【2024年6月7日発表!】中小企業向け資金繰り経営支援の変更点を解説

創業手帳

脱コロナに向けて中小企業向け資金繰り経営支援は縮小される方針


令和6年6月7日、経済産業省より今後の中小企業向け資金繰り支援について公表されました。2024年7月以降は、原則として各種資金繰り支援策はコロナ前の水準に戻す方針が示されています。

今後は経営改善・再生支援に重点を置いた資金繰り支援を行う方針が掲げられており、今後影響を受ける中小事業主の方も出てくるでしょう。コロナ関連の支援を受けた事業主の方は、今後の政府方針を把握しておくべきです。

こちらの記事では、2024年の中小企業向け資金繰り経営支援の変更点や、中小事業主が知っておくべきポイントを解説します。

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新型コロナウイルスの資金繰り支援関連


新型コロナウイルスは国内産業に大きな影響を及ぼし、政府としても経済活動を守るために事業主を救済するための措置を設けてきました。

しかし、2024年6月末で新型コロナウイルスの資金繰り支援は終了となります。今後の各種資金繰り支援策は、コロナ前の水準に戻す方針となっている点は押さえておきましょう。

「コロナセーフティネット保証4号」と「コロナ借換保証」は6月末で終了

「コロナセーフティネット保証4号」と「コロナ借換保証」は、6月末で終了します。

「コロナセーフティネット保証4号」とは、自然災害等の突発的事由により経営の安定に支障を生じている中小企業者への資金供給の円滑化を図るため、信用保証協会が通常の保証限度額とは別枠で借入債務の100%を保証する制度です。

信用保証協会による保証範囲を拡大し、中小事業主の資金調達を助ける趣旨で設けられました。

「コロナ借換保証」とは、民間ゼロゼロ融資(実質無利子・無担保で融資を行う仕組み)や他の保証付融資からの借り換えなどに対応する保証制度です。

コロナ借換保証は、民間ゼロゼロ融資の返済開始時期が、2023年7月~2024年4月に集中すると見越して設けられた経緯があります。返済負担軽減のみならず、新たな資金需要に対応するために活用されてきましたが、コロナ借換保証も6月末で終了となります。

「コロナ借換保証」は能登半島地震の影響が残る地域で継続

2024年初頭に発生した能登半島地震の影響が残る地域においては、コロナ借換保証は継続されます。利用実績や復旧状況を踏まえつつ、7月以降も3ヶ月毎に見直しが行われる予定です。

コロナ禍からの経営改善・再生を図るための資金繰り支援は12月末まで延長

経済産業省より新しく発表された中小企業向け資金繰り支援は、経営改善・再生支援に重点を置いています。

コロナ禍からの経営改善・再生を図るための資金繰り支援は、12月末まで延長される予定です。

経営改善サポート保証(コロナ対応)

経営改善サポート保証制度(コロナ対応)とは、経営サポート会議(⾦融機関の関係者が個々の事業者を⽀援する枠組み)や中⼩企業活性化協議会等の⽀援により作成した経営改善・再⽣計画に基づき、中⼩企業に対して必要な資⾦を保証付で融資する制度です。

融資を通じた資金繰り支援だけでなく、経営改善・事業再⽣の取り組みを後押しする制度でもあります。コロナ禍においてはさまざまな産業が甚大な被害を受けたため、経営改善や事業再生の取り組みの必要性に迫られる事業主が多く発生しました。

脱コロナは完全に進んでいるとは言えない状況を受けて、経営改善サポート保証(コロナ対応)は2024年12月末まで延長される運びとなっています。

日本公庫等のコロナ特別貸付

日本公庫等のコロナ特別貸付とは、コロナウイルスの影響で一時的に業況が悪化している事業主を支援する貸付制度です。本来の金利よりも適用金利を下げることで、資金繰りを支援する目的があります。

コロナウイルス感染症の影響で一時的に業況が悪化しており、さらに以下のいずれかに該当する事業主が対象となっています。

【国民生活事業】

  • 最近1ヶ月間の売上高または過去6ヶ月(最近1ヶ月を含む)の平均売上高が前6年のいずれかの年の同期と比較して5%以上減少している
  • 業歴3ヶ月以上1年1ヶ月未満の場合等は、最近1ヶ月間の売上高または過去6ヶ月(最近1ヶ月を含む)の平均売上高(業歴6ヶ月未満の場合は、開業から最近1ヶ月までの平均売上高)が次のいずれかと比較して5%以上減少している(過去3ヶ月(最近1ヶ月を含む)の平均売上高、令和元年12月の売上高、令和元年10月から12月の平均売上高)
  • 債務負担が重くなっている方

【中小企業事業】

  • 最近1ヶ月間の売上高または過去6ヶ月(最近1ヶ月を含む)の平均売上高が前6年のいずれかの年の同期に比し5%以上減少していることまたはこれと同様の状況にあること
  • 債務負担が重くなっていること
  • 中長期的にみて、業況が回復し、かつ、発展することが見込まれること

なお、2024年7月以降は金利引下げ幅を以下のように縮小したうえで、制度そのものは6ヶ月延長されます。

  • 2024年6月末まで:災害貸付金利▲0.5%
  • 2024年7月以降:災害貸付金利を適用(金利▲0.5%を廃止)

災害貸付金利は一般的な金利よりも低く設定されているため、脱コロナに向けて経営改善・事業再⽣の取り組みを検討している方は活用を検討しましょう。

日本公庫等のコロナ資本性劣後ローン

日本公庫等のコロナ資本性劣後ローンとは、コロナウイルスの影響を受けているスタートアップ企業や事業再生に取り組む事業主を対象に、財務体質強化を図るために資金を供給する制度です。

コロナウイルスの影響を受け、さらに以下のいずれかに該当する事業主が利用できます。

  • J-Startupプログラムに選定された方または独立行政法人中小企業基盤整備機構が出資する投資事業有限責任組合から出資を受けて事業の成長を図る方
  • 中小企業活性化協議会(旧:中小企業再生支援協議会を含む)の関与のもとで事業の再生を行う方または独立行政法人中小企業基盤整備機構が出資する投資事業有限責任組合の関与のもとで事業の再生を行う方
  • 上記1および2に該当しない方であって、事業計画書を策定し、民間金融機関等による支援を受けられる等の支援体制が構築されている方

劣後ローンなので、法的倒産手続きの開始決定が裁判所によってなされた場合、全ての債務に劣後する特徴があります。また、コロナ資本性劣後ローンは金融機関の債務者の評価において自己資本とみなすことが可能です。

中小企業事業のケースでは1社あたり最大15億円、国民事業のケースでは1社あたり最大7,200万円まで融資を受けられます。貸付利率は融資後3年間は一律0.5%、4年目以降は直近決算の業績に応じた利率が適用されます。

信用保証協会による支援の強化


2024年6月より、信用保証協会が金融機関と連携しつつ、支援先のターゲティングを行ったうえで支援を強化する方針が掲げられました。

信用保証協会に対して、過去に破産を経験している経営者に対しても公正な保証審査を行うこと、事業再生の道筋が立たず代位弁済に陥ったものの、事業継続しながら誠実に返済を進めている事業主の事業再生を支援することが求められています。

これにより、さまざまな事情で経営不振に陥っている中小事業主でも、融資を受けやすくなったといえるでしょう。

円安等に伴う資材費等の価格高騰対策は12月末まで継続


「円安等に伴う資材費等の価格高騰対策」は、12月末まで継続されます。脱コロナは進みつつある一方で、ロシアによるウクライナ侵攻に伴う原材料価格の高騰や歴史的な円安の影響を受けて、コスト負担の増加に悩む事業主は少なくありません。

そこで、日本公庫等の「セーフティネット貸付」が2024年12月末まで継続されます。セーフティネット貸付を活用すれば、基準金利よりも0.4%低い金利で融資を受けられます。

セーフティネット貸付で調達したお金の用途は、企業維持上緊急に必要な設備資金及び経営基盤の強化を図るために必要な運転資金に限られています。

モノやサービスの調達コスト負担を重くする原材料価格の高騰や円安は、今後も無視できません。設備資金や運転資金を調達する際には、利息負担を軽減できるセーフティネット貸付の利用を検討するとよいでしょう。

6月より事業再生情報ネットワークの運用開始

2024年6月17日より、事業再生情報ネットワークの運用が開始されます。事業再生情報ネットワークとは、関係省庁が連携して中小事業主の再生支援を強化するための取り組みです。

具体的な取り組み内容としては、中小企業活性化協議会による中小企業の収益力改善・事業再生・再チャレンジに向けた支援が挙げられます。中小企業活性化協議会には事業再生に関する知識と経験を持つ専門家(弁護士、公認会計士、税理士、中小企業診断士など)が常駐しており、専門的なアドバイスを提供できる点が強みです。

多様性や地域性をはじめとした中小企業の特性を踏まえつつ、収益力改善・事業再生・再チャレンジに向けた相談・助言から計画策定をサポートしてくれます。個々の企業に合わせてきめ細かな支援を受けられるため、専門的な知識を持たない事業主にとって頼れるサービスといえるでしょう。

ほかにも、事業再生情報ネットワークには公租公課の確実な納付を目指す目的があります。

事業再生の見込みがありつつも、社会保険料や税金の滞納が事業再生を阻む要因となっている中小事業主が少なくありません。そこで、再生の見込みが高い事業者の情報を関係省庁や国税で共有し、社会保険料や税金の分割納付などの猶予措置を検討する仕組みを作ることとなりました。

事業主にとって、事業再生に関する相談窓口となるのは各都道府県の中小企業活性化協議会です。中小企業活性化協議会は産業競争力強化法に基づいて設置されている公正中立な公的機関なので、不安があるときは気軽に相談するとよいでしょう。

事業再生のための支援策


中小企業庁では、事業再生のために「経営改善計画策定支援」や「早期経営改善計画策定支援」などの支援策を行っています。

経営改善計画策定支援

中小企業庁では、環境変化に対応できておらず借入金の返済負担をはじめとした財務上の問題を抱えている事業主を支援するために「経営改善計画策定支援」を行っています。

課題を感じつつも、自ら経営改善計画等を策定することが難しいという事業主もいるでしょう。認定経営革新等支援機関から経営改善計画策定支援を受ければ、財務上の問題を解決する糸口をつかめます。

国が認定した税理士や中小企業診断士などの専門家から経営改善計画の策定支援を受けられるため、事業主として具体的にどのような行動をすべきか理解できるでしょう。また、以下のように中小事業主が経営改善計画策定支援で必要となる費用の補助を受けられます。

補助対象経費 補助率
DD(デューデリジェンス)・計画策定支援費用 2/3(上限200万円)
伴走支援費用(モニタリング費用) 2/3(上限100万円)
金融機関交渉費用※ 2/3(上限100万円)

※経営者保証解除を目指した計画を作成し、金融機関交渉を実施する場合に対象となる

さらに、中小事業主が金融支援を伴う本格的な事業再生または廃業のために中小版GL(中小企業の事業再生等に関するガイドライン)に基づく計画を策定する場合には、以下の補助を受けられます。

補助対象経費※2 補助率
DD(デューデリジェンス)費用等 2/3(上限300万円)
計画策定支援費用 2/3(上限300万円)
伴走支援費用 2/3(上限100万円)

※2 取組の際に必要となる第三者支援専門家の手続きに係る費用も補助対象

昨今の社会情勢や経済状況の変化を受けて事業が停滞している場合、経営改善計画策定支援の活用を検討しましょう。

早期経営改善計画策定支援

環境変化に対応できておらず、売上の減少や借入の増大に直面している中小事業主の資金繰りの安定や収益力の改善を支援する「早期経営改善計画策定支援」という制度もあります。

経営改善計画策定支援と同じく、経営改善計画を策定する際に費用の補助を受けられます。詳細はこちらの記事で解説しているので、あわせてご覧ください。

関連記事
早期経営改善計画策定支援とは?補助対象や補助額を解説

まとめ

脱コロナが進み経済活動が正常に戻る中で、中小企業向け資金繰り経営支援もコロナ前の水準に戻す方針です。政府による中小企業支援は、今後「経営改善」「再生支援」が中心となる点は押さえておきましょう。

環境変化に対応するにあたって、専門家のアドバイスを求めている事業主の方は経営改善計画策定支援や早期経営改善計画策定支援を活用するとよいでしょう。

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(編集:創業手帳編集部)

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