法人登記の住所変更に必要な手続きとは?申請方法から気を付けるべきポイントまで解説
会社の住所を変更したら法人登記の変更手続きも必要!
会社の本店を移転する場合、会社の住所は変更となります。それに合わせて法人登記の住所変更をしなければなりません。
初めての住所変更となると、申請手続きに不安を持つ人もいるでしょう。
そこで今回は、会社の住所変更を行う際の流れや法人登記の住所変更の方法、住所変更での注意点などについて紹介します。
今後会社の移転を検討している人は、ぜひ参考にしてください。
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この記事の目次
会社の住所変更を行う際の流れ
オフィスの規模拡大や縮小、戦略的な理由などで本店の移転が必要になるケースがあります。
そうなると会社の住所変更が発生しますが、適切な手順で進めていかなければなりません。
まずは、会社の住所変更を行う際の流れを紹介します。
1.株主総会・取締役会で決議を行う
会社の住所変更をするにあたって、株式総会と取締役会で決議を行います。
定款に町名や番地まで細かく記載されている場合、会社の移転に合わせて定款に記載された住所を修正しなければなりません。
その場合は株式総会で住所変更に対する決議を行って議事録を作成し、参加した株主リストと一緒に法務局に提出する必要があります。
定款に「○○県○○市」と市町村や東京23区(最小行政区画)までしか記載されておらず、同じエリアで移転する際は定款の変更は不要です。
このケースでは、取締役会で住所変更の決議を行い、その際の議事録を法務局に提出します。
取締役会を設置していない時は、取締役の過半数が一致したことを証明する書面が必要です。
2.会社の移転先・日程を決める
具体的な移転先や移転の日程は、取締役会で決めることが可能です。
取締役会の非設置会社は、取締役の過半数が移転先・日程に賛成したことを証明するための書面が必要になります。
なお、取締役会の非設置会社は、移転にともなう定款の変更を決議する時と同じタイミングで、移転先と日程を決めても問題ありません。
3.本店移転登記を作成・提出する
次に本店移転登記を作成し、法務局に提出します。法人登記の住所変更をする際は、株式総会や取締役会の議事録など必要書類を忘れず持参してください。
詳しくは後述しますが、移転先が旧住所と同じ管轄の法務局となるかどうかで、手続きの手間や費用が異なります。
そのため、法務局のホームページから管轄地域を確認した上で手続きを進めてください。
4.税務署や年金事務所などに届け出を提出する
会社の住所変更では、法務局だけではなく税務署や年金事務所などにも届け出の提出が必要です。
なぜなら、会社の本社住所地は様々な機関に提出されているためです。具体的に届け出が必要な場所は以下のとおりになります。
税務署 | 法人にかかる国税は税務署の管轄になるため、異動届出書を提出する |
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都道府県税事務所 | 法人にかかる地方税は都道府県税事務所の管轄となるため、異動届出書を提出する |
市区町村 | 市区町村から課税される税金もあるので、市区町村にも異動届出を提出する |
年金事務所 | 社会保険に関する手続きとして、年金事務所に健康保険・厚生年金保険適用事業所関係変更(訂正)届を提出する |
労働基準監督署・ハローワーク | 社員を雇用していて労働保険に加入していれば、労働基準監督署とハローワークのそれぞれで本店移転の手続きをする |
法人登記の住所変更を行う際の申請方法
法人登記の住所変更には、オンライン申請・窓口申請・郵送申請の3つの方法があります。
各申請方法の特徴は以下のとおりです。
オンライン申請
オンライン申請であれば、法務局の窓口に行かなくても法人登記の住所変更を申請が可能です。
具体的には、登記・供託オンライン申請システムを経由し、代表取締役本人のマイナンバーカードを使って申請することができます。
オンラインであれば、法務局の窓口まで行く余裕がない人も申請できるので便利です。
法人登記の申請では印紙税を納付するために収入印紙の購入が必要ですが、インターネットバンキングで完結できます。
ただし、申請ソフトのインストールや操作方法を学んだり、電子署名の利用登録が必要だったりするため、PCに弱い人は注意が必要です。
窓口申請
窓口申請は、旧所在地を管轄する法務局に窓口に出向いて手続きを行うスタンダードなやり方です。
法務局の窓口を利用する場合、法人登記に関する疑問にすぐに答えてもらえるほか、申請の不備をその場で指摘してもらえます。
初めての法人登記の住所変更で不安や疑問がある人におすすめです。窓口申請では、必要書類と登録免許税の金額分の収入印紙を用意してください。
なお、この方法ではわざわざ法務局に出向く時間が必要になり、交通費がかかるというデメリットがあります。
郵送申請
旧所在地を管轄する法務局に郵送で必要書類を提出する方法があります。こちらもオンライン申請と同じく、窓口に出向かずに法人登記の住所変更申請が可能です。
普通郵便で送ることもできますが、法務局では到達の確認が取れる方法での郵送を推奨しています。そのため、信書便や書留で送達するのがおすすめです。
郵送する際は封書の表面に「登記申請書在中」を明記して、どのような書類を送ったのかわかる状態にしてください。
郵便申請はオンラインと違って、投函から法務局に届くまで時間がかかることが大きなデメリットです。
実際に法人登記の住所変更が完了するまで時間がかかります。
法人登記の住所変更で気を付けるべきポイント
法人登記の住所変更を行うにあたって、注意したい点があります。気を付けるべきポイントとは、以下のとおりです。
会社を移転後2週間以内に変更登記を提出する
法人登記の変更登記は、会社の移転から2週間以内に行うのが原則です。この期限は会社法によって定められています。
そのため、期限内に変更登記を提出しなかった場合、登記懈怠とみなされてしまい、代表取締役に100万円以下の過料が科せられる可能性があります。
1日遅れた程度でペナルティを受ける可能性は低いものの、長期にわたって放置すれば過料を支払わなければなりません。
会社の移転後は速やかに変更登記を提出してください。
移転後2週間以内に手続きを済ませるためにも、移転のスケジュールは移転の日程が決まったら逆算して組むことがポイントです。
商号の変更が必要な場合もある
法人登記の住所変更に併せて、商号の変更が必要になるケースがあります。そのケースとは、移転先の住所に同じ商号の会社が入居している場合です。
移転先と同じ住所に同名の会社があると、その商号は使えないので変更が必要になります。
なお、住所変更と商号の変更は同時申請が可能です。商号を変更する際、他社と似ている商号を付けないように注意してください。
似ている商号の会社とのトラブルや顧客が間違えたり、混乱したりする可能性があります。紛らわしい商号にならないように、事前にしっかり調査してください。
法務局の管轄内外で必要書類が異なる
移転先を管轄する法務局が異なる場合、管轄内での移転とは必要書類が違うので注意してください。
管轄外での移転のほうが必要書類は多くなります。
例えば、管轄内での移転では1部で良い本店移転登記申請書が、管轄外への移転では2部で用意しなければなりません。
ほかにも管轄外での移転では、印鑑届書と印鑑カード交付申請書が追加で必要です。
印鑑カードは、法人の実印の所有者であることを証明するためのカードとなります。
これは本店所在地を管轄する法務局が発行するため、管轄の法務局が変われば新しい印鑑カードの再発行が必要となるので、印鑑届出書と印鑑カード交付申請書が追加で必要となるのです。
自分だけで行うと時間がかかるので注意
自分で法人登記の住所変更を行おうとすると、時間がかかってしまう可能性がある点にも注意してください。
自分で申請する場合、通常業務と並行して手続きの準備を進めていかなければなりません。
担当者が多忙な場合、手続きをする時間を確保できず、期限が過ぎてしまうことが懸念されます。
また、自分で申請をした時、記入ミスや書類不足などの不備があると差し戻しされることがあります。
不備を解消した上で再提出しなければならず、結果的に登記変更が完了するまで時間がかかることになるのです。
初めての登記変更で不安があれば、法務局の担当者に相談したり、司法書士に依頼したりすることでスムーズに申請できます。
会社の移転場所によって異なる手続き・費用
法人登記の住所変更は、会社の移転先場所によって必要な手続きや書類、費用が変わってきます。
ここで、同じ法務局の管轄内で移転したケースと管轄外で移転したケースで、手続きや費用などについて紹介します。
同じ法務局の管轄内で移転した場合
現住所と同じエリアで会社を移転し、管轄の法務局が変わらない場合の手続きや必要書類、かかる費用は以下のとおりです。
必要な手続き
同じ法務局の管轄内で移転する場合、移転日から2週間以内に旧所在地の管轄法務局で法人登記の住所変更を行ってください。
なお、株主総会で定款変更の議決を行った際は、株式総会を行った日が本店移転の日となります。
定款変更を行わない場合、移転後の取締役会の承認決議があった際は、決議の日が移転日となるので注意してください。
必要書類
同じ法務局の管轄内で移転して住所変更を行う際に必要な書類は以下のとおりです。
-
- 本店移転登記申請書
- 株主総会の議事録
- 株主リスト
- 取締役会の議事録
- 取締役決定書
- 委任状
本店移転登記申請書は1部であれば十分です。住所変更によって定款変更があれば、株式総会の議事録と主要株リスト、取締役会の議事録が必要になります。
取締役会非設置会社であれば、役員の過半数が移転に賛同した証拠が必要です。
そのため、取締役が賛同したことを客観的に伝えるために、取締役決定書を用意してください。
登記手続きを会社の代表者など代理人に委任する場合、委任者の氏名や現在の本社所有地などを記載した委任状を用意してください。
費用
法人登記の住所変更で必要となる費用は、3万円の登録免許税です。郵送申請をする際は、郵送費用が発生するため3万円以上となります。
また、司法書士に依頼する場合は、報酬を用意する必要があるので、さらに必要な費用が大きくなります。司法書士に依頼する際の目安は3万円程度と考えてください。
別の法務局管轄内に移転した場合
移転先の法務局が旧住所と異なる場合、必要となる手続きや必要書類、費用、提出場所は以下のとおりです。
必要な手続き
異なる管轄に会社を移転する場合、移転前と移転先の両方の管轄法務局で手続きが発生します。
移転前の管轄法務局では、本店移転をすることを示す転出の登記申請が必要です。そして、移転先の管轄法務局では、転入の登記申請を行います。
必要書類
異なる管轄に会社を移転する際に必要な書類は以下のとおりです。
-
- 本店移転登記申請書(2部)
- 株主総会の議事録
- 株主リスト
- 取締役会の議事録
- 取締役決定書
- 印鑑届書
- 印鑑カード交付申請書
- 委任状
基本的に必要な書類は管轄内の移転と同じです。しかし、新旧所在地の管轄法務局で手続きが発生するため、本店移転登記申請書が2部必要になります。
さらに、管轄法務局が変更となることで印鑑カードの再発行も必要となるので、印鑑届書と印鑑カード交付申請書も追加で必要です。
費用
法人登記の住所変更で必要になる費用は、6万円の登録免許税です。
本店移転登記申請書を2部用意することになるので、それぞれの申請書に3万円の収入印紙を貼り付けなければなりません。
そのため、合計6万円の登録免許税が必要となるのです。
管轄内で移転する場合と同じく、郵送申請では郵送費用がかかり、司法書士に依頼する場合はその報酬も考慮しなければなりません。
司法書士に依頼する際の相場は5万円程で、管轄内で移転するケースよりも少し高くなる可能性があります。
提出場所
必要書類の提出先は、旧所在地の管轄法務局です。
新住所の管轄法務局で転入の手続きが発生しますが、旧所在地の管轄法務局が申請書類を送ってくれるため、自動的に受理されます。
そのため、新住所の管轄法務局で特に手続きをする必要はありません。
まとめ・法人登記の住所変更を行う際は事前の準備が大切
会社を移転する際は、定款の変更や法人登記の住所変更を行わなければなりません。
移転後、期限内に住所変更を行わないとペナルティの対象になってしまうので注意してください。
また、移転先の管轄法務局が新旧住所で変わるかによって、用意しなければならない書類が少し異なります。
手続きに自信がない、自分でやる時間がない人は、多少費用がかかっても司法書士に依頼するのが無難です。
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(編集:創業手帳編集部)