マイケル・ポーターの5フォースで業界の構造を分析する【起業家のための経営学講座】
5フォースで業界分析!その業界、参入しても大丈夫?
(2017/08/29更新)
3C分析やポジショニング分析などで自社のことを把握したら、次は自分が参入する、または自分のいる業界はどのような状況なのか、「業界分析」を行いましょう。業界分析には、その業界を取り囲む環境を把握できる「ファイブフォース分析」というフレームワークが役に立ちます。今回は、この5フォース(5つの競争要因・脅威)の基本を学んでいきます。
この記事の目次
5フォース分析とは
経営学者のマイケル・ポーターが『競争の戦略』(1980年)で提唱した、業界の構造分析を行うためのフレームワーク(思考の枠組み)です。同書は17ヶ国で翻訳され、現在でも経営戦略論のバイブルとして読まれています。
起業家にとって、参入する事業の業界分析は非常に重要です。業界分析に役立つ「5フォース分析」とは、業界の競争の構造と、主な収益性の要因を分析するもので、以下5つの競争要因から内外環境の現状把握を行います。
【5つの競争要因】
- 業界内の競合
- 新規参入の脅威
- 代替品の脅威
- 売り手の交渉力
- 買い手の交渉力
1〜3は3C分析のCompetitor(競合)を細分化したものです。
業界の構造を把握することで、自社の強み・弱みを理解することができ、事業戦略を立てやすくなります。
それでは、この5つの競争要因について詳しく見ていきましょう。
1. 業界内の競合
どの業界にも競合他社がいることがほとんど。既存企業との競争は自社にとって大きな脅威といえます。
【既存企業との競争が激しくなる要因】
- 競合他社の数が多い
- 業界の成長スピードが遅い
- 固定コスト・在庫コストが高い
- 他の事業に転用できない専門的な資産などがあり撤退が難しい
2. 新規参入の脅威
新規参入がかんたんな業界では、業界全体の収益性があがったとしてもすぐに新たな参入者が増加し、収益性が低下しやすいという構造になっています。よって、参入障壁の低い業界は、新規参入企業の脅威が大きくなります。
新規参入の脅威が大きくなると、既存企業は新たな参入企業と対抗・阻止するため、値下げをしたり投資を増やさなければならなくなる可能性があります。
新規参入のしやすさは、参入障壁がどれだけ高いか、既存企業がどれだけ反撃するかによって決まります。
「巨額の投資が必要」「大量生産による規模の経済が働く」「法的な規制がある」「スイッチングコストが高い」などの特徴に当てはまる業界であれば、参入障壁は高くなります。
3. 代替品の脅威
経営者の盲点となりやすいのが代替品の脅威です。
代替品とは、同じ機能を果たす可能性がある他業界の製品のことです。他業界の製品・サービスに顧客を奪われる可能性が高ければ、その業界の魅力度は低くなります。
たとえば、デジタルカメラの代替品となるのはスマートフォンとなります。また、カフェをコーヒーを提供する場所ではなく、癒やしの場所と捉えた場合、マッサージ店などが代替サービスとなるでしょう。
競合する他業界の製品が参入したい業界の製品よりも費用対効果で優れていると、顧客は他業界の製品のほうが魅力的だと判断するでしょう。また、高収益の業界から代替品が出現するとさらに脅威が大きくなるため、注意が必要です。
技術革新などによってあっという間に代替品に取って代わられる可能性があるので、他業界に対する知識や注視が必要となります。
4. 売り手の交渉力
売り手とは、その業界に部品・原材料などの製品を供給する者のことです。売り手の力が強いほど仕入れ価格などが高くなるため収益性が低くなり、業界内の競争が激しくなります。
【売り手の交渉力が強くなる要因】
- 需要が旺盛
- 買い手にとって必要不可欠な製品
- 供給製品の独自性が強い。知的財産として保護されている
- 売り手業界が寡占状態にある
- 売り手にとって買い手が重要な顧客でない
5. 買い手の交渉力
買い手とは、その業界の製品・サービスを購入する顧客のことです。買い手の力が強いほど値引き要求や品質向上などが要求されるため、その業界の競争が激しくなります。
【買い手の交渉力が強くなる要因】
- 供給過多
- 製品の差別化がなされていない
- 買い手が取引先を変更するコストが安い
- 買い手が十分な情報を持っている
- 購買決定要因が価格だけである
5フォース分析を利用してピンチをチャンスに!
「5フォース分析」で業界の構造を理解することで、競争の原因が明確になり、経営資源の優先投入先、進化参入の可否、事業撤退など重要な経営判断をすることができるようになります。
また、5フォース分析はその業界にとっての自社の強みや弱みを明らかにするためのものさしにもなります。自社の能力を把握したあと、各要因ごとに効果的な攻撃・防御を行い、自社の地位を確立しましょう。
事業戦略を立てる上でも役立つ「5フォース分析」、正確な分析ができれば、デメリットだと思われていた部分が自社にとってはメリットのあることだったと判明する場合があるかもしれません。ピンチをチャンスに変えるためにも、うまく活用していただきたいと思います。
(執筆:創業手帳編集部)
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