「もうビジネスの意思決定で悩まない。」プロから情報収集できるサービス”エキスパートリサーチ”
株式会社ミーミル代表取締役 川口荘史氏インタビュー
(2018/07/02更新)
企業の意思決定の場では、その業界ならではの専門的な「情報」「知見」が不可欠です。しかし、その正しい取捨選択にも、そのための「知見」が必要となり、個々の企業で行うには難しいものがあります。
この課題を解決するために立ち上げられたのが、厳選された有識者がもつ情報を獲得できる「エキスパートリサーチ」サービス。
今回は、株式会社ミーミル代表の川口氏に、サービス立ち上げのきっかけと、サービスに付随して、今後情報と人材スキルをどう扱っていくべきか、お話を伺いました。
代表取締役 川口 荘史
東京大学卒、東京大学大学院修了。UBS証券投資銀行本部に新卒入社、M&Aおよびテクノロジーチームにて製薬業界、エネルギー業界、大手電機などの国内外のM&A、LBO案件などに従事する。その後、複数のベンチャーの創業に参画。ファイナンスや新規事業立ち上げに従事する。2017年1月、株式会社ミーミルを創業。同年、ユーザベース社の出資を受け、有識者の知見をM&Aや新規事業に活用するエキスパートネットワークサービス「エキスパートリサーチ」を提供開始。
質の高い情報の提供・獲得が求められる時代に
川口:「エキスパートリサーチ」は有識者が自身の知識を提供でき、企業がその情報を活用することができるサービスです。
過去に投資銀行やベンチャー創業を経験し、M&Aや新規事業の立ち上げに携わっていく中で、意思決定のための質の高い情報の重要性を痛感しました。
ただ、本当に価値の高い情報の判別やそれらをどのように収集していくかは非常に難しい。専門的な知識がない業界について、必要な知見を得るにはどうすればいいのか。こうした課題を解決するサービスを提供することで、新規事業やM&Aにおいて質の高い意思決定の支援を行いたいと考えました。
加えて世の中の人材流動化の動きが活発になってきたことも創業を後押ししました。誰もが自分のキャリアを見つめ、自分の持っているスキルの市場価値を知りたい時代になっています。雇用に縛られることなく、プロジェクト単位での働き方も増えつつあります。
そうした背景がありながら有識者の知見共有の機会を増やすエキスパート・ネットワークの市場は海外に比べ国内では立ち上がっていない。
こうした知見者の価値を高め、それらの価値ある情報の流通化を実現する新しいサービスとその市場を創造する、まさに今がそのタイミングだと思いました。
川口:アナリストや経営幹部など厳選された、クローズドで高品質なエキスパート・ネットワークを構築し、インタビューからハンズオン支援まで様々な形でエキスパートの知見やノウハウをプロジェクトごとに提供しています。提供先は、コンサルティングファームやファンドが中心になりますが、事業会社でも、M&Aを軸に、新規事業、事業投資、海外進出、事業改革といった目的で利用されています。昨年には主要サービスの一つとして「エキスパートリサーチ」の提供を開始しました。このサービスでは、事業担当者と有識者をつなぎ、1時間の対面や電話によるインタビューによって、知見を効率的に獲得していくというものです。
有識者の知見が必要な分野は多岐にわたります、我々として注力している対象分野は、ヘルスケア、医療・介護、AI、環境・資源エネルギー、食・農業、観光・地方再生など。これらに限らず、お客様からのご要望にお応えする形で充実させていっています。最近は、業界の注目度の高まりに応える形で、宇宙産業の有識者の特集(https://mimir-inc.biz/news/press/press_quality_expert_space_industry/)を行いました。
エキスパートの「質」の確保に専念。汎用性のあるサービスへ
川口:設立後、株式会社ユーザベースから出資を受けました。株式会社ユーザベースは経済情報のプラットフォーム「SPEEDA」やソーシャル経済メディア「NewsPicks」を運営しており、良質な業界情報を保有し、経済情報インフラを構築している会社です。
設立後1年間は、ユーザベース社のデータを基に独自のデータベースづくりを業務の中心としました。準備期間として、様々な業界の方々とお会いし、どういった知見に価値があるのか、何をもって有識者とするかなどエキスパートの評価や整理などに専念しました。
川口:こうしたエキスパートについて、数が多い方がいいという側面がある一方で、品質の確保がもっとも重要だと思っています。
質を優先し、広く募集して誰でもエキスパートになれるという形をとっていません。様々なエキスパートの登録経路はあるものの、信用できるネットワークからの推薦を重要視しています。
エキスパートの方々は、別に求職者というわけではない、むしろ自分の専門的知見が業界外のプロジェクトと接点を持つことでどのような価値が生まれるかに興味を持っています。一部では、報酬は必要なく社会的に意義のあると感じられること、業界の発展に貢献できるようなプロジェクトであれば協力するというスタンスの方もいます。
ある種、本人の自己申告や応募ではなく、選ばれたエキスパートのみが参画できる仕組みなので、今後はそうしたエキスパートの価値をより高めていく仕組みを作っていきたいと思っています。
川口:ミーミルはユーザベース社のグループ会社ですが、そもそもミーミルのエキスパートリサーチは、有識者インタビューによる業界分析といえるので、企業・業界分析を行うための情報プラットフォーム『SPEEDA』とサービスの親和性が高い。ユーザベース社のクライアント層と我々のターゲット層は多くの部分で重なります。多くはSPEEDAを活用しているなど、情報リテラシーが高く、情報に価値を見出している企業です。こうした企業はより多様な情報獲得経路を確保したいと考えており、リサーチに対する予算を確保していて、同時に意思決定に役立つ質の高い情報を必要としています。まずはこうした顕在層といえる企業の利用が拡大しています。
将来的に提供先として考えているのは、情報に価値を感じてはいるが、そこまでリサーチの予算や経験のない企業。情報の獲得自体は容易になっているからこそ、質の高い情報へのニーズは高まっているように思いますが、情報獲得のための手段をそれほど持っていない会社でも、有識者インタビューをうまく活用していくことで効率的に情報を収集して意思決定できるようにしたいと思っています。
リサーチに活用できる様々なデータベースやツールが存在しますが、有識者インタビューは汎用性が高く、使い方をマスターできれば業界によらず様々な場面で活用できる利点があります。
インタビューでは獲得できる情報も担当者次第で変わります。今後の新規事業や経営企画担当者は情報の差別化のためにもこうしたサービスに習熟していくことが予想され、さらに活用が広がっていくと考えています。
川口:現在、「働く」のとらえ方が大きく変わってきていると感じます。働くこと自体が自己実現であり、目的化している。
金銭対価のための労働ではなく、働くこと自体が目的になり、「何をやるか」がより重要になっています。より面白い環境を求め、プロジェクトごとに稼働していくような人材の流動性もより高まっていく、起業もその中の選択肢としてとらえやすくなるでしょう。
人材のスキルや知見を見極め、それらを組み合わせてプロジェクトをいかに推進していくかということも重要になってきます。
起業に限らず、今後は新しい事業を創っていく上で、法人という形態にこだわらずに、リソースを流動的に活用して目的を達成していくことが増えるかもしれません。新しい形のリソース活用のスキルやノウハウが求められていくと思っています。
(取材協力:株式会社ミーミル)
(取材協力:三幸エステート株式会社)
(編集:創業手帳編集部)