観光業での開業に役立つ資格とは?それぞれの特徴や必要なスキルなども解説

創業手帳

観光業の開業に役立つ資格を把握しておこう!


新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、国内外の観光需要は大幅に落ち込みました。
しかし、2022年10月に水際措置が大幅に緩和され、全国旅行支援が開始されたことで需要が急速に回復しています。
また、訪日外国人観光客数も2023年に年間2,507万人まで回復し、2024年9月までの累計は約2,688万人となっており、すでに2023年の年間累計を上回る結果となっています。

盛り上がりを見せる観光業は今後もインバウンド需要などが期待されるため、開業を考える人もいるかもしれません。
今回は、観光業での開業に役立つ資格を紹介しつつ、観光業に必要なスキルも解説していきます。

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開業する前に知っておきたい観光業の種類


観光業の業種は多岐にわたります。大まかに分類すると、これから紹介する以下のとおりです。まずは各業種の特徴について紹介します。

旅行会社関連

旅行会社関連の業種は、主にツアー旅行を企画し、管理・調整や添乗員などを務めます。旅行会社が企画するツアーに参加すればホテルや食事の予約などは不要です。
手間がかからず、存分に旅行を楽しめることから、旅行者にも人気のあるサービスです。
添乗員は旅行会社や添乗員専門の派遣会社に所属することが基本ですが、中には個人事業主として開業し、活躍する添乗員もいます。

航空関連

航空関連の業種は、主に空港内や飛行機内で働く仕事です。
CA(キャビンアテンダント)やグランドスタッフなど様々な職種が存在しますが、いずれも飛行機に乗る人の手続きやサポートを行うのが仕事
です。
CAは機内の保安やサービスの提供が主な仕事で、グランドスタッフは空港カウンターでのチケット発券や荷物の預かりサービス、手荷物検査などを担います。

ホテル・旅館などの宿泊関連

ホテル・旅館などの宿泊関連も観光業にとって欠かせない業種です。
ロビーでの接客をメインとするロビーアテンダントや、宿泊者の幅広い要望にもできる限り応対するコンシェルジュ、レストラン業務を担うレストランスタッフなどが存在します。
また、ホテルでウェディング事業も展開している場合、ウェディングプランナーやテーブルコーディネーターなどの職種もあります。

規模が大きなホテルを個人で開業しようとすると難しいかもしれません。小規模な民宿やゲストハウスなどは個人で開業することも可能です。

全国通訳案内士や通訳などのガイド関連

訪日外国人観光客に対して、外国語を話しながら旅行をサポートするのがガイド関連の職種です。
2017年までは、全国通訳案内士の資格を取得していなければ有料で通訳ガイドの仕事をすることはできませんでした。
しかし、2018年1月の通訳案内士法改正にともない、全国通訳案内士の資格を持っていなくてもガイドの仕事ができるようになりました。

旅行会社に観光ガイドとして登録できますが、仲介サービスを利用したりWebサイトを制作して直接申し込みできるようにしたりすることも可能です。

公的機関

公的機関で観光業関連の業種としては、日本国政府観光局(JNTO)の職員や観光庁の職員などが挙げられます。
日本国政府観光局の職員は、海外に向けて日本をPRするのが主な仕事です。イベントの誘致や来日旅行の企画などを実施します。
一方、観光庁職員は自治体や民間企業と連携し、観光スポットづくりや観光地支援を行うのが主な仕事です。

観光業の開業に役立つ資格


続いては、観光業を開業する際に役立つ公的資格を紹介します。

旅行業務取扱管理者

旅行業務取扱管理者は、国内・海外の旅行者との取引きを正確に行い、管理・監督する責任者を指します。
旅行業者や旅行業者代理業者は営業所ごとに旅行業務取扱管理者を指定し、業務の管理・監督を行わせる必要があることが旅行業法で規定されています。
つまり、旅行業務取扱管理者の資格は、旅行会社関連を開業するために必須の国家資格です。

旅行業務取扱管理者が担う主な業務は以下のとおりです。

  • 旅行プランの立案・管理
  • 旅行広告の監督
  • 顧客に対する申し込み内容の説明や契約
  • 宿泊施設や乗り物の手配
  • クレーム対応
  • 契約内容の記録・関係書類の保管 など

旅行業務取扱管理者の試験は年1回(10月中)に行われています。なお、総合と国内で受験科目が異なることに注意が必要です。
総合の場合は国内旅行実務に加え、海外旅行実務も受験科目に含まれます。

地域限定旅行業務取扱管理者

地域限定旅行業務取扱管理者は、2018年から新しく発足された資格です。上記で紹介した旅行業務取扱管理者に含まれます。
これまで総合と国内の2種類ありましたが、地域限定旅行業務取扱管理者も含めて3種類に増えました。
地域限定旅行業務取扱管理者の場合、販売できる旅行商品のエリアは事業所が立地している市町村と隣接する市町村、観光庁が定めた区域内に限られます。

また、地域限定旅行業務管理者の資格は、既存事業から旅行業に幅を広げたい場合にも取得されるケースが多くあります。
一例として、バス会社やタクシー会社がガイドツアーを行う場合や、飲食店がキャンプ場や公園などを活用してピクニックイベントを開催する場合などです。
地域限定旅行業務取扱管理者の試験範囲は、法令、約款、国内旅行実務の3つで、航空運送の約款や利用料金、観光地理などは除外されます。
試験範囲が狭まっているため、難易度はそれほど高くありません。2023年度の合格率は全国集計で40.6%です。

旅程管理主任者

旅程管理主任者は、観光庁が主催する準国家資格です。
企画旅行に同行する主任添乗員には取得が義務付けられており、旅行業務取扱管理者と同様に総合と国内の2種類に分けられます。

旅程管理主任者の資格を取得するためには、受験対象を満たしている必要があります。以下の項目に当てはまる人のみ受験資格が与えられています。

  • 観光庁長官からの登録を受けた機関で実施されている旅程管理研修を修了している
  • 一定の添乗実務(研修の修了前後1年以内に、1回以上または研修の修了後3年以内に2階以上)を経験している

添乗実務を経験するためには、企画旅行に補助添乗員として同行したり、派遣会社の研修ツアーに参加して研修を受けたりすることが必要です。

旅程管理主任者の難易度はそれほど高くなく、合格率は90%以上といわれています。
研修と実務経験が必要で、十分な知識が身に付いた状態で試験に臨めるためだと考えられます。

全国通訳案内士

全国通訳案内士は、報酬を受けた上で外国人に付き添い、外国語を用いながら旅行のサポートをする国家資格です。
民間の外交官的な役割も担っていることから、語学力だけでなく日本の歴史や地理、文化、さらに国際時事などについても精通している必要があります。
なお、試験の際には言語を選ぶことが可能です。対象の言語は以下の10言語です。

  • 英語
  • フランス語
  • スペイン語
  • ドイツ語
  • 中国語
  • イタリア語
  • ポルトガル語
  • ロシア語
  • 韓国語
  • タイ語

一次試験(筆記)が8月下旬頃、二次試験(口述)が12月初旬~中旬頃に開催されています。難易度は高く、2023年度の合格率は12.0%です。

観光業に関連する民間資格・検定もチェックしよう


観光業に関連する公的資格を紹介しましたが、民間資格や検定にも観光業に関連するものは多くみられます。どのような資格・検定があるのかチェックしてみてください。

旅行地理検定

旅行地理検定は、旅行先の地理や観光情報に関する知識を評価する検定です。
試験内容は日本旅行地理と世界旅行地理の2種類に分かれており、それぞれに初級・中級・上級が設定されています。
観光業に関連する民間検定の中でも老舗の検定で、事務局はJTB総合研究所が運営しています。

試験は年2回(6月と12月の中旬頃)開催されますが、2025年6月実施の第58回をもって終了するため、検定を受けたい方は注意してください。

観光英語検定

観光英語検定は、これまで24万人以上が受験してきた検定です。一般的な英語関連の検定とは異なり、観光シーンに特化した専門用語や言い回しなどが求められる検定です。
例えば空港や交通機関、ホテル、観光地、ショッピングなど実際の場面を想定した問題を中心に出題されます。

なお、観光英語検定は1級・2級・3級に区分されており、いずれも筆記試験とリスニングテストが実施されます。
合格率は比較的高めで、2024年6月30日に実施された第47回の合格率は、2級で72.4%、3級で62.7%でした。

海外旅行エリア・エキスパート

海外旅行エリア・エキスパートは、海外旅行エリア・スペシャリスト(AS)の登竜門として2024年度からスタートした新しい資格です。
これまでは海外エリア・スペシャリストしかなかったため、旅行会社や旅行業関連企業に在職する人しか受験できませんでした。
しかし、2024年に海外旅行エリア・エキスパート(AE)が新設され、これから旅行関連業の仕事をしたい方も受験できるようになっています。

海外旅行エリア・エキスパートを取得するためには、海外旅行エリア・スペシャリストの養成講座の修了し、試験に合格すれば認定してもらえます。

日本の宿 おもてなし検定

日本の宿 おもてなし検定は、宿泊需要の高度化・国際化の課題をクリアし、業界全体で接遇力の標準化を目指すために設けられた検定です。
区分は1級・2級・3級に分けられます。

  • 1級:おもてなしの知識や実務能力を活かし、後輩の指導・育成も兼任できるレベル
  • 2級:お客様に満足していただき、明確にプラスの評価をもらえるレベル
  • 3級:基礎的な知識を習得したレベル

2023年9月に実施された試験では、3級の合格率が64.0%、2級の合格者が68.7%となっており、比較的取得しやすい検定だといえます。

TCSAインバウンド検定

TCSAインバウンド検定は、日本添乗サービス協会(TCSA)が主催する検定です。
訪日外国人旅行者に同行し、日本での安全・快適な旅を体験してもらえるよう、サポート業務に従事するスタッフの知識・技能向上を図ることを目的としています。
TCSAインバウンド検定では初級・中級・上級の3つに分かれており、初級は誰でも受験可能です。
ただし、中級は対象実務経験が3年程度、上級は対象実務経験が7年程度なければ受験できないため、まずは初級を受験し、実務経験を積んでから中級以上の試験に臨んでください。

世界遺産検定

世界遺産検定は、人類にとっての財産・宝物となる世界遺産を通じ、国際的な教養を身に付け、持続可能な社会の発展に寄与する人材育成を目的とした検定です。
世界遺産検定を取得することで、観光業に役立つ以外にも深く旅を楽しめるようになります。

世界遺産検定では4級・3級・2級・準1級・1級・マイスターの6区分に分かれており、出題対象となる世界遺産の数は異なります。
4級は、日本の全遺産と世界の有名な遺産35件までです。しかし、マイスターはすべての世界遺産に加え、世界遺産条約の理念や諸概念についても理解する必要があります。

観光業での開業に欠かせない知識・スキル


観光業を開業するためには、観光に関連する知識・スキル以外も必要です。具体的にどのような知識やスキルが必要となるのか解説していきます。

会計・法律の知識

新たな開業の際には、会計や法律に関する知識が必要です。
会社のお金のことは税理士や会計士に任せることも可能ですが、経営者として最低限の知識を身に付けておかなければいけません。
ひとつの経営判断が会社の状況を大きく左右する可能性もあることに注意が必要です。

また、法律を覚えておく必要もあります。特に知っておきたいのは民法・会社法・労働基準法です。観光業であれば旅行業法についても知っておく必要があります。

営業スキル

観光業として開業しても、自社の旅行商品・サービスが消費者に届けられなければ意味がありません。そのため、営業スキルも観光業に必要なスキルになります。
コミュニケーション能力が高ければ良いと考える方もいるかもしれませんが、ヒアリングやクロージング能力も必要です。
取引先や消費者と円滑なコミュニケーションを取るためには、相手の立場になって物事を考え、課題を分析することで成果につながりやすくなります。

情報収集スキル

観光業では迅速かつ正確な情報収集も必要です。
新しい旅行プランを企画する場合、競合他社の企画となるべく被らずに、消費者のニーズを叶えられるようなプランを企画しねければいけません。
競合他社が企画するプランの情報や、ターゲットの消費者がどのような不満を抱いているのか、どのような旅行を希望しているのかなどの情報も収集する必要があります。

また、情報を収集するだけでなく、分析力も身に付けておくことも大切です。

思いやり・気遣い

観光業での開業を考えている場合、思いやりや気遣いが必要になってくるシーンも多くあります。
自分が売りたいものを消費者に無理やり押し付けるのではなく、消費者の希望を最大限に叶えることで、高い満足度につながります。
また、新規顧客の取得に限らず、リピーターを大事にすることも重要です。
リピーターになってもらうには満足度を高めたり感動させたりすることが重要で、思いやりや気遣いは観光業にとって必須といえます。

まとめ・観光業での開業を目指して必要な資格・スキルを取得しよう

観光業で開業する場合、取得が必須となる資格もありますが、民間資格や検定のように比較的気軽に受験できるものもあります。
観光業の中でもどのような業種を開業するかによって必要な資格やスキルなどは異なるため、まずは業種を定めてから資格取得を目指してください。

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(編集:創業手帳編集部)

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