インボイス制度後の確定申告のやり方|変更点や消費税の計算など個人事業主・法人向け

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インボイス制度で消費税の確定申告はどう変わる?個人・中小企業向けにやり方や変更点、注意点などを解説

インボイス制度の開始により、これまで対象外だった課税売上高1,000万円以下の事業者にも一部、消費税の申告義務が生じます。消費税の確定申告が必須なのは、インボイス発行事業者の登録を受けた全ての事業者です。

2023年度(2024年)はインボイス制度が施行してから初めての確定申告ということもあり「何から始めたら良いかわからない」「確定申告の準備を進めているけれども、今年からインボイス制度が始まって、どこが注意点なのか知りたい」などと思われている個人事業主・中小企業者の方は少なくないのではないでしょうか。

そこで本記事では、インボイス制度が始まって最初の確定申告に迷わないよう、インボイス制度や確定申告の概要、インボイス制度が施行されたことによって変わる確定申告のやり方などについて、まとめてご説明します。ぜひ参考にしてみてください。

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この記事の目次

インボイス事業者は消費税の確定申告が必須【個人も含め原則】

インボイス発行事業者の登録を行なった個人事業主・中小企業は、原則として消費税および地方消費税の確定申告が必要です。消費税の確定申告は、世間で一般的な所得税の確定申告とは別物なのでご注意ください。

インボイス制度で新たに課税事業者になった方は影響大

2024年(令和6年)分の確定申告で、変更点があるのはインボイス制度の開始によって新たに課税事業者となった事業者です。これまで納税義務がなかった場合でも、消費税の確定申告が原則として必須になります。

従来、消費税の課税事業者となるのは、基準期間の課税売上高が1,000万円を超える会社や個人だけでした。しかし、インボイス制度で発行事業者の登録をすると課税売上高にかかわらず必ず消費税の課税事業者となります。よって、インボイス登録をした個人事業主・中小企業は、例外なく消費税の確定申告が必要です。

インボイス登録をしなかった免税事業者は消費税の申告不要

令和3年の課税売上高が1,000万円以下で、かつインボイス登録をしていない免税事業者の場合、消費税の確定申告は不要です。インボイス制度の開始にかかる確定申告の手続き等に変更点はありません。

インボイス発行事業者でない個人事業主・小規模事業者の方は、これまでと同様、所得税(法人税)の確定申告のみ行いましょう。

2024年(令和6年)消費税の確定申告書の提出期限

2023年(令和5年)分の消費税の確定申告書は、個人事業主の場合、2024年(令和6年)4月1日(月)が提出期限です。消費税および地方消費税の納期限も、同様に4月1日(振替の場合は4月30日)までとなります。

法人の場合は、課税期間(事業年度)の終了日から2ヶ月以内に確定申告を行います。よって、3月決算の法人の場合、確定申告書の提出期限は令和6年5月31日(金)です。

インボイス開始から課税転換した場合は10月1日以降が申告対象

インボイス制度の開始日から課税事業者になった個人は、2023年10月1日〜12月31日の3ヶ月分の消費税を申告します。2023年中の消費税1年分について申告しなければならないわけではありません。

インボイス対応で課税転換した法人の場合、2023年10月から期末までが消費税の課税期間となります。3月決算の場合、2023年10月から2024年3月までの6ヶ月分の消費税を申告するということです。

消費税の確定申告とは

消費税の確定申告とは、課税事業者の個人や法人が納めるべき消費税額を計算し、税務署にそれを申し出る手続きのこと。「消費税及び地方消費税の申告書」を提出し、納税額を確定させます。

消費税の確定申告の対象となるのは、主に以下のどちらかに該当する事業者です。

  • 基準期間の課税売上高が1,000万円を超える事業者
  • 課税売上高にかかわらず、インボイス登録を受けている事業者全て

なお、消費税額は課税売上高に基づき算出するため、基本的に経費分を差し引くことはできません。ただし、インボイス発行事業者からの仕入れについては、一定の要件のもとで仕入税額控除を受けられます。

消費税と所得税の確定申告の違い

所得税の確定申告とは、個人が前年1月1日から12月31日までに得た所得を計算し、納めるべき所得税額を税務署に告げること。法人の場合、事業年度ごとに所得を計算・申告し、納付すべき法人税額を確定させます。

確定申告における消費税と所得税の違いは、所得税は負担者と納税者が一致する「直接税」なのに対し、消費税は「間接税」であること。消費税の場合、担税者(税金を負担する者)は本来消費者ですが、販売等を行なった事業者がお金を預かって代わりに納税します。

また個人の場合、消費税と所得税では確定申告書との提出期限も異なります。2024年(令和6年)では、消費税の確定申告が4月1日(月)までなのに対し、所得税の期限は3月15日(金)までです。

消費税と所得税の確定申告の違いについては、以下の記事でも詳しく解説しています。

所得税と消費税の確定申告は違うの?インボイス登録した個人事業主が初めての消費税の確定申告をする方法

インボイス制度とは?個人事業主は登録必須?

インボイス制度とは、2023年10月1日より施行された、請求書のあり方・納税の新しいあり方を定めた制度です。

インボイスは日本語で適格請求書と呼ばれており、これまでとは違うフォーマットの請求書のことです。売手が買手に対して、正確な適用税率や消費税額を伝えるために、これまで必要とされてこなかった新たな項目が追加されました。

新たな項目とは、以下の3つの項目です。

・登録番号(俗に「インボイス番号」とも呼ばれている)
・適用税率
・消費税額等

この3つの項目のうち、「登録番号」(インボイス番号)は、事業者がインボイス登録しなければ交付されません。そのため、インボイスを発行したければ、インボイス登録をしなければならないのです。

さて、そこで「なぜわざわざインボイス登録しなければいけないのか」と疑問に思われる方もいるでしょう。

実際のところ、インボイス登録をすることで得られるメリットはあまりないものの、登録しないことによるデメリットがあります。

それは、どういうことでしょうか。

インボイス制度が施行されて以降、請求書をインボイスのフォーマットで受け取らなければ、仕入税額控除ができなくなりました。つまり、取引相手である商品・サービスの売り手がインボイス登録していない場合に、買い手が仕入税額控除できず、その分損をしてしまう可能性があるのです。

そこで、インボイス登録しなかった事業者ではなく、インボイス登録した事業者を「優遇」するかもしれない、と懸念されました。国税庁は、そのような行為をしないように注意喚起してはいたものの、実態として、インボイス登録していない事業者ではなく、インボイス登録している事業者を優遇している、という現状がすでにあります。

このように、インボイス登録をしないと、取引相手から敬遠されてしまうというデメリットがあるわけです。

では、インボイス登録をすること自体にデメリットはないのでしょうか。実はあります。

インボイス登録をするためには、消費税の納税義務が本来ないはずの売上1,000万円以下の事業者であっても、あえて消費税を納税する課税事業者にならなければならないのです。

そのため、2023年10月のインボイス制度施行までには、多くの免税事業者が、インボイス登録することを躊躇していました。しかし結局、取引相手の買い手が仕入税額控除ができなくなることを鑑みて取引をやめてしまうリスクを考えて、インボイス登録をする事業者も増えてきました。

インボイス制度開始前までの従来の免税事業者数は全体で約300万ほどと見られていましたが、2023年10月時点で100万事業者まで登録があったということです。残りの200万事業者の中からも、インボイス登録をする事業者が増えてくるでしょう。

インボイス制度施行によって変わった実務

そもそもインボイスは、発行したものも受領したものもどちらも、7年間の保存義務があります。その期間だけ保存しておかなければなりません。

詳しくは後述しますが、実務上も、仕入税額控除の額を計算するために、受領したインボイスは保存しておいて、後で計算の際に使う可能性があります。ただし、課税方式によって受領したインボイスに基づいて計算するかしないかは変わってきます。

また、インボイス制度が施行したことによってインボイスとそうでない請求書や領収書などの仕訳が必要になりました。インボイスがある取引は仕入税額控除ができて、そうでない取引については仕入税額控除ができないためです。仕入税額控除の金額を正確に計算するためには、その両方を仕分けする必要があります。従来の「区分記載請求書」か、「インボイス(適格請求書)」なのかを仕分けておいて、確定申告の際に計算するのに使用します。

インボイス制度下での確定申告のやり方|ケース別の変更点


インボイス制度登録のために免税事業者から課税事業者になった方にとって、新しく作業が発生するのは、消費税の確定申告についてです。その点が、これまでの確定申告の方法と変わることとなります。

インボイス制度導入後の消費税の確定申告で、何が必要になるのかケース別にご説明します。

ケース1:インボイス制度施行前から、課税事業者であった場合

そもそも、インボイス制度施行前から課税事業者であった個人事業主の方は、後述する2割特例は使えません。消費税の計算方式には、「原則課税」と「簡易課税」の2種類がありますが、2023年の10月のタイミングでインボイス制度に初めて登録した方以外の場合には、これまで通り、「原則課税」か「簡易課税」のどちらか、ご自身が選択した方式で消費税を算出し、納税します。

これまでと違うのは、取引先、あるいは仕入先からもらった請求書や領収書が「インボイス」に該当するかどうか仕分けして、インボイスになるものについては仕入税額控除する、というプロセスが発生する点です。

ただし、税込1万円未満のものを仕入れたときについては、「少額特例」でインボイスをもらわなくても、一定の事項を記載した帳簿を保存すれば、仕入税額控除が可能です。この「少額特例」制度は、2023年10月1日から2029年9月30日までの期間限定の制度ですので、ご注意ください。

ケース2:インボイス制度施行に伴い、免税事業者から課税事業者になった場合

2023年10月1日の制度施行に合わせて、インボイス制度に登録するために免税事業者から課税事業者になった個人事業主の方は、確定申告の際に、消費税額の計算と、納税が新たに必要になります。

インボイス制度登録のために免税事業者から課税事業者になった方の場合のみ、「2割特例」という期間限定の消費税計算方式を利用できます。

消費税の「2割特例(インボイス発行事業者となる小規模事業者に対する負担軽減措置)」とは、消費税は売上税額の2割を納付すれば良い、という制度です。

例えば、消費税率10%で、110円(税込)のものを売ったとします。このとき、売上税額は10円です。2割特例を適用できる方は、この10円の2割、つまり2円のみを消費税として納税すれば良い、ということです。

また、注意したいのは、制度施行前にインボイス登録していた方については、2023年10月1日スタートなので、2023年10月、11月、12月の3ヶ月分の消費税の納税だけで済みます。そのため、10月、11月、12月の売上の消費税額を合計して、その消費税の2割を算出すれば良い、ということになります。例えば、3ヶ月の売上の合計が220万円(税込)であれば、消費税20万円の2割なので、4万円の納税のみで済みます。

ケース3:インボイス制度が施行されても、免税事業者のままである場合【変更点なし】

インボイス制度が施行されても、インボイス登録をせず、免税事業者のままだった方の場合、確定申告は所得税のみこれまで同様に行います。

消費税の確定申告の計算方法|インボイス登録した個人・中小企業は必見!

2023年度確定申告分の消費税の計算方法は、3種類あります。2割特例、原則課税、簡易課税の3種類です。その3種類の方法について、あらためてご説明します。

2割特例

上述したように、インボイス制度に登録するために、免税事業者から課税事業者になった方は、「2割特例」を利用できます。ただし、インボイス制度施行前に「適格請求書発行事業者の登録申請書」を提出して課税事業者になった場合です。2023年の10月1日のインボイス制度施行とともに免税事業者から課税事業者になった方のほとんどは、このパターンに該当します。

この場合は、売上の消費税額の2割を計算して納税します。

原則課税

インボイス制度開始前に「消費税課税事業者選択届」を提出して課税事業者になっていた場合で、その課税期間の初日の前日(個人事業主の場合、2022年の12月31日)までに、「消費税簡易課税制度選択届出書」を納税地の所轄税務署長に提出していない場合、原則課税方式で消費税を計算します。

原則課税方式とは、売上の消費税額から仕入にかかった消費税額を控除(仕入税額控除)を差し引いて納税額を計算します。原則課税の場合には、仕入れ先からもらった請求書などのインボイスがなければ、仕入税額控除できません。

一番事務負担が大変な方法ですが、後述する簡易課税方式と比べてこちらの方が納税額が少ない場合、原則課税を選択する方もいます。

簡易課税

インボイス制度開始前に「消費税課税事業者選択届」を提出して課税事業者になっていた場合で、その課税期間の初日の前日(個人事業主の場合、2022年の12月31日)までに、「消費税簡易課税制度選択届出書」を納税地の所轄税務署長に提出していた場合、簡易課税方式になります。

簡易課税はその名の通り、原則課税よりも、「簡易」な計算方法になります。売上にかかった消費税額から、それぞれの業種ごとの「みなし仕入率」を消費税額に掛け合わせた金額を差し引いた金額を納税します。

例えば、サービス業であれば「みなし仕入率」は50%になります。このとき、110万円(税込)の売上であれば、消費税額10万円から、10万円の50%(つまり5万円)を差し引いた5万円が納税額になります。

業種ごとの「みなし仕入率」については、国税庁「No.6509 簡易課税制度の事業区分」をご確認ください。

消費税の確定申告について、詳しくはこちらの記事を>>
個人事業主も消費税の確定申告は必要?計算方法や必要な書類、書き方などを解説

確定申告の手順

それでは、あらためて確定申告の手順をご説明します。

青色申告か白色申告かを決める

多くの事業者の方がすでに済ませているかと思いますが、青色申告か白色申告かのどちらで確定申告をするかを決めます。

青色申告を選択した場合、期限内に複式簿記でe-Taxから電子申告をすると、事業収入から最大の65万円まで控除が利用できます。
ただし複式簿記で記帳しなければならないため、記帳の難易度がやや上がります。しかし、確定申告ソフトを使えば難なく記帳・計算できるので、そこまで億劫に感じる必要はありません。また、e-Taxで電子申告するためにはマイナンバーカードが必要になるのでご注意ください。

一方、白色申告を選択した場合、特別な控除は利用できませんが、記帳の負担は少なくなります。

作成方法を選び、作成する

次に、確定申告書の作成方法を以下の4つから選びます。

①確定申告ソフトで作成
②税理士に依頼
③確定申告書作成コーナーで作成
④手書きで作成

確定申告ソフトで確定申告書を作成する場合、確定申告ソフトのガイド・マニュアルに従って操作していくだけで、そこまで苦労せずに確定申告書を作成できます。

また、「何もしたくない」「極力自分の負担は減らしたい」という方は、税理士に最初から相談した方が良いでしょう。その際必要になるのは、日頃から集めている領収書や請求書、給与をもらっている方は源泉徴収票、保険料控除明細書、医療費控除の明細書、寄付金の受領証などです。それらの書類を税理士さんに提出するだけで、確定申告書類を作成してくれます。

申告書類を提出する

最後に、「e-Taxによる電子申告」「税務署窓口への持参」「信書による郵送」「税務署の時間外収集箱へ投函」のいずれかの方法で申告書類を提出します。

消費税の納税方法

確定申告書類を作成し、消費税額を算出したら、以下の5つの方法のどれかで消費税を納税します。

・電子納税(e-Tax)
・振替納税
・クレジットカード納付
・コンビニ納付
・窓口納付

納税の締切は2024年4月1日までですが、振替納税の場合、2024年4月30日に振替になります。期限をギリギリまで引き伸ばしたい場合には、振替納税を選択しましょう。

ただし、振替納税を利用する場合には、3月15日までに振替納税の依頼書を提出する必要があります。所轄の税務署か、利用する金融機関に書面で提出、あるいはe-Taxから提出可能です。

インボイス登録した個人事業主は確定申告の準備をお早めに

以上、インボイス登録をした個人事業主・中小企業者の方向けに、2024年(令和6年)分の確定申告で変わることをメインにご紹介しました。インボイス発行事業者には、例外なく消費税の確定申告が義務付けられます

個人事業主の場合、2024年(令和6年)提出分の締め切りは4月1日(月)までですので、忘れずにお手続きください。




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(編集:創業手帳編集部)

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