ナハト 安達友基|創業5年で売上127億を達成!本質的なマーケティングで利益に繋げる若手起業家の想いとは
失敗の数には自信がある。経験から構築したすべてに通じる経営軸
2018年、SNSを活用したマーケティングが注目され始めた当時、インフルエンサーマーケティングやSNS広告に活路を見出し、創業から5年で売上127億円を達成したベンチャー企業が株式会社ナハトです。
同社を創業し現在も代表取締役を務める安達友基さんは、就職活動や学生起業など多くのシーンで挫折を経験。しかしその後トレンドをつかみ、事業を大きくさせました。
とはいえ事業が時流に乗れただけでは、本質的に企業が成長し続けることはできません。大きな売上を上げることができた背景には、マーケティングや経営に対する安達さんの想いがありました。今回は安達さんが起業するまでのストーリーなどを、創業手帳代表の大久保がインタビューしました。
株式会社ナハト 代表取締役
1993年生まれ、中央大学法学部卒業。在学中にNY留学。学生時代にインフルエンサー事業を開始。卒業後に自己資本で「株式会社ナハト」を創業。インフルエンサーマーケティングやSNS広告を中心に事業を拡大させていき、2020年には同社を渋谷マークシティに移転。創業5期で売上127億円に拡大し、現在は広告に加えて新規事業、MA、VC、採用に注力している。
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計250万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら
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この記事の目次
会社のお金を持ち逃げされ全て失うも、インフルエンサーマーケティングで起業
大久保:学生のときから起業されたそうですね。どんな学生だったのでしょうか?
安達:大学時代は漠然と人気者になりたいと考えていたので、400人くらいいる飲みサークルの代表を務めていたり、西麻布のバーでアルバイトとして働いていたりしたので、同級生の中でも目立っていたと思います。
そんな感じでサークルもアルバイトもお酒関連だったので、就活の面接でどこか堂々と言えず、レジュメにも書けなかったので結果落ちまくっていましたね。そこで、なんとか今でいうガクチカを作りたいと思って大学を休学してニューヨークへ1年留学してみたのですが、日本に戻ったら、すでに就活の時期はほぼ終わっていたんです。
その時、もう就活はいいかなという気持ちになって、それなら日銭を稼ぐことに打ち込むかという気持ちになり、学生を続けながらバーでのアルバイトを続けていました。その後もっと効率よく稼ぎたいなと考え、個人でアパレルの輸入事業に挑戦したのが、今思えばビジネスの世界に触れた初めての出来事だったのかなと思います。
その事業は、日本で人気のブランドの服をニューヨークから仕入れて、日本で売るというものでしたが、結果からいうとあまりよくなかったですね。関税もかかるし、当時でも120円台後半ぐらいまでの円安だったので、割に合わない事業だなと気付きました。結局2年で終わり、トータルでみて赤字ではないけれど黒字にもならないくらいの着地に。これもひとつの挫折ですね。
その後、続けていたアルバイト先のバーで会ったお客様に「一緒に会社をやらない?」と声をかけられたことが、ナハトの前に起業した1社目となります。
大久保:その時からインフルエンサーマーケティングを手掛けていたのでしょうか?
安達:当時はインフルエンサーよりブロガーが作るブログコンテンツが世の中で流行っていたので、ブロガーが書く日常の発信の中で、おすすめの商品を紹介する文章を書いてもらい、僕が文章を添削するといった今でいう「タイアップ広告」の先駆けとなる事業を始めていて、流行に乗れたことで利益が出ていましたね。
ただこの時僕は雇われ社長で、バーのお客様だった方が会社の株を100%持つオーナーだったのですが、事業がうまくいっている時に、オーナーが会社のお金を持ってどこかにいなくなってしまったんです。当時24歳で大学も卒業したばかりで、会社もなくなってしまったし、もう何もない状態になってしまいました。
大久保:20代前半という若さで、人がしないような経験をされたわけですね。その後なぜ再度起業しようと思われたのでしょうか?
安達:突然働き先がなくなった後に、純粋に「働くところないですか?」という感じで、周りにいた経営者など様々な方に聞いてみたところ、どの方も「友基君なら大歓迎だよ」と言ってくださって。その時、「就職先はありそうだから最悪死ぬことはないな」と思って、それなら自分で事業をやってみよう、と思ったんです。そう思い立って、当時注目され始めていたSNS上で活動するインフルエンサーによるマーケティングの事業を地元の友人達と始め、ナハトを創業しました。
大久保:ご自身で起業してみて、いかがでしたか?
安達:その頃ちょうどSNSを利用する人が爆発的に伸びていることもあり、同時にSNSマーケティングの市場もものすごく伸びていたので、順調に事業が拡大していった記憶があります。また、僕は新しいことをするのが好きなので、インフルエンサーマーケティングが当たった数ヶ月後には、YouTuberなどのクリエイターが所属する事務所「ONEVIEW」や、SNS広告の事業を立ち上げていました。
本当に働きたい人とだけ働き、本当にいいと思うものだけを売りたい
大久保:1社目でオーナーにお金を持ち逃げされた時は、かなり大変だったのでは?
安達:その時は確かに大変だったのですが、失敗から得た経験の数には、どんな起業家よりも自信があります。1社目に起業したエピソードを周囲に話すと、「株を100%持っていればよかったね」と言われたこともありましたが、個人的には、それもどうかなって思うんです。起業したばかりの頃は自分が持っている株の数にこだわるより、自分が巻き込める人を増やす方が大切なのかなと思います。
それよりまずは目の前の事業の成功確率を上げる方が何よりも大事かなと思います。僕の場合は実力ではなく、運よくたまたま時流に乗れただけです。巻き込む人が多ければ、もっと成功する確率は上がったかなと思うんです。
大久保:同じ時流を見ていながら乗れない人もいます。安達さんはその点やはりバランス感覚に優れているのかなと思いました。
安達:その点でいうと、僕は経営において、2つ大事にしていることがあります。
1つ目は本当に働きたい人とだけ一緒に働くということ。人が持つスキルは10年すれば実力者に追いつきますが、心が打ち解けていない人は10年経つと離れていきます。人と人との関係は、良ければ時間が経つほど良くなるし、逆に悪いと時間が経つほど悪くなると考えています。投資で言うと、複利によって長期運用後大きく変わるみたいなイメージですね。
2つ目は、本質的に自分がいいと思う事業をやることです。例えば個人向けに商品を販売する営業さんが、実は自社の製品ではなく他社のものを使っているなんてこともありますよね。僕は自分がいいと思うものを人に売りたいと考えます。自分がもしクライアントなら、その方が絶対嬉しいですから。そういう想いでやっていたのが会社がここまで大きくなった要因の一つだったのかなと思います。
会社も同じだと思うんですよ。クライアント事業のマーケティング支援をする僕らにおいてもプロダクトをまずよく知って、本当に好きになるところからはじめます。つまり、マーケティングする最初の相手は自分というわけです。次に、インフルエンサーや関係するパートナー企業の方に商品を好きになってもらい、好きになることを波及させていくのがマーケティングの考えの一つだと考えています。
何事もマーケティングの考えが通ずるなと思っていて、組織も仕事も、うまくいくためには「周りにいる人は自分を本当に好きなのか?」を考える必要があって、最終的に「世の中は自分を評価するか?」が大事だと思うんです。
つまり、いてほしい存在なのか、お金を出して買いたいか、これがマーケティングでは一番重要で、人間も、組織も、商品も広告も全部同じです。さきほど2つ大事にしていると話しましたが、どちらも根本にあるのはやはり「マーケティング」の考えだと思います。
少数精鋭の組織ではなく、大量採用こそ勝つ時代が近いうちに来る
大久保:次の時流というか、今後経営においてこんなトレンドがくるのでは、と思っていることはありますか?
安達:1つは人数だと思います。組織の人数という意味ですね。最近は少人数で1人当たりの生産性を高くすることがトレンドですが、僕は逆に人数を増やした方がいいと思うんですよ。1万人より10万人、10万人より100万人みたいな。あくまで一定のカルチャー基準を満たした上での話ですが。
採用で言うと、今はスキル重視でジョブ型の少数精鋭採用がトレンドです。でも僕は逆で、カルチャーを共有できる人を大量採用する形が今後は勝つと思っています。
これは僕の個人的な見解ですが、どんどんAIが出てきているのでスキルは希薄化すると思います。だから人にしか創造できない発想や仕事が残り、その量が企業価値になっていくわけです。
今後の日本は人口が減少するので、むしろいかに人を採用できるかが大事です。特にスタートアップやベンチャーこそ、採用力はすごく必要になると思いますね。
さらにいうと今後は「多勢に無勢」になるとも思っています。なぜかというと、全てのものの具現化するスピードはAIなどを活用することで上がっていきます。でも過去の叡智の集合体であるAIが具現化できる発想やアイディアには、一定の天井があります。
ですから、個人的には会社はもっと人を採用すればいいのになと思うこともあります。内部留保を残すくらいなら人件費にお金を使うべきで、そうすることで経済も良くなっていくと思うので。
代理店とクライアントの新たな関係性を作り、日本のマーケティングを変えたい
大久保:今後の展望を教えていただけますか?
安達:会社としては、日本で一番のマーケティング会社を目指しています。これは日本で一番ものを売れる会社になるという意味です。そのためには3つの軸が大事だと思っています。
1つ目は自社で本当にいいモノを作れる会社になること。2つ目は、人が使いたくなるプロダクトを作っていくことです。
3つ目は今のマーケティングの質を最大化することです。これはクライアントへ価値を提供しながら、自分たちのマーケティング理論を落とし込んだ事業をやることで実現していきます。
大久保:売れるものを知っているからこそ、売れるものを作れるという考えですね。これらを実現した先に、イメージしていることはありますか?
安達:僕は日本で一番のマーケティング会社になるためにやるべきことがあると思っています。アメリカなどの海外では会社にCMO(最高マーケティング責任者)がいて、社内でマーケティングの意思決定がなされるのが一般的です。でも日本では代理店を使う文化が強く、そういうケースは少ないので、ここに日本のマーケティングが欧米より弱い理由があると考えています。
例えば、日本は人財の流動性が低いですよね。マーケティング担当が同じ会社にずっといると、同じような案件ばかりを担当しがちになり、経験値を得にくい状況になります。だから成長意欲の高い優秀なマーケターは、広告代理店で働くことを選ぶ傾向があります。ただ、広告代理店はクライアントから報酬をいただくことがゴールですから、どうしても事業の売上を上げることを目指すクライアントの立場と乖離しやすいんです。
ですから、この乖離をいかに取り払っていくかが、日本のマーケティングにおける課題だと考えています。広告代理店とクライアントの距離を縮めて、利益相反ではなく運命共同体になれるか。これがマーケティングの成功において必要です。
そこで、僕らは、成果報酬型という形でクライアントから案件を受注することが多く、「自分たちの利益は結果が出ないと得られない」といった本質的なマーケティングの提供を行っています。
大久保:広告代理店の常識にとらわれず、すごく新しい発想です。
安達:これもナハトが上場を目指していない企業だからこそ言えるんですよね。上場していれば、株価が下がりすぎると敵対的買収もありえますから、利益を積み上げる経営が当然求められます。ナハトは、利益が大きく出ない年があっても、翌年いければいいという判断もできます。これは上場を目指していないナハトの強みかなと思います。
大久保:最後に、起業して1年目ぐらいの方に向けてメッセージをいただけますか?
安達:起業したばかりの頃は、その1歩前に行く人の話を聞くべきです。10歩先の人の話を聞いても、それを役立てるのは難しいじゃないですか。例えば、レベル1のときに孫正義さんの話を聞いても、仕方がないと思うんですよ。僕自身、今の孫さんは存在が遠すぎるので、15年前や20年前の孫さんが出演されていたインタビュー記事などを読むようにしています。
また、会社のミッションやビジョンも同じだと思います。レベル1の時に作っても、掲げた理念以外のことができなくなってしまい、逆に足かせになることもありますから、正直やめた方がいい。
起業直後は資金がないですから、まずは死ぬ気で日銭を稼ぐことが1番大事じゃないですか。まずは会社のお金を増やしたり、資産や資源を増やしていったり、本業に集中することに全振りした方がいいと思います。
また、ナハトにはこういった経営者マインドを持ったメンバーが多いです。クライアントのマーケティング支援に関してもCMOとして介在して動いてたり、新規事業に関しては事業が拡大していけば子会社の代表になることもあります。自分で起業したいと思うほどのマインドを持った人とぜひ働けたら嬉しいなと思うので、ナハトで働くことにご興味がございましたらぜひお話しできると嬉しいです。
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(取材協力:
株式会社ナハト 代表取締役 安達友基)
(編集: 創業手帳編集部)