シリコンバレーはもう古い!? 全米屈指の起業家輩出都市、コロラド州の魅力

創業手帳

地方創生+グローバル展開を目論む”進化系VC” FVC代表 松本直人氏インタビュー

(2017/03/02更新)

独立系ベンチャーキャピタルとして、国内各地に拠点を持ち、地域に密着して投資活動を行っているフューチャーベンチャーキャピタル株式会社。
国内において「地方創生」「オープンイノベーション」の2軸で展開している同社ですが、次なる展開として視野に入れているのが海外市場です。中でも注目しているのが、アメリカ中心部に位置するコロラド州。なぜ、シリコンバレーではなくコロラド州を次なる一手として選んだのでしょうか。
今回は、フューチャーベンチャーキャピタルの今後の事業展開について、代表取締役社長の松本直人さんに取材しました。

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松本 直人(まつもと なおと)
1980年生まれ。2002年に神戸大学経済学部卒業後、新卒採用によりフューチャーベンチャーキャピタルに入社。ファンド企画・募集から、ベンチャー企業への投資実行・育成支援まで、ベンチャーキャピタル業務全般を経験。2011年に取締役に就任。2016年1月より代表取締役社長に就任。

全米屈指の起業家輩出都市、コロラド州の魅力

ーフューチャーベンチャーキャピタルは、VCとして日本で地方創生を行う一方、グローバル展開も視野に入れているんですよね。

松本:はい。「地方創生」「オープンイノベーション」の2軸を掲げていますが、アメリカのコロラド州での地方創生にも挑戦しています。

ーなぜコロラドなんでしょうか。

松本:きっかけは、コロラド在住で大学のTLO(※)の仕事をされている方と知り合ったことです。アメリカでビジネスをするためには、インナーサークルに入っていないと情報の質も量も弱くて戦えないんですけど、その人がインナーサークルに入っていて、紹介してもらえたんです。

※TLOとは:
Technology Licensing Organization。大学の技術移転機関のこと。

あと、これは後で分かったことなのですが、アメリカの起業率を都市ごとにランキングした結果、トップ10には、デンバーやフォートコリンズなどコロラド州のメイン5都市がランクインしています。これ、凄いことなんですよ。

ーコロラドの起業率が高いのは、どうしてなんでしょうか。

松本:構造はシンプルですよ。インド系・中国系のハングリーな人は、一攫千金を狙ってシリコンバレーに進出します。それに比べて、最近のミレニアル世代(※)は基本的に裕福で、食うに困ったことがないという人たちです。そういう人たちは、仕事に対していかにライフスタイルとビジネススタイルを両立させるかに重点をおく傾向があって、その層がコロラドに集まっているんです。

ミレニアル世代とは:
1980年代から2000年代初頭に生まれ、2000年以降に成人、あるいは社会人になる世代を指す。日本でも「81世代」の起業家が注目されている。個人主義傾向の強かったそれまでの世代に比べ、共同体への帰属意識が強く、社会貢献に積極的という特徴がある。

なぜなら、コロラドは自然環境が良く、所得層も高いんですよ。アメリカには危ない地域もありますし、治安が良くて、環境も良くて、生活もしやすいというところに起業したい人が集まっているというのが現状ですね。

実は今、グーグルのR&Dセンターもコロラドにできているんです。他には、ITも、航空宇宙産業も、アグリテックも集まっていて、業種分類に関しても、非常にいい素地ができているんです。

ー魅力的な土地ですね。

松本:はい、見ていけば見ていくほど魅力的なんです。しかも、外資系VCがいないんですよ。エンジェルのシードマネーはあるんですが、その次は何千億単位のファンド。初期段階のビジネスに投資するプレイヤーがコロラドにはほとんどいません。

だから、弊社がコロラドに行くと公言すると、地域の人達も歓迎・応援してくれるんです。ポストが空いていたので、ちょうど良かったんです。

ー――アメリカに比べて、日本は起業する人に対して、使われていないお金が構造的に多い印象です。よりリターンが望めるようなコロラドのような土地に、日本で活用されていないお金を持っていくのは、良さそうですね。

松本:そうですね。それもいずれやろうと考えています。

VC業界のビジネスモデル転換を目指す

ー今後、フューチャーベンチャーキャピタルとしての目標はありますか?

松本:そうですね。ベンチャーキャピタル(以下、VC)業界自体のビジネスモデルを変えることで、リスクマネーを倍増したいと思ってます。現在、国内でのベンチャー投資はたったの700億しかなく、ファンドの組成額についても、アメリカの20分の1に過ぎません。

ーそもそも、日本にリスクマネーが少ないのはなぜでしょうか。

松本:答えはシンプルですよ。単に、投資してもリターンが少ないからです。不安定なんですよね。

なぜ不安定なのかというと、投資のリターンをIPOに完全依存しているからです。もっというと、国内ではM&Aという形でグッドエグジットが生まれにくいんです。

この件については「本当かな」と思って、直近10年間について調べてみたんですよ。すると、日本ではIPOによる回収が10年間平均で500億円くらいしか資金を回収できていなかった。(日本でのVCの回収はIPO80%、M&A20%くらいなので全体で630億円の回収を仮定しています。)ちなみに、アメリカはIPO10%でM&A90%くらい回収していますね。

なので、年間630億しか回収できない市場に、630億円以上のリスクマネーを入れたらロスするわけです。

ーなるほど。IPOとM&Aの比率について考える必要がありそうですね。

松本:そうですね。アメリカのようにM&Aの比率を変えていくのか、もしくはIPOしなくても、企業がしっかり成長すれば投資が回収できる仕組みを作るというのが、弊社が考えている解決方法です。

後者でいう、「企業が成長したらちゃんと回収できるよ」という仕組みについては、種類株式(詳細は後述)を用いています。これをフランチャイズ化しようとしているのが、今後の展開です。

ー具体的には、どのように進めるお考えですか?

松本:種類株式の仕組みを弊社がパッケージ化して、それを地域金融機関に広げていこうと思っています。100個の地域金融機関に同じような仕組みがあれば、1つの地域金融機関が年間10億投資をするだけで、リスクマネーが年間1,000億増える計算になりますよね。そうすれば、リスクマネーの倍増も現実的になります。

今は、フランチャイズ化のために必要なシステム投資や、人材育成や、ノウハウを作り上げているところです。

ー従来のベンチャーキャピタルから、ガラッと変わりますね。

松本:そうですね。金融機関がベンチャー企業を探して、審査して、実行して、経営状況をチェックして…とVC業務を行うことになりますから。

そこに対して、弊社はフランチャイズ本部としてハンズオンに特化しようと考えています。年間1,000億の投資から生まれる2,000社くらいの会社に対して、本部として事業継続・発展のために必要な機能を提供します。具体的には、販路拡大、海外展開、情報マッチング、広報PR、人材教育、人材派遣、投資以外のリスクマネー供給等ですね。ビジネスモデルの大きな転換です。

企業にとって有利な資金調達方法「種類株式」

ー先ほどのお話に出てきた「種類株式」について詳しく教えていただけますか?

松本:簡単に言うと、「企業がちゃんと利益を出せば、その株式を自社で買い取る」というスキームですね。株主が議決権を持たない代わりに、「会社がうまく行ったら、一定の株価で買い取ってください」という取得請求権を付けています。経営権は、全て経営者が持つということです。

ー種類株式を使うと、どのようなメリットがありますか?

松本:企業にとってのメリットは配当と同じで、利益余剰金がプラスでなければ取得請求権を行使されても法的に答える必要がないということですね。黒字が出ていないと、自社株買いはできないんです。ですから、自己資本も増えますし、企業にとって有利な資金調達方法だと思います。

ファンドにとってのメリットはうまくいけば金利を大きく上回るリターンを確保できます。また、金融機関からしても、事業がうまくいった場合に種類株式を融資に切り換えれば貸出が増えます。成長性の高いお客さんにそういうやり方で資金を提供できるのはメリットですよね。地域金融機関の新しい資金供給方法に近いと言えます。

それを、弊社が開発して、ノウハウを提供できる仕組みを作ろうとしているところです。

起業家へのメッセージ

ー起業家として、身に付けておくべきことは何があると思いますか。

松本:今までは、「人の知らない情報を持っている」というのが利益を生む時代でしたが、これだけインターネットが普及している世の中だと、情報自体の価値はありません。ですからスタートアップの場合、いかに人の心を掴んで、応援したいと思ってもらえるストーリーや、応援したいという気持ちを行動に踏み出せるツールをもっているかどうかが会社の競争力になると思います。

日本においても、この点は東日本大震災をきっかけに、すごく変わったんじゃないかなと思っています。

ー日本全体において、ターニングポイントになったということですね。

松本:はい。多分、あの時にいろいろな問題や情報が錯綜する中で、自分たちが生きている意味は「自分だけが満足すればいいんじゃなくて、困っている人の役に立ちたい」という人が一気に増えたと思うんです。ですから、起業家としては「共感力」というのも大切かなと。

アメリカの場合は、多分リーマンショックですね。その時にパラダイムシフトが起きて、ハーバード大を卒業して投資銀行に就職しお金を稼ぐのが良いというモデルから、世の中にどれだけ貢献したかということが重視されるようになった気がします。「ソーシャルアントレプレナー(※)」という言葉も生まれていますし。

ソーシャルアントレプレナーとは:
社会的起業家。社会問題について、政府や民間企業に任せるのではなく、事業として自ら解決に乗り出す起業家のこと。

ー最後に、起業家へのメッセージをお願いします。

松本いかに共感・感動を生むビジネスを作ることができるか。それを影響力のある人たちに広めてもらうというか、そういう人たちを集められるか。これにつきると思います。

今はFacebookやInstagram、LINEといったツールが充実していて、国境も言葉の壁もほとんどなくなっていますから、感動や共感を広めていくことに注力した方がいいですよね。それが、ビジネスの競争力になっていくはずですから。

FVC代表 松本直人氏インタビュー
目指すは“脱キャピタリスト”!?地域密着型VCが描くベンチャーの未来を取材!

(取材協力:フューチャーベンチャーキャピタル株式会社/松本直人)
(編集:創業手帳編集部)

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