オフィス移転だけじゃない?!リモートワークと出勤のハイブリッドワークスタイルが生産性を高める新常識
リモートと出勤をかけ合わせて社員の「生産性」を高めた創業手帳が「働く場所」をどう変えるか解説します!
新型コロナの影響を受けて都心の空室率が止まりません。
2021年度6月時点で、東京ビジネス地区(都心5区/千代田・中央・港・新宿・渋谷区)の6月時点の平均空室率は6.19%と前月よりも増加傾向にあります。(三鬼商事調べ。)
現状、オフィス移転は賃料カットとしての目的が大きいと思われますが、今後は、生産性や創造性を高めることを目的にオフィスの形態を変えるための「移転」が起こってくるでしょう。
これからの新しい働き方はどうなるのでしょうか?
創業手帳は、新型コロナが発生する以前からリモートワークやフリーアドレスなど柔軟な働き方を実践してきました。生産性を考慮し、在宅と出勤のバランスのとり方などの経験があり、最近では社員の生産性にも変化を感じ始めています。
今回は、この経験に基づき、どのようなオフィススタイルが生産性や創造性を高めるのか解説するとともに、実際に新しいオフィスづくりを始めるためにはどうしたらよいかをご紹介します。
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この記事の目次
生産性を高めるために多様化するオフィスの形
新型コロナの影響を受けて、感染対策だけでなく賃料などのコスト削減を目的に移転を検討している企業も多いでしょう。不動産調査に詳しいジョーンズ ラング ラサール株式会社(以下、JLL)によれば、オフィスの縮小傾向は続くとしています。
「オフィスを縮小した」回答者のうち「20-40%縮小」が44.4%で最も多かった。また「オフィスを変えていない」との回答者に対して「今後、通常の生活・業務活動が遅れる状態になった場合、現在のオフィス面積を変更するか?」と質問したところ、18.8%が「縮小」と回答。そのうち「20-40%縮小」としたのは41.2%と、こちらも最も多くの回答を集めた。(JLL調べ。)
そして、単純に賃料の安いところに移転するというよりは、床面積の縮小やコワーキングスペースの活用など、多様な形態を選択する傾向にあります。
「コロナ以前と比べてオフィスを変えた(床面積の縮小・拡大、レイアウト変更のみ)」(33.8%)との回答者が新たに導入・廃止した項目では「在宅勤務を恒常的な制度として導入」(51.0%)、「固定席は残しつつ、フリーアドレス席を導入」(46.9%)、「シェアオフィス・コワーキングスペース(月単位の契約)の利用を開始」(46.9%)となっており、「オフィスを変えていない」回答者が今後導入を決定・検討している項目と同様の結果となった。(JLL調べ。)
これまでは、オフィス=働く場所の一択でした。しかし、多くの企業は、コロナの経験を経て突然の在宅ワークを強いられたことにより、生産性が高まる条件・場所は、人の性格や業務内容によって、あらゆる形態があることに気が付き始めています。
コロナにより、在宅ワークという選択肢は増えましたが、出勤の労が減っただけで、それだけでは生産性が高まることは期待できません。
情報通信プロバイダーのイッツコムの調査によれば、在宅ワークに向いているのは「一人でで完遂できる業務」「セキュリティ面で問題がないこと」としています。具体的には、コンテンツ制作関連の仕事(ライティング、WEB制作など)、システムエンジニア、コールセンター、営業などがあります。逆に言えば、商品開発、企画、製造などの業務では、在宅ワークに限界があります。
しかし、一方でパソコンなど物理的な条件が整っていても、生産性はそれだけでは高まりません。ある程度の公私の切り替えやリフレッシュも大切です。さらに、子育て世帯では、在宅ワークにおいて子どもの世話との両立が困難とするヒューレットパッカード社の調査もあります。
これからの企業は、生き残りをかけていくために、コスト削減も重要ですが、働く人の「生産性を最大化」することが重要です。そのために、働く人に個人個人に応じて「選択肢」を提供することが必要となるでしょう。
業務内容とオフィスとの関係について
ABW(Active Based Working)とは
海外企業を中心に導入が進んでいるABW(Active Based Working)という考え方をご存じでしょうか。日本でも、ITOKIを始めとするオフィス家具メーカーによって提唱されている、新しいワークスタイルの考え方です。
ABWとは、「従来のように階層や組織、チームといったフレームに基づき作られたワークプレイスで働くのではなく、個々のワーカーのアクティビティ(活動)にふさわしい場を用意し、活動に応じてワーカー自らが自立的にワークプレイスを使い分けるワークフォーマット。(ITOKIより抜粋)」のこと。打合せの時は複数なのでミーティングルーム、一人で資料をまとめるときは個室ルーム、アイディアをまとめるときはフリーデスクなど、作業内容に応じて、「適した場所」というものがあるという考え方です。
ABWでは、作業を10種類に分けています。作業内容に応じて、場所や人数を柔軟に変えていくことが大切とあります。
(ABWが定義する10の作業)
- 高集中・・・中断されることのない高いレベルの集中が求められる個人作業。
- コワーク・・・短い会話や質問などを交えメンバーと場を共有しながら行う個人作業。
- 電話/WEB会議・・・物理的には一人で行う、バーチャル上でのコラボレーション。
- 二人作業・・・二人が近距離で横並びになり、じっくりと行う作業。
- 対話・・・二人もしくは三人で行う議論や会話。予約でも突然でも良い。
- アイデア出し・・・新たな知識やプロセスを構築するために行う三人以上の協働活動。
- 情報整理・・・計画の進捗を整理・議論するための、三人以上の計画された会議。
- 知識共有・・・三人以上のグループによる知識共有。主にプレゼンターが話す。
- リチャージ・・・仕事から隔絶し、チャージや心身の切り替えを行う。
- 専門作業・・・特別な設備を必要とする専門的な業務。
ABW導入のメリット・デメリット
創業手帳も、働き方を柔軟にしたことで社員の意識や行動に変化が見え始めています。1年半近くなりますが、よかったところ、課題がのこるところなどが見えつつあります。
ここでは、創業手帳の経験を踏まえて、ABW導入のメリット・デメリットをご紹介します。
メリット
オフィス賃料の削減:出勤とリモートワークやバーチャルオフィスを併用した結果、出社率が下がり、床面積が最小ですみます。広いところを借りている場合、賃料の大幅削減が見込めるでしょう。
効率性の向上:集中作業は自宅、打合せはバーチャル会議室など、仕事のメリハリが付くようになり集中力が増しました。特に、作業に没頭するには、在宅ワークなどの一人の環境がよいので生産性が高くなるでしょう。
アイディアがだししやすい:これまでは、堅苦しい会議室でしたが、今はバーチャルオフィスでそれぞれがリラックスして意見だしができるようになっています。打合せという雰囲気より、話題の中かから新たなアイディアがだせるようになってきました。
デメリット
慣れるまでに時間がかかる:自己流の知識だけで導入しようとすると思いのほか時間がかかる可能性があります。ABWは、個人個人の働き方を変えるものなので、社員からの満足度がないと意味がありません。
個人差が生まれやすい:従来のほうが生産性が上がるというという人もいます。全員が一致して取り入れるかどうかは性格により異なるので、どういう人がいるのかをしっかり把握しなければなりません。
勤怠管理が難しい:作業内容によって、場所を変えるため、管理という面ではブラックボックスになる可能性があります。ただし、仕事内容の設計においてしっかり「何をもって成果とするか」定義しておくとよいかもしれません。
ITOKIのハイブリッドオフィスコンサルテーションで生産性の向上を図る
働き方が大きく見直されている今、やはり「在宅ワーク」「フリーデスク」「コワーキングスペース」「出勤」など多様化していく流れは進んでいくでしょう。ABWのように、仕事内容に応じて都度都度場所や環境を変えていくという「ワークスタイル」が定着していくことが想定されます。
ただし、新しい概念を自分だけの知識や経験で取り入れるのは限界があることも。創業手帳も、独自にリモートワークや業務委託の活用、バーチャルオフィスの導入などを進めてきましたが、やはり専門家によるコンサルテーションを受けていれば、もっと効果的になったと思っています。
ここでは、国内有数のオフィス家具メーカーITOKIが新たに始めた「ハイブリッドワークナビゲーション」をご紹介します。
ハイブリッドワークナビゲーションとは
ハイブリッドワークナビゲーションとは、「ハイブリッド型ワークスタイルの実践を支援する新しいコンサルティングサービス」です。テレワークを単なる出社率の調整として考えるのではなく、新たに社員の「生産性」を高めるための選択肢として整備するための支援が行われます。そして、「新しい働き方の方向性」「必要なオフィスの総面積」「オフィス空間/IT環境/行動変容に関する取り組むべき内容とボリューム」の3つの観点から具体的なアドバイスを受けることができます。
サービスの特徴は?
サービスの実施には、従業員のサーベイ⇒担当者インタビュー⇒レポートのステップがあります。しっかりと現状を把握して、企業ごとの特性を踏まえ提案をしているところが特徴です。
また、現状での働き方やハイブリッドにした場合の社員の感じ方など、目に見えないソフトの部分についても考慮してアドバイスをしてくれます。
さらに、ABW導入のコンサルティング会社と連携しており、日本ではまだ少ない先進的な分析に基づき、最適な働く場所の提案が可能になっています。
実際に導入した企業の反響は?
カルビー社は、コロナ禍でもいち早くリモートワークを導入し「Calbee New Workstyle」として新しい働き方を導入した会社のひとつです。そのカルビー社は、ITOKIのコンサルティングを受け新しくオフィスを立ち上げています。カルビーの社長は、作業内容ごとに必要な空間を提供するという考え方に賛同しており、高く評価していました。
出社して席に着くと「仕事をしている」感覚になるという古い概念が定着を妨げる一因になっていたと思います。また、部下をオフィスという“箱”の中に入れ、仕事の状況を逐一チェックしたいタイプの上司からは当然抵抗もありました。
ただ、そういった管理から解放しなければ、これからの時代、新しい付加価値は生み出せないと思います。(ITOKIインタビューより抜粋)
オフィスの移転や本社の移動は「生産性」を重視して
これまでオフィスや「固定費」としてコストとしての側面ばかりに注目がされていました。しかし、コロナ禍で「場所」というよりは「働く環境」として生産性に大きく影響することが改め実感されました。オフィスは、人をまとめておく「サイト」から、より価値の高いアウトプットをするための「ツール」としての認識に変わりつつあります。
これからオフィスを移転しようと思っている企業は、いまいちど「仕事内容」とそれの生産性を「最大化」する環境を提供できるかどうか、考えてみてはいかがでしょうか。
単純に、立地がよいとか、ブランドエリアとかで移転先を選んでも、利便性は上がっても生産性につながらないかもしれません。オフィス移転を検討する際には、立地だけでなく。その整備の仕方(レイアウトや設備)、現状の社員の意見などを踏まえるとよいでしょう。
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(編集:創業手帳編集部)