップ支援資金の変更点


ここからは、スタートアップ支援資金の拡充内容をチェックしていきます。

小規模事業者向け融資制度の変更点

まずは、小規模事業者向けの制度における変更点です。

2023年度まで 2024年度~
要件 創業時、創業資金の10%分の自己資金を用意する必要がある なし
融資限度額 3,000万円(うち運転資金1,500万円) 7,200万円(うち運転資金4,800万円)
返済期間 設備資金:20年以内
運転資金:7年以内(原則)
うち措置期間:2年以内
設備資金:20年以内
運転資金:10年以内(原則)
うち措置期間:5年以内

制度の大幅な拡充によって、創業間もない企業でも無担保・無保証で資金調達が可能となっています。
自己資金の要件も撤廃されたので、自己資金の用意が難しい方でも利用しやすい制度となっています。

中小企業向け融資制度の変更点

次に中小企業向けの制度の変更点です。

2023年度まで 2024年度~
融資限度額 14.4億円 20億円

中小企業も融資限度額が最大20億円に拡充されています。
小規模事業者と同様に、無担保・無保証で融資が受けられるので、要件を満たして審査を通過した企業は、事業拡大を目指せる大きなチャンスです。

スタートアップサポートプラザの新設

主な変更点として、スタートアップサポートプラザの新設も挙げられます。
策定した「スタートアップ育成5か年計画」を踏まえてシード期やアーリー期のスタートアップの融資相談にも対応できるよう、4つの都市に支援拠点を設けたのです。

スタートアップ経営者やベンチャーキャピタル、革新的な事業をはじめたい方など、様々な方の相談を受け付けています。
資金に関する相談があれば、利用を検討してみてください。

スタートアップサポートプラザの各所在地

各所在地は以下の通りです。

【東京スタートアップサポートプラザ】
対象エリア:東京
所在地:東京都新宿区西新宿1-14-9

【名古屋スタートアップサポートプラザ】
対象エリア:静岡県・愛知県・岐阜県・三重県
所在地:愛知県名古屋市中村区名駅3-25-9

【大阪スタートアップサポートプラザ】
対象エリア:大阪府・奈良県・和歌山県
所在地:大阪府大阪市北区曽根崎2-3-5

【福岡スタートアップサポートプラザ】
対象エリア:福岡県・佐賀県・長崎県・大分県
所在地:福岡県:福岡市博多区博多駅前3-21-12

対象エリアに当てはまらないエリアに関しては、各支店で対応しています。

日本政策金融公庫の融資申請方法


ここからは、日本政策金融公庫が提供している融資制度に申請する方法を解説していきます。やり方をあらかじめ理解しておくと、スムーズに申請できるでしょう。

窓口とインターネット申請の2種類がある

申請方法は、窓口とインターネットの2種類があります。やりやすい方法で申請をしてください。

窓口での申し込み方法

窓口で申込む場合は、個人企業・小規模企業と中小企業によって若干の違いがあります。

・個人企業、小規模企業
事業資金相談ダイヤルから相談ができます。音声ガイダンスが流れるので、案内に従って操作してください。
創業して間もない場合は、「0」を押します。受付時間は平日の9:00~18:00です。

・中小企業
公庫各支店の中小企業事業の窓口に直接相談ができます。電話や最寄りの商工会議所で開催される定例相談でも相談を受け付けています。
直接相談に行く場合は、会社案内や決算書、事業計画書といった資料を持って行くと、具体的な相談が可能です。

インターネットでの申し込み方法

インターネットでの申し込み方法は以下の通りです。

1.日本政策金融公庫の事業資金お申込受付ページにアクセスする
2.メールアドレスを登録する
3.メールにて申し込みフォームのURLが届くので確認する
4.申し込みフォームに必要な情報を入力する

これまでに取引きがある場合には、取引きしている支店や取引番号を入力するため、支払明細書を準備しておくと、スムーズに申請できます。

必要書類

窓口・インターネット申請に関わらず必要な書類があるので用意してください。個人と法人では用意する書類の内容が若干異なるので注意が必要です。

【個人事業主】
  • 直近2期分の確定申告書(青色申告であれば青色申告決算書、白色申告であれば収支内訳書を含む)
  • 見積書
  • 創業計画書
  • 企業概要書(創業計画書を提出する場合は不要)
  • 運転免許証やパスポートといった本人確認書類
  • 許認可証(届け出が必要な事業を営んでいる方のみ)

事業をはじめたばかりであれば、確定申告書の提出は必要ありません。1期目のみ完了している場合は、1期分の申告書を用意してください。

【法人】
  • 直近2期分の確定申告書と決算書
  • 最近の試算表
  • 見積書
  • 履歴事項全部証明書もしくは登記簿謄本
  • 代表者の運転免許証やパスポート
  • 許認可証(届け出が必要な事業を営んでいる方のみ)

試算表は、決算後6カ月以上経過している、もしくは事業をスタートしたばかりで決算を終えていない方が必要です。

面談

融資を受ける際には担当者と面談をしなければいけません。面談をせずに融資を受けることは不可能なので必ず実施されます。
面談では、資金の使い道や事業の状況などを質問されます。そのため、営業状況や資産、負債などがわかる資料を用意してください。

面談の日程は担当者との電話連絡で調整されるので、希望があれば相談しておくと希望日時で実施される可能性があります。
また、オンラインでの面談も可能です。希望があれば提案してみてください。

審査・融資決定

面談が終了すると審査が実施されます。その際には、公庫の担当者が本社や事業計画予定地に直接足を運んで事業や計画内容の理解を深め、融資を検討していきます。

調査の結果は、申し込み後2週間程度で担当者から電話連絡があるはずです。融資が決定した際には借用証明書が郵送されるので、確認しておいてください。

入金・返済

融資決定後、必要な手続きが終わり次第、融資金が指定された金融機関の口座に送金されます。
返済は、原則として元金均等割賦返済です。
そのほかにも、元利均等払い方式といった方法が用意されているので、希望があれば公庫の窓口に相談してみてください。
返済は口座から自動振替となるので、忘れないよう返済していく必要があります。

また設備資金の融資を申請した場合には、融資対象の物件の取得が適正に実施されたか報告しなければいけません。
その際には固定資産台帳への計上確認のほか、現地確認も実施されるので準備が必要です。

認定経営革新等支援審査機関の活用を検討しよう


日本政策金融公庫の融資を利用する場合、認定経営革新等支援審査機関を活用すると負担軽減や融資の成功率を高めることに役立ちます。
認定経営革新等支援審査機関では、無料業務と有料業務の2種類のサポートがあります。

無料業務では、主に電話やメールを活用した相談です。
1回30分程度の相談となっており、融資申請の必要性や審査対策など、様々な相談に乗ってくれます。
有料業務では、融資希望内容の確認や修正のほか、創業計画書のサポートや提出書類の作成など、より充実したサポートを実施してくれます。

審査通過率をアップさせるためにも、収益計画の添削や面接対策も行ってくれるので、心強い味方となるでしょう。融資申請に不安があれば、相談を検討してみてください。

まとめ・日本政策金融公庫のスタートアップ支援資金制度を活用して経営に役立てよう

2024年度から内容が大幅に拡充し、小規模事業者も中小企業も融資額が大幅にアップしています。
審査に通れば事業拡大に向けて大いに活用できるはずです。活用を検討している方は、今回ご紹介した申請方法を参考に申し込みを行ってみてください。

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(編集:創業手帳編集部)

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