【2024年3月最新】特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)の受給額や申請の流れをわかりやすく解説

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特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)を活用すれば人材活用しながら経済的な助成を得られる


厚生労働省では、雇用促進を目的とした助成金制度を設けています。代表的な助成金が、特定の条件に該当する求職者を雇い入れたときに受給できる特定求職者雇用開発助成金です。

特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)を活用すれば、多様な人材の雇い入れを行いつつ経済的助成を受けられます。多様な人材を雇い入れることで新しい価値観に触れ、事業のアイデアが浮かぶ可能性もあるでしょう。

こちらの記事では、特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)を受給する要件や具体的な申請方法を解説します。多様な人材採用を検討している事業主の方は、ぜひ参考にしてみてください。

なお、助成金は改正されることがあるため、最新情報を確認することが大切です。こちらの記事で解説している内容は、2024年3月時点の情報である点に留意してください。

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この記事の目次

特定求職者雇用開発助成金とは


特定求職者雇用開発助成金とは、さまざまな事情から就職が困難な状況にある方の雇用を促進するための制度です。特定の条件に該当した求職者を雇い入れた際に、事業主に対して助成金が支給されます。
2024年3月現在、以下のコースが用意されています。

コース 詳細
特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース) 高年齢者や障害者、母子家庭の母などの就職困難者が対象
特定求職者雇用開発助成金(就職氷河期世代安定雇用実現コース) 就職氷河期に正規雇用の機会を逃したことで、十分なキャリア形成ができなかった人が対象
特定求職者雇用開発助成金(生涯現役コース) 雇入れ日の満年齢が65歳以上の人が対象
特定求職者雇用開発助成金(発達障がい者・難治性疾患患者雇用開発コース) 発達障害者や難治性疾患患者の人が対象
特定求職者雇用開発助成金(生活保護受給者等雇用開発コース) ハローワークまたは地方公共団体において支援を受けている生活保護受給者や生活困窮者が対象

働ける能力や意思を有しているにも関わらず、何らかの事情で就職できない状況は好ましくありません。そこで、就職にあたって不利な状況にある方が就職しやすくするために、特定求職者雇用開発助成金が設けられています。

特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)とは

いくつか特定求職者雇用開発助成金の種類がある中で、特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)の趣旨や目的、対象者を見ていきましょう。

趣旨と目的

特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)は、就職困難者の就職促進を支援する趣旨の制度です。事業主に経済的なインセンティブを提供し、一般的に選考で不利になりやすい求職者の雇用を促しています。

就職困難者は「就職して収入を得る」「社会活動に参加する」というメリットがある一方で、事業主は「助成金を得られる」「多様な人材を採用して新しい価値観を取り入れられる」というメリットがあります。

対象労働者

特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)の対象となるのは、以下の求職者です。原則、雇入れ日現在の満年齢が65歳未満の方が対象となります。

65歳以上の方を雇い入れる場合は、特定求職者雇用開発助成金(生涯現役コース)を活用しましょう。

  • 60歳以上の者
  • 身体障害者
  • 知的障害者
  • 精神障害者
  • 母子家庭の母等
  • 父子家庭の父(児童扶養手当を受給している方に限る)
  • 中国残留邦人等永住帰国者
  • 北朝鮮帰国被害者等
  • 認定駐留軍関係離職者(45歳以上)
  • 沖縄失業者求職手帳所持者(45歳以上)
  • 漁業離職者求職手帳所持者(45歳以上)
  • 手帳所持者である漁業離職者等(45歳以上)
  • 一般旅客定期航路事業等離職者求職手帳所持者(45歳以上)
  • 認定港湾運送事業離職者(45歳以上)
  • ウクライナ避難民
  • その他就職困難者(アイヌの人々:北海道に居住している45歳以上の者であり、かつハローワークの紹介による場合に限る)

実務上、対象者として多いのは「60歳以上の者」「身体障害者」「知的障害者」「精神障害者」「母子家庭の母等」「父子家庭の父(児童扶養手当を受給している方に限る)」と考えられます。

また、雇い入れる労働者の雇用形態は「正規雇用」「無期雇用」「有期雇用(自動更新)」である必要があります。例えば、勤務成績等により更新の有無を判断する場合は助成対象外です。

支給要件と除外要件

特定求職者雇用開発助成金を受給するためには、対象労働者の雇い入れに関して以下の要件をクリアする必要があります。

  • 公共職業安定所(ハローワーク)・地方運輸局(船員として雇い入れる場合)・適正な運用を期すことのできる有料・無料職業紹介事業者等※の紹介で雇い入れる
  • 雇用保険一般被保険者又は高年齢被保険者として雇い入れ、対象労働者の年齢が65歳以上に達するまで継続して雇用し、かつ、当該雇用期間が継続して2年以上であることが確実であると認められる

※特定地方公共団体、厚生労働大臣の許可を受けた有料・無料職業紹介事業者、届出を行った無料職業紹介事業者、または無料船員職業紹介事業者(船員として雇い入れる場合)のうち、厚生労働省職業安定局長の定める項目のいずれにも同意する旨の届出を労働局長に提出している職業紹介事業者等

つまり、直接ホームページや求人広告などで雇い入れたときなどは、特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)の対象外です。

ほかにも、除外要件として細かい規定もあるため、厚生労働省の最新情報をご確認ください。例えば、紹介する以前に雇用の予約がある場合や、3親等以内の親族を雇い入れた場合、支給対象外となるので注意しましょう。

トライアル雇用助成金(障害者トライアルコース)との併用が可能

特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)は、トライアル雇用助成金(障害者トライアルコース)との併用が可能です。トライアル雇用助成金とは、トライアル期間を設けて障害者を雇い入れたとき、月額最大4万円を最長3カ月にわたって受給できる制度です。

「まずは障害者の職場適性を見極めたい」「障害者を雇い入れるのは初めてだから、まずはトライアル期間を設けたい」と考えている事業主の方は、トライアル雇用助成金(障害者トライアルコース)の活用も視野に入れるとよいでしょう。

なお、特定求職者雇用開発助成金とトライアル雇用助成金を併給する際には、それぞれ支給申請を行う必要がある点に留意してください。

特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)の助成額


特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)は、60歳以上の方や母子家庭の母親をはじめ、一般的に就職が困難である求職者を雇い入れた事業主に対して支給されます。
具体的な助成額は、以下のとおりです。※1
※1( )内は中小企業以外の企業
【短時間労働者以外】

対象労働者 支給額 助成対象期間 支給対象期ごとの支給額
高年齢者(60歳以上65歳未満)
母子家庭の母
ウクライナ避難民等
60万円(50万円) 1年 30万円×2期
(25万円×2期)
身体・知的障害者 120万円(50万円) 2年(1年) 30万円×4期
(25万円×2期)
重度障害者等(重度障害者、45歳以上の障害者、精神障害者) 240万円(100万円) 3年(1年6カ月) 40万円×6期
(33万円×3期)※2

※2 第3期の支給額は34万円
【短時間労働者(1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満の労働者)】

対象労働者 支給額 助成対象期間 支給対象期ごとの支給額
高年齢者(60歳以上65歳未満)
母子家庭の母等
40万円(30万円)) 1年 20万円×2期
(15万円×2期)
障害者 80万円(30万円) 2年(1年) 20万円×4期
(15万円×2期)

高齢者や母(父)子家庭の母(父)親でも、優れた能力やスキルを有している方はいます。体力や家庭事情への配慮が求められますが、有用な人材を雇い入れることで、事業展開が円滑になるでしょう。

なお、中小企業に該当する企業は以下のとおりです。

業種 要件
小売業・飲食店 資本金もしくは出資の総額が5,000万円以下または常時雇用する労働者数50人以下
サービス業 資本金もしくは出資の総額が5,000万円以下または常時雇用する労働者数100人以下
卸売業 資本金もしくは出資の総額が1億円以下または常時雇用する労働者数100人以下
その他の業種 資本金もしくは出資の総額が3億円以下または常時雇用する労働者数300人以下

特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)の活用を検討すべき事業主


以下に該当する事業主の方は、特定求職者雇用開発助成金の活用を検討してみてはいかがでしょうか。

  • 社会経験が豊富で実務上頼れる従業員がいると助かる事業主
  • 40人以上の従業員がいる事業主
  • ダイバーシティを進めている事業主
  • 企業としての社会的責任を重視している事業主

高齢者には、社会経験が豊富にある強みがあります。キャリアの内容は個々人によって差があるとはいえ、給与計算や労務管理など社会保険の実務に詳しい人や、マーケティングに精通しているという人もいるでしょう。

高齢者は優れた知識や実務能力を有しているにもかかわらず、年齢だけを理由に就職できないケースが少なくありません。実務上頼れる従業員を求めている事業主の方は、特定求職者雇用開発助成金を活用しつつ、高齢者雇用を推し進めてみてはいかがでしょうか。

特に、立ち上げたばかりのベンチャー企業の中には「社会保険関係の手続きや労務管理に関する知識を有している従業員がいない」というケースが往々にしてあり得ます。社会経験が豊富な高齢者を雇い入れることで、人材不足の悩みを解消できる可能性があります。

40人以上の従業員がいる事業主も、特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)の活用を検討しましょう。令和6年4月より法定雇用率が改定され、従業員40人以上の事業主に障害者を雇用する義務が発生するためです。

令和6年4月の法定雇用率は2.5%です。例えば、40人の従業員がいる場合は1人以上の障害者を雇用しなければなりません。


出典:厚生労働省

あわせて、多様な人材を雇い入れてダイバーシティを推進している事業主や、企業としての社会的責任(CSR)を重視している事業主も、特定求職者雇用開発助成金の活用を検討しましょう。

実際に、独立行政法人労働政策研究・研修機構の資料でも、「現代の企業には、環境や人権、労働などに配慮する社会的責任(CSR=CorporateSocial Responsibility)を重視したコーポレート・ガバナンスが求められてきて」いる旨が述べられています。

年齢や差別、障害の有無に関係なく人材を雇い入れ、適材適所で配置する重要性は今後も高まっていくと見込まれます。社会的責任を意識した人材登用や事業運営を行うことで、企業として信頼を得られるでしょう。

特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)の申請方法・提出書類


特定求職者雇用開発助成金の申請方法や流れは、以下のとおりです。

  • ハローワーク等からの紹介を受けて対象求職者を雇い入れる
  • 支給申請書類をハローワークまたは労働局へ提出する
  • 支給申請の審査を受ける
  • 支給決定を受けたら助成金が振り込まれる
  • 以後、支給対象期ごと(6カ月おき)に申請を行う

審査結果は通知書にて確認します。支給決定の通知を受けた場合でも、実際に振り込まれるまでに一定の期間を要します。

なお、申請にあたって必要となる書類は下記のとおりです。

  • 支給申請書
  • 賃金台帳等
  • 出勤簿等
  • 対象者であることを証明するための書類
  • 雇用契約書又は雇入れ通知書
  • 対象労働者雇用状況等申立書
  • 支給要件確認申立書

場合によっては、上記のほかにも労働局から書類の提出が求められることがあるため、指示に従いましょう。

特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)を申請する際の注意点

特定求職者雇用開発助成金の申請にあたって、いくつか注意すべき点があります。

条件を満たしているにも関わらず受給しそこねる事態が起きないように、以下で解説する点に留意しましょう。

申請期間を厳守する

期日内に申請しないと受理されないため、申請期間を厳守しましょう。支給申請期間は「各支給対象期の末日の翌日から2カ月以内」となっています。

出典:厚生労働省 特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)のご案内

起算日は、賃金締切日が定められていない場合は「雇入れ日」、賃金締切日が定められている場合は「雇入れ日の直後の賃金締切日の翌日」です。

支給期ごとに申請を行う必要がある

特定求職者雇用開発助成金の申請は、支給期ごとに行う必要があります。具体的には、6カ月間が1つの支給期となるため、6カ月に1回のペースで申請を行わなければなりません。

支給期ごとに申請を行う必要があるため、忘れないように気を付けましょう。なお、1回目の支給申請を忘れてしまった場合でも、2回目以降の支給申請を行うことは可能です。

トライアル雇用助成金と併用する場合は第2期分から受給できる

トライアル雇用助成金(障害者トライアルコース)と特定求職者雇用開発助成金を併用する場合、特定求職者雇用開発助成金の受給は「第2期支給対象期分」からです。

障害者を雇い入れ、トライアル雇用終了後に引き続き雇用するケースもあるでしょう。この場合、特定求職者雇用開発助成金の受給は第2期支給対象期分からとなるため、注意しましょう。

特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)に関するよくある質問


最後に、特定求職者雇用開発助成金に関するよくある質問を紹介します。

Q.試用期間を設けている場合も対象となりますか。

試用期間を設けて雇い入れた場合でも、対象となります。

ただし、第1期支給対象期間の支給申請時に試用期間が継続している場合や、試用期間と本採用後において雇用契約が別である場合などは、助成対象外です。

Q.支給対象期間中に、対象労働者を同一事業主の他事業所へ転勤させることは可能ですか。

転勤させることは可能です。

ただし、転勤日を含む支給対象期と転勤日後の支給対象期については、転勤後の事業所から助成金の申請を行う必要があります。

Q.助成金の対象者であることを把握せず雇い入れた後、助成金の対象者であることが判明した場合も助成対象となりますか。

雇い入れ時に対象者であることを把握していない場合、助成金の対象外です。

ハローワーク等が助成金の対象労働者であることを踏まえて紹介し、事業主も助成金の対象労働者であることを承知していることが要件となります。

Q.直接募集や求人サイトで対象者を雇い入れた場合、助成金の対象になりますか。

直接募集や求人サイトで対象者を雇い入れた場合、助成金の対象外です。また、ハローワークのオンライン自主応募の場合も助成金の対象外です。

Q.対象労働者を解雇するとどうなりますか。

助成金の対象労働者を事業主都合で解雇した場合、助成金の支給を受けられなくなります。また、既に支給が行われた助成金については返還を求められることがあるため、注意しましょう。

さらに、事業主都合による解雇や退職勧奨による離職が発生した場合、その後3年間は特定求職者雇用開発助成金が受けられません。

まとめ

特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)を活用すれば、多様な人材登用を進めながら経済的な助成を受けられます。さまざまな事情を抱えていながらも優れた能力やスキルを有している人を雇い入れれば、事業の発展にも寄与してくれるでしょう。

また、ダイバーシティやCSRを意識して事業運営を行えば、働きやすい職場を実現できます。企業の信頼感が高まり、事業活動の活性化やさらなる人材登用が進むかもしれません。

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(編集:創業手帳編集部)

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