【初心者必見!】個人事業主の帳簿の作り方とは?単式簿記・複式簿記の記載方法や流れを解説

創業手帳

個人事業主になったら帳簿の作成は必須!


個人事業主は、確定申告時に申告書を作る土台となる「帳簿」の作成が必須です。
帳簿という言葉を知っていても、具体的な内容まで理解していない方もいるかもしれません。
しかし、事業を運営するにあたって影響を及ぼすこともあるため、正しい知識を身に付けることが重要です。

そこで今回は、個人事業主の帳簿の作り方をはじめ、帳簿の種類や保存方法など、帳簿にまつわる様々な情報をお伝えしていきます。
帳簿作成を手書きで行う場合と会計ソフトを使う場合の利点についてもそれぞれ紹介してするため、ぜひ参考にしてみてください。

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個人事業主の帳簿の作り方は2種類


帳簿の作成は事業主の義務でもあります。法人のみでなく、個人事業主も帳簿をつける必要があります。
収益や費用を把握すれば納税額がわかり、正確に納税するために役立ちます。
一方、帳簿をつけていなければ正しい納税ができず、重加算税が課せられる可能性もあります。ペナルティを避けるためにも帳簿は重要なものです。

帳簿には、「単式簿記」と「複式簿記」の2種類があります。それぞれの特徴を以下の表にまとめました。

単式簿記 複式簿記
利点 ・初心者でも記帳しやすい ・青色申告によって大きい控除を受けられる
・資産や負債、ものの動きもわかりやすい
欠点 ・ものの動きが不明瞭
・青色申告による大きい控除が受けられない
・初心者だとわかりにくい

単式簿記

取引きで発生した金額を、勘定項目を用いて記帳する方法が単式簿記です。小遣い帳や通帳をイメージするとわかりやすいかもしれません。
白色申告事業者と最大10万円の青色申告特別控除を活用する青色申告事業者は、単式簿記での記帳が可能です。

日付 勘定項目 収入 支出 残高
20XX.5.1 売上 20,000 500,000
20XX.5.1 仕入 30,000 470,000
20XX.5.2 消耗品費 1,000 469,000

単式簿記では、取引きが行われた際に項目と金額を記載する方法です。単純な方法でわかりやすいという特徴があります。
ただし、青色申告特別控除を受けられない点がデメリットです。

複式簿記

発生した取引きに対して、2つの勘定項目で記帳する方法が複式簿記です。
例えば、10,000円の売上げが口座に振り込まれた際には、「20,000円の商品を販売した」ことと「預金の残高が20,000円増えた」という動きが生じます。
その動きを、原因と結果に分けて該当する勘定科目に当てはめて記録していきます。
仕訳帳では、借方と貸方の残高が一致していることが基本です。残高が一致していない場合は記帳が誤っており、ミスに気が付きやすいという利点があります。

日付 借方科目 借方 貸方科目 貸方
20XX.5.1 普通預金 20,000 売上 20,000
20XX.5.1 仕入 30,000 現金 30,000
20XX.5.2 消耗品費 1,000 現金 1,000

仕訳帳だけでは預金残高や現金の残高がわかりませんが、勘定科目ごとに集計をすると預金や現金の残高や仕入れの合計額など、費用別の細かい変動が明白になります。

申告方法で異なる帳簿の種類


確定申告の方法によって、必要となる帳簿の種類は異なります。
白色申告、青色申告に分けて紹介していくため、主要簿と補助簿に対する理解に役立ててください。

控除額 帳簿の種類 主要簿 補助簿
青色申告 55万円
65万円(条件を満たした場合)
複式簿記 仕訳帳
総勘定元帳
現金出納帳
預金出納帳
売掛帳
買掛帳
固定資産台帳
経費帳 など
青色申告 10万円 単式簿記 現金出納帳
預金出納帳
売掛帳
買掛帳
固定資産台帳
経費帳 など
白色申告 単式簿記 定めなし 定めなし

白色申告に必要な帳簿

白色申告では帳簿が不要と考えている方もいるかもしれませんが、2014年からは白色申告者に対しても記帳や帳簿を保存する義務が設けられています。
そのため、青色申告・白色申告関係なく、個人事業主であれば帳簿の作成が必要です。

また、2022年からは帳簿がなければ過少申告加算税や無申告加算税がペナルティとして課せられる税制改正が行われ、2024年1月から施行されています。
本来支払う税金よりも多い額を支払うことのないよう、帳簿は必ずつけてください。

青色申告に必要な帳簿

青色申告に必要な帳簿は、主要簿と補助簿の2種類です。

主要簿

取引きが発生した際につけなければならない帳簿を主要簿といいます。主要簿には仕訳帳と総勘定元帳の2種類があります。

・仕訳帳
すべての取引きを日付順に記録していく帳簿が仕訳帳です。借方と貸方の2つに分けて記載していきます。
日付や摘要、勘定項目、金額などを記載する必要があり、いつ、何が、どのように、いくらで動いたのかを記録するための帳簿です。
仕訳帳にお金の流れを記載すれば、青色申告時に必要となる貸借対照表の作成が可能です。

・総勘定元帳
仕訳帳に記載した内容を勘定科目ごとに集計した帳簿が総勘定元帳です。
勘定科目ごとに取引きの借方と貸方の金額が記載されており、勘定科目別の資金の流れをチェックできます。
仕訳帳の作成後に、勘定科目ごとに記していきます。

補助簿

仕訳内容をより詳しく記載するための帳簿を補助簿といいます。
補助簿には様々な種類がありますが、必要な帳簿のみ作成していきます。
掛売をしていない個人事業主は売掛帳を作る必要はありませんが、取引きに応じた帳簿を作るようにしてください。
補助簿には、大きく分けると補助記入帳と補助元帳の2種類があります。
それぞれの特徴は以下の通りです。

・補助記入帳
取引きが発生した状況に応じて記していく帳簿です。
以下の帳簿が該当します。

  • 現金出納帳
  • 預金出納帳
  • 固定資産台帳
  • 売掛帳
  • 買掛帳

現金出納帳には取引きが発生した順に現金の入出金を記録していく必要があります。個人事業主であれば、個人と事業のお金を混同させないよう注意が必要です。

・補助元帳
勘定科目ごとの取引きを詳細に記す帳簿を補助元帳といいます。

  • 商品有高帳
  • 仕入先元帳
  • 得意先元帳

補助元帳には3種類があり、得意先別や買掛金別のお金の動きを一目でチェックできます。

個人事業主におすすめの帳簿の作り方


ここからは、個人事業主におすすめの帳簿の作り方を紹介します。
個人事業主は、基本的にはお金が動くたびに帳簿へ記入しなければなりません。
複式簿記であれば、取引きが発生した際には仕訳帳に記載し、その後総勘定元帳に転記します。
そして1年間の取引きが終了した段階で、年間の利益や損失を計算して確定申告書を作成します。帳簿のつけ方がわからない方は、ぜひ参考にしてみてください。

1.領収書の整理や記帳を行う

記帳のもとになる領収書や通帳などのデータや書類は帳簿作成時に不可欠となるため、整理や記帳などの作業も必須です。
領収書を確実に保管し、通帳は定期的に記帳してください。
個人で使うアイテムや事業で使うものを切り分けられない場合は、事業に関係する出費をわかるように記載しておくことでミスを防ぐことが可能です。
また、購入したものによっても勘定項目が異なります。
さらに、現金払いかクレジットカード払いかによっても記載する内容は異なるため、支払い方法ごとに領収書を分けて保管しておけば帳簿に記載しやすくなります。

2.取引内容を仕訳帳や補助簿に記録する

取引内容は、定期的に記帳していきます。毎日の取引きは、仕訳帳に日付順に記録していきます。
青色申告で65万円もしくは55万円の控除を受けたい場合は、複式簿記で記帳してください。
また、仕訳帳に記載した後には補助簿にも随時記録していきます。

帳簿を記入する時間がない方もいるかもしれませんが、まとめて作業すると多くの時間を要し、ミスが発生しやすくなってしまいます。
そのため、できる限り毎日時間を見つけて作業してください。日々のルーティンとして時間を決めておくと、記帳忘れも防げるでしょう。

3.総勘定元帳へ転記する

複式簿記であれば、総勘定元帳への転記作業も必要です。
仕訳帳に記載した内容をもとにして、勘定科目ごとにまとめ書き写すことを転記といいます。
記載項目は以下の通りです。

  • 日付
  • 借方
  • 貸方
  • 摘要
  • 仕丁

摘要部分には、取引きにおける相手方の勘定科目を記載し、仕丁部分には仕訳帳のどのページに関連している内容なのか記すために仕訳帳のページ番号を記載します。

4.収支計算を行い確定申告書類を作成する

確定申告の時期になれば、収支計算を行い申告に必要な書類の作成をしていきます。
青色申告をする場合には、総勘定元帳に基づいて決算書を作成し、白色申告であれば収支内訳書を作成しなければなりません。

決算書は帳簿の結果をまとめた用紙で、損益計算書と内訳、貸借対照表によってまとめられています。
損益計算書は、1年間の所得をまとめた書類で1ページ目に概要、2~3ページ目に内訳を詳細に記していきます。
貸借対照表は、資産や負債の状態が記された書類です。仕訳帳や総勘定元帳をもとにして記載していきます。

帳簿を作成したら保存も重要!


帳簿は確定申告作成のためにも必要ですが、申請時に提出する必要はありません。ただし、保存義務があるため、紛失しないよう管理することが大切です。

帳簿の保存期間

個人事業主が帳簿を保存する期間は、申告方法によって期間が異なります。

【青色申告…保存期間7年】
  • 仕訳帳
  • 総勘定元帳
  • 現金出納帳
  • 固定資産台帳
  • 売掛帳 など
【白色申告…保存期間7年】
  • 法定帳簿
【白色申告…保存期間5年】
  • 任意帳簿

万が一、保存期間内で処分してしまえば保存義務違反となり青色申告の取消や罰則が科せられるケースもあります。
必ず期間内は保存しておくよう注意してください。

領収書など必要書類の保存期間

帳簿だけではなく、領収書などの必要書類も保存しなければいけません。

【青色申告…保存期間7年】
  • 損益計算書
  • 貸借対照表
  • 棚卸表
  • 領収書
  • 小切手
  • 預金通帳 など
【青色申告…保存期間5年】
  • 請求書
  • 見積書
  • 契約書
  • 納品書 など
【白色申告…保存期間5年】
  • 棚卸表
  • 請求書
  • 納品書
  • 送り状
  • 領収書 など

電子取引のデータ保存義務化は個人事業主も対象

紙での保存が義務付けられていた帳簿書類ですが、一定の要件を満たすことで電子データでの保存できます
個人事業主も対象です。

  • メールに添付されているPDFの見積書
  • ECサイトでダウンロードした領収書
  • クラウド請求書発行システムで受領した請求書
  • フラッシュメモリに保存した状態で受領した発注書

上記のものは電子データで保存できます。

個人事業主が帳簿を作るなら手書き?会計ソフト?


帳簿を作る際に、手書きか会計ソフトを活用するかで悩む個人事業主の方もいるかもしれません。
最後に、手書き作成と会計ソフトでの作成する際のメリットをそれぞれ紹介します。ぜひ参考にしてください。

手書きで作成するメリット

手書きでの作成では、簿記の知識が身に付きやすい点が大きな魅力といえます。
簿記にはルールがあり、帳簿付けは複雑な作業です。そのため、簿記に関する知識がないと手書きでの作成は難しい場合も多いかもしれません。
ただし、書き方や用語の意味を調べれば、自然と簿記について理解できます。
帳簿をもとにして決算書の作成や申告書の作成をすることで、税金に対する理解も深まるため、知識を増やしたい方にとっては有効な方法です。

また、パソコンに不慣れな方でも作成できる点もメリットです。会計ソフトを利用する場合には、パソコンに関する知識が必要です。
これまで触れる機会がなかった方にとっては、入力するだけでも時間がかかってしまいます。
その点、手書きであれば操作する必要もなくなり、心理的なハードルが低くなります。

会計ソフトで作成するメリット

会計ソフトを活用する最大のメリットが、手間がなくなる点です。
手書きの作成では、取引きの記録や帳簿作成、保存など、手作業で行うため手間がかかります。
一方、会計ソフトを導入すれば仕訳を行うだけで、ソフトが自動で集計や転記を行ってくれます。
手間と時間のかかる会計処理をスピーディに完結できるため、効率的な作業が行えるでしょう。

また、入力ミスや計算ミスを防ぐためにも役立ちます。手書きの作業は人の手で行うため、計算を間違う可能性や記載ミスが発生する可能性があります。
一方、会計ソフトであればデータを入力するだけで、自動で集計してくれます。計算や転記漏れなどのミスを防ぐことが可能です。

まとめ・個人事業主も帳簿の作り方を覚えて正しい申告・納税を行おう

今回は、個人事業主の方に向けて帳簿の作り方を紹介してきました。
帳簿には単式簿記や複式簿記の2種類があり、申告方法によって用意する帳簿の種類は異なります。
帳簿は確定申告時に欠かせない役割があるので、作り方を覚えることが重要です。
今回紹介した内容を参考に、帳簿の作成に役立ててみてください。

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(編集:創業手帳編集部)

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