「発起人」とは?要件や責任、会社設立までにやるべきことを解説

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会社設立には発起人が必要!何をすべきか役割を把握しておこう


会社設立にあたり、まずは発起人を決める必要があります。
発起人は、会社設立から今後の会社経営を左右する人物であるため、どのような役割があるのか知った上で適任者を選ぶことが大事です。

この記事では、発起人について解説するとともに、発起人が会社設立までにやるべきことを解説します。会社設立を目標としている方は、ぜひ参考にご覧ください。

発起人とは?


発起人とは、簡単にいえば会社を作ろうと考え、そのためにお金を出し、必要な手続きを行う人のことです。
会社法にて発起人には明確な役割と責任があるので、ただ会社を作ろうと考えただけでは発起人とは認められません。
具体的には、会社設立のための出資、定款に著名と捺印といった手続きをした人が発起人として認められます。

また、発起人は設立後に株主となるため、議決権の行使が可能です。今後の会社の意思決定に関わってくるので、それを踏まえた上で発起人を決定しなければなりません。

発起人・株主・取締役の違い


会社設立後、株主や取締役といった様々な人物が経営に関わってきます。株主や取締役は発起人と混同されがちですが、異なる役割を持つ人物です。
ここで、発起人と株主、取締役との違いを紹介します。

株主との違い

株主とは、会社に出資した対価として株式を保有する人物です。株式の発行会社に対して、出資額に応じて様々な権利を得られます。
具体的には、株式総会に参加して議題に対して投票する共益権と、配当などの経済的な利益を得られる自益権の2つです。

会社を設立する発起人は、最終的に株主となります。設立時の出資金に応じて、通常の株主と同様に株式が発行されます。
そのため、発起人=株主と捉えても間違いではありません。

ただし、責任の面では違いがあります。株主は会社の意思決定を左右する人物ですが、何か義務を負う立場にはなりません。
万が一に会社が倒産した場合、その債務を負う義務がない代わり、保有する株式の価値がなくなります。

一方、発起人には資本金の払込みの責任と、設立事務で重大なミスをせず、確実に行う善良な管理者としての注意義務(善管注意義務)があります。
違反した場合は、賠償責任を負う場合があるので注意してください。

取締役との違い

取締役とは、会社法にて業務執行の意思決定を行うことが定められている役員です。最低1名(取締役会を設置する場合は3人)必要です。
取締役には任期があり、株主総会にて選任や解任されます。なお、設立当初は発起人が取締役を選ぶことになります。

双方の違いは、発起人は会社を作るための作業を行う人物に対して、設立後に会社の所持者という立場で経営に関わるのが取締役という点です。
なお、発起人は会社設立時に、自らを取締役に選任することも可能です。

発起人になる要件


発起人を決める上で、誰でもなれるのか、ひとりしかなれないのかなど、様々な疑問が浮かんでくるかもしれません。ここからは、発起人になる要件について詳しく解説します。

発起人は誰でもなれる?

発起人は、誰でもなることが可能です。年齢制限はなく、未成年でもなれます。
登記で必要な印鑑証明書の作成は15歳以上からとなっているため、正確にいえば発起人になれる年齢は15歳からとなります。

国籍も関係ありません。外国籍の人や海外に居住している人も発起人になれます。責任を果たせるのであれば、一度自己破産した人でもなることは可能です。

発起人は何人必要?

発起人は人数も制限はありません。ひとりで会社を立ち上げる人もいれば、数人の発起人を立てて会社を設立するケースもあります。

発起人がひとりの場合、出資の負担は大きくなりますが、定款の内容を自由に決められます。
また、設立後はひとり株主となるので、自分が望むままの経営ができることもメリットです。

複数人の発起人を立てる場合は、出資者が多い分、運転資金に余裕を持てます。そのため、設備投資や事業拡大なども検討しやすく幸先の良いスタートを切れます。

複数人いる場合に気を付けたいこと

発起人が複数人になると、話がまとまらない、出資が進まないといった事態が起きやすくなります。
それにより、ひとりの場合よりも会社設立までに時間がかかってしまうことがあります。
このデメリットを解消するためにも、発起人を多く立てすぎないよう注意してください。

そのほかにも、発起人は設立後に株主となるので、株式の所有割合にも注意が必要です。
会社の重要事項を決定する株主総会では、議決権による多数決などで最終的に決められます。

株式の保有割合が多いほど議決権の所有率も多くなるので、特定の人物が会社の支配権を握ってしまう場合があります。
設立当初に描いていた経営とは変わってくるリスクがあり、株式の保有割合も慎重に決めることが大事です。

法人が発起人になることは可能?

法人が発起人になることも可能ですが、注意点があります。それは、会社は定款に記された事業の目的の範囲でしか、権利能力が認められない点です。

例えば、A社の事業目的が食料品の販売で、新しく作るB社の事業目的が自動車の製造・販売だとします。
双方の事業には関連性がないので、権利能力の範囲外となってしまいます。そのため、A社はB社の発起人にはなれません。

法人が発起人となるためには、新設する会社と事業の目的に関係性を持たせる必要があります。
具体的には、発起人となる法人の定款に記された事業の一部を新設する会社の定款に記載して、定款の認証を行うことになります。

発起人にともなう5つの責任


会社設立時、発起人にともなう責任は5つあります。その5つの責任は、会社が設立してから総株主の同意を得ることで免除可能です。
具体的にどのような責任を負うことになるのか解説します。

1.財産価額填補責任

現物出資(金銭以外のものによる出資)や、財産引受け(会社設立を条件に特定の財産を譲渡する契約)で会社を設立する場合があります。
その際、財産価額填補責任は、発起人が出資した価額が定款に記した価額よりも著しく不足している場合は、不足分を支払わなければならないという義務です。
ただし、例外で免責となる場合があります。

ひとりで設立する(発起設立)場合、検査役の調査を経ている、もしくは発起人が職務を怠らなかったことを証明できれば、責任は問われません。
一方、複数人が出資して設立(募集設立)する場合は、検査役の調査を経ている場合のみ免責となります。

2.仮装出資履行責任

出資の履行を仮装した場合、会社に対して仮装した分を全額支払わなければなりません。金銭出資した場合は、金銭で全額支払います。
現物出資の場合は、給付を仮装した財産のすべてを給付します。

また、出資履行の仮装に関与したほかの発起人も、連帯して会社に対して仮装した発起人と同額の金銭を支払わなければなりません。
ただし、関与した人は、職務を行う際に注意を怠ることがなかったと証明できれば免責となります。

発起人は仮装出資履行責任の義務が履行されない限り、株主としての権利を行使できないので注意してください。

3.任務懈怠責任

会社設立の任務を怠り、会社に損害が発生した際には、会社に対して発起人は損害賠償責任を負うことになります。懈怠(けたい)は、怠るという意味です。
複数の発起人が任務を行っていた場合は、その人たちも連帯して責任を負わなければなりません。

4.会社不成立の責任

定款を作成後、任務を怠って設立の登記まで至らずに会社が設立できなかった場合、その行為に対して発起人は連帯責任を負うことになります。
設立に関わった発起人には、罰則や過料が科されるので注意してください。

5.第三者への損害賠償責任

会社設立の任務を怠ったことで第三者に損害を与えた場合、当該の発起人は第三者に対して損害賠償責任を負うことになります。
ただし、悪意や重過失による損害と認められた場合に限りこの責任が生じるので、認められなかった場合は免責となります。

発起人が会社設立までにやるべきこと


発起人は会社設立に関する様々な手続きを担うことになります。どのような業務を手掛けるのか、会社設立までにやるべきことを紹介します。

会社の基本事項を決める

会社設立のための定款と登記の前に、商号や会社の所在地など基本事項を決める必要があります。主に決める基本項目は以下のとおりです。

商号 会社名のことです。ひらがな・カタカナ・漢字・アルファベット・数字を使って自由に決められます。
ただし、「’」(アポストロフィー)、「,」(コンマ)、「-」(ハイフン)、「.」(ピリオド)、「・」(中点)、絵文字、感嘆詞(!・?など)の文字は使用できません。
本社所在地 会社の住所のことです。定款の作成では、「東京都千代田区」など最小行政区画まで決めておくだけで十分です。
目的 会社の事業内容のことです。定款で定めた目的以外の事業はできないので、将来着手する事業はあらかじめ記載しておきましょう。
機関 取締役や監査役のことで、取締役は最低でも1名は必要です。設立当初だと、代表者やその配偶者が担うケースが多くあります。
役員の任期 取締役の任期は原則2年、監査役の任期は原則4年です。
資本金額 会社を始めるための元金です。資本金額によって融資の借入限度額が決まるので、多いほど借入金額も多くできます。
ただし、資本金の金額によって納税額が増えてしまうデメリットもあるので注意してください。
決算期 決算期の時期に決まりはありませんが、決め方によって税負担が変わる場合があります。
株式の譲渡制限 第三者が株式を取得したことで経営に支障が出る恐れがあるため、会社が許可した人物のみに譲渡を認めるように規定を任意で設けることが可能です。中小企業では設定しているケースが多いようです。

定款を作る

定款は、会社のルールをまとめたルールブックのような存在で、この作成も発起人の役目です。
定款には、事前に決めた商号・本店所在地・株式総会の開催時期・決算期などを記載します。
また、記載項目は絶対的記載事項・相対的記載事項・任意的記載事項の3つに分けられます。

絶対的記載事項 定款に必ず入れるべき事項で、記載がない場合は無効となってしまいます。
目的・商号・本店所在地・出資される財産の価額・発起人の氏名または名称および住所の記載が必要です。
相対的記載事項 記載しなくても定款の有効性には影響を与えないものの、記載しないと効力を持たない事項です。
株式の譲渡制限・役員の任期の延長・株式の発行数・取締役会の設置などが決まっている際に記載します。
任意的記載事項 相対的記載事項と同じく会社で決めたことを記載する項目です。
この項目は任意であり、記載がなくても決まったことが無効になることはありません。
しかし、定款内で決めたことが明確になるので、記載しておくと安心です。

相対的記載事項と同じく会社で決めたことを記載する項目です。
この項目は任意であり、記載がなくても決まったことが無効になることはありません。
しかし、定款内で決めたことが明確になるので、記載しておくと安心です。

定款を製本したら、発起人全員の実印を押してください。なお、定款は公証人の保管用、会社の保存用、登記用の謄本として計3通作成します。

定款の認証を受ける

定款が完成したら、公証役場で認証を受けます。定款は公証人による認証がないと効力がなく、登記申請もできなくなるので注意してください。

認証は、本店所在地の都道府県内であればどの公正証書でも受け付けています。北海道の場合は、管轄地域の法務局、地域法務局の管内にある公証役場で認定を受けてください。

認証では、発起人の印鑑証明と手数料5万円が必要です。紙の定款では収入印紙4万円も必要です。
電子定款では収支印紙は不要ですが、電子署名が必要となるので行政書士や司法書士に相談して定款を作成するようおすすめします。

定款について、詳しくはこちらの記事を>>
会社設立に必要な定款とは|経営者のための基礎知識

会社の印鑑を作る

現在は、オンラインからの登記申請であれば印鑑の提出は任意となっており、また書面によっては押印を求められないこともあります。
しかし、ビジネスでは印鑑が使われるシーンもあるため、社名が決まったら代表者印(実印)・銀行印・角印など会社の印鑑を準備してください。

代表者印は会社の印鑑証明用の印鑑であり、ほかにも各種契約書や不動産の売買など様々な用途で使われます。サイズは18mmの丸印が一般的です。

基本的に代表者印があれば十分ですが、利用頻度の多い印鑑であるため、紛失や悪用のリスクもあります。
その対策として、銀行口座の開設で使われる銀行印、請求書などの押印で使われる角印も作り、用途に応じて使い分けることをおすすめします。

ほかにも、社名・住所・電話番号・代表名などが記載されたゴム印は、事務作業の効率化のために作っておくと良いでしょう。
縦型・横型とあり、サイズも選べるため、複数の種類を作っておくとより便利です。

資本金(出資金)を振り込む

発起人は、金融機関に引き受けた株数に応じた金額を振り込んでください。設立前は会社名義の口座を開設できないので、発起人の口座に振り込むケースが多くあります。
預金残高が必要な金額を満たしていても、振り込んだ記録を残すために一度引き下ろして、再入金してください。

入金後は、払込みを証する書面の作成のために、口座の通帳のコピーと取ります。
コピーを取る部分は、通帳の表紙・支店名や口座などが記された表紙裏・振込記録のページです。

資本金振込みについて、詳しくはこちらの記事を>>
会社設立時の「資本金払込み」マニュアル!手順をわかりやすく解説

登記を申請する

本店所在地を管轄する法務局に登記申請を行います。登記では、以下の書類が必要です。

  • 株式会社設立登記申請書
  • 登録免許税の収入印紙貼付台紙
  • 定款
  • 設立時取締役の就任承諾書
  • 取締役の印鑑証明書
  • 払込みを証する書面
  • 印鑑届

なお、必要書類は定款の記載内容によって変わるので、事前に法務局や司法書士に確認しておいてください。
また、登記では登録免許税が必要ですが、金額は資本金における1,000分の7の額分(15万円未満となる場合は15万円)です。

役場・税務署・年金事務所に書類を提出する

登記が完了したら、役場・税務署・年金事務所にも必要書類を提出する必要があります。
本店を置く都道府県税事務所や市町村役場では、「法人設立届出書」を提出してください。

年金事務所には、「健康保険・厚生年金保険新規適用届出」と「健康保険・厚生年金保険被保険者取得届」を提出します。
家族を被扶養者にする場合は、「健康保険被扶養者(異動)届」も提出してください。

本店所在地を管轄する税務署には、「法人設立届出」や「給料支払事務所等の開設届出書」を提出します。

まとめ

発起人は、会社設立の企画から出資や各種手続きを担う人物で、設立後は株主となります。
設立前からやるべきことが多いので、発起人は役割を十分に理解しておくことが大事です。

また、会社設立に関する責任を負うことになり、責務を怠ると罰則や過料を科せられることにも注意してください。

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(編集:創業手帳編集部)

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