JCG 松本 順一|無限に広がるeスポーツの可能性!「好きなことで起業した」
プレイヤー・実況から大会開催へ…!株式会社JCGの代表取締役CEO松本順一氏にインタビュー
海外で盛り上がりを見せ、日本でもここ数年若者を中心に人気を集めている「eスポーツ」。
eスポーツ業界の第一人者である、株式会社JCGの代表取締役CEO松本順一氏。個人でプレイヤーや実況を手掛けるところからスタートし、2013年にはJCGの前身となる会社の創業に携わるように。そんな松本氏に、eスポーツ業界の実態やビジネスモデル、そして「好き」を「仕事」にしたい方へのメッセージ等、幅広いお話をお伺いしました。
米国の大学を卒業後、大手通信キャリアにてエンジニアとしてのキャリアをスタート。
インターネット業界のオペレーターコミュニティ団体活動やJPNICの国際プロジェクトに従事する過程で、コミュニティのもつ独自性とパワーを実感する。その後外資など複数社を経たのち、個人のゲームコミュニティサイト運営経験から、2013年にJCGの前身となるコミュニティ大会の運営事業を責任者として立ち上げ、2017年5月には株式会社JCGとして独立。サラリーマンから経営者に転身し、2019年8月には代表取締役となる。2021年6月現在までに累計10.7億円の資金調達を完了し、国内最大のeスポーツプロバイダーとしてさらなる飛躍を目指す。
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計250万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら
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この記事の目次
知っておきたい!eスポーツの基本
eスポーツとはいったい何なのか
松本:eスポーツはエレクトロニック・スポーツの略で、ビデオゲームを使って行う競技です。 eスポーツは海外から派生しました。日本では、スマホがゲーム端末になっていて移動中に手軽にゲームをしますよね。けれども、海外は車社会なので移動中にゲームをする習慣がありません。家に帰ってからパソコンの大きなモニターでゲームをするんです。そしてゲームセンターの様に、みんなが一緒になってオンラインでプレイヤーのプレイを観戦します。
松本:そうですね。2022年には日本だけでも100億円を超えると言われています。また、海外に目を向けると年間売上が400億円を超える会社もあります。これまでの日本はそこまで盛り上がりが無かったのですが、2018年以降、チーム単体で収入が億を超えるところが出てきました。これは、スマホでもプレイ可能なeスポーツタイトルが増えてきて、日本がそれに乗りやすくなった点も大きいと思います。
リアルスポーツの影響を受けながら進化を遂げてきた
松本:そうですね。ここ2~3年でビジネスとして花開いた実感があります。感覚的、体力的にも、若い人にもチャンスがある業界で、学生ベンチャーの参戦も多いです。
松本:「リアルのスポーツが先行していて、eスポーツはそれを模倣している」という歴史があります。実際の野球をアレンジして、情報をしっかり詰め込んでデコレーションして、見ているだけで分かるコンテンツにしたものがテレビの野球中継ですが、eスポーツも同様です。
ゲームって元々は、「プレイヤーは理解できているけれども、見ている人たちは何をしているか分からない」ことも多かったんです。そもそも、プレイしているゲームに対する理解がないと、パッと見ただけで楽しむことは難しいですよね。それを情報として画面に記載することで分かりやすくしました。
松本:eスポーツはリアルのスポーツを模倣することによって発展してきましたが、データが全部デジタルなので視認性も高いんです。そのため進化が凄く、リアルのスポーツに逆に影響を与えている面もあります。
ビジネスモデルとしては、スポーツだけではなく格闘技などのショーエンターテイメントを模倣して発展してきた面も大きいです。そういった意味では、「eスポーツがようやく今までお世話になってきたコンテンツにお返しができるようになった」と思います。
プレイヤーから実況、そして開催側へ
JCGの立ち上げの経緯
松本:私自身最初はプレイヤーで、大学時代はボランティアでeスポーツ関係のイベントを主催していました。自分が出る大会がなくて始めたのがスタートです。そして始めた時に誰も実況をしてくれなくて、じゃあ自分でやるか…と。実況したら楽しくなっちゃって、「もっと大会を開催しよう」って広がって行きました。
その時私のコミュニティにいた方が勤めていた会社の社長さんがeスポーツに興味をお持ちで。2013年にその方の経営する株式会社マイルストーンと共に、前身となる事業をスタートさせました。その後資金調達をしてビジネスとして成長して来た経緯があります。
松本:私が実際にeスポーツを事業化し始めたのは、35歳の時なんです。eスポーツをマネタイズすることに関しては、5年以上トライアンドエラーを繰り返してブラッシュアップしてきました。優秀なエンジニアが参画し、経営の上でメンターとなってくださったマイルストーンの社長さんがいる。そういう素晴らしいタイミングで、スタートを切ることが出来たのが良かったと思います。
eスポーツ業界の構造
松本:JCGは、ユーザーからは基本的にお金を貰わずに、スポンサー収入で運営しています。ユーザーが付けばゲーム会社からお金が出るし、それがさらに盛り上がることで、ゲーム会社以外からもスポンサー収入が期待できます。
JCGの目指すところのひとつに、コミュニティを作ること、が挙げられます。そのためには、大会を開催することが重要なポイントになります。大会があることで、情熱やモチベーションを保ちながらゲームを続けられるし、「大会に一緒に出ようよ」って仲間を作れるようになりますよね。
また、大会の開催を繰り返すことでスケールメリットが出てきます。さらに、スタッフも洗練され、ナレッジも蓄積されていきます。また、機材なども交渉してより容易に低コストで調達して大会を開催できるようになりました。JCGは、ここに投資を集中し続けた結果、低コストで質の良い大会を提供できる企業に成長しました。
松本:若者の趣味が多様化していますよね。テレビを見ない、広告を見ない。大手企業の方ほど、若者との接点を模索されていると思います。その点、eスポーツは、Z世代(1990年後半頃から2012年頃に生まれた世代)が可処分時間をもの凄く使っているコンテンツのひとつ」なんです。
Z世代にアピールをするために、熱量のあるコアなファンと一緒になってシンパシーを感じてもらう取り組みが増えてきています。企業がeスポーツを広告媒体としてしっかり認識しているんです。ただし、企業が広告バナーを出すことに意味があるわけではなく、「若者が好きなコンテンツを企業も一緒に応援している」という見え方に価値があります。
eスポーツ業界のビジネスモデルとは?
松本:そうですね、例えば世界で1番プレイヤー数が多いとされている「リーグオブレジェンド」というゲームでは、大陸ごとにリーグがあり、日本にも独自リーグがあります。世界大会はリアルに集まって1ヶ所で開催され、1~2週間かけて開催されるほど規模が大きいです。
また、「オーバーウォッチ」というゲームでは、アメリカでオーナーシップを持ったプロリーグが立ち上がっていて、参入コストが30億円と言われています。メジャー企業をオーナーとしたチームなどが参入しています。
松本:他にも、オープンライセンスのゲームというものがあります。企業に対して「うちのゲームの大会をバンバンやってください、賞金サポートはしますよ」と。
ゲーム毎に皆さん独自のビジネスモデルを持っているんです。「eスポーツはこういうモデル」というのが実はないので、多彩で面白いですよね。世界中に成功事例が沢山あるんです。
eスポーツが持つ無限の可能性
eスポーツは「平等に近いプラットフォーム」
松本:はい。「オンラインで繋がる=無差別」という見え方をしやすい面もありますが、参加者の条件付けをすることで絞り込みが可能です。学生大会や高齢者大会、身体障がい者向けのサイトもあるんですよ。そうした業界から「eスポーツに期待しています!」という声が聞こえますし、実際に活動なさっている方も多いです。
eスポーツを通して結婚する方も
松本:サークル活動とか色んなものがありますけど、eスポーツという同じ趣味の人達が交流して結婚するのもそれの一種ですよね。eスポーツは時間や場所を選ばずにコミュニケーションできるのもメリットですし。相手が異性かどうかも分からずにコミュニケーションを取れるので、「人柄」に触れやすいのも良い点だと思います。
好きなことを仕事にする
松本:私は趣味を仕事にしたので、遊びと仕事の区別がないんです。「起業を目的」としていた訳ではなく、100%「好き」がスタート。
そのため、JCG立ち上げ当初は、経営者ではなく、事業部長を担っていました。その後、2017年にJCG事業が株式会社ビットキャッシュに譲渡され、「株式会社JCG」の取締役になり、2019年12月には株式会社ビットキャッシュが全株式を手放したのを契機に代表取締役CEOに就任したという経緯があります。
好きを仕事にするためには、「経営者になる」必要はないと思います。私自身、ファンのコミュニティから繋がって起業に至りました。縁は何処にでもありますし、しっかりとファンが付いているコンテンツを運営している方には、誰かしら一緒に起業できる環境・能力・資本を持った方がいらっしゃる。
経営に関する知識や経験がなくても、「好きなことで起業する」ことは可能なので、チャレンジして欲しいと思います。
松本:こちらこそ、どうもありがとうございました。
(取材協力:
株式会社JCG代表取締役 松本順一)
(編集: 創業手帳編集部)