創業初期から大企業並みの組織図を描く ビットキー代表・江尻祐樹の「先の先を読む経営」

創業手帳

ビットキー代表・江尻祐樹氏に、壮大な組織づくりのビジョンを聞きました

(2019/08/01更新)

格安で利用できるスマートロックを開発・販売している株式会社ビットキー。2019年6月には、7.4億円規模の資金調達をし、設立1年目にして累計調達額は10億円を突破。独自の技術で大きな注目を集めている、勢いあるスタートアップです。
同社を率いる、三人の共同経営者の一人である江尻祐樹代表取締役CEOに、急成長する事業の秘訣や、今後のビジョンについて話を聞きました。

江尻祐樹(えじりゆうき)株式会社ビットキー 共同創業者 / 代表取締役 最高経営責任者
1985年生まれ。大学時代は建築/デザインを専攻、DJやアーティストとしても活動。リンクアンドモチベーショングループ、ワークスアプリケーションズなどを経て、旧知のエンジニア中心に発足したブロックチェーン/分散システム研究会のメンバーを中心に株式会社ビットキーを創業。ブロックチェーン/P2P・分散技術を活用した、全く新しいデジタルID認証/キー基盤を開発し、事業化する。

スマートロックの背景に、壮大なプラットフォームづくりがある

ーサービスの概要と、この事業を立ち上げた経緯を教えてください

江尻:我々は、「テクノロジーの力であらゆるものを安全・便利に、気持ちよくつなげること」をミッションに掲げています。「bitlock(ビットロック)」というスマートロックを作って販売している会社というイメージが強いかと思いますが、事業には2つの軸があります。

一つは、社会のデジタル化で重要となる、IDの認証や所有されている権利の移転などをセキュアかつスムーズに行う技術を使ったプラットフォーム作りを行っていることです。

背景から説明しますと、「ブロックチェーン」という技術が普及し始めた頃、エンジニアどうしで集まって、この技術がどんなことに使えるのか、どんな強みと弱みを持っているのかといった実利用性を知るための勉強会を行っていました。

その中で、ブロックチェーンそのものは改ざんができない強固な耐性を持つ技術ですが、この技術を実際に使うためのスマホやサービスといった「ブロックチェーンの外側の取引領域」については情報が流出したり、不正利用されたり、外部から攻撃を受けやすいという脆弱性を持っていることがわかりました。

例えば、最近ニュースなどでよくある「なりすまし」が分かりやすい例です。ブロックチェーンの技術を通じて私からAさんに仮想通貨を送ったとします。ブロックチェーンに記録される取引情報自体は正しいですが、「受け取った相手が本当にAさんか」ということは確実にはわかりません。Aさんの隣でBさんという別の人がいて、受け取っているのはその人かもしれませんね。

「ブロックチェーンの外側」の弱い領域に注目した

この勉強会で「ブロックチェーンの外側の安全性を確保するにはどうすればよいか」という問題に対する解決策を見つけようと思ったことが、ビットキー立ち上げにつながっています。だから、「高セキュリティで改ざんできない本人認証と権利移転」を実現するプラットフォームづくりを行っているわけです。ブロックチェーンと、それを利用するサービス層の間に、「取引の正当性の担保」や「デジタル上のID(本人性)と権利の確保」などの技術を挟むイメージですね。

“便利で不便”なシェアリングエコノミー体験から、「鍵」に注目

ー2つ目の軸についても教えてください

江尻:2つめの軸は、スマートロックを中心としたプロダクトとサービスの開発・展開です。プラットフォームづくりからスマートロックの開発に思い至ったのは、共同創業者の一人である寳槻(ほうつき)昌則と、「このプラットフォームの技術をどんな分野に応用できるか」という話をしていた時、「鍵と相性が良いのでは?」、という話が出たことがきっかけです。

私と寳槻はアメリカで働いていた時期があり、「WeWork(ウィーワーク)のシェアオフィスで仕事をして、Uber(ウーバー)のタクシーに乗って、Airbnb(エアビーアンドビー)で借りたホテルに泊まる」、という具合に、その頃普及し始めた「シェアリングエコノミー」をフル活用していました。これらのサービスは確かに便利ですが、最後に来る「鍵の受け渡し」や「本人確認」は対面で行う必要があり、最後の最後で手間がかかる、という体験をしました

この経験があったからこそ、我々が作ろうとしている、「ブロックチェーンの外側の安全性を補うプラットフォームづくり」と「鍵」との親和性が高いのではないか、と着想できたのです。

我々は現在、ビットロックを中心に、我々の技術を世に普及させる事業を展開しています。

ビットロックに関しては、設計から販売・サービスづくりまで全て自社で行っていますが、将来的に我々の技術は、鍵だけでなく、乗り物のシェアや、金融、ID認証といった多岐にわたる領域で応用していきたいと考えています。一方で、この展望は我々単独で行うには大きすぎるビジョンなので、他の企業や行政など、パートナーとコラボレーションしながら中長期的に作っていく必要があります。

そこで、まずは自社で完結できる「鍵領域」に注力して、我々の技術や製品を普及させることからはじめているわけです。戦略としては、ビットキー自体を月額300円程度から利用できるという、圧倒的な低価格で提供することで生活への定着をはかり、そこからビットキーの利用者と色んなサービスをつなげていくという流れです。

構想している事業展開の範囲は多岐に渡る

例えば、家事代行サービスと提携して「代行サービスの人に時間や回数を指定して一時的に鍵の権利を譲渡する」、不動産と提携して「鍵の受け渡し不要でユーザーが物件に入ることができるサービスを作る」、といった展開を考えています。

ービジネスモデルとしてはどのような形を描いていますか

江尻:ビットキー単体ではなく、ビットキーを通じて繋がったサービスを利用した時に発生するプラスアルファの価値から利益を得るというモデルです。これが実現できるのは、先程伝えた安全性の高いプラットフォームを作ることで、我々の技術と他者のサービスとをコネクトしやすい形を作っているからです。

実際、5月にITを使った不動産サービスを展開しているイタンジさんと技術提携をし、オンラインでの内見予約にビットキーを導入してもらうことになったのですが、一般的な技術提携ならシステムづくりに何ヶ月もかける必要があるところ、我々は2週間程度で完了しました。

また、プラットフォームづくりの段階でハッキングや改ざんができない仕組みを整えているので、ビットキーが今後100万台、200万台と普及していっても安全性を確保できるようになっています。

究極、「いい仲間がいるかどうか」が全て

ー住宅向けのスマートロックを発売してから、わずか数ヶ月でオフィス向けの商品もリリースされてますよね。短いスパンで異なる領域のサービスを打ち出した理由はなぜですか?

江尻:4月に最初のプロダクトとして、BtoC=個人向けの住宅を想定した「bitlock LITE(ビットロック ライト)」をリリースしましたが、扉は会社にも工場にも店舗にも倉庫にも、あらゆる場所にあります。「扉の数だけビジネスがある」ということで、将来的にあらゆる扉を一気通貫でカバーできたらいいと考えているので、住宅の次に扉の数が多いオフィス領域もすぐに着手したという形です。

ー起業にあたって、共同代表という形を選んだ理由をおしえてください

江尻:いままでお伝えしたように、我々がやろうとしていることはたくさんあります。何十年もかけて、「あらゆるヒトやモノをコネクトする」という大きなビジョンを持ち、起業した段階で大企業並みのあらゆる部署やスキルを持つ組織づくりが求められることがわかっていたので、単純に一人でやるのは相当難しいなと思ったのがあります。

複雑な事業モデルの実現のため、共同代表の道を選んだ

ビジョン実現にピントを当てた結果、三人の共同代表で、それぞれの知見を活かして実務を行う道を選びました。

あとは純粋に、三人とも、もともと仕事でもプライベートでも気心が知れていたので、一緒に事業をやりたいなという人としてのつながりも強かったです。一生をかけて背中を預けられるパートナーですね

ー起業にあたって大変だったポイントと、どのように乗り越えたかを教えてください

江尻シンプルに「ヒトとカネ」ですね。最初からモノを作って、格安で売るというビジネスモデルなので、創業の序盤から億単位の資金を用意する必要がありました。ハードルとしては凄く高かったですね。

また、最初から営業チーム、開発チーム、分散テクノロジーなど最新の技術に知見を持ったチーム、複雑な決算を処理できる財務チームといった部署が必要で、それぞれにエース級の人材がいなければ組織として成り立たないこともわかっていたので、ヒトを集めて組織の地盤固めをするのが大変でした

乗り越えたポイントとしては、「いかに先を読んで事業計画を立てるか」が大きかったです。例えば、創業前から既に自治体を回って事業のPRをしたり、採用も人材が必要になってから行うのではなく、サービスの開始を予見して先に責任者を採用したり、とにかく少しでもいいから先手を読んで行動することを心がけました。1年後の会社の姿をありありと思い描くようなイメージで計画を立てています。

そして、ビジョンへの共感度が高く、スキルも高いチームがあるので、計画を実行する時は難題が起きても一つ一つ確実に乗り越えて行くことができていますね。

「究極、いい仲間がいるかどうか」が全てですね。

100人に聞いたら、100人が「世界が変わる」と答えるビジネスを

ー今回の資金調達について、どのような反響がありましたか?

江尻:多くのメディアから取材の依頼が来るなど反響をいただいています。世の中としては、「スマートロックの会社」というイメージが強いからか、この事業で大規模な資金調達ができるのはなぜ?と不思議に思われる方も多いようです。なので、取材などを通じて、ビットキーの背景にあるプラットフォームづくりを知ってもらう良いきっかけになっているなという実感がありますね

あとは、資金調達を一つの実績として、ビジネスパートナーの方々との信頼関係も一層強くなっているのを感じます

ー今後起業を考えている人に向けて、一言メッセージをお願いします

江尻:スタートアップに限定していいますが、自社のプロダクトやサービスが“ある世界”と“無い世界”を想像してみて、100人に聞いたら100人から「違う世界だね」と言ってもらえるくらい、インパクトと価値のある事業を立ち上げて欲しいですね。

我々もそんな気持ちでやっていますし、そんな大きな可能性のあるビジネスを展開している方々のパートナーになりたいと思います。

(取材協力:ビットキー/江尻祐樹

(編集:創業手帳編集部)

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