企業が追加融資を受けるためには?日本政策金融公庫の追加融資ポイントを解説
日本政策金融公庫とあわせて、信用保証協会・銀行の追加融資も紹介します
企業運営には資金が必要であり、多くの企業が融資で資金調達を行っています。
創業融資を返済中の場合でも、追加で融資を受けることが可能です。今回は、この追加融資について詳細を解説します。
企業への融資を積極的に行っている日本政策金融公庫を例に挙げ、追加融資の流れや必要書類、追加融資を受けるポイントと、審査が通りにくい企業の特徴を見ていきましょう。
また、日本政策金融公庫以外に追加融資を行っている信用保証協会と銀行も概要を紹介します。
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この記事の目次
追加融資とは?
追加融資とは、すでに融資を受けている事業者が2度目以降に申し込む借入れのことです。
創業融資などで日本政策金融公庫や銀行といった金融機関から借入れを受けており、返済中に再度融資を受けることをいいます。
創業融資と比較するとすでに取引関係があるため契約しやすい場合もありますが、必ずしも簡単に受けられるわけではありません。
また、融資を受けた直後に比べ、確定申告や決算が終わったあとのほうが借入れを受けやすいなど、状況やタイミングによって受けられるかどうかが変わってきます。
日本政策金融公庫の追加融資について
融資を行っている金融機関は銀行や信用保証協会など様々ありますが、まずは日本政策金融公庫の追加融資について紹介します。
融資の返済中に「想定以上に資金が必要だった」・「資金繰りが悪化した」などの理由で追加の借入れが必要となった場合、日本政策金融公庫では追加で融資を受けることが可能です。
追加融資には改めて審査があるため、以下では融資の流れや必要書類などを解説します。
追加融資の流れ・期間
追加融資を受けるためには書類提出や審査が必要となります。流れと詳細は以下の通りです。
1.窓口相談
希望を窓口へ相談します。事前に電話やWebで予約をしておくとスムーズです。
以前に日本政策金融公庫からの融資を受けており、担当者の名前がわかる場合は担当者宛てに連絡します。
2.書類提出
必要書類や申込書を準備し提出します。内容に問題がある場合は審査に通過できません。また、審査状況によっては追加資料を求められることがあります。
担当者の案内に沿って、間違いがないよう準備することが大切です。
なお、必要書類に関しては後述する内容をご確認ください。
3.融資担当者との面談
電話面談または直接対面しての面談となります。ただし、創業融資と違って追加融資では面談が必ずあるわけではありません。
事業内容などの状況によって異なるため、事前に融資担当者へ面談の有無と面談がある場合の方法を確認し、準備をしておくことが必要です。
4.融資決定・着金
融資の可否は1~2週間で結果が出る場合もありますが、書類状況などによって3週間以上かかるケースもあります。
問題がなければ基本的に1カ月以内で融資を受けられます。
融資が決定すると日本政策金融公庫から契約書類が郵送されるため、記入し返送すれば手続きは完了です。
日本政策金融公庫に返送書類が到着した3~4営業日後に、指定口座へ着金されます。
必要書類
追加融資に際しては、主に以下8つが基本の必要書類です。
・決算書類または確定申告書
直近2年分、ない場合は1年分を用意します。法人の場合は決算書類、個人事業主の場合は確定申告書が必要です。
・通帳
すでに受けている融資の返済状況や売上金についての確認がなされます。
・納税証明書または各種税金の領収書
納税や返済を滞りなく行っているかが判断材料になります。そのため、税金の領収書や納税証明書の提出が必須です。
・売上明細書など売上げの根拠を示す書類
発注書・見積書・契約書など売上げの根拠となる書類を用意します。
・本人確認書類
・返済予定表(他金融機関からの融資を受けている場合)
手元に返済予定表がない場合、金融機関に依頼すれば再発行が可能です。
・見積書(設備資金への融資を受ける場合)
設備に関する融資を受ける場合、事前に見積書を取り寄せておきます。
・企業概要書
1回目に提出してから取引先などの状況に変更がある際は準備してください。
追加融資では利益を出していること、返済能力があることを審査されます。そのため、それらの条件を満たしていると示すことが大切です。
また、状況によって必要な書類が異なります。事前に担当者へ確認してから準備を進めることで、スムーズな対応が可能です。
追加融資を受ける条件・ポイント
審査に通過するためにはいくつかのポイントがあります。条件とポイントを4点に分けて解説します。
事業の安定性
創業融資では計画書・自己資金の額・事業経験などから、今後安定して事業が行われるかを総合的に審査されます。
それに対して、追加融資の際はすでに事業の業績が出ているため、決算書類などから実績を確認して融資の可否が決まる点がポイントです。
つまり、順調に売上げが上がっていれば追加融資を受けられる可能性も高まることを意味します。
ただし、売上げと利益だけで決定するわけではありません。
例えば、赤字を出している場合でも、赤字になった理由や今後の計画を提示することで融資を受けられるケースもあります。
安定して事業運営ができていることをアピールすることが重要です。そのため、創業後すぐではなく、1期以上経ってから申し込みます。
借入金の返済状況
期日を守って滞りなく返済できていることは最低限のポイントです。
申し込みは前回の融資から半年以上経過し、融資額を3~5割程度を返済していることが基本的に必要な条件です。
この間に、借入金の延滞や返済額の見直しなどを行って規定通りに返済ができていないと、日本政策金融公庫からの評価はマイナスになってしまいます。
追加融資を受けても返済ができない事業状態にあると判断されてもおかしくありません。期日を守って返済し、信頼関係を築くことが審査通過につながります。
前回の資金使途、追加融資の理由説明
前回の融資を計画通りに使ったのか説明することが必要です。
特に、設備資金など具体的な用途をもって借入れをしたものに対しては、正しく使われているかの確認が行われます。
なお、融資額を使っていないなどの問題が発見された場合、全額返金を求められるケースもあるため、注意が必要です。
また、なぜ追加融資が必要なのかも説明が求められます。足りない理由や今後いくら必要かを具体的に示すことが重要です。
この時、事業計画書や資金繰り表を用いればわかりやすく説明でき、担当者側も金額や使用用途をイメージしやすくなります。
面談の際には、事前に準備しておくことが大切です。
コロナ禍での追加融資
新型コロナウイルスの影響で経営が厳しくなり、融資を必要とする企業も少なくありません。
そこで、日本政策金融公庫では「新型コロナウイルス感染症特別貸付」という融資プランを設けています。
返済が始まって間もない場合でも相談可能なので、相談してみることもおすすめです。
また、この融資は一度だけではなく追加で融資を受けることも可能です。ただし、初回よりも審査が厳しくなる傾向にあります。
初回融資の使途や、新型コロナウイルスの影響を鑑みた事業計画を作成することが審査通過のポイントです。
追加融資を受けられない企業の特徴
創業融資に比べて審査期間が少なく、簡単に通過すると思われがちな追加融資ですが、審査をパスできない企業もあります。
問題なく融資を受けるためには、審査を通らない企業の特徴を把握しておくことも大切です。
受けられない企業の特徴を3点紹介します。
他社からの借入金が増えている
追加融資の審査に際しては、日本政策金融公庫からの融資だけでなく、他社からの借入金についてもチェックされます。
他社からの借入金の残高や借入件数が増えている場合は、追加融資を受けられないこともあるため注意が必要です。
他社からの借入残高や借入件数は、返済者の返済能力を判断する要素のひとつです。検討している方は、他社からの借入れが確認されることも念頭においておきましょう。
赤字経営
事業の安定性が評価されるポイントとなるのに対し、赤字経営はマイナス要素となります。
赤字の期があっても理由や今後の改善案を提示できれば、場合によっては融資を受けられることもあります。
しかし、慢性的な赤字経営や赤字が徐々に拡大している場合、赤字の原因と今後の改善策を示せないなどのケースでは、追加融資は難しくなるかもしれません。
追加融資の際は、事業の実績から安定して返済ができるかが確認されます。
そのため、赤字経営でかつ今後も赤字が解消されないと判断されると、返済の見込みはないとされ、融資を受けられない場合もあるため注意が必要です。
返済を滞納している
融資の返済を滞納している場合、今後も同じように滞納するとみなされ、審査に通らないことが考えられます。期日と金額を守って返済することが重要です。
また、借入金だけでなく法人税・固定資産税・所得税など各種税金を滞納している場合もマイナスポイントとなります。
日本政策金融公庫は政府が管轄する金融機関です。そのため、税金の未納については特に厳しくチェックがされます。
一度だけの滞納が追加融資の足を引っ張る危険性があると、理解することが必要です。
日本政策金融公庫以外からの追加融資
日本政策金融公庫の追加融資について確認してきましたが、他の金融機関ではどのような特徴があるでしょうか。信用保証協会と銀行の追加融資について解説します。
信用保証協会
信用保証協会とは、金融機関から融資を受ける際にその債権を保証し、融資をスムーズに進める役割を持ちます。
信用保証協会は連帯保証人のような立場をとり、万が一返済能力がなくなった場合、信用保証協会から返済を行います。
そのため、金融機関としては貸倒れのリスクがなくなることがメリットであり、融資が円滑に進み、企業としては融資が受けやすくなることが利点です。
信用保証協会でも追加融資を受けられ、以前の融資を返済中の場合でも追加融資は可能です。
ただし、日本政策金融公庫の追加融資と同じように、返済実績は審査の可否に影響を与えます。
返済が滞っている、前回の融資使途や今回の融資理由を明確に説明できないなどはマイナスポイントになります。
信用保証協会からの追加融資を検討している場合、経営の安定性や返済状況など基本的な要素を確認しておくことが重要です。
また、初回融資からの期間もポイントです。短すぎると経営悪化による追加融資を疑われる危険性があります。
基本的には期間が長いほど有利ですが、追加融資が必要な状況で長く待ってはいられません。
半年程度で審査を通過する場合もありますが、事業開始から1年程経っていると最初の決済も終わり事業実績を提示できるため、確実性が増します。
銀行
銀行から融資を受けており返済中の場合でも、追加融資を受けることは可能です。ただし、返済能力のある企業かどうかは厳しくチェックされます。
まず、財務状況が見られるため決算書などの用意が必要です。信用保証協会からの融資と同じく、銀行の場合も初回融資後すぐに申し込むと審査に通らない場合があります。
無計画であると思われないためにも、最初の決算を待つなどある程度の期間を空けることがポイントです。
また、銀行の追加融資としてポイントとなるのが、他行の動向です。
日本の金融機関には「メインバンク制度」があり、融資対象企業と最も取引きをしている銀行をメインバンクと呼びます。
融資企業との取引きの際も、他行よりもメインバンクが早く動くことが特徴です。
追加融資を受ける銀行がメインバンクか一般の取引きをする銀行かによって、銀行側の動きも変わってきます。
銀行との取引きは企業と銀行だけでなく、他行も関係してくることを事前に認識しておくことが必要です。
まとめ
追加融資の際も創業融資と同じく審査があり、事業の安定性や返済状況などのチェックが行われます。
そのため、他社からの借入れが増えていたり赤字経営が続いていたりすると追加融資が難しくなる恐れが生じます。
追加融資を検討している場合は、評価されるポイントを事前に確認し、問題が内容に準備しておくことが大切です。
(編集:創業手帳編集部)