会社設立時の「資本金払込み」マニュアル!手順をわかりやすく解説

創業手帳

資本金払込みは会社設立に欠かせない手続きのひとつ


資本金は、事業を行うための元手となる資金です。会社設立の際には、資本金払込みも欠かせない手続きです。
手続き自体は難しくありませんが、スムーズに資本金払込みを完了させられるように、払込みのタイミングや手順を事前に把握しておきましょう。
この記事では、会社設立時に必要となる資本金払込みの手順を詳しくご紹介します。払い込みをする時の注意点や資本金が使えるようになるタイミングについても解説します。

資本金の払込みはどのタイミングで行うべき?


会社設立の手続きには一定の流れが存在します。
立ち上げる会社が株式会社と合同会社では設立の流れが少し違うため、資本金払込みのタイミングも異なるので注意してください。

まずは、会社設立の流れを簡単に説明しながら、払込みのタイミングを解説します。

株式会社設立でのタイミング

株式会社設立の流れは以下のとおりです。

1.設立の準備
2.定款の作成
3.定款の認証
4.資本金払込み
5.登記書類の準備
6.登記申請(設立日)
7.税務署や自治体に開業届などの提出
8.会社運営の開始

株式会社を設立する場合は定款を作成し、会社の所在地を管轄する公証役場で認証してもらった日以降に資本金払込みを行います。
事前にどれだけの金額を払い込むのかを決めておく必要があります。資本額を決めるタイミングは、商号の決定や役員報酬額の設定、印鑑の作成が行われる設立準備の段階です。

会社設立の流れについて、詳しくはこちらの記事を>>
【保存版】株式会社設立の「全手順」と流れを創業手帳の創業者・大久保が詳しく解説!

合同会社設立でのタイミング

合同会社設立の流れは以下のとおりです。

1.設立の準備
2.定款の作成
3.資本金払込み
4.登記書類の準備
5.登記申請(設立日)
6.税務署や自治体に開業届け出などの提出
7.会社運営の開始

合同会社の場合、設立にあたり定款の作成は必要ですが、公証役場での認証は必要ありません。
そのため、合名会社における資本金払込みのタイミングは定款を作成した後になります。
資本金額の設定は、株式会社と同様に設立の準備段階で決めます。

合同会社設立の流れについて、詳しくはこちらの記事を>>
【最新版】合同会社設立の教科書|設立の流れや費用、メリット・デメリットを徹底解説

会社設立時における資本金払込みの手順


会社設立では一部の株式の買取を募集する募集設立もありますが、資本金を出して設立する発起設立が一般的です。
資本金の払込みにあたり、口座の開設や振込みなどの手続きが発生するので、手順を詳しく見ていきましょう。

1.発起人名義の口座・通帳を準備

発起人とは、資本金を支払う人のことです。まずは、発起人の名義で銀行口座と通帳を用意します。
資金払込みは登記前の段階となるので、法人名義で口座を開設できません。
そのため、資本金は一度発起人名義の口座に払い込み、設立後に法人名義で口座を開設してから資本金を移す形になります。
発起人名義の口座は新規ではなく、既存の口座を使っても問題はありません。

発起人が複数人いたらどうする?

ひとりで会社を立ち上げるのであれば、発起人が創設者となります。しかし、複数人で会社を設立する場合は発起人も複数存在することになります。
この場合は代表の発起人(発起人総代)を決めて、その人名義の銀行口座を用意してください。
なお、発起人総代となる人は、設立後に代表取締役になる人を選ぶのが一般的です。

金融機関はどこでもOK?

日本国内の銀行であれば、ほぼすべての銀行で払込みが可能です。
ゆうちょ銀行・信用金庫・農協・国内銀行の外国店支社・内閣総理大臣の認定を受ける外国銀行の日本国内支店でも構いません。
Web通帳で開設できる銀行やネット銀行でも払込みは可能です。
以前は後に振込みの証明が必要なことから通帳のある銀行が一般的でしたが、Web通帳でもマイページから取引証明書を表示できるので、そのコピーを証拠に使えます。
そのため、紙通帳のない銀行を払込先にしても問題はありません。

2.口座に資本金を振り込む

発起人の口座が用意できたら、設立準備で定めた金額分の資本金を払い込みます。この時、必ず預金ではなく振込みで送金してください。
預入れを避ける理由は、誰がいくら支払ったのか正確に証明するためです。
振込みであれば資本金を支払った発起人の名前と金額が表示されるので、確実に払込みの証明ができます。

発起人が複数人いる場合は、それぞれで発起人総代の口座に資本金を振り込んでください。
発起人総代が各発起人から資本金を受け取り、まとめて口座に振り込む方法でも構いません。
振り込まれた後、発起人総代は設立準備で定めた金額が払い込まれているのか、各発起人が振り込んだ金額を確認します。不足している場合は、その分の請求が必要です。

3.通帳の中身をコピーする

資本金の払込みが完了したら、通帳の中身をコピーします。これは発起人が資本金を払ったことを証明するために必要です。
用紙のサイズに決まりはありませんが、後述する払込証明書と同様のA4サイズでコピーするのが無難でしょう。
コピーする面は以下のとおりです。

  • 表紙
  • 氏名・口座番号の記載と銀行印が押印されているページ
  • 払込みの内容が記帳されているページ

通帳に資本金払込み以外の取引内容が記載されていると、ごちゃごちゃして見づらい場合があります。
マーカーで印を付けておけば、証明に必要な取引内容をピンポイントで見つけやすくなります。

4.払込証明書を作成

通帳のコピーが完了したら、払込証明書を作成します。これは、発起人が資本金を支払った事実を代表取締役が証明するための書類です。
のちに行う会社設立の登記で必要となります。払込証明書の作成方法は、手書きとパソコンのどちらでも構いません。
払込証明書では、以下の項目の記載が必要です。

必須項目 記載内容
払い込まれた金額の総額 定款の記載された金額を記載
払い込まれた株数 定款の記載された金額を記載
1株あたりの払込金額 「払込金額の総額÷払込株数」から算出した金額を記載
払込みのあった年月日 資本金払込みが完了した日付を記載
本店の所在地 設立事項で定めた所在地を記載
会社名(商号) 設立事項で定めた社名を記載
代表取締役の氏名と捺印 捺印は代表取締役の実印ではなく、代表社印を押す

文書の余白に代表社印を押しておくと、後から間違いを見つけた時に訂正印として利用可能です。これを捨印といいます。
捨印があると、後から訂正が必要になった時、代表印を押した本人以外が代理で書類の内容を訂正できるようになり、修正までの手間を軽減できます。

5.証明書と通帳コピーをひとつにまとめる

作成した払込証明書と通帳のコピーはホチキスで留めて、ひとつの資料としてまとめておきます。各用紙は払込証明書を一番上にして、以下の順番でまとめてください。

1.払込証明書
2.通帳の表紙
3.氏名や口座番号の記載と銀行印が押印されているページ
4.取引内容が記載された箇所の通帳コピー

各用紙を重ねたら、左端2カ所をホチキスで留めて冊子状にします。冊子を開いて、各ページの中央に代表社印で割り印をします。これで資本金払込みの工程は完了です。

資本金を払い込む際の注意点


ここで、資本金の払込みを行う際に知っておきたい注意点をご紹介します。

資本金額が口座に入っていても使えない

発起人の口座に設立事項で決めた資本金額がすでに入っている場合もあるでしょう。それをそのまま資本金にしたいところですが、そのままでは使えないので注意してください。

会社設立では、「資本金としてお金を用意した」という事実を明確にしなければなりません。
そのため、すでに資本金額分が口座に入っていても、払い込んだ証明ができないので、資本金として使えません。
口座に入っている分を資本金に使う場合は、一度資本金額以上の額を引き下ろしてから、振込みで口座に入金する作業が必要になります。

ネットバンクを利用する際のポイント

資本金払込みはネットバンクでも可能です。ただし、ネットバンクは通帳が発行されないため、通帳のコピーができません。
しかし、ネットバンクのマイページから閲覧できる取引履歴をプリントアウトすれば、払込みの証明をして利用可能です。
プリントアウトする際は、以下の項目が含まれるようにします。

  • 銀行名と支店名
  • 口座の名義人
  • 資本金払込みの取引履歴

最近はメガバンクや地方銀行でも通帳のペーパーレス化が進んでいます。Web通帳で口座を開設した場合も同様の方法で払込みの証明が可能です。

払込み後のコピーは早めに済ませる

資本金の払込みが完了したら、できるだけ早めにコピーを取ることをおすすめします。
詳しくは後述しますが、現在は会社設立後すぐに備品購入などの費用に資本金を使えます。
その場合、資金の動きが激しくなるため、コピーするページ数が増え、また、払込金額のチェックに手間がかかるかもしれません。
コピーやチェックの手間を軽減するためにも、通帳のコピーは早めに済ませておきましょう。

印鑑は代表社印(会社実印)で登録

払込証明書の作成では印鑑を押す必要があり、その際使う印鑑は代表社印です。間違って代表取締役個人の実印を押さないように気をつけてください。
代表社印とは、法人登記の際に登録する法人用の印鑑です。簡単にいえば、会社の実印になります。
法人登記や払込証明書の作成だけではなく、業務上の契約書などでも用いられる重要なものです。設立準備の段階で作成するものなので、忘れずに作成しておきます。

払込み後、資本金はいつから使える?


そもそも、資本金はどのくらい支払えばいいのか、いつから使えるのかを気になっている方も多いかもしれません。
ここからは、資本金額の目安と使えるようになるタイミングについてご紹介します。

資本金の目安となる金額

資本金の最低金額は特に決まっていないため、最低1円からでも設定可能です。
しかし、資本金は会社設立と運転資金となるため、事業を開始してから安定した売上げを獲得するまでの期間を踏まえると、それなりの費用が必要になります。
会社設立時の資本金の平均は300万円が目安です。また、ある程度資本金が用意できることは、会社の信用にもつながるので融資が受けやすくなるメリットがあります。

企業の体力は資本金額だけで測れるものではありません。
しかし、対外的に公開される会社の資金であるため、資本金額が多いとある程度の取引数や取引額に耐えられるという認識を与えられます。
そのため、資本金額の多さは会社の信用に直結します。

資本金の金額の決め方について、詳しくはこちらの記事を>>
会社設立の資本金はいくらから?決め方や平均額

払込み後、いつから使えるようになる?

もともと、資本金は設立から1カ月経たないと使えませんでした。しかし、2006年5月1日から会社法が施行されたことで、設立後すぐに使えるようになりました。
現行のルールでは、資本金は会社設立のタイミングでどれだけのお金を収集できたかを判断するための基準という考え方が妥当です。

資本金は備品購入や運転資金に活用

現行の会社法により払込み後にすぐに使える資本金は、備品の購入費や運転資金への活用がベターです。
上記で資本金は300万円が目安と紹介しましたが、3~6カ月分の運転資金と設立に必要な資金をシミュレーションして、実際に用意する金額を決めましょう。

例えば、オフィスを借りた時に3カ月分の賃料が150万円、設備購入に50万円、運転資金が100万円と想定した場合、300万円が必要です。
そこに、会社設立に必要な費用もプラスします。設立に必要な費用の目安は25~30万円なので、この場合では少なくとも330万円は資本金を用意する必要があります。
資本金は会社運営のために使うものです。仮に、社長のプライベートなお金として使った場合、社長への貸付金となってしまうので注意してください。

まとめ

会社設立に至るまでいくつものステップを踏んでいく必要がありますが、資本金の払込みも重要な手続きです。
会社設立時の資本金は事業の始動を支える重要な資金です。特別難しい手続きではありませんが、ミスをしてしまう人も少なくありません。
資金の払込みのタイミングは定款が決定した後です。株式会社として設立する場合は、定款の認定を受けた後になります。

また、払込証明書の押印は代表個人の印鑑ではなく、代表社印を使うなど細かい注意点があるので、この記事を参考に手続きを進めてみてください。
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(編集:創業手帳編集部)

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