特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)の受給額や申請の流れをわかりやすく解説

創業手帳

特開金の「特定就職困難者コース」を活用すれば人材活用と資金調達の両方が可能


即戦力になる人材が欲しい、だけど企業としての社会的責任も果たしたい。

特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)は、雇用に課題を抱えている中小企業やスタートアップこそ活用すべき制度です。高齢者や障害者などの雇用で、1人あたり最大240万円が支給されます。

この記事では、通称”特開金”の特定就職困難者コースについて、受給要件から申請方法までをまとめました。戦略的に多様な人材採用をすすめたい企業は必見です。

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特定求職者雇用開発助成金とは


特定求職者雇用開発助成金とは、さまざまな事情から就職が困難な状況にある方の雇用を促進するための制度です。以下のようなコースがあり、特定の条件に該当した求職者を雇い入れた際に、事業主に対して助成金が支給されます。

コース 詳細
特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース) 高年齢者や障害者、母子家庭の母などの就職困難者が対象
特定求職者雇用開発助成金(就職氷河期世代安定雇用実現コース) 就職氷河期に正規雇用の機会を逃したことで、十分なキャリア形成ができなかった人が対象
特定求職者雇用開発助成金(生涯現役コース) 雇入れ日の満年齢が65歳以上の人が対象
特定求職者雇用開発助成金(発達障がい者・難治性疾患患者雇用開発コース) 発達障害者や難治性疾患患者の人が対象
特定求職者雇用開発助成金(生活保護受給者等雇用開発コース) ハローワークまたは地方公共団体において支援を受けている生活保護受給者や生活困窮者が対象

働ける能力や意思を有しているにも関わらず、何らかの事情で就職できない状況は好ましくありません。そこで、就職にあたって不利な状況にある方が就職しやすくするために、特定求職者雇用開発助成金が設けられています。

特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)とは

特定求職者雇用開発助成金の「特定就職困難者コース」は、就職困難者の就職促進を支援する制度です。事業主に経済的なインセンティブを提供し、一般的に選考で不利になりやすい求職者の雇用を促しています。

業種や企業規模によって使えないということは原則なく、雇用保険の適用事業主であれば、スタートアップや個人事業主でも利用可能です。

就職困難者は「就職して収入を得られる」「社会活動に参加できる」、事業主は「助成金を得られる」「多様な人材を採用して新しい価値観を取り入れられる」というメリットがあります。

対象労働者

特定就職困難者コースの対象となるのは、原則、雇い入れ日の満年齢が65歳未満の方で、以下のような条件に当てはまる労働者です。

  • 60歳以上の者
  • 身体障害者
  • 知的障害者
  • 精神障害者
  • 母子家庭の母等
  • 父子家庭の父(児童扶養手当を受給している方に限る) など

条件に当てはまれば、試用期間を設けた雇用も対象となります。

また、雇い入れる労働者の雇用形態は「正規雇用」「無期雇用」「有期雇用(自動更新)」のいずれかでなくてはなりません。例えば、勤務成績等により更新の有無を判断する場合は助成対象外です。

なお、65歳以上の方を雇い入れる場合は生涯現役コースを活用しましょう。

支給要件と除外要件

特定求職者雇用開発助成金を受給するためには、対象労働者の雇い入れに関して以下の要件をクリアする必要があります。

  • ハローワークや民間の職業紹介機関の紹介で雇い入れる
  • 雇用保険一般被保険者又は高年齢被保険者として雇い入れ、対象労働者の年齢が65歳以上に達するまで継続して雇用し、かつ、当該雇用期間が継続して2年以上であることが確実である

対象労働者は適切な運用が期待できる職業紹介事業者からの紹介で雇い入れなくてはなりません。つまり、求人サイトや求人広告からの雇用は対象外です。

厚生労働省が定める条件に同意して届け出ている職業紹介事業者から雇い入れてください。

なおA型事業所には別途の支給要件も定められているので、公式資料を必ず確認しましょう。

特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)の助成額


特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)の助成額は、対象労働者と勤務時間、事業者の規模によって金額が変わります。

以下の中小企業者の定義に当てはまれば、助成額が大きく設定される仕組みです。

業種 資本金または出資総額/常時雇用する労働者数の条件
(いずれかの合致でよい)
小売業・飲食店 5,000万円以下/50人以下
サービス業 5,000万円以下/100人以下
卸売業 1億円以下/100人以下
その他の業種 3億円以下/300人以下

具体的な助成額について紹介していきます。

短時間労働者以外の助成額

1週間の所定労働時間が30時間以上の対象労働者を雇う場合、労働者に応じて1人あたり以下の助成金が支給されます。

対象労働者 支給額 助成対象期間 支給対象期ごとの支給額
高年齢者(60歳以上)
母子家庭の母等
60万円(50万円) 1年 30万円×2期
(25万円×2期)
身体・知的障害者 120万円(50万円) 2年(1年) 30万円×4期
(25万円×2期)
重度障害者、45歳以上の障害者、精神障害者 240万円(100万円) 3年(1年6カ月) 40万円×6期
(33万円×3期)※第3期の支給額は34万円

カッコ内は中小企業以外の場合

短時間労働者の助成額

短時間労働者とは、1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満の労働者を指します。1人あたりの助成額は以下のとおりです。

対象労働者 支給額 助成対象期間 支給対象期ごとの支給額
高年齢者(60歳以上)
母子家庭の母等
40万円(30万円) 1年 20万円×2期
(15万円×2期)
障害者 80万円(30万円) 2年(1年) 20万円×4期
(15万円×2期)

高齢者や母(父)子家庭の母(父)親でも、優れた能力やスキルを有している方はいます。体力や家庭事情への配慮が求められますが、有用な人材を雇い入れることで、事業展開が円滑になるでしょう。

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特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)の申請方法・提出書類


特定求職者雇用開発助成金は、対象労働者の雇い入れをしたあと、一定期間ごとに申請しなくてはなりません。

最初の申請で審査に通っても、期間ごとに再度の申請と審査が必要です。

具体的には、次の流れのうち2〜4を6カ月ごとに繰り返します。

  1. ハローワーク等からの紹介を受けて対象求職者を雇い入れる
  2. 支給申請書類をハローワークまたは労働局へ提出する
  3. 支給が決まったら助成金が振り込まれる
  4. 以後、支給対象期(6カ月)ごとに申請を行う

申請書を提出したら審査が行われ、審査結果は通知書で届きます。実際に振り込まれるまでには一定の期間がかかることを念頭に置いておきましょう。

支給申請に必要な書類

支給申請に必要な書類は6カ月ごとに毎回同じです。以下の書類を準備してください。

  • 支給申請書
  • 賃金台帳等
  • 出勤簿等
  • 対象者であることを証明するための書類
  • 雇用契約書又は雇入れ通知書
  • 対象労働者雇用状況等申立書
  • 支給要件確認申立書

場合によっては、上記のほかにも労働局から書類の提出が求められることがあるため、指示に従いましょう。

支給申請の具体的なタイミング


出典:厚生労働省「特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)のご案内

特定求職者雇用開発助成金の支給期間は6カ月間単位です。支給申請も6カ月に1回のペースで行わなければなりません。

申請期間は「各支給対象期の末日の翌日から2カ月以内」です。起算日は、賃金締切日が定められていない場合は「雇入れ日」、賃金締切日が定められている場合は「雇入れ日の直後の賃金締切日の翌日」となります。

「第1期は申請し忘れたけど第2期は申請する」というように、当期の申請をしていなくても次期の支給申請を行うことは可能です。

どんな事業主が特開金を活用すべき?


以下に該当する事業主の方は、特定求職者雇用開発助成金の活用を検討してみてはいかがでしょうか。

法改正への対応が求められる事業主


出典:厚生労働省「障害者の法定雇用率引上げと支援策の強化について

近年、障害者の法定雇用範囲が段階的に引き上げられています。

現行法では40人以上の従業員がいる場合に2.5%の障害者雇用が必要ですが、令和8年7月からは従業員数37.5人以上に範囲が広がり、法定雇用率は2.7%に上がる予定です。

業種ごとに設定されていた除外率も令和7年4月から引き下げられているほか、障害者雇用の算定方法が見直されるなど、政策は変革期を迎えています。

今後はより多くの中小企業が障害者雇用義務の対象となるため、早期の制度理解と助成金の活用準備が欠かせません。同時に、障害者雇用そのものへの理解も深めておくべきでしょう。

即戦力人材の確保や多様性を重視する事業主

特開金は、優れた人材の確保や多様性への適応でさらに成長したい企業の後押しとなります。具体的には、次のような目的・目標を持つ事業主におすすめです。

  • 社会経験が豊富で実務上頼れる従業員がほしい
  • ダイバーシティを進めたい
  • 社内外からの信頼を獲得したい

高齢者は優れた知識や実務能力があるにもかかわらず、年齢だけを理由に就職できないケースが少なくありません。実務上頼れる従業員を求めている事業主は、特開金を活用しつつ、高齢者雇用を進めてみてはいかがでしょうか。

多様な人材を雇い入れてダイバーシティを推進したい、企業としての社会的責任(CSR)を重視したい事業主も、特開金の活用を検討しましょう。

CSRを重視する企業にとって、多様な人材の公平な雇用は不可欠です。独立行政法人労働政策研究・研修機構の資料でも、CSRを重視したコーポレート・ガバナンスが求められてきている旨が述べられています。

年齢や差別、障害の有無に関係なく人材を雇い入れることで社会的責任を果たせば、企業として社内外から信頼を得られるでしょう。

特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)に関するよくある質問


最後に、特定求職者雇用開発助成金に関するよくある質問を紹介します。

Q.トライアル雇用助成金と併用する場合はどうしたらいいですか?

制度を併用するにはそれぞれ別に申請が必要です。

トライアル雇用助成金の概要
  • 障害者トライアルコース:月額最大8万円を3カ月、または最大4万円を最長6カ月支給
  • 障害者短時間トライアルコース:月が最大4万円を最長12カ月支給

「初めて障害者を雇う」「適性を確認したい」などの理由でトライアル期間を設けたい場合に活用できます。

ただしトライアル雇用後に継続して雇う場合でも、特開金の支給は「第2期支給対象期間分から」となる点に注意してください。

Q.支給対象期間中に対象労働者を転勤させるとどうなりますか?

転勤したからといって、必ず助成対象外になるわけではありません

ただし、転勤日を含む支給対象期と転勤日後の支給対象期については、転勤後の事業所から助成金の申請を行う必要があります。

Q.助成の対象外になるのは具体的にどんなケースですか?

以下のようなケースでは、特開金の特定就職困難者コースの支給対象外となります。

  • 対象者であることを把握せずに雇用した場合
  • ハローワークのオンライン自主応募から雇用した場合
  • 紹介前に雇用が内定していた場合
  • 3親等以内の親族を雇い入れた場合
  • 試用期間中に第1期の申請を行った場合
  • 試用期間と本採用で契約が分かれている場合

これらの除外条件に該当すると助成金は受給できません。

対象外になるケースを避けた上で、必ず適正な紹介事業者から紹介を受けてください。

Q.対象労働者を解雇するとどうなりますか?

助成金の対象労働者を事業主都合で解雇した場合、助成金の支給を受けられなくなります。また、すでに支給が行われた助成金については返還を求められることがあるため、注意しましょう。

さらに、事業主都合による解雇や退職勧奨による離職が発生した場合、その後3年間は特開金を利用できません。

まとめ:特開金を活かした雇用で企業の信頼性を高めよう

特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)を活用すれば、多様な人材登用を進めながら経済的な助成を受けられます。さまざまな事情を抱えていながらも優れた能力やスキルを有している人を雇い入れれば、事業の発展にも寄与してくれるでしょう。

また、ダイバーシティやCSRを意識して事業運営を行えば、働きやすい職場を実現できます。企業の信頼性が高まり、事業活動の活性化やさらなる人材登用も夢ではありません。

制度申請に必要なのは、高いスキルではなく「基本を知っていること」です。知っているか知らないかで、支給取り消しや対象外などのリスクを防げることもあります。

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(編集:創業手帳編集部)

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