なぜ”無料”なのに成立する?話題の「無料自動販売機」がウケる理由とは

創業手帳

無料でも企業が利益を得る自動販売機


無料自販機は表面的には「タダ」で利用できる仕組みです。しかし、実態としては企業と消費者の新しい価値交換システムであると考えたほうがわかりやすいです。
消費者は無料で商品を手に入れている一方で、アンケートやSNS投稿という「データ提供」を対価にしています。
対価を受け取った企業は広告効果以上の価値を獲得しているのです。

無料自動販売機の増加は、「モノ消費」から「コト消費」へのシフトを象徴する現象という見方もあります。
体験価値を重視する現代消費者にマッチした無料自動販売機は今後も目が離せません。

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「無料自動販売機」とは?


無料で物がもらえると聞くと、多くの人は「何か裏があるのでは?」と警戒するかもしれません。
しかし、SNSでは「無料自販機」「サンプル自販機」などが話題となり、実際に利用している人が増えています。

無料自動販売機は全国各地の駅や商業施設に設置されており、コスメや日用品などのサンプル商品を配布しています。
さらに「どうして無料で提供するのか?」と商品が無料で提供される仕組みに驚きや興味を持つ人が多く、新しい形のマーケティング手法として注目されるようになりました。

無料自動販売機は、労働力不足から現場の負担を減らすためにサンプルを配るケースのほか、空きスペースの有効活用として導入されるケースもあります。
プロモーションへの活用もされていて、新しい分野での展開も期待されているサービスです。

無料なのにどうやって成り立つ?ビジネスモデルを解説


「どれだけ配ってもお金にならないのであれば、配れば配るほど企業は損しているのでは?」と、なぜ無料自動販売機を設置するのか疑問に感じる人もいるかもしれません。

実は、無料自動販売機が成り立つ裏側には、企業にとって価値ある仕組みが存在しています。主要な収益構造を以下にまとめました。
これからも成長が予想される無料自動販売機のビジネスモデルを知っておいてください。

広告収入モデル

無料自動販売機に多いのが、商品提供企業の広告費で運営されており、無料配布により商品の認知度向上やブランド体験促進を目指しているものです。
従来の広告よりも体験価値が高く、消費者の記憶に残りやすいマーケティング手法として無料自動販売機が機能しています。

デジタルサイネージを搭載した自動販売機は、ビジュアル面で商品の魅力やブランドストーリーを効果的に訴求できる環境が整っています。
話題性もあって多くの人の目を引き付けるので、キャンペーンを発信するにも効果的です。

アンケートやSNS投稿と引き換え

無料自動販売機は、ただ商品やサンプルを配布するだけではありません。
簡単なアンケート回答やLINE友だち登録を条件とすることで、企業が顧客データを収集できる仕組みです。
無料自動販売機で収集したデータは後日のリマーケティングに活用され、購買意欲の高まるタイミングでキャンペーンや広告施策を打ち出すなどマーケティングアプローチに活用されています。

また、SNS投稿と引き換えに無料になる自動販売機もあります。SNS投稿されることにより、自然な口コミ効果が生まれ、広告費をかけずに拡散力を得られるということです。

在庫処分やテストマーケティングとして

無料自動販売機は、賞味期限が近い商品や新商品のテスト配布にも使われています。賞味期限が切れた商品は、廃棄するしかなく廃棄するためにもコストが発生します。
無料自動販売機で廃棄すれば、コストを削減しながらも市場の反応を確認できます。

消費者の反応を直接収集できるので、本格的な商品化や改良の参考データとして活用可能です。
テストマーケティングの際にも、無料自動販売機によって商品の改良点や消費者ニーズの把握に役立つ貴重なデータを集められます。

なぜウケているのか?「無料自動販売機」利用者の心理に迫る


無料自動販売機が若者を中心にウケているのは、単純に無料だからだけではありません。その背景には、現代的な消費者心理が関わっています。
どういった心理で無料自動販売機を利用しているのかを知って、効果的な活用を検討してください。

お得感や驚き、体験が価値となる

無料自動販売機は、そもそも「無料で商品がもらえる」という予想外の体験を消費者に与えるビジネスモデルです。
自動販売機なのに無料であることによって、消費者に強い印象を与えて記憶に残りやすい点に強みがあります。

また、新商品のように店頭で気になっていてもお金を出してまでは試さない商品もあるかもしれません。
こういった普段は購入を躊躇していた商品を気軽に試せるため、消費者が新しい発見や満足感を得られる体験として評価されているのです。
つまり、単純に商品を獲得するだけでなく、自動販売機を利用して新しい発見があるという一連の過程自体が楽しめるエンターテイメントとして機能しているのがこのビジネスの肝です。

SNS映えやシェアのしやすさ

無料自動販売機はカラフルで目立つ無料自動販売機のデザインにも工夫があります。
ただ、目を引き付けるだけでなく、写真や動画投稿に適したビジュアルを提供しています。
インフルエンサーや有名人を起用した無料自動販売機であれば、それ自体がコンテンツとして成立可能です。

無料である意外性とあわせて、珍しい体験として友人や家族に共有したくなる話題性があるので、「誰かに教えたい」と自然に拡散効果を生み出します。
「無料でこのようなものがもらえた」という投稿が、ほかの人の興味を引きやすいので口コミで認知度が高まっていくのです。

「ラッキー体験」がブランドの好感度につながる

無料自動販売機の存在を知らずに、通りがかりやショッピングの途中に無料自動販売機を初めて体験する人は多いかもしれません。
こういった、もともと予期しないラッキー体験は記憶に残りやすくブランドに対する好感度を高め、長期的な顧客関係構築に貢献します。

無料で商品を試してその品質に満足した場合は、「サンプルが良かったから次は購入してみよう」といった購入意欲が芽生えやすい心理状態になります。
無料自動販売機を通じて、企業の太っ腹さや消費者への配慮が感じられ、ブランドイメージの向上に効果的に働く点もメリットです。

限定感と希少性が消費者の行動を促す

多くの無料自動販売機は、数量限定、店舗限定といった形で導入されています。「なくなり次第終了」という希少性が、すぐに体験したくなる心理を刺激するのです。

期間限定や数量限定のものが欲しくなってしまう心理は多くの人が経験しています。
消費者の「今やらないと損」という感情を引き出してSNSで「まだあった!」「もうなくなってた」という投稿が話題性を高めます。

無料自動販売機の限定感や希少性が体験に価値をプラスして、消費者の利用してみたいという欲求を引き出すのです。

設置企業の狙いとは?「無料自動販売機」の成功事例に学ぶ


無料自動販売機には、マーケティングやビジネスシーンで多彩な活用が期待されています。
ここからは、実際の成功事例を通じて無料自動販売機の活用方法を考えてみましょう。企業が無料自動販売機を使ったビジネスの事例を紹介します。

事例1:AIICO(アイコ)によるサンプル配布戦略

「AIICO(アイコ)」は、サイネージ型IOT自販機であり、2023年から全国各地で無料サンプルの配布をスタートし、化粧品や食品など累計約10万個以上のサンプルを配布しました。
2024年からはスポーツクラブでの無料配布も開始しています。

AIICOは、55inchのサイネージでの静止画・動画広告を放映できるので、顧客データを取得すると同時にビジュアルで商品の魅力を発信できます。
AIICOを提供するアドインテは、創業以来、モバイル端末向けのデジタルマーケティングをメインに展開する企業です。

インターネットで完結するマーケティングにとどまらず、事業領域はオフラインデータ収集にも及びました。
これまで培ってきたソフトウェア開発と独自のハードウェア開発でDXを推進しています。

また、ふるさと納税やNFT販売といった新しい分野の開拓も積極的です。
「旅のうくん」は、旅先や出張先から自動販売機を使ってふるさと納税ができるサービスです。
大型サイネージは、地元企業の広告、地域情報を発信する媒体として役立つほか、災害時にはハザードマップや避難指示などの案内表示になります。

NFT販売では、限定画像や特別動画、チケットや会員権などの権利といったデジタルで管理できるものは販売可能です。
コンサートホールや観光地に設置するなどビジネスの可能性が広がっています。

事例2:YouTuberさおりんプロデュース「orin」の認知拡大

YouTuberさおりんプロデュースのスキンケアブランドである「orin(オリン)」もAIICO(アイコ)で無料サンプリングを実施しています。

orinは、手軽さや使いやすさをキーワードにバランスが良いシンプルスキンケアを展開しているブランドです。
AIICOでは、シートマスクとリフレッシュミニクリームを配布しました。
AIICOでの配布実績やユーザー情報は、ファーストパーティーデータとして蓄積されます。
そのため顧客の購買意欲が高まるタイミングにキャンペーンのDMを送るといったアプローチもできます。

orinを配布するAIICOは関東と関西の計5か所に設置されました。AIICOは画像や映像を放映できるので、商品認知度拡大に貢献します。
多くの人が集まる商業施設に設置されたことで、広告媒体としても活躍した事例です。

AIICOのサンプル配布は、企業やインフルエンサー、サービス提供者とのコラボした新しいメニューの開発が実施され、今後も幅広い展開が注目されています。

事例3:伊藤園「ざくろ100」無料サンプル提供

伊藤園が公式通販で販売している「ざくろ100」の無料サンプル提供もAIICO(アイコ)を通じて無料配布されました。
東京ソラマチの屋外に期間限定で設置され話題となりました。

AIICOを利用するには、まずQRコードを読み取って登録を行い、アンケートに回答します。
その後、サンプル受け取り用のQRコードが表示されるので、AIICOにかざしてサンプルを受け取る仕組みです。

通販で購入できる健康食品は、気になっていてもなかなか通販で買ったり、サンプルを取り寄せたりするのが面倒に感じてしまうかもしれません。
しかしAIICOであれば、QRコードを読み取り必要事項を入力すれば、その場でサンプルを取得できます。

私たちの消費行動は、オンラインとオフラインの境界線がなくなりつつあります。
オンラインとオフラインを行き来する消費者をシームレスにとらえてデータを収集するために無料自動販売機が活用された事例です。

今後の展望|どこまで広がる?無料自動販売機の未来


無料の自動販売機は、これからも事業領域が広がる可能性を秘めています。
具体的には、自治体が地域特産品PRに活用したり、企業のDX推進ツールとして、顧客接点の拡大やデータ収集を効率化したりするといった可能性があります。

さらに、社員に対する福利厚生としてオフィスに導入できる無料自動販売機が設置されるケースもあります。
職場内のコミュニケーション活性化や労働環境改善を目指した施策です。

食品ロス削減や環境配慮型マーケティングとも無料自動販売機は相性が良いサービスです。
賞味期限が近い食品や規格外品、端材などを使った食品を無料もしくは低価格で提供します。

自動販売機は無人でコストを抑えながら24時間サービスを提供できる特徴があります。また、必要となるスペースが最小限なのでいろいろな場所に設置可能です。
小さなスペースと電源だけあれば屋内屋外問わずに設置できるので自治体や企業にとっても導入コストが低いというメリットがあります。
これは消費者にとっては使い勝手が良いというメリットにもなります。
自動販売機はすでに私たちの生活に当たり前にあるものなので、見慣れていて抵抗感なく利用できるでしょう。

無料自動販売機は導入する企業や自治体と利用する消費者の双方に魅力があるサービスです。発想次第で、これからも大きく成長していくと考えられます。

まとめ|無料自動販売機が示す「価値交換」の新常識

無料自動販売機の成功は、従来の「商品=お金」という単純な交換から「体験=データ」という新しい価値交換への転換を象徴しています。
無料自動販売機は、企業にとっては効果的なマーケティング手法である一方で、消費者にとっては新しい商品との出会いの場として機能する双方向の価値創造です。
現在は、商品やサービスの広告やマーケティングとして使われていますが、今後は単なる販促ツールを超えて、社会課題解決や地域活性化に貢献するインフラとしての役割が期待されています。

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(編集:創業手帳編集部)

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