会計事務所に依頼できること~会計事務所の活用術~
創業フェイズごとに会計事務所を上手に活用しよう!
(執筆:豊原公認会計士・税理士事務所 豊原弘行)
(2016/03/16更新)
創業間もない経営者の方とお話していると、会計事務所にどういったことがお願いできるのか良くわかりませんと言うお話を先日もお聞きしました。そもそも会計事務所とは?という基礎から、創業フェイズごとの活用術を解説します。
この記事の目次
そもそも会計事務所とは?
会計事務所のサービス
公認会計士事務所、税理士事務所といった会計事務所がありますが、行っている業務は基本的には同じです。
基本的な会計事務所の業務は、記帳指導(時には記帳代行ですが記帳は事業者がおこなうべきです)、取引の記録の正確性を1年間通じてチェックした上で、正しい税金の計算、申告業務を行うことです。ただこうした税金計算といった基本業務の他、プラスアルファどういったサービスができるのかが会計事務所によってさまざまなのです。
会計事務所の活用術
創業間もない経営者と、開業20年を迎える経営者において会計事務所の活用内容は同じでしょうか?
会計事務所の活用は事業のライフサイクルに応じて変えていくべきであり、その時その時、経営者が必要な事に対して活用していくべきでしょう。
一度顧問契約したからずっと同じ会計事務所を活用するというのは昔の話のように思われます。
事業者は専門家を必要に応じ選択し活用していく必要があります。
以下事業のライフサイクルに応じて必要と思われる会計事務所の活用方法を書いてみたいと思います。
創業期に依頼できること
まず、創業時の資金調達を金融機関でお願いする場合、経営計画書の提出を求められますが、経営者だけではなかなか上手く説明できない、数値化できないといったお悩みもよく聞くところであります。
金融機関へ提出する経営計画は融資を決定してもらう事を最優先に作成してしまうと実際の返済に行き詰まってしまいます。
資金調達時に作成する経営計画はその後の返済計画も含め会計事務所と一緒に作成した方がより健全な資金調達が可能になると同時に、作成事務、説明等もスムーズに進められるといったメリットがあります。
資金調達を考えている場合
また、資金調達を具体的にお考えになられている経営者様においては、経営革新計画の認定されることにより信用保証協会の保証枠が増える等のメットがある他、経営革新等支援認定機関である会計事務所に経営計画作成等の指導、助言を受ける事により調達金利が低くなる制度融資(中小企業経営力強化資金)もありますから是非専門家へ相談されてはいかがでしょうか?
資金調達の必要ない場合
では、特に資金調達が必要でない事業においてはどうでしょうか?
昔は記帳代行、決算申告、その他税務相談といったところでしょうか?
しかし、昨今、会計システムも進化しており簿記の知識が無くても経理業務ができる時代であり特に会計事務所にお願いしなくても・・・・
確かに創業間もない事業に関して取引量もそれほど多くないことが想定され、毎月の顧問料は必要ないように思われます。
必要なのは決算、考えられる節税対策及び申告手続きくらいではないでしょうか? そうであるなるならば会計事務所に依頼するのは決算時の申告のみでいいと考えられます。
拡大期に依頼できること
しかし、事業が大きくなり取引量が多くなると会計事務所でも会計処理が正しくできているのかのチェックを短期間でできなくなり定期的にチェックしないと年間の会計処理が正しく決算書で会社の業績を正しく表しているのかがチェックしきれなくなるので月次、2,3か月での定期的なチェックが必要になってきます。
また取引量が多くなれば、
- 資金繰りのやり繰りも考えていかなければなりません
- 債権の回収もきっちりできているのか
- 在庫は多く抱えないようにどうしていけばいいのか?
- 定期的な損益計算報告を受けることにより会社の業績の把握、今後の対策も考えていく必要もあります
このように、事業が拡大し取引量が多くなるにつれ経営者が考えていかなければならない課題が多くなります。
こういった事業拡大に伴う課題を放置してしまうと、
回収不能な売上債権が・・・・
売れない在庫が山積み・・・・
資金繰りが回らなくなり借入金が過多・・・
といった事態を招きかねません・・・
こういった事業拡大に応じ生じる経営課題について会計事務所と一緒に考えることにより健全な事業拡大が実現可能となるとともに、会計事務所をバックオフィス的なイメージで利用し、業務の効率化ができるのではないかと最近感じております。
事業のターニングポイント
事業は開業から延々と成長してし続けるのは稀であり、多くの事業は停滞期、衰退期に直面します。
その事業の変わり目に現れるのが「資金繰り」です。
資金繰りが最近苦しくなってきたな・・・・と感じ始めたとき経営者だけで足元の資金繰りを解決するのではなく会計事務所にその理由を分析、報告してもらうようにしてください。
多くの場合、資金繰りから現状の事業の問題点、改善するべき点が見えてくるものです。
まとめ
いままで述べてきましたように、会計事務所の基本業務の他に事業のライフサイクルに応じ、経営者が満足できるサービスを提供してもらえる会計事務所を時々に応じ選定していくのが賢い会計事務所の活用方法であると言えます。
(監修:豊原公認会計士・税理士事務所 豊原弘行)
(編集:創業手帳編集部)