行動経済学をマーケティングに活かす方法をわかりやすく解説!

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行動経済学をマーケティングに!ビジネスに応用できる理論や注意点を解説


行動経済学は、近年ビジネスシーンでの活用が期待され、注目されている学問です。
マーケティング分野に応用することで、人間の行動を読み取り、コントロールできると考えられています。

行動経済学をビジネスに応用し、ユーザーの行動を予測し、先回りして売上につなげていくにはどうしたら良いか、活用方法や注意点をを解説します。
新しい理論や手法は期待も高くなりますが、まだわかっていない部分も多いため、注意も必要です。

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行動経済学とは


行動経済学とは、経済学と心理学の視点を組み合わせ、人間の経済行動をより現実に即して分析や誘導をしようという学問です。
人間は必ずしも合理的には動かないという考えをもとに、合理的ではない人間の行動に焦点をあてて経済学をひも解きます。

比較的新しい分野ですが、世界でその有効性が認められており、これまでにも優秀な研究者がノーベル経済学賞を受賞してきました。
また、これまでのビジネスでも行動経済学の理論を使ってユーザーの心理を動かす手法がありました。

経済学との違い

経済学と行動経済学の違いは、人間の持つ合理性への考え方です。一般的な経済学は、「人間は合理的な意思決定によって行動する」と考えます。
つまり、少しでも多くの利益を出すために合理的な判断をする人間をモデルとすることで理論的に経済を解明してきました。

ところが、行動経済学では、人間は非合理的な判断に基づいて行動することもあるという考えを前提にしています。
実際に人は、常に経済的合理性に基づく選択をするとは限りません。
時には、セールに釣られて必要のない商品まで買ってしまったり、のどを潤すだけなのに写真写りの良いカフェを選んだりします。

行動経済学では、経済学とは異なり、こうした人間の現実的な行動を反映させられます。

行動経済学が注目される理由

行動経済学がビジネスで注目を集めているのは、人の非合理的な行動を読み解くことで、行動を誘導し、自分たちの望ましい結果へと導けると考えられているためです。

行動経済学に注目している人々は、行動経済学を用いてユーザーがものを買う思考や心理を理解し、その上でマーケティング戦略を立てようとしてきました。
良い商品というだけでは、ほかの商品との差別化を図ることは難しくなっているため、心理そのものに訴えかけて購買行動を促そうとしています。

マーケティングに応用できる行動経済学理論


行動経済学の理論や手法には、マーケティングに応用できるものが多くあります。
以下に紹介する理論を、基本的な意味だけでも知っておくと実際にマーケティングの参考にできるかもしれません。

プロスペクト理論

プロスペクト理論とは、ダニエル・カールマンとエイモス・トベルスキーという心理学者が発表した理論です。ダニエル・カールマンはノーベル経済学賞も受賞しています。

プロスペクト理論は、人間は損失することを極端に嫌うという心理を利用したものです。
一般的な経済学では、人は常に合理的に行動することを前提としていましたが、プロスペクト理論では、人は損得が絡むと合理的でなくなる場合があると考えます。

例えば、無条件で1万円もらえるか、賭けで勝ったら2万円もらえるが負けたら全くもらえないかのどちらかを選ぶ際には、多くの人が少額でも確実にお金をもらえるほうを選びます。
ところが、最初に1万円を渡しておき、勝ったらさらにお金をもらえて負けたら最初の1万円も没収される賭けをするか、賭けをしないか選ばされたら、多くの人が賭けをしないほうを選ぶでしょう。

実際には、最初の1万円はもともと自分のものではなかったため損ではないはずですが、多くの人は一度手にした利益を手放すリスクを極端に嫌い、守りに入ります。
この理論がプロスペクト理論の「損失回避性」です。

「損失回避性」は、実際のマーケティングでも応用されていることが多くみられます。例えば、期間限定割引や期限のあるポイントサービスなどはよく見る応用例です。
「〇日まで半額」や「ポイント失効日まで〇日」と言われると、多くの人は損をすることを恐れて商品購入に前向きになります。

フレーミング効果

フレーミング効果とは、同じことでも強調する部分や表現の仕方を変えるだけで違った印象になり、相手の意思決定に影響を与えるという現象です。
フレーミングは「フレーム」(額縁)を意味しています。フレーミング効果によって人の感じる印象はプラスにもマイナスにも変化し、時には人を行動に走らせます。

例えば、「コップの水が半分ある」と言いたい時にも「コップの水は半分もある」とすればたくさんある印象で、「半分しかない」といえば少ない印象になるというものです。
また、テストで90点取った時も、0点を基準にすれば「90点も取れた」ですが、100点を基準としたら「90点しか取れなかった」になるでしょう。
ちょっとした言い回しが、相手に与える印象を変えます。

実際にマーケティングの場面でも、たくさん入っているように見せたい、安くなった印象を与えたいなどのシーンで使われることが多いです。

おとり効果

おとり効果とは、ほかよりも劣った選択肢を混ぜることで迷っている人に対して意思決定させる心理効果のことです。
おとりは引き立て役にもなりますし、選択肢を増やして3択に変えることで、少し高額の商品を選びたい気持ちにもさせます。

本来売りたい商品の魅力をはっきりさせ、売りたい商品とライバル商品がある場合、売りたい商品に似ていてメリットがやや劣るおとりを使うことで、ライバル商品から目を逸らさせ、売りたい商品とおとりだけを見せることもできるでしょう。

おとり効果はマサチューセッツ工科大学で行われた実験で証明されており、私たちの周りにも知らないうちに使われています。
例えば、お弁当などのランクに使う「松竹梅」なども、自然と中間である「竹」の商品を選びやすいようにしたものです。
人は、3択にされると最安値を避ける傾向があるため、おとりとして最上位の商品が提示されてます。

アンカリング効果

アンカリング効果とは、最初に印象的な情報を与えることで、その後の意思決定にその情報を反映させる心理効果です。
アンカリングの「アンカー」とは錨(いかり)のことで、錨を下ろした船が流されずその場にとどまるイメージを反映しています。

人は、最初に提示された条件でその印象が決まり、次に提示された条件を知らず知らずのうちに最初のものと比べて判断しようとします。
特に、情報が揃っていない時に人は特定の情報に頼ることが多く、アンカリング効果の影響は大きくなる傾向です。

商売でも、お買い得感を出すために使えます。
例えば、「通常価格より50%引き」・「〇〇セール中につき最終価格」といった表示をすることで、もとの価格がアンカーとなり、実際に購入する価格が安く感じられます。

バンドワゴン効果

バンドワゴン効果とは、多くの人が支持している物事は「良いものであるはず」と認識されやすく、さらに支持を集めやすくなるという心理効果です。
バンドワゴンはパレードの先頭を走る楽隊車のことです。パレードではその楽隊車の後を大勢の行列がついて回ることから、そう呼ばれるようになりました。
提唱したのは、アメリカの経済学者であるハーヴェイ・ライベンシュタインです。

集客テクニックとして広告コピーなどで使われることが多く、特定の商品やサービスを注目させる効果が期待できます。
よく見かけるのは「今一番売れている商品です!」・「購入者累計〇〇人」・「口コミランキングでナンバーワン」などです。

ハロー効果

ハロー効果とは、印象や評価がその見た目や目立つ特徴に影響されて歪められる現象のことを言います。
ハローとは日本語で「後光」と訳されます。
見た目が良いと人柄まで良いように感じるといった人間の評価にも影響しますが、購買意欲を高めるために効果的に使うことも可能です。

例えば、受賞歴や権威ある人の評価を得た商品は、その評価に釣られて実際の価値がどうであれ、良いものであるような印象を受けるものです。
有名人に商品を紹介してもらう、コンテストで受賞したことをPRに使うなどで、購買意欲を高められます。

希少性の法則

希少性の法則とは、なかなか手に入らないものに人は価値を感じる心理法則で、希少性の原理とも呼ばれます。
希少性があるものはもちろんのこと、ないものでも希少性があると思い込むと価値が高く感じられるという点も重要です。
チャンスを逃すと二度と買えないかもしれないと思わせ、購買意欲を高めます。

希少性を強調することで商品やサービスの価値を高く見せるのが、行動経済学としての法則の使い方です。
「限定〇個」は数量の希少性、「タイムセール」・「閉店セール」などは時間の希少性を使っています。

現状維持バイアス

現状維持バイアスとは、今持っているものや環境を手放すことに強い抵抗を感じる心理効果で、経済学者であるリチャード・H・セイラーによって提唱されました。
人はこれから得るものへの期待よりも、すでに得たものを失う恐怖のほうを強く感じ、それがもらったものであっても手放しにくくなります。

現状維持バイアスを生かしたセールスの方法が、「無料お試し期間」・「返品返金保証」です。
一度気軽に手に取ってもらうことで、手放すのを惜しいと思わせて継続利用につなげます。
また、ユーザ―に対して商品を購入した自分をイメージさせるのも効果的です。この手法はセールスレターやコピーライティングで行われます。

ヴェブレン効果

アメリカの経済学者、ソースティン・ヴェブレンが発表した心理効果です。
購入や保有によって顕示欲を満たそうとする心理、商品を見せびらかしたい心理がもとになっています。
ヴェブレン効果の代表的なものは、高級ブランドの購入です。
高級ブランドの購入では、商品そのものを気に入っている人もいますが、そのブランドの名前を買っている人も多いでしょう。
ブランド品を購入することで得られる羨望の眼差しも購買意欲を高める原因のひとつです。

ヴェブレン効果を利用するためには、商品に誰もが欲しがりそうな価値を付ける必要があります。
「人気商品」・「限定商品」といった宣伝が有効で、ハロー効果や希少性の法則と組み合わせて使うこともできます。

活用する際の注意点


行動経済学にはマーケティングに生かせることも多いようですが、実際に活用していく際には注意も必要です。
場合によっては良くない結果をもたらすこともあるため、慎重に計画し、リスクを避けるよう注意してください。

信じすぎない

行動経済学も、ほかのマーケティング理論と同じく、完全なものではありません。
そのため、初めから「この理論を適用すれば絶対にうまくいくはずだ」と決めつけるのは禁物です。

どの施策を進める時も同じですが、PDCAを回して、柔軟な視点で改善していくことが大切です。
マーケティングに行動経済学を取り入れる際にも、「失敗して当たり前」ぐらいに構えておくと良いでしょう。

やり過ぎには注意

行動経済学を使ったマーケティングには、やりすぎると誇大広告や二重価格表示など、法に反することもあります。

ハロー効果を使う際には、表現がおおげさになりやすいため注意が必要です。
また、アンカリング効果を使う場合にも、通常価格の表示を偽り、本来の販売価格を安く見せるのは二重価格表示として違反行為となります。

違法な広告として指導や処分を受けるのはもちろんですが、違反があった場合、後で余計に商品の印象を悪くする恐れもあります。

効果は長続きしないものもある

行動経済学で提唱されている効果は、一時的なものも多く、長期的なイメージの維持は難しいこともあります。
また、商品自体が良くなければ、広告で注目を浴びても安定的な売上は見込めません。
行動経済学を使ったマーケティングの効果を維持するためには、ユーザーに商品そのものも良さを理解してもらうことが重要です。

不当な評価につながるものもある

行動経済学の効果は、やり方によってはネガティブなイメージにつながるリスクもあります。
防ぎきれないケースもあるため、ある程度のリスクを承知の上で進めていくことが大切です。

例えば、ハロー効果は、良い印象に影響されて高く評価されることもあれば、反対に悪い印象に影響されて低く評価されることもあるものです。
例えば、CMに起用した芸能人が不祥事を起こしたら、商品も悪い評判が立たないとは限りません。

また、良いイメージだけが先行すると、期待値が高くなりすぎて実物にがっかりすることもあります。

まとめ

マーケティングに使える行動経済学理論を学ぶことで、消費者の購買行動を自然に高めることができるようになります。
人間の行動と心理に基づく施策は、集客や販売促進に良い影響を与えられそうです。

ただし、行動経済学は人を完全にコントロールできません。また、実施の仕方を間違えると、人々に悪い印象を与えるリスクもあるため、注意も必要です。

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(編集:創業手帳編集部)

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