10種類の所得を徹底解説!所得と収入はどうちがう?
所得のキホンをおさらいしよう
(2018/03/05更新)
何気なく使っている「所得」と「収入」という言葉ですが、実は税法上では全く別のもの。所得は毎年の税額を決定する重要なもので、特に確定申告などで使う必須知識です。
今回は、「所得」の基礎知識と、税法上で定められている10種類の所得をご紹介します。
この記事の目次
所得は税金の額を決める基準になるもの
起業すると毎年、1年間の会計を「確定」し、国に「申告」する義務があります。個人事業主の確定申告や、法人の決算がそれに当たります(会社員の方でも、本業以外で収入がある場合や、各種控除の対象になる場合などは確定申告をします)。
個人や法人から申告された情報をもとにして、国や地方自治体は、それぞれ徴収する税金の金額を決めています。
このときに、所得税や住民税を計算するための基準となるものが「所得」です。
個人事業主の収入と所得の違い
よく混同されがちな、「収入」と「所得」。この両者は似ているようで、大きく異なります。
個人事業主の場合、簡単にいうと1年間の売上が「収入」となります。
その収入から、交際費、維持費、地代、家賃、水道光熱費などの必要経費を差し引いたものが「所得」です。
【所得の計算式】
所得=収入—経費
給与収入と給与所得の違い
次に、会社員の場合を考えてみましょう。
給与をもらうサラリーマンなどにかかる個人の税金は、「給与所得」を元に算出されます。
まず、源泉徴収前の給与・賞与などの金額を「給与収入」といいます。要するに、税金や保険料などが天引きされる前の「額面の給料」のことです。一方「給与所得」は、給与収入から、その金額に応じて加算される給与所得控除などを引いた金額のことをさします。
【給与所得の計算式】
給与所得=給与収入—控除(給与所得控除+特定支出控除)
なお、一般的にいわれる「手取り収入」は、すでに源泉徴収などで一定額が引かれた状態の給与のため、「所得」とは異なります。
給与所得の詳細については、年末に会社から渡される源泉徴収票に詳しく記載されていますので、一度確認してみることをおすすめします。
給与所得控除とは
「給与所得控除額」は、給与収入の金額に応じて変動する控除で、いわゆる会社員にとっての必要経費にあたるものです。
給与所得控除額は収入金額によって異なります。平成29年分の給与所得控除額は以下の通りです。
給与収入 | 給与所得控除額 |
65万円未満 | 65万円 |
65万円以上 180万円以下 | 給与収入×40% |
180万円超 360万円以下 | 給与収入×30%+18万円 |
360万円超 660万円以下 | 給与収入×20%+54万円 |
660万円超 1,000万円以下 | 給与収入×10%+120万円 |
1,000万円超 | 220万円(上限) |
2枚以上の同じ年の源泉徴収票を持っている方は、合算した金額から算出してください。
給与所得者の特定支出控除とは
上記の通り、給与所得控除は、給与収入に応じて控除額が決定します。
しかし、実際には必要経費を一般の人よりも多く使ってしまう方もいるでしょう。経費を多く使ったのに、所得は他の人と同じでは不公平になりますよね。
そこで、「特定支出控除」という制度があります。
対象となるのは、通勤費、転居費、研修費、資格取得費、帰宅旅費、勤務必要経費など。その額の合計額が、「特定支出控除額の適用判定の基準となる金額(その年中の給与所得控除額×1/2)」を超える場合、超えた分を給与所得控除後の所得金額から差し引くことができます。
所得の種類
一口に所得といっても、実はさまざまな種類があります。所得税法では、所得は次の10種類に分類されており、その全ての所得に対し税金がかけられます。
- 事業所得
- 給与所得
- 退職所得
- 利子所得
- 配当所得
- 不動産所得
- 山林所得
- 譲渡所得
- 一時所得
- 雑所得
それぞれ具体的にみていきましょう。
事業所得
「事業所得」は、農業・漁業・製造業・卸売業・小売業・サービス業などの事業を経営している人が、それぞれの事業から発生する所得のことをいいます。個人事業主の所得は、主にこの事業所得に当たります。
しかし、不動産の貸し付けは「不動産所得」、山林をゆずりわたす譲渡による所得は「山林所得」に当てはまり、事業所得に当てはまりません。
給与所得
会社員の場合、主な所得はこの「給与所得」となるでしょう。詳細は前述の通りです。
勤務先から受け取る給料、賞与などをもとにした所得が「給与所得」で、源泉徴収される前の収入金額から給与所得控除額を差し引いたものです。
退職所得
退職時にもらう退職金のことです。
税法上では、退職金は「退職時に特別に支払われる給与」とみなされ、所得とされています。
なお、退職所得は、勤続年数20年を境に控除額の計算方法が変わるため注意が必要です。
利子所得
預貯金、公社債の利子や合同運用信託、公社債投資信託、公募公社債などの運用投資信託の収益の分配に係わる所得が、「利子所得」です。
配当所得
主に株式投資などをしている人の「配当」にまつわる所得です。次のようなものが対象となります。
- 主や出資した人が法人から受け取る際の資本金を越えた部分の剰余金
- 上場株式、非上場株式の配当
- 投資法人からの受け取った金銭の分配
- 公社債投資信託、公募公社債等運用投資信託以外の投資信託、特定受益証券発行信託の収益の分配
「配当所得」は、源泉徴収される前の収入金額から、株式などを取得するための借入金の利子を差し引いたものです。
不動産所得
土地や建物などの不動産を期間や利子などを一定に定めて金品を貸す貸付け、地上権など不動産の上にある権利の設定や貸付け、船舶や航空機の貸付けが、不動産所得です。
ただし、事業所得や譲渡所得に当たるものは除きます。
山林所得
山林を伐採したり、立木のまま人に譲渡することで発生する所得が、「山林所得」です。しかし、山林を取得した5年以内に、伐採や譲渡した際は、「事業所得」、「雑所得」になります。また、山ごと山林を譲渡する際の土地は、「譲渡所得」です。
「山林所得」は、総収入金額から必要経費、最高50万円の特別控除額を差し引いたものです。
譲渡所得
土地、建物、株式、ゴルフ会員権などの一般的な資産を譲渡することで発生する所得が、「譲渡所得」です。
しかし、事業用の商品などの販売目的と結びついている財、サービスの棚卸資産や山林などの譲渡により発生した所得は、譲渡所得に当たりません。
「譲渡所得」は、収入金額から取得費と譲渡費用、特別控除費を差し引いたものです。
一時所得
労務や役務による利益に対して受け取る報酬や資産の譲渡による対価の性質を有しない一時の所得が、「一時所得」です。次のようなものが対象となります。
- 懸賞や福引きの賞金品
- 生命保険の一時金や損害保険の満期返戻金など、法人から贈与された金品
- 競馬や競輪で払い戻したお金
- 遺失物拾得者や埋蔵物発見者が受け取る報労金
ただし、業務に関するものや継続的に受けるものは除きます。
雑所得
上記9つの所得いずれにも該当しないものが「雑所得」です。
雑所得の代表的なものとなるのが公的年金や副業での所得などです。非営業用貸金の利子、著述家や作家以外の人が受け取る原稿料や印税、講演料や放送謝金などもこれに当たります。
また、株取引やFX、昨今話題のビットコインなどの仮想通貨で得た利益も雑所得となります。雑所得が20万円以上ある方は、会社員であっても確定申告が必要となるのでご注意ください。
まとめ
個人事業主の場合は「事業所得」、会社員の場合は「給与所得」が基本です。
本業以外のところで収入を得た場合は要注意。それがどの所得に当たるのかを確認し、漏れのないよう確定申告を進めていきましょう。
(編集:創業手帳編集部)