【令和6年最新版】キャリアアップ助成金とは?正社員化コースなど各コース概要や条件をわかりやすく解説
キャリアアップ助成金の中で最も活用されているのは「正社員化コース」
非正規雇用労働者のキャリアアップを推進するための制度が「キャリアアップ助成金」です。
非正規雇用者は雇用者全体の1/3以上にのぼり、平成6年以降ほぼ増加し続けています。非正規では不安定な立場にあることも多く、消費や結婚を控えざるを得ません。経済の活性化を図るためにも、非正規雇用者のキャリアアップを通じて安定性の向上を目指す必要があります。
今回の記事では、キャリアアップ助成金の正社員化支援を目的とした「2つのコース」、処遇改善支援を目的とした「5つのコース」のそれぞれの支給額や条件、申請方法までをわかりやすく解説します。ぜひ参考にしてみてください。
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この記事の目次
キャリアアップ助成金とは
キャリアアップ助成金とは、有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者などの「非正規雇用労働者」について、企業内でキャリアアップを推進する助成金です。非正規雇用労働者の「正社員化」や「処遇改善」を目的としています。
キャリアアップ助成金は、労働者の能力向上を支援するだけでなく、企業の競争力向上や労働市場の活性化にも寄与する重要な制度です。
本制度には複数のコースがあり、各コースの条件に沿ったキャリアアップ計画の実施が求められます。コースによっては基本となる支給額のほかに加算額が設けられ、加算条件を満たす措置を講じると助成金が増額される仕組みです。
キャリアアップ助成金の「対象となる事業主」
キャリアアップ助成金の対象となるのは、以下の全ての条件に当てはまる事業者です。
この助成金でいう事業主には、民間の事業者のほか、民法上の公益法人、特定非営利活動促進法上の特定非営利活動法人(NPO法人)、医療法上の医療法人、社会福祉法上の社会福祉法人なども含まれます。
①:雇用保険適用事業所の事業主 |
②:雇用保険適用事業所ごとに、キャリアアップ管理者を置いている事業主 (キャリアアップ管理者は、複数の事業所および労働者代表との兼任は不可。) |
③:雇用保険適用事業所ごとに、対象労働者に係るキャリアアップ計画を作成し、管轄労働局長の受給資格の認定を受けた事業主 |
④:実施するコースの対象労働者の労働条件、勤務状況および賃金の支払い状況等を明らかにする書類を整備し、賃金の算出方法を明らかにすることができる事業主 |
⑤:キャリアアップ計画期間内にキャリアアップに取り組んだ事業主 |
出典:厚生労働省「キャリアアップ助成金のご案内(令和6年度版)」
キャリアアップ助成金が支給される「中小企業事業主の範囲」
キャリアアップ助成金は、中小企業と大企業で支給金額が異なります。ほとんどの日本企業は中小企業なので、制度が定める「中小企業事業主の範囲」を押さえておきましょう。
主に資本金や出資金の額で大企業と中小企業の範囲が分けられますが、資本金や出資金がない事業主においては、常時雇用している労働者の数で判断されます。
常時雇用している労働者とは「2か月以上雇用されている労働者」または「週あたりの所定労働時間が、当該事業主に雇用される通常の労働者と概ね同等である者」のことです。
業種 | 資本金額・出資額の総額または常時雇用する労働者数 |
---|---|
小売業(飲食店を含む) | 資本金5,000万円以下または労働者50人以下 |
サービス業 | 資本金5,000万円以下または労働者100人以下 |
卸売業 | 資本金1億円以下または労働者100人以下 |
その他の業種 | 資本金3億円以下または労働者300人以下 |
出典:厚生労働省「キャリアアップ助成金のご案内(令和6年度版)」
令和5年11月に制度内容が刷新
令和5年11月29日にキャリアアップ助成金の内容が刷新され、助成金額の拡充や新たなコースの追加が行われました。主な刷新内容を紹介します。
刷新内容 | 概要(金額は中小企業の場合) |
---|---|
助成金額の拡充
(正社員化コース) |
助成金額を57万円→80万円に拡充 |
要件の緩和
(正社員化コース) |
対象となる有期雇用労働者の雇用期間を6か月以上3年以内→6か月以上に緩和 |
加算措置の拡充
(正社員化コース) |
正社員制度規定に「勤務地限定・職務限定・短時間正社員」を新設した場合の加算額を9万5,000円→40万円に拡充 |
加算措置の新設
(正社員化コース) |
正社員転換制度の新規定による取り組みに対し20万円の加算措置を新設 |
コースの新設 | 社会保険適用時処遇改善コースを新設 |
出典:厚生労働省「キャリアアップ助成金「正社員化コース」を拡充しました!」
【令和6年4月1日から】キャリアアップ助成金の主な変更点
令和6年4月にキャリアアップ助成金の内容が見直されましたが、大きく変わった点はほとんどありません。令和5年の刷新内容が引き続き継続するほか、一部要件の定義が見直された程度です。
見直された点をコースごとに以下にまとめました。詳細については厚労省の案内を確認してください。
コース名 | 主な変更点 |
---|---|
正社員化コース | ・賃金上昇要件における変形労働時間制の賃金算出について、固定労働時間制と同様に「平均の月所定労働時間を基にする方式」に見直し
・正規雇用労働者の定義における「昇給」「賞与」「退職金制度」の支給対象の見直し ・解雇要件の確認期間を「同年4月1日から翌年3月31日」に見直し |
賃金規定等改定コース | ・変更なし |
賃金規定等共通化コース | |
賞与・退職金制度導入コース | |
短時間労働者労働時間延長コース | ・令和6年3月31日で廃止され、廃止日までの取り組みは引き続き申請可能 |
社会保険適用時処遇改善コース | ・手当等支給メニューと併用メニューにおける対象期間の起算方法を「社会保険適用日に属する月に係る事業所の賃金算定期間の1日目から起算して6か月間」に見直し
※適用日に属する月内に当月分賃金支払い日が含まれる場合は読み替えが必要 |
出典:厚生労働省「キャリアアップ助成金Q&A(令和6年度版)」
正社員化支援を目的としたキャリアアップ助成金
キャリアアップ助成金の中でも、非正規雇用労働者の正社員雇用を推進する「正社員化支援」には、「正社員化コース」と「障害者正社員化コース」の2つのコースがあります。
ここからは「正社員化コース」と「障害者正社員化コース」の2つのコースについて、1つずつ詳しく解説します。
正社員化コース
キャリアアップ助成金の中でも、最も多く利用されているのが「正社員化コース」です。1年度につき、1事業所あたり20名まで申請できます。
非正規雇用労働者を正規雇用労働者に転換、あるいは直接雇用した際に助成金を受け取れるコースです。
具体的にはアルバイトやパートを正社員雇用した場合や、派遣社員を直接正社員として雇用した場合に適用されます。
正社員化コースの受給金額や条件は、以下の通りです。
正社員化コースの「支給額」と「加算額」
支給額 | ||
---|---|---|
企業規模 | 条件 | 支給額(1人あたり)※2期(12か月)分 |
中小企業 | 有期雇用→正規雇用 | 80万円 |
無期雇用→正規雇用 | 40万円 | |
大企業 | 有期雇用→正規雇用 | 60万円 |
無期雇用→正規雇用 | 30万円 |
加算額 | ||
---|---|---|
条件 | 有期雇用労働者の支給額(1人あたり) | 無期雇用労働者の支給額(1人あたり) |
派遣労働者を派遣先で正社員として直接雇用 | 28万5,000円 | |
対象者が一人親家庭の母または父 | 95,000円 | 47,500円 |
人材開発支援助成金の訓練修了後に正社員化 ※うち、自発的職業能力訓練または定額制の訓練修了後に正社員化した場合は下段の金額 | 95,000円 | 47,500円 |
11万円 | 55,000円 | |
正社員転換制度の新規定、および当該雇用区分への転換等の実施(1事業所につき1回限り) | 20万円(大企業は15万円) | |
「勤務地・職務限定、短時間正社員」制度のいずれか1つ以上の新設および当該雇用区分への転換等の実施 | 40万円(大企業は30万円) |
各出典:厚生労働省「キャリアアップ助成金のご案内(令和6年度版)」
障害者正社員化コース
キャリアアップ助成金には、障害者の正規雇用を推進する「障害者正社員化コース」があります。障害者の正規雇用や無期雇用が主な条件です。
障害者雇用促進法により、43.5人以上の従業員を雇用している事業主は、1人以上の障害者の雇用が必要です(0.5人が発生するのは、短時間労働者は「0.5人」とカウントするため)。
障害者正社員化コースの「支給額」
企業規模 | 条件 | 支給額(1人あたり) | |
---|---|---|---|
重度の身体障害者および知的障害者、精神障害者 | 重度以外の身体障害者および知的障害者、発達障害者、難病患者、高次脳機能障害と診断された者 | ||
中小企業 | 有期雇用→正規雇用 | 120万円(60万円×2期) | 90万円(45万円×2期) |
有期雇用→無期雇用 | 60万円(30万円×2期) | 45万円(22.5万円×2期) | |
無期雇用→正規雇用 | 60万円(30万円×2期) | 45万円(22.5万円×2期) | |
大企業 | 有期雇用→正規雇用 | 90万円(45万円×2期) | 67.5万円(33.5万円×2期 ※第2期の支給額は34万円) |
有期雇用→無期雇用 | 45万円(22.5万円×2期) | 33万円(16.5万円×2期) | |
無期雇用→正規雇用 | 45万円(22.5万円×2期) | 33万円(16.5万円×2期) |
出典:厚生労働省「キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース)のご案内」
処遇改善支援を目的としたキャリアアップ助成金
キャリアアップ助成金では、非正規雇用労働者の労働条件の改善を支援する「処遇改善支援」の助成金もあります。
処遇改善支援とは「賃金規定等改定コース」「賃金規定等共通化コース」「賞与・退職金制度導入コース」「短時間労働者労働時間延長コース」「社会保険適用時処遇改善コース」の5コースです。
1つずつ詳しく解説していきます。
賃金規程等改定コース
賃金規定等改定コースは、非正規雇用労働者の基本給の賃金規定を見直し、3%以上増額した際に受給できる助成金です。
基本的には、1年度につき1事業所あたり100人までなら複数回申請できます。加算額については1事業所あたり1回のみの支給です。
賃金規定等改定コースの「支給額」と「加算額」
支給額 | ||
---|---|---|
企業規模\賃金引き上げ率 | 3%以上5%未満 | 5%以上 |
中小企業 | 5万円 | 6万5,000円 |
大企業 | 3万3,000円 | 4万3,000円 |
加算額 | ||
---|---|---|
企業規模 | 条件 | 支給額(1事業所あたり) |
中小企業 | 職務評価の手法の活用により賃金規定等を増額改定した場合 | 20万 |
大企業 | 15万 |
各出典:厚生労働省「キャリアアップ助成金のご案内(令和6年度版)」
賃金規程等共通化コース
賃金規定等共通化コースは、非正規雇用労働者に対して、正規雇用労働者と共通の職務等に応じた賃金規則等を新たに作成・適用した際に、1回のみ受給できる助成金です。
賃金規定等共通化コースの「支給額」
企業規模 | 支給額(1事業所あたり) |
---|---|
中小企業 | 60万円 |
大企業 | 45万円 |
出典:厚生労働省「キャリアアップ助成金のご案内(令和6年度版)」
賞与・退職金制度導入コース
賞与・退職金制度導入コースは、非正規雇用労働者に賞与・退職金制度を新設し、支給やそのための積立てを行った場合に受給できる助成金です。
賞与または退職金制度のいずれかを導入した場合に以下の「支給額」の金額が受け取れ、双方を同時に導入すると加算額がプラスされます。本コースの支給は1事業所につき1回のみです。
賞与・退職金制度導入コースの「支給額」と「加算額」
支給額 | ||
---|---|---|
企業規模 | 条件 | 支給額(1事業所あたり) |
中小企業 | 賞与または退職金制度を導入 | 40万円 |
大企業 | 30万円 |
加算額 | ||
---|---|---|
企業規模 | 条件 | 支給額(1事業所あたり) |
中小企業 | 賞与および退職金制度を同時に導入 | 16万8,000円 |
大企業 | 12万6,000円 |
各出典:厚生労働省「キャリアアップ助成金のご案内(令和6年度版)」
【令和6年3月31日に廃止】短時間労働者労働時間延長コース
短時間労働者労働時間延長コースは、社会保険の対象になっていない短時間のみ勤務している非正規雇用労働者の週所定労働時間を延長することで、新たに社会保険の被保険者とした場合に受給できる助成金です。
本コースは令和6年3月31日に廃止されましたが、廃止日までの取り組みに関しては引き続き申請できます。
下記の①と②を合わせて、1年度1事業所あたりの支給申請上限は45人までとなっています。
【令和6年9月30日まで増額】支給額①
企業規模 | 条件 | 支給額(1事業所あたり) |
---|---|---|
中小企業 | 所定労働時間を3時間以上延長し、新たに社会保険を適用した場合 | 23万7,000円 |
大企業 | 17万8,000円 |
各出典:厚生労働省「キャリアアップ助成金のご案内(令和5年度版)」
【令和6年9月30日までの暫定措置】支給額②
企業規模 | 条件 | 支給額(1事業所あたり) |
---|---|---|
中小企業 | 所定労働時間を1時間以上2時間未満延長し、手取り収入10%以上の増額と社会保険を適用した場合 | 5万8,000円 |
大企業 | 4万3,000円 |
企業規模 | 条件 | 支給額(1事業所あたり) |
---|---|---|
中小企業 | 所定労働時間を2時間以上3時間未満延長し、手取り収入6%以上の増額と社会保険を適用した場合 | 11万7,000円 |
大企業 | 8万8,000円 |
各出典:厚生労働省「キャリアアップ助成金のご案内(令和5年度版)」
社会保険適用時処遇改善コース
令和8年3月31日までの暫定措置である「社会保険適用時処遇改善コース」は、年収の壁を理由に社会保険への加入が進んでいない企業を助ける制度です。労働者を社会保険に加入させ、収入増加の取り組みを行った事業主に助成金が支給されます。
このコースには「手当等支給メニュー」「労働時間延長メニュー」の2つがあり、メニューによって条件および助成額が異なります。
各メニューの「支給額」
手当等支給メニューの支給額 | |
---|---|
条件 | 支給額(1人あたり)※カッコ内は大企業の額 |
1年目:賃金の15%以上を追加支給または賃上げ | 40万円(30万円) |
2年目:賃金の15%以上を追加支給または賃上げ | |
3年目:基本給の18%以上を増額 | 10万円(7万5,000円) |
動労時間延長メニューの支給額 | |
---|---|
条件 | 支給額(1人あたり)※カッコ内は大企業の額 |
週所定労働時間を4時間以上延長 | 30万円(22万5,000円) |
週所定労働時間を3時間4時間未満延長、賃金を5%以上増額 | |
週所定労働時間を2時間以上3時間未満延長、賃金を10%以上増額 | |
週所定労働時間を1時間以上2時間未満延長、賃金を15%以上増額 |
各出典:厚生労働省「キャリアアップ助成金のご案内(令和6年度版)」
キャリアアップ助成金に必要な「キャリアアップ計画」のポイントや計画書の書き方
キャリアアップ計画とは、非正規雇用労働者のキャリアアップを推進するための計画です。
キャリアアップ助成金を申請するには、コースごとに適したキャリアアップ計画を立てる必要があります。立案後はキャリアアップ計画書に落とし込み、書類として提出しなくてはなりません。
キャリアアップ計画作成のポイントや書類の書き方を順に確認していきましょう。
コースの趣旨や実施期間に沿った取り組みを考案する
非正規雇用労働者のキャリアアップを支援する、具体的な取り組み内容を考案します。利用するコースの趣旨を確認し、それぞれに沿った取り組み内容を計画しましょう。趣旨から大きく逸れていると、助成金を受給できない恐れがあります。
取り組み期間は3年以上5年以内を設けなくてはなりません。5年間の期間満了後もキャリアアップ計画を継続する場合は、新たな計画書の提出が必要です。
労働者の意見のほか、すべての事業所の労働者代表の声をしっかりヒアリングして作りましょう。現場の意見に基づいてキャリアアップ計画を立てることで、実用性があるとして受給が認められる可能性が高まります。
計画の全体的な流れを決定する
キャリアアップ計画書には、計画の全体的な流れを記載する必要があります。時系列に沿って全体の流れを決めておけば、計画書をスムーズに作成できるのです。
取り組みは長期的に行うこととなるため、いつからいつまでにどのような施策を講じるかを念頭に置き、順序立てて計画しましょう。
キャリアアップ管理者を決める
キャリアアップ計画を管理・推進する「キャリアアップ管理者」を決める必要があります。
キャリアアップ管理者は複数の事業所の兼任や、労働者代表との兼任ができません。兼任できないことを踏まえた上で、事業所の労働者・事業主・役員のいずれかから選任しておきましょう。
必要な情報を計画書に記入する
キャリアアップ計画書に必要な情報を埋めていきます。計画書の様式は、キャリアアップ助成金のホームページからダウンロード可能です。
また、電子申請(キャリアアップ計画書、支給申請書)の場合省略できる項目がありますので、詳細につきましては、厚生労働省「キャリアアップ助成金のご案内(令和6年度版)」の「Ⅲ-1電子申請によって記載を省略できる項目」をご確認ください。
以下では、(様式第1号(計画(全コース共通)))(R6.4)の記入例を見ていきます。
「①キャリアアップ計画期間」と「②講じる措置の項目」については、申請コースに該当する情報を記入・選択してください。
以降、上記で選択したコースの計画について、該当箇所を記入・選択して添付します。(上記で選択していないコースつついては、作成・添付は必要ありません。)
各出典:厚生労働省「キャリアアップ助成金のご案内(令和6年度版)」
取り組みの前営業日までに提出を済ませる
作成したキャリアアップ計画書は、取り組みを開始する前営業日までに管轄の労働局やハローワークに提出します。
祝日が近い場合は十分に注意し、前営業日までに提出できるよう準備をしておきましょう。電子申請であれば、メンテナンス中を除き窓口が閉まっている曜日・時間も申請できます。
提出から認定までに時間がかかる場合があるため、取り組みの1か月前には労働局に提出するなど、余裕を持っておくことが大切です。
取り組みを変えたら変更届を労働局に提出する
キャリアアップ計画は取り組み前の予定となる計画なので、キャリアアップの過程で内容が変わることもあるでしょう。その場合は随時内容を書き換えても問題ありません。
ただしキャリアアップ計画を変更した際には、速やかに「キャリアアップ計画変更届」を提出する必要があります。変更届を提出せずにキャリアアップ計画を変更した場合、助成金を受給できない可能性があるので十分に注意しましょう。
取り組み後に6か月分の賃金を支払う
キャリアアップ計画に基づいた取り組みの実施後、コースの要件に沿って6か月分の賃金の支払いを済ませます。正社員化支援に関するコースの場合は、正社員化前と比べて3%以上の増額が必要です。
6か月分の賃金の支払いを終えたら、キャリアアップ助成金の申請手続きに進むことができます。計画書の提出や取り組みだけでなく、実際に賃金の支払いを終えてから申請できる点を踏まえておきましょう。
キャリアアップ助成金の「申請方法」
キャリアアップ計画と賃金の支払いが無事に完了したら、支払いの翌日から2か月以内にキャリアアップ助成金を申請します。方法は紙書類の提出と電子申請の2つです。
紙書類で提出する方法
キャリアアップ助成金を紙書類で申請するには、厚生労働省のホームページから「支給申請書」をダウンロードし、申請枠や必要事項を記入して書類を完成させます。また同ホームページから見られる「雇用関係助成金支給要領」にも目を通し、細かな要領を確認しておきましょう。
支給申請書を作成したら、必要な添付書類とあわせて所在地を管轄する都道府県労働局に提出します。
申請書類の書き方について、管轄の労働局に問い合わせれば回答してもらえます。不備がないように申請するためにもわからない点は確認しましょう。
電子申請で行う方法
助成金申請サイト「雇用関係ポータル」にて、キャリアアップ助成金の各コースにおける電子申請が可能です。
電子申請を行うには、デジタル庁が発行している「GビズID」を事前に取得しなければなりません。GビズIDの取得には一定期間を要するため、早めにID申請をしておきましょう。
IDの取得後、申請したい助成金やコース名を検索し、必要な各種情報を入力します。添付書類がいる場合、ファイルのアップロードによっても書類の提出が可能です。
また、「必要な情報を計画書に記入する」でも記載しましたが、電子申請の場合省略できる項目があるため、詳細については、厚生労働省「キャリアアップ助成金のご案内(令和6年度版)」の「Ⅲ-1電子申請によって記載を省略できる項目」でご確認ください。
キャリアアップ助成金が支給されない「5パターン」
キャリアアップ助成金は、申請要件を満たせば受給できる助成金です。しかし申請要件を満たしたつもりでも、思わぬ理由でキャリアアップ助成金が受給できない場合があります。
ここからは、キャリアアップ助成金が支給されない事例を5パターンで解説します。
パターン1:労働関連の法令違反がある場合
支給申請日の前日から過去1年間に労働基準法をはじめとする労働関連の法令違反がある場合は、キャリアアップ助成金を受給できません。
パターン2:実地調査を拒否した場合
キャリアアップ助成金の申請後、申請内容と実態の確認のために実地調査が行われることがあります。予告なく行われる場合もありますが、これを拒否すると助成金を受給できなくなります。
パターン3:書類の修正、再提出に応じなかった場合
キャリアアップ助成金の申請書や添付書類に不備があると、労働局から修正や再提出を求められる場合があります。労働局から指示された期日までに対応しなければ、助成金の受給ができません。
パターン4:過去の不正受給から5年以内の場合
本来受け取れないはずの助成金を不正に受け取った事業主は、5年間はキャリアアップ助成金の支給対象外となります。
パターン5:受給後の会計検査へ協力しなかった場合
キャリアアップ助成金の支給後に会計検査が実施されるケースがあり、検査に協力しないと助成金を受給できません。会計検査に協力するためにも、キャリアアップ助成金に関係する全ての書類を5年間は保管しておきましょう。
まとめ・最新のキャリアアップ助成金について条件や取り組みを理解しておこう
キャリアアップ助成金は、非正規雇用労働者の能力向上を支援するだけでなく、事業の競争力や企業価値の向上に繋がる可能性があります。
さらに非正規雇用労働者の待遇を改善することで、優秀な人材の確保にも役立つのです。
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