持分会社(合同会社/合資会社/合名会社)押さえるべき3つのポイント
持分会社と株式会社の4つの違いとは
(2016/11/11更新)
2006年の会社法改定により、有限会社が無くなりました。それにより、有限会社に変わる存在として意識され始めたのが持分会社です。今回は、持分会社とはなにか、株式会社との違いなどを解説します。
この記事の目次
持分会社は「合同会社」「合資会社」「合名会社」の総称
結論から言うと、持分会社とは、「合同会社」「合資会社」「合名会社」の総称を指します。こう並べてみると、それぞれの会社の形態を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。
持分会社事態は、一般的にあまり知られていませんが、実は株式会社と同様に「法人格」を持てる形態となっています。
合同・合資・合名会社の違いは様々にあるのですが、その違いについては下記でご説明します。
株式会社と持分会社の違いは?
では、株式会社と持分会社(合同会社/合資会社/合名会社)の共通点や相違点について解説していきます。
株式会社と持分会社の違い1:社員の責任と所有権
違いの1つ目は、社員の責任と会社の所有権です。
「責任」というのは、経営権という認識が近いでしょう。株式会社は、皆さんご存知の通り、経営難に陥った時の責任は役員や社長が負うことになります。その一方で、持分会社の場合は社員が経営権、つまりは「責任」に関わってきます。
所有権で言うと、株式会社の所有権は「株を持っている役員や株主」にあり、持分会社の所有権は「出資をした社員」にあるという大きな違いがあります。
持分会社はどちらかというと自由度が高く、柔軟な組織運営が可能となります。自由度が高いがゆえに、社員同士の関係性が適切でないと、トラブルの元にもなりかねません。出資した社員自身が会社の経営に関わったり、会社の利益分配の権利を持つことは、メリットでもデメリットでもあるのです。
「無限責任社員」「有限責任社員」とは
社員の責任を表す上で、「無限責任社員」「有限責任社員」という2つの区分が存在します。有限・無限というのは、その責任の範囲を示しています。
有限責任社員は「合同会社」「合資会社」に存在し、会社設立時などに会社に対して支払った出資額を上限として、その責任を負う義務が発生します。
一方、社員の全員が無限責任社員なのが、「合名会社」です。そして、その中間の無限責任社員と有限責任社員が混在している会社が合資会社です。
定款の絶対的記載事項
社員の責任を表す上で、「無限責任社員」「有限責任社員」という分け方をするため、株式会社と持分会社では定款の記載方法も異なります。
株式会社
- 目的
- 商号
- 本店の所在地
- 設立に際して出資される財産の価額又はその最低額
- 発起人の氏名又は名称及び住所
持分会社
- 目的
- 商号
- 本店の所在地
- 社員の氏名又は名称及び住所
- 社員が無限責任社員又は有限責任社員のいずれであるかの別
- 社員の出資の目的(有限責任社員にあっては、金銭等に限る。)及びその価額又は評価の標準
持分会社の場合は、赤字部分を記載する必要があります。
株式会社と持分会社の違い2:設立費用
持分会社と株式会社では、設立費用が大きく異なります。持分会社だと、一般的には14万円程度安く抑えることができるため、少人数での設立の場合は助かるかもしれません。
(持分会社は3形態いずれにせよ、設立にかかる費用は同額です)
また、持分会社は決算公告が不要なため、それにかかるランニングコストが抑えられるというメリットもあります。
株式会社と持分会社の設立費用
株式会社設立費用 | ||
紙の定款 | 電子認証定款 | |
公証人手数料 | 50,000円 | 50,000円 |
定款印紙代 | 40,000円 | 0円 |
登録免許税 | 150,000円 | 150,000円 |
合計 | 240,000円 | 200,000円 |
合同会社設立費用 | ||
紙の定款の場合 | 電子認証定款の場合 | |
公証人手数料 | なし | なし |
定款印紙代 | 40,000円 | 0円 |
登録免許税 | 60,000円 | 60,000円 |
合計 | 100,000円 | 60,000円 |
株式会社と持分会社の違い3:信頼性
これも大きなポイントになりますが、株式会社と持分会社では知名度が大きくことなります。その結果、持分会社で設立してしまうと会社としての信頼性が低くなる危険性があります。
社会的信用が低い分、将来的に出資を募ったりすることになれば、大きなデメリットとなるかもしれません。ですがその際は、持分会社を株式会社化することもできます。お金がない設立時は持分会社でのスタートをきり、キャッシュが生まれてきてから、株式会社化するのは良い選択と言えるでしょう。
株式会社と持分会社の違い4:将来性
持分会社、とくに合同会社は、一般的に「出資者」つまりは「社員」の総意で経営を進めていくという特徴があります。そのため、仲間内や家族など少人数で会社を立ち上げる時には適した形態と言えるでしょう。前述の「信頼性」とも関わる部分ですが、将来的に比較的短期間で社員をどんどん増やして、外部から資金調達していくということであれば、始めから株式会社として設立するほうが良い場合もあるでしょう。
持分会社のよくある疑問
持分会社の社員が出資の回収を行うには、どうしたらいい?
持分会社の社員の持分は譲渡できます。しかし、それにはいくつか注意すべき点があります。
まず、持分会社の持分の譲渡を行う際には、すべての社員の承認が必要です。また、有限責任社員の持分を譲渡する場合も、業務を執行するすべての社員の承認が必要です。
(1)業務を執行しない有限責任社員は、業務を執行する社員の全員の承諾がなければ、その持分の全部または一部を他人に譲渡することができません(第585条第2項)。
(2)それ以外の場合は、社員は、他の社員の全員の承諾がなければ、その持分の全部または一部を他人に譲渡することができません(第585条第1項)
まとめ|数年先を見越して、適した形態を選ぼう
いかがでしたでしょうか。株式会社にも持分会社にもそれぞれのメリット・デメリットがあることが分かったと思います。会社の規模・将来性・コスト面を加味して、適した形態を選びましょう。
(執筆:創業手帳編集部)
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