【2024年10月1日から改正へ!】経営セーフティ共済の改正による変更点は?メリット・解約についても解説

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経営セーフティ共済の変更点に対して改正前にできることを確認しておこう


経営セーフティ共済は、取引先が突如倒産した際の備えとして存在する制度です。その経営セーフティ共済が2024年10月1日から改正することが決まっています。
改正にあたって、どのようなことが変わるのか事前にチェックしておくことが大切です。

そこで今回は、経営セーフティ共済の改正による変更点について解説します。
制度を活用するメリットや解約の注意点・流れなどもご紹介するので、経営セーフティに加入している、または加入を検討している方はぜひ参考にしてください。

経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)とは?


そもそも経営セーフティ共済とはどのような制度なのか、まずは制度の概要や支援内容、加入資格についてご紹介します。

経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)の概要

経営セーフティ共済の正式名称は「中小企業倒産防止共済制度」で、中小企業基盤整備機構によって運営されています。
取引先の事業者が倒産した場合、共済金の借入れができ、連鎖倒産や経営難に陥るリスクを回避することが可能です。

2023年3月末時点で、約62万の企業・事業者が加入しています。累計約27件、金額にすると約2兆円近くの貸付実績があります。
経営セーフティ共済を利用できるのは一定の条件を満たした個人事業主や中小企業者で、共済への加入と掛金の積み立てが必要です。

支援内容

経営セーフティ共済では、無担保・無保証人で共済金の借入れが可能です。
借入れの上限は「回収が難しくなった売掛金債権の金額」、または「積み立てた掛金総額の10倍に相当する金額」のいずれか少ないほうとなっています。
共済金の借入れができる取引先の倒産ケースは以下のとおりです。

  • 法的整理を行った
  • 私的整理を行った
  • 取引停止処分を受けた
  • でんさいネットの取引停止処分を受けた
  • 災害の影響によって手形・小切手が不渡りになった
  • 災害の影響によってでんさい(でんさいネットが記録する電子記録債権)が支払不能になった
  • 特定非常災害による影響で支払不能になった

なお、夜逃げによって取引先が倒産した場合、共済金の借入れはできないので注意してください。

加入資格

加入できるのは、1年以上事業を継続している個人事業主・中小企業、企業組合・協業組合など一部組合です。
また、中小機構が提示する資本金や出資金額、常時使用する従業員数を満たさなければなりません。
個人事業主の場合、業種ごとに定められた従業員数を満たしていれば加入可能です。
中小企業者は、業種ごとに定められた資本金または出資金の総額、従業員数のいずれかを満たすことが条件となります

業種 資本金または出資総額 常時使用する従業員の数(※)
製造業・建設業・運輸業・その他の業種 3億円以下 300人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
サービス業 5,000万円以下 100人以下
小売業 5,000万円以下 50人以下
ゴム製品製造業
(自動車・航空機用のタイヤ・チューブ製造業、工場用ベルト製造業は除く)
3億円以下 900人以下
ソフトウェア業・情報処理サービス業 3億円以下 300人以下
旅館業 5,000万円以下 200人以下

※常時使用する従業員:原則2カ月以上雇用されており、週当たりの所定労働時間が通常の従業員とおおむね同じ方(事業主・家族従業員・雇用期間2カ月以下は除く)

経営セーフティ共済の変更点


2024年10月から経営セーフティ共済が改正されることが決まっています。
加入者や今後加入する人にとってどのような影響があるのか、変更点をしっかり確認しておいてください。
ここで、改正されることになった背景や具体的な変更点について解説します。

改正することになった背景

今回改正が行われることになった理由は、経営セーフティ共済を不適切に利用する加入者が相次いだためです。
具体的には、短期間で任意解約と再加入を繰り返すというものです。

経営セーフティ共済を解約する際、積み立てた掛金は解約手当金として支給されます。
加入期間が3~4年目になると支給率が100%になるため、このタイミングで解約されるケースが多いです。
近年は3年目・4年目に解約するケースが増加しています。2022年度時点で、任意解約のうち3年目・4年目で解約した加入者の割合は約3割です。

また、解約してもすぐに再加入するという動きがみられます。
2022年度時点の加入者全体のうち再加入者は16%となっていますが、そのうち約8割が解約から2年未満で再加入している状況です。
短期間で解約・再加入を繰り返す理由は、税制上の優遇措置を目的にしているからです。
最近はインターネットや雑誌でも節税効果から共済への加入をすすめられており、本来とは異なる目的で加入するケースが増加しています。
このような制度の不適切な利用を防ぐために、制度の改正が決まりました。

解約後2年間は経費計上ができなくなる

経営セーフティ共済改正によって、掛金の損金算入に制限がかけられました。
その制限とは、解約してすぐに再加入しても、解約日から2年間は掛金を損金として処理できないというものです。
これによって、短期間で解約・再加入を繰り返すメリットが得られなくなりました。

経営セーフティ共済の掛金を損金にできる仕組みは、リスクの備えとして加入する個人事業主・中小企業者の負担を減らすための優遇措置でしかありません。
節税のための制度ではないことを理解し、制度を適切に利用してください。

経営セーフティ共済の変更点に対して改正前にできること


様々な事情から経営セーフティ共済の解約を検討しており、その後に再度加入する可能性があるという人には、今回の改正はデメリットが大きいです。
しかし、変更点が適用されるのは2024年10月からなので、もうすこし時間に猶予があります。
ここで、ケース別に改正前にできることをご紹介します。

9月30日までに40カ月を超える場合は一度解約して再加入する

改正までに加入期間が40カ月を超える方は、一度解約して再加入を検討してみてください。
加入から40カ月以上経つと解約手当金の支給率が100%となるので、掛金をすべて取り戻すことが可能です。
改正前に再加入すれば、2年間は経費計上できないという制限を受けることもありません。

すでに掛金を納めている場合はそのまま継続

加入期間が浅く、9月30日までに40カ月を満たないのであれば、加入を継続するのがおすすめです。
解約手当金の支給率は加入期間によって変動するため、40カ月未満だと掛金が100%で戻ってくることはなく、損をする可能性があります。
また、加入期間が40カ月を超えるケースでも、掛金の使い道や解約のタイミングが決まっているのであれば、慌てて解約する必要はありません。

経営セーフティ共済を活用するメリット


改正によって加入者にやや厳しい制限が設けられるものの、経営セーフティ共済に加入することには様々なメリットがあります。主なメリットは以下のとおりです。

掛金を損金計上または必要経費扱いにできる

経営セーフティ共済を利用するにあたって、加入者は掛金の積み立てが必要です。
解約する際に加入期間に応じた割合で戻ってくるとはいえ、個人事業主や中小企業に負担がかかってしまいます。
そこで、経営セーフティ共済では掛金を全額損金計上、または必要経費として扱うことを認めています。

なお、損金計上ができるのは法人、必要経費にできるのは個人事業主です。
例えば、月額15万円の掛金であれば、年間で最大180万円を損金・必要経費にできます。
全額損金や必要経費として計上できれば、所得が圧縮され、節税メリットがあります。
ただし、上記でも述べたとおり節税目的の加入は本来の目的から逸脱しているので、あくまでもおまけの要素と考えてください。

取引先が倒産してもすぐに借入れできる

経営セーフティ共済では、取引先の倒産日以降に共済金の借入れが可能です。取引先が倒産してすぐに借入れができるため、共倒れなどのリスクを早急に回避できます。
特に連鎖倒産が起きる可能性があると貸し倒れのリスクがあると判断され、金融機関から事業資金の借入れを断られる可能性が高いです。
しかし、経営セーフティ共済であれば、すぐに事業資金を確保できるので、取引先の倒産によるダメージを軽減できます。
倒産日は倒産したケースによって異なります。

倒産のケース 倒産日
法的整理 申立てが行われた日
私的整理 金融機関から取引停止処分を受けた日
取引停止処分 弁護士等から共済契約者に対して支払停止の通知がされた日
でんさいネットの取引停止処分 金融機関から取引停止処分を受けた日
災害による不渡り 当該手形等の手形交換日、呈示日
災害によるでんさいの支払不能 でんさいの支払期日
特定非常災害による支払不能 弁護士等から共済契約者に対して支払停止の通知がされた日

上記の倒産日から6カ月以上経つと借入れができないので、連鎖倒産や経営難に陥る可能性があればすぐに対応してください。

無担保・無保証で事業資金を借入れできる

経営セーフティ共済は、無担保・無保証人で事業資金を調達できます。そのため、借入れを利用するハードルが低い点がメリットです。
また、経営セーフティ共済には一時貸付金制度があります。
一時貸付金制度では、掛金の納付月が12カ月を超えていれば、取引先が倒産していないケースでも運転資金・設備資金の借入れが可能です。
一時貸付金制度でも担保や保証人は不要です。借入額は30万円以上で5万円単位となっており、上限額は解約手当金の95%の範囲内となっています。
取引先倒産によるリスクを軽減するための制度ですが、臨時で事業資金が必要になった時にも役立ちます。

加入後でも掛金を自由に増減できる

月額掛金は、加入時に5,000円~20万円の範囲で自由に選ぶことができます。さらに、加入後も範囲内であれば自由に掛金の金額を増減することが可能です。
掛金変更の締め切りは毎月5日です。その日に申請処理が受理されると、その月から変更した金額が反映されます。
しかし、申請の受理が6日以降となった場合、その月は変更前の金額で引き落とされ、調整されるのは翌月以降です。

経営セーフティ共済を解約する際の注意点


経営セーフティ共済は必要に応じて、自らのタイミングで解約できます。しかし、解約には注意点があるのでご紹介します。

掛金納付月数が1年未満だと掛け捨てになる

掛金の納付月数が1年未満の状態で任意解約した場合、掛け捨てと扱われます。そのため、本来受け取れるはずの解約手当金を受け取れません。
これは、みなし解約(個人事業主の死亡や会社の解散など)や強制解約(滞納・不正が発覚した場合に適用)となった場合も同様です。

40カ月(3年4カ月)未満だと元本割れを起こす

掛金納付月数が1年以上あれば解約手当金は受け取れますが、40カ月未満で解約すると元本割れを起こすので注意してください。
40カ月以上であれば支給率が100%(強制解約は95%)で受け取れますが、それ以下の場合の支給率は以下のとおりです。

掛金納付月数 解約理由
任意解約 みなし解約 強制解約
12~23カ月 80% 85% 75%
24~29カ月 85% 90% 80%
30~35カ月 90% 95% 85%
35~39カ月 95% 100% 95%

元本割れを避けたいのであれば、特別な事情を除き40カ月以降に任意解約するのがおすすめです。

解約手当金は収益のため課税対象

解約時に受け取る解約手当金は、雑収入に該当するため、所得税の課税対象になる点に注意してください。
収益が得られるからと安易に解約すると、次年度の税金の負担が大きくなってしまいます。
積み立てた掛金の金額次第では、事業や生活に支障が出る場合もあります。そのため、税金の負担も考慮した上で解約のタイミングを見極めてください。

経営セーフティ共済を解約する際の流れ


経営セーフティ共済の改正に合わせて一度解約をするのであれば、手続きについて確認しておく必要があります。
最後に解約に必要なものや、個人事業主・法人別に任意解約の流れをご紹介します。

解約の手続きに必要なもの

任意解約で必要になるものは以下のとおりです。

  • 実印と銀行届け出印
  • 解約手当金請求書(様式中401)
  • 中小企業倒産防止共済契約締結証書
  • 解約手当金が振り込まれる口座情報を確認できる書類(通帳等の写し)
  • 履歴事項全部証明書(商号・組織変更に係る共済契約の手続きが済んでいない法人の場合)

中小企業倒産防止共済契約締結証書は、掛金の変更を行うたびに発行されるので、最新の原本を用意して解約時に返却してください。
任意解約は個人・法人が直接請求できますが、解約手当金の受け取りを代理人弁護士に委任するケースもあります。
その際は、中小機構からダウンロードできる委任状と共済契約者の印鑑証明書、受任通知の写しなど委任関係を確認できる書類が必要です。

また、振込先の口座情報を確認できる書類は、代理弁護士のものとなるので、個人や法人で用意する必要はありません。

個人事業主が任意解約する際の流れ

個人事業主が任意解約する際の流れは以下のとおりです。

1.上記の必要書類を揃える
2.解約手当金請求書を中小機構のホームページからダウンロード、または資料請求で取得する
3.共済契約者番号や屋号、個人事業主の氏名など必要事項を記入
4.解約手当金請求書と添付書類一式を提出する

請求書は漏れなく記入し、個人の実印も忘れず押してください。また、提出先は経営セーフティ共済に加入する際に利用した金融機関などの登録取扱機関です。
直接中小機構に送付しても解約できないので注意してください。

法人が任意解約する際の流れ

法人が任意解約する際の流れは以下のとおりです。

1.上記の必要書類を揃える
2.解約手当金請求書を中小機構のホームページからダウンロード、または資料請求で取得する
3.共済契約者番号や事業所の名称、代表者の氏名など必要事項を記入
4.解約手当金請求書と添付書類一式を提出する

請求書には社名や代表者の氏名を記載することになりますが、商号変更がある場合は変更後の社名と新しい代表者の氏名を記入してください。
法人(商号変更がある場合は変更後の契約者のもの)の実印も忘れず押してください。
提出先は、個人事業主と同じく登録取扱機関となっています。

経営セーフティ共済が改正される前に解約または加入・継続かを検討してみよう

経営セーフティ共済に加入すれば、取引先倒産時のリスク軽減ができます。さらに、掛金を損金や必要経費に計上できるので節税効果が得られることも魅力です。
しかし、節税を目的に不適切な利用を行う加入者が後を絶たず、損金処理に関する制限が設けられることが決まりました。
今回の改正は、加入者にとってややデメリットがあります。そのため、変更点をしっかり把握した上で、改正前に解約や継続、加入するか慎重に検討してください。

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