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2025年5月26日「下請代金支払遅延等防止法及び下請中小企業振興法の一部を改正する法律」が成立 来年1月施行

2025年5月16日の参議院本会議において、「下請代金支払遅延等防止法及び下請中小企業振興法の一部を改正する法律」(改正下請法)が可決、成立しました。
この改正下請法は 発注者・受注者の対等な関係に基づき、事業者間における価格転嫁及び取引の適正化を図ることを目的としています。
概要
規制の見直し(下請代金支払遅延等防止法関係)
(1)協議を適切に行わない代金額の決定の禁止(価格据え置き取引への対応)
対象取引において、代金に関する協議に応じないことや、協議において必要な説明又は情報の提供をしないことによる、一方的な代金の額の決定を禁止する。
(2)手形払等の禁止
対象取引において、手形払を禁止する。また、その他の支払手段(電子記録債権やファクタリング等)についても、支払期日までに代金相当額を得ることが困難なものは禁止する。
(3)運送委託の対象取引への追加(物流問題への対応)
対象取引に、製造、販売等の目的物の引渡しに必要な運送の委託を追加する。
(4)従業員基準の追加(適用基準の追加)
従業員数300人(役務提供委託等は100人)の区分を新設し、規制及び保護の対象を拡充する。
(5)面的執行の強化
関係行政機関による指導及び助言に係る規定、相互情報提供に係る規定等を新設する。
(6)その他所要の改正を行う。
振興の充実(下請中小企業振興法関係)
(1)多段階の事業者が連携した取組への支援
多段階の取引からなるサプライチェーンにおいて、二以上の取引段階にある事業者が作成する振興事業計画に対し、承認・支援できる旨を追加する。
(2)適用対象の追加
製造、販売等の目的物の引渡しに必要な運送の委託を対象取引に追加する。また、法人同士においても従業員数の大小関係がある場合を対象に追加する。
(3)地方公共団体との連携強化
国及び地方公共団体が連携し、全国各地の事業者の振興に向けた取組を講じる旨の責務と、関係者が情報交換など密接な連携に努める旨を規定する。
(4)主務大臣による執行強化
主務大臣による指導・助言をしたものの状況が改善されない事業者に対して、より具体的措置を示して改善を促すことができる旨を追加する。
「下請」等の用語の見直し(下請代金支払遅延等防止法及び下請中小企業振興法等関係)
用語について、「下請事業者」を「中小受託事業者」、「親事業者」を「委託事業者」等に改める。また、題名について、「下請代金支払遅延等防止法」を「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」に、「下請中小企業振興法」を「受託中小企業振興法」に改める。
施行期日
2026年1月1日(一部の規定は公布の日から施行)。
価格転嫁とは、企業が原材料費、人件費、エネルギーコストなどの変動分を製品やサービスの価格に反映させることを指します。近年では、エネルギー価格の高騰や物価上昇、円安の進行などにより、企業のコスト負担が増加しており、適切な価格転嫁が重要な経営戦略となっています。これは、企業が安定した利益を確保し、事業を継続していくために欠かせない対応といえます。
しかしながら、中小企業や小規模事業者にとって、価格転嫁は容易ではありません。取引先に対する交渉力が弱い場合や、競争の激しい市場環境においては、価格の引き上げが顧客離れを招くリスクもあり、結果としてコスト増を自社で吸収せざるを得ないケースも少なくありません。
実際に、中小企業庁の調査では、下請取引において直近1年間で価格交渉を取引先に要請しなかった企業のうち、約3割が「交渉による不利益を懸念して要請を控えた」と回答しています。
このように、中小企業や小規模事業者は価格転嫁の面でも不利な立場に置かれていることから、取引先企業が優越的地位を不当に利用することのないよう、法的な規制やガイドラインの整備が求められています。
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