目指すは“脱キャピタリスト”!?地域密着型VCが描くベンチャーの未来を取材!

創業手帳

FVC代表 松本直人氏インタビュー

(2017/03/02更新)

独立系ベンチャーキャピタルとして、国内各地に拠点を持ち、地域に密着して投資活動を行っているフューチャーベンチャーキャピタル株式会社。今回は、同社の代表取締役社長・松本直人さんにお話を伺いました。
新卒でベンチャーキャピタルに入社した松本さん。キャピタリストとして活動する中で感じた使命感や、日本のM&A状況に関する問題点、今後のフューチャーベンチャーキャピタルが目指すものについて教えていただきます。

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松本 直人(まつもと なおと)
1980年生まれ。2002年に神戸大学経済学部卒業後、新卒採用によりフューチャーベンチャーキャピタルに入社。ファンド企画・募集から、ベンチャー企業への投資実行・育成支援まで、ベンチャーキャピタル業務全般を経験。2011年に取締役に就任。2016年1月より代表取締役社長に就任。

目指すは「脱・キャピタリスト」!?

ー新卒からベンチャーキャピタル(以下VC)の業界に身をおいておられますが、VCの現状についてはどうお考えですか。

松本:僕は、新卒でVCに入社しているので、VCしか知らないんですよね。15年、良い時期も悪い時期もずっと見てきて、その中で「VCはすごく良いことをやっている」という自負が生まれたんです。

ーその「良いこと」というのは?

松本本当にお金を必要としている人に対してリスクマネーを供給して、その会社の成長支援を一緒にやっていけるということです。手前みそですが、非常に尊い仕事だと感じています。

でも、こんなに尊い仕事なのに、産業自体が全く成長せず、むしろ衰退していると感じています。ポスト2020年を考えると、IPO(新規公開株)も減っていく可能性があって、キャピタリストと呼ばれる人材も業界に残らないという現状があります

ー市場が縮小していく背景には、何があるのでしょうか。

松本:すごく大事な問題なんですけど、投資の結果には再現性がないんですよね。コンサルティングの場合は再現性があって、コンサルティングをしたことに対する結果が他の会社でも活かせるのですが、投資はそうはいかない。博打に近いところがあります。特に、日本はIPOに依存しているので、その傾向が強い。

投資で成功したキャピタリストが、次に同じ結果を出すことができるかというと、そういう再現性はほとんど無いんですよね。だから人が育たない。一発当てたらすぐに辞めて、シンガポールとかに行ったりするんです。

そういう背景があるので、VCを産業として発展させる必要があるというのが、勝手に自分の使命だと思っているんです。僕は、VCしか知りませんしね。

ーお話を聞いていると、キャピタリストには属人的なスキルがとても多い気がします。

松本:そうなんです。だから、キャピタリストの均質化と分業化が大切なのかなと。どうやったらVCが産業として成長するんだろうと考えた結果が、「IPOに依存しない」と「M&Aの価値を高める」という事業の方向性なんです。

国内の市場が先細りなら、海外に行けばいい

ーどうして、日本ではM&Aが盛んではないのでしょうか。

松本:単純な話で、日本の大企業はアメリカのベンチャー企業を高い価格で買っているのに、日本国内のベンチャーはあまり投資の対象になっていないからです。

日本のベンチャーのほとんどは国内のみをマーケットと考えているんです。人口減少で日本のマーケットは縮小していきますから、その中で将来価値を考えた時に、将来の成長根拠に乏しいんですよね。だからM&Aに至らないんです。

ー国内では、どうしても金額的に過小評価になってしまう。

松本:はい。ベンチャーなんて、資産も累積利益もほとんどありませんから。M&Aの値段が上がれば、起業家としては金銭的インセンティブが増えるからもっと活発になるでしょう。M&Aが経営戦略上必要なツールだというのは頭では分かっているんですが、実際値段を突きつけられた時に「こんな金額でしか評価されないんだ」と失望してしまうのが現状でしょうね。

それをもっと高く評価するサイクルになれば、どんどん正のスパイラルが起きていくはずです。そして、そのきっかけは海外市場だと思うんです。

ー国内のベンチャーは海外にも目を向けるべきということですね。

松本:はい。国内の市場が先細りなら、成長市場に行けばいいだけですから。だから、それを弊社が展開していこうと考えています。

ーなにか、具体的なアクションは起こされていますか?

松本:この1年で、アメリカに子会社を設立し、コワーキングスペース(シェアオフィス)事業もスタートしました。今後は、海外展開のために必要な商社機能を弊社が担当して、ベンチャー企業の技術やサービスを海外に販売していく役割を果たそうと考えています。

そのために必要なM&Aの待機資金の調達もやっていますよ。

ーこれまでのベンチャーキャピタルからは大きく変わっていきそうですね。

松本:そうですね。ビジネスモデル自体も、投資でリターンを得るというVCのモデルから、価値創造・バリュークリエイターとしてのビジネスモデルに変えていくというのが今後の展開です。

個人に頼らないハンズオン機能を持ちたい

ーなるほど。価値を創造していく立場になると、「投資は博打」という状況と比較して確実性が上がっていきそうですね。

松本:そうですね。むしろ、「ファンドの質を高める」とう意味でも、1社に対して1人の人間ができることって限界があるんですよね。だから、組織として1社に対するハンズオン機能(※)をしっかり持ちたいと考えています。

※ハンズオンとは:
投資先やコンサルティングを行う企業の経営に深く関与すること。投資ファンドが投資先企業に経営陣を送り込んだり、M&Aをした企業が取締役を派遣して経営に関わったりするスタイルを指す。

でも、それを1社のために用意しても、コストパフォーマンスに見合いませんから、1,000社とか2,000社とか、母数を広げていきたいですね。それによってハンズオンが強化されて、キャピタリスト1個人に頼らないハンズオンが可能になるはずなので。

ーハンズオンは、ちょっと“監査”としての意味合いもありますが、従来のハンズオンとも少し変わったものになりそうですね。キャピタリストに再現性を与えて、会社として取り組むような位置づけでしょうか。

松本:現在行われているキャピタリストのハンズオンを全く否定するわけではなくて、それ自体は必要なものだと思います。ただ、キャピタリストの人数が足りていない。だから増やしたいと思っています。例えば、地域金融機関の行員さんがキャピタリストみたいになれば、世の中もっと良くなるんじゃないでしょうか

ー金融機関がリスクマネーを扱うと。

松本:ただ、金融機関については変わるメリットがないんですよね。いくら将来性のあるビジネスを支援したくても、融資しか使えるツールがありませんから。そこに、エクイティ(※)とう武器を与えるだけで、将来性が可視化される。その将来性をサポートすることで、金融機関自身が得られるリターンも大きくなるという仕組みになれば、金融機関が勝手に考え方を変えていくのではと思っています

※エクイティとは:
株式等によって調達された、返済義務のない資金のこと

その仕組みと人材育成のスキームを、弊社が金融機関さんに提供することで、金融機関自体を変えていけると思うので、そういうやり方でキャピタリストを増やしていきたいですね。弊社だけではできることが限られていますから、フランチャイズという方式を考えています。

ー確かに、日本の資産運用状況は預金とか保険のウエイトが高くて、リスクマネーが低いといいます。金融機関がリスクマネーを投資するためには、人材が不足していますから、そこを解消する仕組みを新しく作られようとしているということですね。

キャピタリストは、経営者と思いを1つにする職業

ーキャピタリストの仕事をされていく中で、印象的なエピソードはありますか?大変だったことでも、良かったことでも。

松本:そうですね。エピソードとしては「お金を預けてくださった方とのエピソード」「投資先企業とのエピソード」の2つがありますかね。

ーでは、お金を預けてくださった方のお話からお聞かせいただけますか。

松本:昔は個人の方々からお金を集めて、そのお金を投資していたので、全く実績がない中で投資してくださったことにすごく恩を感じていたんです。でも、リーマンショックもあって、成績もボロボロで、投資してくれた方に申し訳ないという気持ちにあふれていた時の話です。

2010年くらいでしょうか。ある年の年賀状のやり取りで「フューチャーベンチャーキャピタルが存続している事自体が日本経済にとって良いことなんです。この仕事だけをもっとしっかりやることが大切なんですよ」と書いてくださった方がいて。

これにはかなり感動しましたね。どん底で、心も折れかけているときだったのですが、火が付きました。絶対投資を絶やしてはいけないということで、投資を続けるためにビジネスモデルは変えなきゃいけないというきっかけになりましたね

ーなるほど。その時のやり取りが、現在のビジネスにつながっているんですね。続いて、投資先企業さんとのお話をお願いします。

松本:今まで投資した中で、一番成功した会社とのエピソードが思い出に残っていますね。その会社はエクステリア(ウッドデッキやカーポート等)をインターネット販売している会社で、インターネットで商品を売り出した頃から投資をしています。でも、投資して1年以上ずっと赤字が続いていたんです。

戦略は間違っていないと思っていたので、ずっと社長とディスカッションをして、問題になったのがインフラを確保するところ。

ーインフラというと?

松本:施工ですね。工事をする人が来て、作らなくてはいけませんから。エクステリアの販売は、モノだけでは売れなくて、モノと施工がセットになって初めてサービスが成り立つという商売なのですが、施工インフラを自社ネットワーク化するのが大変で。その部分に投資資金を使いながら、でも利益が出ない…という状態が1年ぐらい続きました。

で、そのあと黒字化できたタイミングがあるんです。こういうビジネスは、一度黒字化するとそのあとはほとんど赤字にはならないんですよね。はじめて黒字化が分かった時、深夜1時ころに「松本さん、今月黒字になったんですよ」という電話があったんです。でも、その電話は眠っていたから取れなくて。翌朝かけ直すと、「黒字になったのが嬉しくて、松本さんに電話したんです」と言われるじゃないですか。

その時、黒字化が判明した瞬間の喜びを分かち合えなかった…という後悔があって。電話が鳴ってたのは知っていたんですよ。ただ、明日でいいやと思って取らなくって。それがずっと頭に残っています。

その電話の瞬間って、経営者にとっては大きなターニングポイントなんですよね。それくらい、キャピタリストは一つの事業や会社に対して思いを共有している仕事なんです

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(取材協力:フューチャーベンチャーキャピタル株式会社/松本直人)
(編集:創業手帳編集部)

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