Enigol 柳沢 智紀|デジタルで生産性を向上させる「Enigol」が企業課題を解決する
企業の課題を持続的に解決し、個人がエンパワーメントされる社会へと変革する
どの業種のどの企業でも「人手不足」が課題となっており、特に「優秀な人材」の確保は非常に困難です。そんな企業の課題を持続的に解決し、個人がエンパワーメントされる社会へと変革を目指しているのが、Enigolの柳沢さんです。
そこで今回は、柳沢さんがEnigolを創業するまでの経緯や、Enigolが解決している企業の課題について、創業手帳の大久保が聞きました。
株式会社Enigol 代表取締役CEO
株式会社リクルートホールディングスに新卒入社し、集客戦略やマーケティング業務を経験後、SaaS事業(レジシステム、予約・受付システム、カード・交通・モバイル決済領域)の新規事業開発チームにて、マーケット戦略及び大企業向けのプリセールスやパートナー企業とのアライアンス、新規事業企画までを担当。その後、PayPalにて新規事業領域のStrategic Growth Managerを担当。
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計250万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら
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この記事の目次
リクルート、PayPalを経て「Enigol」を創業
大久保:起業までの流れを教えていただけますか?
柳沢:「デジタルで生産性向上を」というテーマで、企業課題と個人のデジタル全般をサポートする企業として「Enigol」を創業しました。
創業したのは2018年ですが、最初の約1年半は副業で活動し、2020年1月から本格的にEnigolを稼働させ始めました。
その前はリクルートにて、マーケティング業務を経験したのち、新規事業開発チームでSaaS事業部で中小企業様向けに業務改善するようなシステムを提供していました。
その後、PayPal社にて、1年半ほどストラテジックグロースマネージャーとして、日本へのPayPalサービスの導入を行っていました。
こちらでは提携先を広げる業務を行ったり、PayPalグループとしては複数のプロダクトを持っているため、日本市場に導入が可能かを検討したり、BtoBプロダクトを国内カード会社とアライアンスを組むことができるかを検討したりしていました。
大久保:起業時は大変でしたか?
柳沢:最初は、副業としてスタートさせたため、本業と並行して進めることが大変でした。ただし、自分の中でやりたいことが「起業」だったため、苦しくても頑張ることができました。
ビジネスのネタとしては、リクルートに在籍している時から、本業と被らないことで何かできることはないか?と、模索していたんです。
「Enigol」で役立っているリクルート・PayPal時代の経験
大久保:リクルート、PayPal、それぞれで学んだ、起業に役立つことを教えてください。
柳沢:リクルートに関しては、よく言われているリクルート流の「ロマンとそろばん」という考え方が今でも役立っていると思っています。
1、2年で利益が出るような「そろばん」は重要ですが、世の中を良くするために5年後、10年後を見据えて事業構築をしていく「ロマン」も大切にすべきという考え方です。
「ロマン」を大切にしつつも、「そろばん」で帳尻合わせをしていく大切さを学びました。
PayPalに関しては、外資系企業の中でも日本国内にいるメンバーが少なかったんです。
さらに、営業やマーケティングではなく、アライアンスを担当する人はさらに少数なポジションです。
ただし、外資の良さとしては、会社を代表して他企業に会いにいくことができるため、普段会うことができないような、名だたる上場企業の常務などと商談ができるため、貴重なエグゼクティブコミュニケーションの経験ができました。
社内では、アメリカだけでなく、シンガポールチームやインドチームなど、各国の方々と打ち合わせをする上で、日本の当たり前をしっかり説明していくスキルも身につけることができました。
起業のきっかけは「セブン&アイ・ホールディングスの元会長鈴木氏」の存在
大久保:サラリーマンから独立した際のきっかけを教えてください。
柳沢:30歳になったら起業しようと決めていました。
セブン&アイ・ホールディングスの元会長である鈴木さんが、イトーヨーカドーからセブンイレブンを作ったのが30歳くらいだったとのことです。
鈴木さんのような尊敬する起業家に、一歩ずつでも近づいていきたいと思ったのが背景です。
企業のアシスタント業務を代行するオペレーションサービス「Remoba」
大久保:Enigolとして最初にローンチしたプロダクトは何ですか?
柳沢:Enigolの最初のプロダクトは「Remoba」です。
Remobaは、オンラインに特化して企業のアシスタント業務を代行するオペレーションサービスです。
背景としては、起業後に自分自身にアシスタントをつけて業務を行っていました。
ただし、フリーランスのアシスタントに依頼すると、急にやめてしまう、柔軟に対応してくれない、という課題や不安が常に付き纏っていました。
これを解決できるソリューションを開発したいと考えたのが背景です。
サービス内容としては、お客様の日々のルーティンワークを、ITリテラシーの高いチームで対応させていただきます。
さらに、こちら側から情報をキャッチアップしていくスタイルで、ホスピタリティを売りにしています。
大久保:スタートアップ企業からの依頼も多いですか?
柳沢:スタートアップ企業のお客様からは、アシスタント業務、経理業務をご依頼いただいています。個人の方でも、100時間のアシスタント業務を発注していただくこともあり、創業したばかりの方でも、重宝していただいています。
創業したばかりのスタートアップ企業は、トップラインである営業活動や、プロダクト開発に投資をしていくべきだと思いますので、力の入れどころに集中できる体制をサポートさせていただきます。
さらに、優秀な人材でも様々な事情で、1日フルで働けない人も多いですよね?
そのような方々でも、チームで動くことにより、空いた時間を補い合うことができるのは「Remoba」の特徴です。
大久保:「Remoba経理」「Remoba労務」とサービスを広げられていますが、狙いがあったのでしょうか?
柳沢:サービスを分けることで、課題を深掘りしていくことができるためです。
さらに人を増やす際には、職種や任せたい仕事を明確にした上で探す方が多い印象です。
特に、10人規模になった際、任せたい領域が明確になってきます。その時にはグルーピングが大事になってくると考えています。
新サービスの「生み出し方」と「広げ方」
大久保:新しいサービスを立ち上げる時のコツがあれば教えていただけますか?
柳沢:「生み出し方」と「広げ方」の2点があります。
「生み出し方」については、顧客の声を聞き続けることです。
任せたいことに、お金を出すレベルに達するとき、サービス化を検討して提供しています。
さらに「広げ方」に関しては、世の中に母数が一定以上あるかを見るようにしています。
キーワードのボリュームや、マーケットの広さを確認しつつも、お客様が求めていることをサービスかしている背景です。
大久保:コロナの影響はありましたか?
柳沢:創業したのが2021年1月、コロナが始まったのが2021年4月でした。
まだ顧客を持っていなかったため、オンラインで広げていくという未体験な営業活動はとても大変でした。
そのため、我々としては準備期間として捉え、営業方法やマーケティングを分析し、2022年の夏以降から実になってきました。
スタートアップ企業が注意すべき「融資」と「資金調達」の使い分け
大久保:資金調達はされたのでしょうか?
柳沢:融資は受けてますが、Remoba事業に関しては、資金調達の必要はないと考えており、現状は資金調達は行っていません。
しかし、次に「sikiapi」という新サービスも走り始めたため、そちらを含めて今後は資金調達も再度考えているところです。
資金調達に向いている事業と、そうでない事業をしっかり見極めなければいけないというところがポイントとなります。
大久保:よくニュースで、◯◯億円の資金調達をした、といった記事が上がりますが、調達すれば良いというわけでもありませんからね。
柳沢:資金調達は通過点でしかありません。
ビジョンとしている「個人がエンパワーメントされる社会の実現」を作っていくことが、我々のゴールですので。
大久保:BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)を提供する会社として、世の中の動きをどう感じられていますか?
柳沢:まずは、AIの領域が大きく動いていると思います。
もう一つは、システムとシステムの間を繋ぐ、ハブとなるシステムが必要となっているケースが増えています。特に、iPaaS(※1)領域や、コミュニケーションにおいて、重要となってくると思っています。
SaaSサービスは、二次曲線状に増加してます。そこの管理や連携を担う部分が大きく必要となってきます。
大久保:API(※2)のように広げていくためには、最初は人間が入ってあげないといけないところを、貴社のような企業が繋げていくというイメージでしょうか。
柳沢:おっしゃる通りです。
また、企業が拡大していくときに、使うツールは次々と増えていくと思います。
その時に、問題なくシステムが連携できるようにどうすれば良いか、という一つの正解を我々は持っているため、拡大期の企業のお力になれればと思っています。
※1:iPaaS(アイパース)・・・複数のクラウドサービスやオンプレミスなどで管理されている独立化したデータを一元的に連携するためのソリューション。
※2:API(アプリケーション・プログラミング・インターフェイス)・・・ソフトウェアやプログラム、Webサービスの間をつなぐインターフェース。
DXの目的は「人の業務を効率化を図ること」であり「人はいなくならない」
大久保:アナログで作業を行っている企業は多くあります。デジタルやAIはどのように活用するべきか、柳沢さんのお考えを教えてください。
柳沢:そもそもDX対応する意味は、様々な固定費や変動費を下げて、経営的メリットを得るために「業務効率化を図ること」だと認識しています。
顧客と対面した時に、AIがすべてを実行することは不可能です。
あくまでも、人の作業を効率化するためにAIが活躍しますし、その補完関係において、DXの比重が大きくなっています。
そして、一番言いたいこととしては、人は絶対に居なくならないですし、効率化を図るためにはDXは使うべきです。
大久保:さらに、人が採用できないといった社会の大きな課題にも繋がるお話かと思いますが、その点いかがでしょうか?
柳沢:今後、より日本で人を採用することが難しくなってくると考えています。
そのため、日本の企業様には、弊社のような多様な働き方を受け入れてもらいたいです。
なぜこのようなことが起きているかというと、あらゆる上場企業の監査規定の中で、業務委託を受けて、第三者に発注する時には、必ず明示しなさいという項目があります。
そこが弊害となっており、フリーランスに委託しづらくなっています。今の時代、フリーランスに委託することで、必要な人材を揃えやすくなるので、積極的に活用すべきなのに、それが進んでいないのは課題だと思います。
大久保:コンプライアンス的には正しいが、社会的には効率的かと言われるとそうではないように思えますね。
柳沢:正社員を「正」としてきた文化が、変わらずに今でも残っている部分ですね。弊社もコンプライアンスを一番に重きを置きつつ、時代に対応することを模索しています。
LINEやSNSのメッセージ機能を起点とした新しい時代のCRM「sikiapi」
大久保:スタートアップ企業向けのサービスはありますか?
柳沢:Remobaもぜひ利用していただきたいのですが、「sikiapi」という新サービスもあります。
LINEと、InstagramのDMのCRM(顧客関係管理)を低価格で行えるサービスです。
BtoC向けの事業を行っているスタートアップ企業様にはおすすめしたいです。
そもそも現代の連絡手段は、「メールアドレス」ではなくSNSのメッセージ機能が主流なので、「sikiapi」はより現代のマーケティングに合わせたCRMとなっています。
大久保:まさに私も悩んでいた部分でもあるのですが、LINEで繋がった人の扱いに困った経験があります。
柳沢:25〜30代の方はLINEを見ていますが、20代前半以下の方はLINEすら見ません。SNSのメッセージ機能でやりとりすることが主流なのです。
sikiapiは、LINEやSNSのメッセージ機能をを横断して、データベースとして管理していくツールとなっています。
大久保:大手はそういったサービスは提供していないのでしょうか?
柳沢:BtoB向けのサービスとなるため、基盤がメールアドレスとなります。
大久保:BtoCはSNSで繋がった方が、売り上げになっていくということですね。
柳沢:我々世代は、Instagramは写真や動画を投稿するものと認識していますが、若い方々としてはメッセージングツールと捉えています。
例えるとすれば、mixiからfacebookに変わっているようなことが、今起きています。
大久保:各世代がメインに使われているツールをおさえておくことで、売り上げの起点になるかもしれませんね。
柳沢:いつの時代でも、顧客台帳は大変重要だと考えています。
大久保:最後に、起業家へのメッセージを教えてください。
柳沢:デジタルでもっと世の中を変革していきましょう!
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(取材協力:
株式会社Enigol 代表取締役CEO 柳沢 智紀)
(編集: 創業手帳編集部)