【注目の補助金!】東京都がカスハラ対策に補助金を支給!個人事業主も対象の大人気制度を紹介

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「カスタマーハラスメント防止対策推進事業企業向け奨励金」は企業だけでなく個人事業主も対象

笑顔の女性
東京都は、事業者のカスハラ対策を経済的に支援するために、「カスタマーハラスメント防止対策推進事業企業向け奨励金」を支給しています。カスハラ対策を行い、社内外へ通知をした事業者は、40万円の奨励金を受け取れる可能性があります。

厚生労働省が実施した「令和2年度職場のハラスメントに関する実態調査」によると、過去3年間に顧客等からの著しい迷惑行為の相談があった企業の割合は19.5%、勤務先で顧客等からの著しい迷惑行為を経験した従業員の割合は15.0%でした。

カスハラが実際に起こってしまうと、生産性のない業務にリソースを割かれてしまうだけでなく、従業員のメンタルヘルスにも悪影響が出かねません。

今回は、「カスタマーハラスメント防止対策推進事業企業向け奨励金」の概要や支給対象者、受け取るための条件などを解説します。カスハラ対策を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。

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カスタマーハラスメント防止対策推進事業企業向け奨励金の基本情報

笑顔の看護師
まずは、奨励金制度の基本情報から見ていきましょう。

支給対象事業者

カスタマーハラスメント防止対策推進事業企業向け奨励金の対象となるのは、奨励金の申請日時点で以下の事業者です(一部抜粋)。

  • 常時雇用する従業員の数が300人以下の企業であること
  • 都内で事業を営む中小企業等または個人事業主であること
  • 中小企業等の場合は都内に本店登記、または支店の事業所があること
  • 個人事業主の場合は税務署へ開業届を提出していること
  • 都内の事業所で継続的に1年以上事業を行っていること
  • 都内の事業所で実質的に事業を行っていること
  • 法人事業税、法人都民税、個人事業税、個人都民税、法人税、消費税等の滞納がないこと
  • 過去5年間に重大な法令違反等がないこと
  • 労働関係法令について遵守していること

法人の事業者だけでなく、個人事業主も対象です。東京都内で事業を行っている中小規模の事業主の多くは、対象になると考えて問題ないでしょう。

支給される奨励金額

支給される金額は40万円です。補助金の中には「経費の〇%」のような形で支給されるケースが多いですが、この奨励金は一律です。

必要書類

奨励金の申請は、電子申請システムである「jGrants」で行います。申請画面において、以下の書類をアップロードする必要があります。

個人事業主 ・支給申請書
・誓約書
・事業所一覧
・会社案内または会社概要
・個人事業の開業・廃業届出書
・代表者の住民票
・都内事業所の直近1か月分の水道光熱費の領収書や賃貸借契約書(本店が都外の場合)
・代表者の個人事業税納税証明書
・代表者の所得税納税証明(個人事業税が非課税の場合)
・事業実態確認書類(個人事業税が非課税の場合)
・代表者の住民税納税証明書
・代表者の住民税非課税証明書(住民税が非課税の場合)
・カスタマーハラスメント対策に関するマニュアル
・カスタマーハラスメント対策に関するマニュアルを社内に周知した状況が確認できる書類
・マニュアル必須項目対応表
・カスタマーハラスメントに対する基本方針
・カスタマーハラスメントに対する基本方針を社内と社外に周知した状況が確認できる書類
法人 ・支給申請書
・誓約書
・事業所一覧
・会社案内または会社概要
・商業・法人登記簿謄本(履歴事項全部証明書)
・都内事業所の直近1か月分の水道光熱費の領収書や賃貸借契約書(登記上の本店が都外の場合)
・法人事業税納税証明書
・事業実態確認書類(法人事業税課税額が0円または非課税の場合)
・法人都民税納税証明書
・カスタマーハラスメント対策に関するマニュアル
・カスタマーハラスメント対策に関するマニュアルを社内に周知した状況が確認できる書類
・マニュアル必須項目対応表
・カスタマーハラスメントに対する基本方針
・カスタマーハラスメントに対する基本方針を社内と社外に周知した状況が確認できる書類

カスタマーハラスメント対策に関するマニュアルは、実際にカスハラが発生したときの社内における対応指針を明文化したものです。従業員のケアを優先する旨や、悪質な場合は毅然と対応する旨を記載しましょう。

カスタマーハラスメントに対する基本方針は、自社内でカスハラ対策を設けた旨を、社外へ伝えるものです。カスハラの定義や、実際に発生したときの対応を明文化しておきましょう。

申請の流れと申請方法

奨励金を申請する流れと方法は、以下のとおりです。

  • カスハラ防止対策の取り組みを実施する
  • 支給申請書類を揃えてjGrantsで申請する
  • 審査を受ける
  • 決定通知を受け、奨励金が入金される

申請にはGビズIDの事前取得が必要です。この奨励金は人気があるため、早い段階で準備を進めておきましょう。

実際に第二回の申請は2025年9月24日に開始となりましたが、翌日9月25日には締め切られました。

支給をうけるために事業主がやるべきこと

笑顔の配達員
実際に「カスハラ対策」はどのように進めればよいのでしょうか。以下で、事業主が奨励金を受けるためにやるべき3つのことを解説します。

1、カスハラ対策マニュアルの作成と周知

まずは、カスハラ対策マニュアルの作成と周知です。マニュアルは令和7年4月1日以降に作成または改定する必要があり、東京都の条例(東京都カスタマー・ハラスメント防止条例)に関する言及が求められています。

なお、章立てだけのマニュアルは認められていないため、注意が必要です。「カスタマーハラスメント防止対策推進事業企業向け奨励金」のウェブサイトにひな形があるため、作成方法で悩むときは参考にするとよいでしょう。

2、カスハラに対する基本方針の社内外への周知

カスハラに対する基本方針を作成したうえで、社内外へ周知する必要があります。申請時には、周知日が確認できる部分のデータ提出が求められるため、日付を忘れずに記載しましょう。

なお、社内への周知はメールやコミュニケーションツール、社外への周知は店頭での掲示や自社ホームページでの掲示、顧客先への周知などが想定されています。

申請時には、周知文が紙で掲示されている様子の写真やメールのスクリーンショット画像などを提出します。

3、カスハラを防止するための取り組み

カスハラを防止するための取り組みとして、以下3つの取り組みのいずれかを実施する必要があります。

取り組み 詳細な条件 備考 適した業種(例)
録音・録画環境の整備 ・令和7年4月1日以降にカスタマーハラスメント対策のために、録音・録画機器を新たに購入またはリース等の契約する
・録音・録画を主とした機器本体の整備である
・購入またはリース等の契約をした機器の運用ルールを策定する
・運用ルールには、盗聴、盗撮を疑われない対策を含む
・録音・録画環境整備について、社外に周知する(周知資料には、企業名・周知日が確認できる必要がある)
・録音・録画環境の整備によりカスハラ対策を進める
・都内事業所に録音・録画環境を整備する
・契約の場合は契約期間が6か月以上である ・小売業(スーパー・コンビニエンスストア)
・飲食業
・医療機関(病院・クリニック)
・交通機関(鉄道・バス・タクシー)
・金融機関(銀行・保険会社の窓口)
・宿泊業(ホテル・旅館)
AIを活用したシステム等の導入 ・令和7年4月1日以降にカスハラ対策のために、AIを活用したシステム等を新たに購入またはシステムサービス等の契約をする
・整備したAIを活用したシステム等の運用ルールを策定する
・AIを活用したシステム等の導入について、社内に周知する(周知資料で、周知日が確認できる必要がある)
・AIを活用したシステム等の導入により、カスハラ対策を進める
・AIを活用したシステムでカスハラ対策に活用していることが分かる
・都内事業所にAIを活用したシステム等を導入する
・契約の場合は契約期間が6か月以上である ・コールセンター業務全般
・通信業(携帯電話・インターネットプロバイダー)
・ECサイト・通販業
・保険業(生命保険・損害保険)
・教育機関(大学・専門学校)
外部人材の活用 ・令和7年4月1日以降にカスハラ対策のための外部人材と新たに契約する(右記ア~ウのいずれか)
・外部人材は、カスハラ対策に資する専門家である(右記「ウ」は除く)
・外部人材の活用について、社内に周知する(周知資料には、周知日が確認できる必要がある)
・外部人材を継続的に活用する場合(右記ア・ウ)は、運用ルールを策定する
・外部人材の活用により、カスハラ対策を進める
・都内事業所を対象として外部人材を活用する
ア:相談対応等の継続的な契約(契約期間が6か月以上である)※1
イ:社内研修等のためのスポット契約※1※2
ウ:警備会社との法人契約※3
・不動産業(賃貸・売買仲介)
・建設業(住宅建築・リフォーム)
・介護・福祉施設
・自動車販売・整備業

※ 主な専門家は弁護士、社会保険労務士、中小企業診断士、労働衛生コンサルタント、産業カウンセラー、キャリアコンサルタント等
※2 研修講師等とのスポット契約は、自社で主催するカスハラに関連する就業者のケア、接遇や条例等の研修実施のための契約を想定(他社が主催するセミナー参加に関する契約は対象外)
※3 カスハラ対策における警備体制を強化するための継続的な契約で、法律上必要な許可・届出等の手続きをしている業者であること。契約期間が6か月以上であること。設備や施設だけが警備対象となる契約や家庭向けサービスは対象外

上表の3つの選択肢のうち、一つを選択して実施すればよいとされています。業種ごとに適した対策は異なるため、自社に合ったカスハラ対策に取り組み、従業員を守りましょう。

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事業者がカスハラ対策をするメリット

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奨励金という経済的なメリットだけでなく、長い目で見たときもカスハラ対策をするメリットは多くあります。

従業員の心身の健康を守れる

カスハラ対策は、従業員のメンタル不調とストレスの蓄積を予防できます。「自分は守られている」「方針に則って、毅然と対応すればよい」という安心感があると、精神的な不安を大幅に軽減できるためです。

カスハラ対策を通じて安心して働ける環境を作れば、人材を確保しつつ従業員のパフォーマンス向上につながるでしょう。

従業員の休職や離職を防げる

厚生労働省の「令和6年 労働安全衛生調査」によると、令和5年11月1日から令和6年10月31日までの期間に、メンタルヘルス不調により連続1か月以上休業した労働者(退職者含む)がいた事業所の割合は12.8%でした。

すべての休業の原因がカスハラとは限らないものの、事業主にとって従業員が長期で休職してしまうのは痛手です。スキルを持つ従業員が休職・離職してしまうと、生産性も失われてしまいます。

しかし、カスハラ対策を講じてメンタルヘルス不調による休職や離職を防げれば、人材流出を防げます。その結果、業務体制を維持でき、採用・教育コストの発生も抑えられるでしょう。

採用競争力が向上する

カスハラ対策を充実させることで、企業の採用競争力が向上します。現代の求職者、特に若い世代は「従業員を大切にする企業かどうか」を就職先選びの重要な判断基準としているからです。

厚生労働省が2022年に公表した「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」でも、従業員の安全配慮は企業の重要な責務として位置づけられています。この姿勢を明確に示すことで、求職者からの信頼を獲得できるでしょう。

具体的には、採用サイトや会社説明会でカスハラ対策の取り組みを紹介することで、「ホワイト企業」としてのブランディングが可能になります。結果として、応募者数の増加により採用単価が下がり、採用コストの削減にもつながります。また、企業理念に共感する優秀な人材が集まりやすくなるため、組織全体の質の向上も期待できるでしょう。

生産性が向上する

カスハラに対する対応の多くは、生産性のない時間です。この時間を削減できれば、従業員は本来の業務に集中でき、サービスの質も向上します。カスハラによる精神的疲労は作業効率を大きく低下させますが、適切な対策により予防が可能です。

心理的ストレスが軽減されることで、ヒューマンエラーによるミスや事故も減少し、品質管理の観点からもメリットが生まれるでしょう。

また、精神的な余裕ができることで、マニュアル対応だけでなく、創造的な提案や新しいアイデアの創出も期待できます。顧客対応の質も向上し、結果として顧客満足度の向上や業務全体の円滑化につながるのです。

自社のブランドを守れる

スマートフォンで簡単に動画撮影ができる現代では、店舗でのトラブル映像が瞬時に拡散されるリスクがあります。

労働契約法第5条では、使用者は労働者の生命、身体等の安全を確保しつつ労働ができるよう配慮する義務があると定められています。この義務を怠ると、法的責任を問われるだけでなく、消費者や取引先からの信頼も失いかねません。

適切なカスハラ対策を実施し、その姿勢を明確に示すことで、こうしたリスクを未然に防げます。取引先企業も、コンプライアンスを重視する企業との取引を優先する傾向があるため、BtoB取引においても有利に働くでしょう。

対外的な印象が高まる

カスハラ対策の基本方針を社内外に積極的に発信することで、企業の対外的な評価が
向上します。これは単なるPR活動ではなく、企業の社会的責任(CSR)を果たす重要な取り組みとして認識されるためです。

ホームページでの基本方針の公開や店舗での掲示、取引先への周知などを通じて、「従業員を大切にする企業」としての認知が広がるでしょう。また、従業員自身が「会社に守られている」と実感することで、企業への愛着心が高まり、それが顧客対応の質の向上にもつながります。

まとめ

東京都は中小企業や個人事業主を対象に「カスタマーハラスメント防止対策推進事業企業向け奨励金」として、所定の取り組みをした事業主に一律40万円を支給しています。

カスハラ対策は奨励金という経済的メリットだけでなく、従業員のメンタルヘルス保護や休職・離職の防止、採用競争力の向上など、長期的な経営面でも多くのメリットがあります。

大切な従業員を守り、生産性の向上や対外的な信頼を得るためにも、カスハラ対策を進めましょう。

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(編集:創業手帳編集部)

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