共同経営とは? メリットやトラブル回避策などを紹介します!
共同経営を成功させ、失敗させないための方法
経営をすべて一人で行うことは、自由度が高いというメリットがありますが、すべての決定権が自分にあるため、責任も自分ひとりに集中するというデメリットもあります。1人での経営に不安を感じた経営者に考えていただきたい方法のひとつが、「共同経営」です。
共同経営であれば、「有能なパートナー」と力を合わせることができる可能性が高いので、相乗効果が生まれ、経営が好転することも考えられます。さらに場合によっては、共同経営によって新たな事業開発や拡大といった展開につながるかもしれません。
しかし一方で、共同経営のスタートにはさまざまな心配もあると思います。
今回は、共同経営を考えられている方に向けて、共同経営の契約方法やメリット、またありがちなトラブルなどについて詳しく説明していきます。
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この記事の目次
共同経営とは?
共同経営とは、その名の通り、複数の経営者が対等な立場で一緒に経営する形態のことです。共同経営だと、お互いの足りない部分(資金や経営知識、業務スキル)などを補い合えるので、相乗効果が生まれ、事業のスタートがスムーズになる、既存事業がさらに発展するという効果が見込めます。
また、ひとえに「共同経営」といえど、出資比率や担当業務、会社形態によっていくつかのタイプに分けられます。
ジョイントベンチャーとの違い
共同経営と似た形として、ジョイントベンチャーがあります。それぞれの違いは、事業の持続性や出資パターンです。
1つの事業に対して複数の経営者が関わる形が共同経営で、2つ以上の独立した企業が1つの事業のため一時的に連携する形がジョイントベンチャーです。
ジョイントベンチャーは、お互いに定められた割合で資金を出し合い合弁会社を設立しますが、1つのプロジェクトが終了すると解散します。
一方で、共同経営は持続的な事業経営を行うスタイルで、出資パターンは複数あります。
共同経営の主なパターン
共同経営は、出資比率により以下3つのパターンがあります
1.法人格の企業を共同設立(共同出資or単独出資)
1つめのパターンが、法人を立ち上げ共同経営するやり方です。個人事業主と比べて法人格は、社会的な信用力が高くなり、融資を受けやすく、節税メリットがあります。
ただし、法人を立ち上げるためのまとまった費用が必要です。
また、決算報告や株主総会などの手間が増える点でも考慮しなければなりません。
この場合の出資率は、1人の単独出資も可能ですが、2人以上で共同出資する方法がおすすめです。
出資率は自由に決められるので、会社の決議権の高さで比率を変えるといいでしょう。
2.有限責任事業組合(LLP)や団体(NPO法人)を共同設立
株式会社の場合は出資率で決議権が変わりますが、LLPやNPOは出資率よりも1人ひとりの意見が重視され、多数決で決定する違いがあります。
そのため、代表者と経営者が対等な立場となる関係を望むなら、LLP(有限責任事業組合)やNPO(特定非営利活動法人)の設立が適しています。
また、LLPやNPOは資金ゼロでも設立可能で、低コストです。短期間で設立できるスピーディさもメリットのひとつだと言えます。
3.個人事業主として共同設立
個人事業主同士が集まり、共同経営するスタイルです。個人事業主は会社のような出資がなく、出資率による上下関係がありません。
また、お互いの事業規模や売上でも上下関係がない事業を行えます。
このタイプの共同経営は、それぞれが対等な立場となるため、売上や経費の配分が難しくなります。また、重要な意思決定場面で意見が衝突するリスクにも注意が必要です。
このようなデメリットを解消するため、代表者のみが個人事業主になる以下2つのパターンも考慮するといいでしょう。
- 代表者のみが個人事業主で、他の人は下請けで協力
- 代表者のみが個人事業主で、他の人は従業員で働く
共同経営における立場・役割について
共同経営者は、それぞれの立場や役割をどの様に決定していくべきでしょうか。
出資比率による関係
今回は株式会社を想定して解説します。出資者として会社を経営していく場合、出資比率の大きい人のほうが意思決定の権限を持つことになります(出資割合に応じて、決定権の範囲は変わります)。
出資を折半する対等な関係が分かりやすいですが、その場合は逆に、意思決定に時間がかかる場合もあります。できれば出資割合によって株の比率が決まるわけではないので、片方一人が100%の方がよいでしょう。
以下にて詳しく解説します。
2.1人の出資率が50.1%以上の場合
3.それぞれの出資率が均等、あるいは50.1%以下の場合
出資者と経営実務に分かれる関係
共同経営の立ち位置として、一方が出資者・オーナーという立場で、他方が実務を行う場合があります。日常実務における意思決定は、出資をしていない実務担当の経営者も行います。ですが、最終決定権は出資者であるオーナーが持ちます。
業務ごとに住み分ける関係
事業形態以外にも、業務分担の点から見てもさまざまなパターンが考えられます。例えば、営業・開発・経理など業務のくくりで担当を分けるケース。担当分野で独自の意思決定が可能で、職責も分かりやすく分けられます。
共同経営のメリットとは?
共同経営にはあらゆるパターンがあるので、自身の事業に応じて選択するとよいでしょう。ここでは、どのパターンにおいても共通してみられるメリットとデメリットについてご説明します。
メリットを最大化できるよう、少しでも共同経営をうまく実行するために、事前にしっかり準備をしておくことが大切です。たとえば、資金、役割分担、決定権、報酬など…これらのルールを明示しておくことで、共同経営は成功に近づくでしょう。
自分の不足を補える
資金面や経営の知識など、自分にないものを補い合うことができます。また、得意なことも違うので事業成長にも良い影響があり、役割分担をすることで効率よく仕事をすることができます。
対等な立場で協力できる存在が得られる
経営者と従業員ではなく、対等な立場で協力できる存在が得られ、意思決定の際に相談することや、助言を得ることも可能です。経営者の孤独感を和らげることができます。
1人で責任を負う必要がない
共同経営では、立場に応じて意思決定を行いますので、一人で「どうしたらよいか」抱えこむ必要はありません。事業がうまくいくのもいかないのも、どちらかの責任として押し付けることはないはずです。ただし、法人などの団体組織を設立する場合は、「出資者」が法的には責任を問われることもあります。
意思決定の際に相談できたり、助言を得たりできる
経営者は常に孤独ともよく言われるように、意思決定を一人で行うので常に迷いの中にいる場合が多いでしょう。しかし、共同経営であれば、意思決定の役割があったとしても、一人だけで悩まずに、同じ「経営者目線」で相談することができるでしょう。共同経営者にとっても、自分事なので、真剣な助言や意見をもらえるはずです。
役割分担で、効率よく仕事ができる
共同経営における役割をきちんとすみ分けておくことで、仕事が効率化することは間違いないでしょう。自分の得意な分野に集中して専念できるので、仕事の質も高まるでしょう。
共同経営を行うことで、単独で起業・経営するよりもビジネスの幅は大きく広がります。
しかし一方で、共同経営ならではのトラブルが発生するなどのデメリットもあります。次では、どのようなトラブルが起こる傾向にあるか解説していきます。
ありがちな「共同経営」のトラブル・デメリットとは?
うまく共同経営を進めるために、ありがちな共同経営のトラブルやデメリットについて把握しておきましょう。
意思決定に時間がかかる
個人事業のときは、自分自身で最終決定を下すことになりますが、共同経営になると(経営の形態にもよりますが)、経営者たちの間で合意を取り、決定する必要があります。全員の意見が一致すればいいのですが、経営課題は多岐にわたり、時には意見が決裂して決定までに時間がかかる場合があります。
意思決定に時間がかかると、個人事業や中小企業の強みであったスピード感が失われ、ビジネスチャンスを逃してしまうかもしれません。1人で経営していた時に比べ、思い通りにならない部分もあります。
人間関係に不満がたまる
経営状態がいいときは、前向きに協力関係が維持できますが、関係が悪化するとトラブルに発展しやすくなります。具体的には、相手のせいで経営が悪化しているのではと不満が募ったり、信頼関係が傷ついてしまったりします。大手企業の親子での経営権争いなどがニュースになったことがありましたが、肉親であっても関係が悪化することもあります。
人間関係でももめる原因のひとつが貢献度合いに見合った報酬比率のバランスです。きちんと最初に明確に決めるのが難しいのですが、トラブルを避けるためにもしっかりと設定したほうがいいでしょう。
共同経営での人間関係の悪化はビジネス上はおろか、プライベートにまで悪影響を及ぼすかもしれません。
責任の所在が曖昧になる
経営者が複数になれば、責任の所在が曖昧になります。事業がうまくいっていない場合、誰の責任かが明らかにならず、重大な決断について適当に済まされるかもしれません。責任の所在が曖昧であれば、組織としての弱さとなってしまいます。
関係を解消する際に問題になる
共同経営の関係を解消しようと考えたとき、企業の所有権や対象事業の権利が配分されている場合には、協力解消の際に事業存続のリスクが発生します。共同経営を始める際にしっかりと取り決めをしていることも大切です。
トラブル回避のためにも!共同経営に必要な書類と手続き
たしかに、共同経営であれば、精神面でも資金面でも起業のハードルが下がるのは間違いありません。しかし、のちに大きなトラブルに発展してしまうリスクもあるので、スタートの時に経営権や意思決定権、報酬比率などを決めておくことが望ましいです。ただし、出資は一人が100%を行えばトラブルは避けられますが、前述の共同経営のメリットが薄れてしまいます。
とにかく、最初の取り決めや手続きが非常に重要なのはいうまでもありません。
ここでは、共同経営を進めるために必要な書類・手続きについて解説します。
共同経営を始める前に決めておくべきこと
共同経営を始める前に、以下の項目について話し合い、あらかじめルール化しておきましょう。これらが曖昧だと後々トラブルになる可能性があるため、しっかり明文化しておきましょう。
- 出資金額
- 報酬
- 肩書
- 担当分野
- 責任と権限
- 利益分配の方法
- 意思疎通の方法
- 考え方に相違があるときの対応
- 引退するときの事業承継
- 契約解除の手続き
ちなみに、出資割合は「同額」が対等な共同経営というイメージがありますが、実は、いざという時に一番トラブルになるのが同額出資の場合です。できれば、どちらかが100%もしくは、8:2ぐらいが理想的だと思います。折半であると意思決定がどうにもならず、停滞してしまうからです。
作っておくべき書類「共同経営契約書」
共同経営を始める際には、「共同経営契約書」を作成し、それぞれが保管しておきましょう。作成義務はありませんが、いざトラブルが起こった際に解決の役に立ちます。
契約書の中には、前項で示した「決めておくべきこと」も明示しておくと、お互いの認識のずれもありません。それに加えて、事業の目的や内容、契約期間、持ち分処分についてなども盛り込んで作成します。
また、株式会社を設立して共同経営を開始する場合は、株主総会や決算制度の手順を明確にしておくと、実務上で混乱を防ぐこともできます。
作った契約書は、契約期間ごとに見直し、常に最適な内容を保つようにすることも、トラブル防止に役立ちます。
冊子版の創業手帳では、契約書の基本についてわかりやすく解説しています。契約書には作成義務はありませんが、トラブルがあったときに役に立ちます。もし裁判になった場合、裁判のコストを考えて要望をそのまま飲まざるを得ないといったケースもあります。そうならないためにも、基本をしっかりと理解することは大切なことでしょう。
共同経営を成功させるためのポイント
共同経営を成功させる最大のポイントは、信頼できるパートナーを見つけること。自分の不足を補ってくれて、ストレスなく意見交換ができ、同じビジョンを持って経営に臨めるパートナーを選びましょう。
「共同」経営だからといって、報酬や出資を無理に折半しないというのも成功に大切な考え方です。貢献度や実績など、客観的な指標で決めるほうが納得感を得られます。
また、確定申告にも注意が必要です。それぞれが独立して確定申告が必要になるので、経理面でも煩雑な手続きになります。経理の専門的な知識が十分でなかったり、経理作業に人手や時間を割くのが難かったりする場合は、税理士などの専門家に頼るほうが間違いなく手続きを進められます。
まとめ・トラブルを回避して共同経営を成功させよう
信頼できるパートナーだからこそ、最初の取り決めを明確にすることが大切です。パートナーに恵まれれば、共同経営は大きな可能性を開くことができる選択肢です。失敗すると言われがちな共同経営ですが、この記事で紹介したポイントを押さえることで、成功の確率を高めることができます。
メリットとデメリットを理解した上で、しっかりと事前準備をして共同経営に取り組みましょう。
冊子版の創業手帳では、人事・労務の仕組みの整備について詳しく説明しています。共同経営することに決められたら、ぜひこちらも参考にしてみてください。
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(執筆:創業手帳編集部)
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