減価償却の仕訳方法について解説!覚えておきたい計算方法
減価償却の仕訳方法について理解しよう
減価償却は、普段の取引きでは使わないような勘定科目が多く、混同しやすい部分です。
しかし、その内容について正しく理解していないと会計処理や管理でトラブルに発展するかもしれません。
減価償却に使う勘定科目や仕訳方法について、どういったケースがあるのか知っておくことが大切です。
ここでは、ケース別に減価償却の仕訳方法を紹介しているので参考にしてください。
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この記事の目次
減価償却に用いられる勘定科目は2種類
店舗や事務所を運営するために、パソコンや車両といった固定資産を使っている企業は多いでしょう。
会社のために購入した備品や車両は、有形固定資産であり、決められた期間で取得価額を分割して計上します。
こういった費用を使用期間にわたって分配するための会計処理が減価償却です。まずは減価償却に使用する勘定科目について解説します。
減価償却費
減価償却費とは、減価償却によって計上される費用を指す勘定科目です。減価償却は、毎年計上する費用を指巣勘定科目で損益計算書では費用に分類されます。
減価償却は、固定資産を取得するために支払った取得原価を耐用年数で分割して費用計上することが目的です。
例えば、取得原価100万円の固定資産を耐用年数10年で減価償却する場合は、毎年10万円の減価償却を計上します。
もしも購入した年に100万円を計上してしまうと、資産は長期的に収益に影響するにもかかわらず、取得した年に費用が集中してしまいます。
そこで、費用と収益を対応させるために減価償却の処理が必要です。
減価償却累計額
減価償却累計額は、固定資産を減価償却した時の減価償却費の累計額を指す勘定科目です。
資産の種類ごとに減価償却累計額を把握するため、建物減価償却累計額や機械装置減価償却累計額といった分類を使うことがあります。
減価償却費と減価償却累計額の違い
減価償却費と減価償却累計額では、記載される財務諸表が違います。
減価償却費は、経費として損益計算書に記載されるものです。一方で、減価償却累計額は貸借対照表の資産に分類される勘定科目になります。
経費である減価償却費は、当期のみ計上して繰り越すことはできません。
一方で資産は繰り越すことができるため、減価償却累計額は取得してから登記末までの償却費合計額が表示されます。
減価償却の仕訳処理で覚えておきたい計算方法
減価償却するには、様々な方法があります。
定額法、定率法や生産高比例法、級数法などがあり、今回はその中でも使われることが多い定額法と定率法についてそれぞれ紹介します。
定額法
定額法は、毎年同額を減価償却費として計上する会計処理方法です。200万円で購入した資産が耐用年数10年だった場合、毎年20万円を減価償却費として計上します。
定額法は、計算がシンプルで初年度から終了の年まで減価償却費が一定です。個人事業主は、原則として定額法で会計処理を実施します。
定率法
定率法は、未償却残高に定率法償却率を乗じて減価償却費を計上する方法です。
200万円で耐用年数10年の固定資産を購入した場合、償却率「0.200」 を使用した場合を考えます。
初年度は、取得原価に定率法償却率を乗じるため、200万円×0,200で40万円が減価償却費です。
次の年には取得原価である200万円から初年度の40万円を差し引いて残る160万円に
0.200を乗じます。すると32万円です。
定率法は、毎年未償却残高が小さくなって償却が終わるまで時間がかかります。そこで改定取得価額と改定償却率を用いて計算します。
定率法は、計算が複雑になるものの初年度の節税効果を大きくできる点が特徴です。
減価償却の仕訳方法
減価償却費は、直接法と間接法に分けられます。どちらの仕訳でも減価償却費を経費と計上するのは同じですが、それぞれに特徴があります。
減価償却費を計上する直接法と間接法についての解説です。
直接法
直接法は、固定資産から減価償却費を直接差し引く方法です。原則として、無形固定資産は直接法が使われます。
以下では、直接法を選択した場合の仕訳を紹介します。
〈例〉100万円で購入した耐用年数10年の備品を定額法で減価償却する。
減価償却する方法は直接法を採用する 。
借方 | 貸方 | ||
減価償却費 | 10万円 | 備品 | 10万円 |
直接法では、借方に減価償却費、貸方には固定資産の勘定科目を記載します。資産から減価償却費分を直接減らしていく方法です。
直接法を使用すると固定資産の現在の価値としての帳簿価格は把握できます。しかし、貸借対照表で取得価額を知ることができません。
そのため、減価償却累計額を表示して取得価額を求められるようにします。「帳簿価格+減価償却累計額」で計算することができます。
間接法
間接法は、直接法のように資産から直接減価償却費を差し引きません。有形固定資産は間接法が適しているとされています。
間接法の場合でも、借方には減価償却費に計上するのは同じです。貸方には減価償却累計額を記載します。
〈例〉100万円で購入した耐用年数10年の備品を定額法で減価償却する。
減価償却する方法は直接法を採用する 。
借方 | 貸方 | ||
減価償却費 | 10万円 | 減価償却累計額 | 10万円 |
間接法でも借方に減価償却費を計上するのは直接法と同じです。違うのは貸方で資産から差し引くのではなく減価償却累計額を記載します。
そのため、固定資産の取得原価は把握でき、帳簿価額は「取得価額-減価償却累計額」で計算可能です。
減価償却の特例を利用した際の仕訳方法
減価償却は、資産の種類などに応じて仕訳方法が違うものがあります。例えば、土地や一部の美術品は、通常は価値の減少が起きないので減価償却の対象外です。
ここでは、減価償却の特例を利用した時の仕訳方法について紹介します。
一括償却資産
一括償却資産とは、取得価額が10~20万円の資産です。年度の途中で資産を購入した場合は、原則として月割で費用を計算します。
しかし、一括償却資産は、いつ購入しても1年分の費用を減価償却費として計上可能です。
一括償却資産は、固定資産税もかからず節税にも活用できる点が魅力です。一般の減価償却資産と同じように直接法か間接法を選んで適用できます。
〈例〉15万円で購入した備品を一括償却資産として減価償却する。
減価償却する方法は直接法を採用する 。
借方 | 貸方 | ||
減価償却費 | 5万円 | 備品 | 5万円 |
一括償却資産は、3年にわたって均等に償却します。購入日に関係なく3年間の均等償却なので、計算も簡便です。
少額減価償却資産の場合
少額減価償却資産とは、10~30万円の資産のことです。青色申告者は、これらの資産を購入した年に一括で経費計上できます。
ただし、青色申告者だけに認められた制度なので、少額減価償却資産を計上するためには、すでに青色申告者であるか期限までに青色申告承認申請書を提出しなければいけません。
〈例〉20万円で購入した工具器具を一括償却資産として減価償却する。
減価償却する方法は直接法を採用する 。
借方 | 貸方 | ||
減価償却費 | 20万円 | 工具器具備品 | 20万円 |
少額減価償却資産による特例は一括で経費計上ができます。一括償却資産の特例とどちらのほうが節税になるか実際にシミュレーションしてみてください。
【ケース別】減価償却(減価償却資産)を仕訳するポイント
減価償却をスムーズに処理するためには、減価償却のケースごとに仕訳について理解しまてください。
中古品を購入した場合や年度途中で購入した場合などそれぞれのポイントを紹介します。
中古資産を減価償却で仕訳する場合
中古の備品や工具を購入するケースについて考えてみます。中古資産は、すでに使用されている資産なので新品の資産と比較して価値は低くなるでしょう。
そのため、法定耐用年数ではなく、使用開始後の使用可能期間を見積もって計算することが可能です。
しかし、中古資産を取得した時の価格が、同じものの新品を買った時の価格の50%以上の場合は、中古資産であっても法定耐用年数を使用します。
耐用年数の計算方法
中古資産では、法定耐用年数のすべてを経過した中古資産と法定耐用年数の一部を経過した中古資産なのかによって計算方法が違います。
①法定耐用年数のすべてを経過した中古資産
耐用年数=法定耐用年数×20%
上記の式で計算して、端数は切り捨てて、計算結果が2年未満になった時には耐用年数2年とします。
②法定耐用年数の一部を経過した中古資産
耐用年数=(法定耐用年数ー経過した年数)+(経過した年数×20%)
年度の途中で減価償却資産を仕訳する場合
固定資産を年度の途中で取得したような場合、減価償却費は1年分を計上するのではなく月割で計算して計上しなければいけません。
もしも3月決算の企業において11月1日に減価償却資産を購入した場合には、11月から3月の5カ月分の減価償却費を月割で計算して計上します。
減価償却費を月割計算する時の計算は下記のものです。
減価償却開始年の減価償却費=取得価額×定額法の償却率×(計上月数÷12)
定額法を用いた月割計算
定額法は、計算がシンプルで一定額の減価償却費を毎年計上します。下記のケースで減価償却費を月割で計算した場合を確認してください。
〈例〉耐用年数4年の工具器具備品を取得150万円で購入した。減価償却開始は12月20日で決算日は3月末である。定額法を使って仕訳する。
取得価額150万円÷4年×4/12=12万5千円
上記の計算で直接法で会計処理すると以下のようになります。
借方 | 貸方 | ||
減価償却費 | 12万5千円 | 工具器具備品 | 12万5千円 |
上記の仕訳では12月に購入した工具器具について処理するため、4カ月分でどれだけの減価償却費がかかるかの計算が必要です。
また、購入日が12月中ですが、日割り計算はしないため、12月を含めて3月までの4カ月分の減価償却費を計上します。
定率法を用いた月割計算
定率法を選択すると、初年度に計上する減価償却費が大きくなり、年数を経るごとに少なくなっていきます。
上記で定額法を使って仕訳した場合と、定率法での仕訳を比較してください。
〈例〉耐用年数4年の工具器具備品を取得150万円で購入した。減価償却開始は12月で決算日は3月末である。
定率法の償却率は、0,500とする。
150万円×定率法の償却率0.500×4/12=25万円
借方 | 貸方 | ||
減価償却費 | 25万円 | 工具器具備品 | 25万円 |
定率法は、定額法と異なって、減価償却費を計算する時に未償却残高を使用します。
つまり、翌年の減価償却費を計算する時には取得価額から減価償却費を差し引いた残高に定率法の償却率を乗じて計算します。
もしも月途中で固定資産を購入して減価償却する場合でも当月に取得した固定資産は1カ月分としてカウントする点にも注意が必要です。
日割り計算せずに当月の減価償却を計上してください。
プライベートでも使用する減価償却資産を仕訳する場合
事業のために購入したものの中には、事業とプライベートの両方で使用するものもあるかもしれません。
具体的には、ビジネスとプライベートの両方で使用する車両やパソコンなどがあります。こういった場合には、事業用の割合に応じて減価償却をします。
車両の場合には、使用距離から計算するのが一般的です。また、パソコンなどの場合には使用時間などを利用できます。
例えば、減価償却費が20万円で事業とプライベートの半々で利用している車両を考えてください。この場合は、減価償却費を計算してから事業割合である50%を乗じます。
直接法で仕訳すると以下のような仕訳となります。
借方 | 貸方 | ||
減価償却費 | 10万円 | 工具器具備品 | 10万円 |
プライベートと事業で使用したものの経費は、事業分だけを経費計上しなければいけません。
経費計上してからどのように減価償却費を算出したのか、計算の根拠を聞かれる可能性もあります。
使用時間や走行距離などどういった根拠で算出したか必ずこたえられるようにしてください。
まとめ・減価償却の仕訳方法を理解して正確に会計処理を行おう
減価償却は、固定資産の取得原価を耐用年数に応じて分割する処理です。備品や車両といった固定資産は長期的に使用するため、時間の経過とともに価値が下がります。
取得した時点ですべて経費とするのではなく、使用できる期間で分割計上する処理が必要です。
減価償却の考え方は、費用計上にかかわるだけでなく資産の価値算定にも使われます。
会社における資産は決算にも記載する必要があるので正しく理解して会計処理するようにしてください。
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(編集:創業手帳編集部)