飲食店がデリバリーサービスを始めたいとき必見!必要な準備と営業許可をチェック
何をどこまで決めておく?デリバリーサービスを始めるために知っておくべき6つのポイント
(2020/10/17更新)
新型コロナウイルスによりライフスタイルが変化していく中で注目されている「デリバリーサービス」。
飲食業の売り上げが落ち込んでいるなかで、店舗営業だけでなく、デリバリー事業を始める飲食店も増えています。そんな中で「どうやってデリバリーを始めればいいのかわからない」という飲食店経営者の方も多いのではないでしょうか。
本記事では、
・デリバリー事業を導入するにあたって注意すべきこと
・必要な許可や準備
などを詳しく見ていきます。
この記事の目次
デリバリーサービスを始めるための6つのポイント
飲食店で新たに「デリバリーサービス」を始めるにあたって、必要な準備を確認しましょう。
デリバリーサービスにもさまざまな形態があります。自社の飲食店にとってどの形態が一番メリットがあるのか検討する必要があります。
デリバリー方法の選定から、メニューの決定や許可証の申請必要有無など、デリバリーサービスを開始するにあたって準備すべき6つのポイントを見ていきます。
①デリバリー方法の選定
デリバリーサービスは、主に3つの方法に分けられます。
・一部デリバリー代行サービスを利用
・注文から配達まですべての作業を任す
デリバリーサービスを始める前に、それぞれどのようなメリットやデメリットがあるのかを確認しましょう。
注文・配達を自前で行う
1つ目は、注文・配達を一括して自前で行う方法です。毎回の配達手数料を抑えられるのがメリットです。
ただし、自前で注文から配達まで一括して行う場合、配達用のバイクやその他備品に加え、人件費がかかってしまいます。自前でデリバリーサービスを導入する際には、十分な利益が得られるような経費の計算や人手を調整しましょう。
デメリット:人件費がかかる
注文をデリバリー代行サービス、配達は自前
2つ目は、客先からの注文受付はデリバリー代行サービスを利用し、配達のみを自前で行う方法です。一部のデリバリー代行サービスでは、注文のみでの利用も可能であるため、すでに配達に必要なバイクや人手に余裕がある飲食点で効率的に活用できます。
また、注文を受け取る際に、対応する手間を省けるほか、オーダーミスを防げられます。
一方で、自前で配達可能な範囲以上の注文が入ると、供給が追いつかなくなることで配達の遅延が生じ、お客さんを待たせてしまう可能性があります。あらかじめ、時間帯における注文数などを想定した上で人員の確保を進めなければなりません。
デメリット:供給が追い付かなくなる可能性がある
注文・配達両方でデリバリー代行サービスを利用
3つ目は、注文・配達ともにデリバリー代行サービスを利用する方法です。飲食店の知名度にもよりますが、多くの注文数を獲得できる可能性を秘めており、売り上げ向上につなげることができます。
デリバリー代行サービスを注文から配達まで利用するには、各運営会社が定めている利用手数料や配達手数料を支払わなければなりません。また、配達員は飲食店側で教育できないことから、輸送能力を原因とするお客さんからのクレームを受けてしまう危険性にも注意が必要です。
デメリット:手数料がかかる。デリバリーに対するクレーム対応も必要になる。
②メニューの設定
・デリバリー限定メニュー
・短時間での調理が可能
飲食店でデリバリーサービスを始める際の2番目のステップとして、メニューを設定する必要があります。メニュー選びで重要となるのが、人気メニューのテイクアウト化、デリバリー限定メニュー、短時間で調理が可能なメニューの3つです。
デリバリーでも安定した売り上げを出すには、店舗内でも提供している店の看板メニューを用意しましょう。常連客への売り上げにつながるほか、新規ターゲットに対しても全面的に人気メニューをアピールすることで、飲食店のジャンルを固定化させられます。また、デリバリー限定メニューを新たに開発し、お客さん側の購買欲求を高めることも重要です。
③容器の選定
・液体がこぼれくい
・メニューに応じた仕切り数
顧客の満足度を高めるためには、料理を入れる容器の選定も重視する必要があります。
たとえば、お弁当を取り扱っている飲食店は、温かい状態でご飯を食べられるように電子レンジの加熱に耐えられる容器を準備します。
さらに、お弁当のおかずやご飯が混ざらないように仕切りも考慮しましょう。
また、ラーメンやスープ類を取り扱う飲食店では、大きな揺れが伴うバイクや自転車による配達でも中身がこぼれないような容器が必要です。
このように、デリバリーサービスを利用した場合でも、実際の店舗で飲食する状態を再現できるような容器選びが重要となります。
④メニューの価格設定
デリバリーサービスで提供するメニューの価格設定にも注意しましょう。デリバリー代行サービスを利用する場合、商品価格に応じて注文手数料と配達手数料が発生します。
店舗と同じ価格に設定すると十分な利益を確保できなくなってしまうため、手数料をあらかじめ計算した上で価格を設定する必要があります。
注文・デリバリーサービスの手数料を確認
メニューの価格を決める際には、デリバリー代行サービスの手数料を確認した上で、利益を計算するようにしましょう。各代行サービスでは、売り上げに対して注文・配達手数料を設定しているため、余裕を持った価格にしておかないと利益の確保が難しくなります。
デリバリー代行サービスでは、注文・配達手数料が35%前後に設定されているため、店内価格の1.5倍を目安に価格を決めます。一般的な例として、飲食店で原価率は30%で、営業利益10%ほどに定められているケースが多いことから、デリバリーサービスを利用しても近い数字を維持できるように調整します。
<店舗価格1,000円の商品をデリバリーで販売する際の利益>
店舗価格1,000円 | デリバリー価格1,500円 | |
---|---|---|
原価 | 300円 | 300円 |
固定費・人件費 | 600円 | 600円 |
デリバリー代行費 | 0円 | 525円 |
利益 | 100円 | 75円 |
価格帯に注意
デリバリーで利益を確保するためには、手数料を考慮した価格を新たに設定しなければなりません。しかし、価格によっては敬遠される可能性もあることから、利益を狙いすぎるのも要注意です。
原価に応じて、昼食は800~1,000円、夕食は1,000~1,200円をデリバリーサービスにおける標準単価として留意しておきましょう。
⑤衛生面の検討
・消費者へ注意喚起
・調理従事者の体調管理
飲食店の開業時と同様に、デリバリーサービスを始める際ににも衛生面に気をつけなければなりません。衛生面で、最も注意すべきことは「食中毒」です。デリバリーサービスでは、店舗での飲食と異なり、ユーザーに届けるまでに時間を必要とするため、食中毒のリスクが増大します。
食中毒の発生を最大限に防ぐには、飲食店側の対策も重要ですが、「配達された料理はなるべくすぐに食べる」、「常温での長時間放置をしない」といった注意喚起も必要となります。とくに、夏の時期は温度・湿度ともに高くため、十分な対策を行いましょう。
食中毒に関連して、飲食店の従業員への体調管理も徹底しなければなりません。感染症を患っている可能性がある従業員から料理、調理器具などに菌が移ることで、最終的にお客さんへの感染を招く危険性があります。日頃から飲食店全体で体調管理を行い、健康に問題のある従業員を休ませるなどして、感染症拡大の予防に努めましょう。
⑥デリバリー許可や届出の確認
デリバリーサービスを始める前提として、飲食店の営業許可証を取得していなければなりません。
また、営業許可証に加えて、デリバリーで提供するメニューによっては、新たに「許可」を必要とします。
デリバリー許可が「不要」なケース
すでに飲食店として営業許可証を取得している場合、新規でテイクアウトサービスやデリバリーサービスを始めるための許可は不要です。
ただし、デリバリーで提供するメニューは、基本的に「料理として完成している」必要があります。
デリバリー許可が「必要」なケース
完成した料理に使われている材料などを個別で販売するには、扱う食材に応じて別の許可を取得しなければなりません。
たとえば、すでに牛丼屋の営業を行っており、普段から店舗でも販売をしている牛丼に加え、「肉」単体もメニューにラインナップする場合、食肉製品製造の許可が必要です。
また、ハンバーガーショップなどは、材料として使用しているバンズやソース単体を販売するために、それぞれ該当する食品営業許可を取得します。
さらに、自治体によっては、すでに営業許可証を取得している場合でも、デリバリーを追加で始めるために特別な許可を必要とすることがあるため、 保健所などに相談しましょう。
新たな経営戦略としてのデリバリーサービス
新型コロナウイルスの蔓延によって、飲食業全体が落ち込んでいるなかで新たな経営戦略を立てなければなりません。
デリバリーサービスは、感染症対策によって十分な席数が確保できない飲食店や、在宅勤務が主流となったことで閑散してしまったオフィス街に店舗を構えている飲食店にとって売り上げ回復を期待できる販売方法です。
新たにデリバリーサービスを始める際には、メニュー内容の工夫や容器を十分に選定した上で、高い満足度を得られるようにします。
また、販売するメニューによっては、飲食店の開業時に取得した「営業許可証」に加えて、それぞれの食品に関する許可証も必要です。どの許可証を取得するべきかを保健所とも相談しながら調べ、安全を確認したあとにデリバリーサービスを始めましょう。
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(編集:創業手帳編集部)