伊勢谷友介×創業手帳大久保 特別対談 「宇宙人の視点」から地方創生を考える

創業手帳

「ENGINE!日本のミライと出会う場所」で行われた対談の様子を伝えます

(2019/04/15更新)

1月に都内経団連にて開催された地方創生イベント「ENGINE!日本のミライと出会う場所」で、俳優であり、環境問題や社会問題に取り組む会社・リバースプロジェクトの代表でもある伊勢谷友介氏と、創業手帳代表の大久保による特別対談が行われました。

伊勢谷氏は「人類が地球に生き残るためにはどうすればいいか」という問いをコンセプトに2008年にリバースプロジェクトを立ち上げました。以来、さまざまな企業・行政と組んで衣、食、住、芸術、教育といった多様な領域でのモノやイベント、サービス作りを通じて地方創生に取り組んでいます。対談では、伊勢谷氏がリバースプロジェクトの活動の中で大事にしているキーワードを元に、どんな思想・考えで事業を展開しているのかに迫りました。

話し手 伊勢谷 友介(いせや ゆうすけ)
東京藝術大学美術学部修士過程終了。在学中にニューヨーク大学で映画制作を学び、1998年「ワンダフルライフ」で俳優デビュー。「龍馬伝」、「るろうに剣心」など数々の作品で活躍する傍ら、2008年に株式会社リバースプロジェクトを設立。様々な企業・団体と社会問題解決型のプロジェクトを実施している。

聞き手 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役

大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計100万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。

宇宙人からは、地球人がどんな生き物に見えるだろうか?

大久保:まず今回のイベント・ENGINE!についてですが、立ち上げ初期の頃、今日司会を務めてらっしゃる財務省の小林さんと「古くて大きいパワフルな日本と、これからいろんなことを新しくしていこうという、小さくて新しい日本をかけ合わせたい」という話をしていて、そこからこのイベントはいろんな方の参画によって広がっていきました。
その中で、参画するみなさんを触発するような、地方に関わりながらソーシャルインパクトを与えている起業家の方はいないかな、と思った時、真っ先に浮かんだのが伊勢谷さんだったんです。

皆さん俳優としての伊勢谷さんは既にご存知かと思いますが、今日は10年間全国でいろんな活動を展開されてる起業家としての伊勢谷さんの話を伺えればと思います。

伊勢谷:宜しくおねがいします

大久保:早速ですが、先程「地方も都市も古い日本も新しい日本も混ぜる」という話が出たかと思いますが、伊勢谷さんは日本どころか「宇宙人の視点」というキーワードを掲げてますよね。どういう視点のことなのか教えていただけますか。

伊勢谷:鳥俯瞰のことですね。この視点を持つことでいろんなことが見えてくると思うんです。リバースプロジェクトを立ち上げた時、「宇宙人から地球を見下ろすと、地球人はどんな生き物に見えるだろうか、と想像すること」から始めなければいけないと考えました。

宇宙から見たら、きっと地球人って自分で自分を攻撃しながらバタバタと動いていて、このまま地球上で生き続けるためにはあまりにも資源を使いすぎていたり、お互いに戦って足を引っ張り合ってるように見えるんじゃないかと。本来、一つの生物として存続していくための未来を作っていくのが賢い生き物なんじゃないかと思うんですけど、現実はそうなっていない。

大久保:このままいくと社会的に地球が持たないということですね。そうなると伊勢谷さんが他に挙げている「資源を使い切る」というキーワードにつながりそうですが。

伊勢谷:そうですね。例えば、リバースプロジェクトの「衣」で考えると、「衣服の作り方を変えてみると、服が焼却され二酸化炭素になる代わりに、人にとって必要な資源、価値有るものとして手に渡っていく」と考えました。

これまでは、ブランドの価値を落とさないために、と余った服を焼却したり、素材となるコットン生産のために大量の農薬を使うことで何も育たない土地が増えていたり、働く人たちにとっても悪い影響が出るという現状でした。これはもう宇宙人の視点から見たらひどい状況ですよね。自分たちの足をガンガン引っ張り合っているという。こういった問題に対して、自分たちでなにか改善できないかということで、「素材を使い切る」をコンセプトにプロジェクトに取り組んでいます。

大久保:もしかして、今日伊勢谷さんが着ているスーツも?

伊勢谷:そうなんです!リバースプロジェクトでデザインさせていただいたスーツなんですけど、TEIJIN MEN’S SHOPさんと共同開発した、エコペットプラスというリサイクルマテリアルを使って作ったスーツです。これボタンから何からペットボトルでできています。ペットボトルでもちょっと工夫して作り変えれば価値有るものを提供できるんです。ただ、これまで服ではあまりやる人がいなかったので、チャンスがあるぞと。

ペットボトルでできたスーツを披露する伊勢谷氏

大久保:捨てちゃえばゴミになるものを活用するということですね。他に、眠っていた価値を再発見するという視点で取り組んだ例を教えてもらえますか?

伊勢谷:面白い人、場所など地域に眠っているニッチな資源を発見して共有する「grully(グルリー)」というアプリを開発しました。地域の情報はやはりニッチな場所よりも一般的な情報が集められるので、その土地に行った人たちはどうしても限られた場所に足を運び、似たような感想を抱くケースが多い。

これから地域が多様性を持っていくことを考えた時、他の地域から来た人に新たな価値を提供する必要があると思います。本来持っている面白いポテンシャルを潰してしまうのはもったいないですね。地域をお互いに紹介しあって、既に有る潜在的な面白みを見つけたいと思っている方々をつなぎ合わせて行こうというアプリです。

新しい人類を育てていくために、「教育をひっくり返す」

大久保:伊勢谷さんは、「人をタグ付けることが大事」ともおっしゃってますよね。これはどういうことですか?

伊勢谷:SNSとかで、タグ付けってありますね。例えば今日イベントに参加している皆さんは、ご自身の会社にどんなことができて、どんな価値を提供できるか、という“タグ”をはっきり持っていると思います。

ところが多くの場合、このタグは個人にはついていない。個人の経験によってその方ができることや、逆にその人が求めているものといったことは変わってくると思いますが、外からはその人が何を内包しているか見えない。個人の持つ価値についてタグ付けがされれば、互いが必要としているものを限定できたり、タグを選べるようになることで今まで表に出てこなかった人材が新たな役目を果たせるかもしれない。

個人の役割を最大限活用することが、社会課題解決のためのプラットフォーム化に繋がっていくんじゃないかと。そいういった意味で、人のタグ付けという考えを持っています。

大久保:なるほど。ただ、同じタグの人が集まると競合してしまうという問題もありますよね

伊勢谷:同じ業界が持っている悩みって、ほぼ同じなんですよ。だから、同じタグを持つ人と協力して一緒に解決するべきなんですけど、なぜか人類は同じ問題に別々にとりくんで、自分たちがやったことはこれだと言い張って、結果全体が変わってない、ということがある。宇宙人の視点を持つと、これじゃ業界としてだめじゃないかと。

大久保:伊勢谷さんの話を聞くと、もう教育の段階から意識を変えていかなきゃってことだと思うんですが、伊勢谷さんも「教育をひっくり返す」をキーワードに挙げてますよね。これはどういうことですか?

伊勢谷:教育をひっくり返すっていうのは、Lochcs(ルークス)※で僕の相方の斎木陽平という若者が作った言葉です。彼自身が学校に馴染めなかったということもあって、学校をひっくり返すって言っているんですね。

※Lochcs(ルークス) 伊勢谷氏と斎木氏が共同発起人となって開設した高校。「生徒が持つ可能性や才能を最大限伸ばすための新しい高校」をコンセプトに、学生主体のユニークなカリキュラムを展開している。

Loohcsでは、宇宙人の目線から人類を理解し、しっかり真実を見てもらってその中から自分が改善できそうなアプローチを見つけてトライしてもらうという取り組みを行っています。それぞれの特性、多様性、特異性を見て、生徒が学びたいところに向かって教育を作っていこう、と。

画一的な教育が社会に大きな変化を起こした時代は確かにありましたが、今それをやって人類全体であまりに同じ方向に進んでしまうと、多様性が奪われて社会全体がダメになるということが起きているんですね。
我々はさまざまなやり方で人類の生き残りの形、社会システムとしての効率的な形をいろいろ試すべきだと思います。

自分たちがなんのために生きているのかを明確にしてアプローチしていくことが、人生の幸せに繋がるということを、学生のうちから学んだ上で、さまざまな社会のことを客観視してアプローチできる人材を育てていこうという方針です。これによって教育がひっくりかえり、新しい人類が生まれ社会を作っていくことができると考えています。

大久保:伊勢谷さんの話を聞いていると、なんだか吉田松陰さんと喋ってるようなインパクトがあります。多様性の大事さを感じられている一方で、「制服から未来を作る」というキーワードも挙げられてますよね。制服って多様性とは真逆のような気もするのですが、どういった意図なんですか?

伊勢谷:モノづくりに工場の存在は欠かせませんが、その中で働く人たちの服はこれまで安かろう悪かろうで、デザインも今ひとつのものが多かったんです。環境に適応できる素材を使っているわけでもないので、再生もできない。大きな企業が大きな単位で大量に使用するユニフォームを、いろんな企業と協力して作りあげることで、ユニフォームが一種企業のスタンスとなり、それを着ることで従業員がよりプライドを持って働くことができるかもしれない。会社の空気が変わると同時に、資源の圧縮にもつながっていくのではないか。そんな気持ちで作っています。

大久保:伊勢谷さん、本日はいろんな話を聞かせてくださりありがとうございました。エンジンは聞くだけじゃなく、地域で広めてもらうというコンセプトでもありますので、伊勢谷さんの話に心動かされた人は、是非他の場所でも感動を広めていただければなと思います。改めてありがとうございました。
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(編集:創業手帳編集部)

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