Googleの無料サービスで起業時に必要なITシステムは作れるの?プロがGoogleのサービスで考えてみた!
起業時に必要な社内システムって何?Googleの無料サービスで対応可能?ITが苦手な方にもわかりやすく解説
Googleの無料提供サービスが事業用ITシステムにどのくらい役立つか知っていますか?
事業を営むためにはメールやホームページだけでなく、会計ソフトなどの社内システムを用意しておく必要があります。
しかしながら、創業時にはできるだけ社内整備にコストをかけずにスモールスタートを切りたいと考えている起業家や、社内システムのコストダウンを検討している企業も多いのではないでしょうか。
そこで注目したいのがGoogleの無料サービスです。
本記事では、事業用のITシステムの種類や、代表的なインターネットサービスGoogleが無料で提供しているサービスについて解説します。
※この記事を書いている「創業手帳」ではさらに充実した情報を分厚い「創業手帳・印刷版」でも解説しています。無料でもらえるので取り寄せしてみてください
この記事の目次
企業で使うITシステムにはどんなものが必要?
まずは、自社に必要なITシステムをピックしましょう。一般的な企業が社内で利用するシステムは、主に次の5種類です。
会計システム
会計システムとは、企業が行う取引の仕訳や、各種帳票の発行、請求書/領収書などの書類発行、決算資料の作成などを行うシステムの総称です。会計ソフト、会計ツールなどその呼び名もさまざまで、細かな機能や特徴もシステムによって異なります。
会計業務は企業活動のさまざまな取引を記録し、事業活動の結果や納税額などを決定する重要な業務で、処理すべき仕事も多く正確性や専門知識が求められます。そのため、知識のある担当者を置いたり、専用のシステムを利用したりするのが一般的です。
コミュニケーション用システム
本稿における「コミュニケーション用システム」とは、社内外でコミュニケーションを行うためのシステムやサービスだと考えてください。
具体的には、Webサイトを作るためのサーバーや、電子メールサーバー、また社内で連絡や会議を行うためのチャットツールやビデオ会議ツールなどのことです。
今やビジネスには必須となっているコミュニケーション用システムは、事業活動の効率性に影響が大きいことから、企業規模が大きくなるほど投資が行われる傾向があります。また、情報セキュリティやテレワーク、BYOD対応など関連分野へのニーズも旺盛です。
ドキュメント管理用システム
ドキュメント管理用システムとは、企業内で扱うさまざまな資料の保存や共有のために使われるシステムを指しています。ファイルサーバーやクラウドストレージ、ファイル転送サービスなどをイメージしてください。
企業では登記関連書類や定款、労働規約、会計帳簿など保管すべき書類が数多くあります。以前は紙での資料保管が義務づけられていましたが、今は多くの書類をデータで保存することが可能になっていますので、資料の管理・保存やオフィスの効率化のためにも重要です。
オフィスソフト
仕事の中で利用することの多い、オフィス事務で使う文書作成ソフトや表計算ソフト、プレゼンテーションソフトなどです。
紙の資料や伝票でやりとりしている企業を除けば、資料の閲覧や作成においても必須で、これなしにはビジネスはできないと言っても過言ではありません。
その他
その他、飲食・小売業におけるPOSレジのように業種によって必要になるシステム、グラフィックデザイナーが使うグラフィックソフトのような職種によって必要なツールなどが業務で必要になります。
業界や職種で種類やコストが違うため、起業時にはこれらのソフトのコストも十分確認しておくとよいでしょう。
Googleの無料サービスでできること・できないこと
インターネットサービス大手のGoogleでは、事業活動にも利用できる無料サービスを多数提供しています。
これらをビジネスユースで活用した場合、事業用のITシステムをどのくらいカバーできるのでしょうか。上で紹介した、それぞれのシステムについて考えてみましょう。
会計システムは「不可能ではないが不便」
会計業務用のシステムはGoogleからは現在のところ提供されていません。
Googleの無料サービスで提供する場合、基本的には表計算ソフトのGoogleスプレッドシートを使って会計で必要になるさまざまな書類を作成することになります。
担当者に簿記や会計の知識とスキルがあればスプレッドシートでの管理は可能です。しかし、さまざまな伝票や請求書、領収書の発行、財務状況の報告や週次・月次での決算など業務は多岐にわたります。
こうした中で業務を効率的にできる会計ツールへの需要は高まっています。士業など少人数でもできる事業を除けば、現代の企業ニーズを考えると専用システムを使わない会計業務は現実的ではありません。
別途導入する必要がありますので、オフィスソフトや金融機関の提供サービスなどとの連携を考えながら選ぶのがよいでしょう。クラウド型の会計ソフトなら、コストも安く多機能で、法改正などにも自動的に対応してくれるので便利です。
コミュニケーション用システムは「容量以外は問題なし」
Googleはコミュニケーション用のさまざまなサービスを提供しているので、これをそのままビジネスに使ってもある程度までは問題ありません。
企業ホームページはGoogleサイトを使えば無料で作成してインターネット上に公開することができます。メールもGmailを利用することはできますが、ビジネスで利用するべきかどうかは慎重な検討が必要です。
たとえば、無料のサービスでは個人のGoogleアカウントごとに15GBが割り当てられていますので、画像や重量のあるドキュメントの送受信が多い人ならすぐにこの容量を使い切ってしまいます。
他サービスの容量と統一管理されているため、他のサービス利用にも影響が出る可能性にも注意が必要です。Googleサイトは個人アカウントの場合、1サイトあたりの容量は100MBですので、ページ数や画像の多いサイトだとすぐにいっぱいになってしまいます。
また、ホームページやメールでは、ドメインが外部に対して表示されるため「sogyotecho.jp」のような独自ドメインを取得した方が企業は信用を得られます。
レンタルサーバーの利用はマストではありませんが、少人数なら1台でWebサーバーやメールサーバーなど何かと使えますのでできれば利用した方がよいでしょう。ドメインとレンタルサーバーはそれほど高機能を求めなければ年間2万円ほどで利用できます。
その他、チャットツールとして無料のGoogleハングアウト(※2021年サービス終了予定)、ビデオ会議ツールとしてGoogle MeetやDuoなどのサービスが提供されています。
これらは数人で利用する程度なら機能も十分です。また、カレンダーやToDoリストもあるので予定やタスクの共有も可能です。
ドキュメント管理用システムも「容量が十分なら高機能」
Googleの無料サービスでドキュメント管理を行うなら、GoogleドライブやGoogleフォトを利用することになるでしょう。高い検索能力や、マルチデバイスへの対応、アクセス権管理、ビューアーでのファイル閲覧など機能も十分です。
しかし、どうしても前述の1アカウントあたり15GBという制限があるため、ビジネスユースだと難しいことがあります。必要に応じて容量を拡大したり、DVDなどにバックアップを取って定期的にデータを削除したりといった対策が求められるでしょう。
専用の文書管理システムの場合には承認用のワークフローを備えたものもありますが、Googleのサービス内でワークフロー専用のものはないため、運用でカバーする必要があります。
オフィスソフトは「ほぼ問題なし」
GoogleではGoogleドキュメント、Googleスプレッドシート、Googleスライドといったオフィスソフトを提供しているため、オフィスソフトは無料でもビジネスレベルでの活用が可能です。
日本においてはまだまだMicrosoftのOffice製品が主ではありますが、高い互換性があるためそれほど困ることはありません。メモアプリのKeepもクラウド上のデータの同期ができるためマルチデバイスでの利用に便利です。
ただし、どうしても一部の機能は互換性を担保できないため、クライアントによっては別のオフィスソフトを用意する必要が可能性は避けられません。
その他システムは「基本的に対応不可」
その他、業界や職種に特化したタイプのシステムや、業務効率化のためのツールについては、Googleの無料サービスだけでは対応ができないものがほとんどです。
有料のGoogle Workspaceではプログラミング不要のアプリ作成ツールが提供されており、業務のニーズに合わせてツールを自作できます。
Google無料サービスによるITシステム 評価まとめ
Googleの無料サービスを使って、企業のITシステムを構築した場合の評価をまとめると下の表のとおりです。
システムの種類 | 対応するGoogle無料サービス | おすすめ度(5段階) | 寸評 |
---|---|---|---|
会計システム | スプレッドシート | ★★ | 不可能ではないが非効率 |
コミュニケーション用システム | Gmail、Googleサイト、Meet、ハングアウト等 | ★★★★ | サーバー容量は心許ないが、中小企業なら十分な機能 |
ドキュメント管理用システム | Googleドライブ、フォト | ★★★ | ワークフロー以外機能は申し分なし。容量アップがほぼ必須か |
オフィスソフト | ドキュメント、スプレッドシート、スライド | ★★★★★ | 十分な機能と高い互換性で十分使える。一部例外に注意。 |
その他 | なし | ★ | 基本的にサービス対象外 |
こうしたサービスの特性を知っていれば、スタートアップ時のシステム関連コストの削減に役立つでしょう。また、無料で使えるものは逆に見れば「シャドーIT」(※)になりやすいものでもありますので、企業のシステム担当者は注意しておく必要があります。
※シャドーIT:企業・組織側が把握していない、従業員や部門が独自に業務利用しているデバイスやサービス。セキュリティインシデントの温床になるリスクがある
意外と少ない?!企業に本当に必要なITシステム
最後に、起業時のITシステム導入において知っておくべきポイントについて紹介します。
企業にとってマストなITシステムは「会計システム」
ビジネスはコンピュータのない時代から存在していますので、企業がビジネスを行う上で本当に必要なシステムというのはほとんどありません。業種を問わず、実務上絶対にあった方がいいものを選ぶとしたら「会計システム」です。
これだけは起業時からしっかりしたものを導入しましょう。システムの有無で業務効率や割り当てる人材の幅が大きく変わるため、少なくとも青色申告をするなら投資を渋るべきではありません。
企業の属する業界・業種によって必要なシステムは異なります。しかし、導入が必要なタイミングや求められる質はそれぞれですので、しっかりと優先準備を決めて導入を進めましょう。
初期投資を抑えるならサブスクリプションを活用する
スモールスタートのために初期投資を抑えたいのであれば、企業で利用するITシステムはできるだけクラウドで提供されているサブスクリプションサービスを利用しましょう。
クラウドで提供されているサービスのメリットで、特にスタートアップにとって重要なのは以下の4点です。
- クラウドサービスのメリット
-
- 初期費用がほとんど不要で、月or年単位で課金されるため最初期のキャッシュに余裕ができる
- 人数や容量で料金が変わり、追加や削除が簡単でコストをコントロールしやすい
- 常に最新の状態に自動アップデートされるため、ソフトの更新や改修が不要
- 専門ノウハウや見える化のための機能が充実しており、経営や業務が効率化する
特に初期投資を抑えられるメリットは大きく、キャッシュに余裕ができることで精神的にもゆとりが生まれ、腰を据えた営業活動がしやすくなるでしょう。
業務用システムのスクラッチ開発は高コスト
外部向けのシステムや業務用アプリケーションをスクラッチ開発(何もないところから開発)する場合、ITベンダーに注文すると数十万円~数百万円は必要になります。
日本では長らく業務に合わせてシステムを作る傾向がありましたが、今はシステムに業務を合わせていくのがトレンドです。開発を検討する場合は、自社開発にこだわるべき部分なのか既存のソフトやサービスを使って作れないかをよく検討してください。
また、ノンプログラマーでもアプリが作成できるツールもありますので、上手に活用しましょう。
無料・有料のサービスを上手に組み合わせてITシステムを作ろう
インターネット上で提供されている無料サービスの中には、Googleの各種サービスのように企業用のITシステムとしても十分に活用できる機能をもったものも多いです。しかし、業務の効率性や安全性といった点からは、やはり無料サービスに完全に頼ったITシステムは難しいと考えた方がよいでしょう。
スタートアップにおいては、最初は無料システムやサービスを使用しつつ、資金に余裕ができてきたら有料の専用サービスへ移行していくとよいでしょう。ただし、会計システムだけは最初から導入した方が安心です。
Googleでは、各種のビジネス向けツールを組織で利用できるサブスクリプションサービス「Google Workspace」を提供しています。
組織向けの連携・管理機能が強化されているほか、外部サービスとの連携で無料版の多くの短所が補われていますので、創業時のシステム基盤作りにぜひご活用ください。
創業手帳では、日本初のリモートワークのためのガイド ブック「リモートワーク手帳」が創刊されました!リモートワークに必要な情報が満載の冊子を無料でお届け致します。あわせてご活用ください。
(編集:創業手帳編集部)