小さい会社でも経営戦略は必要?戦略の立て方からポイントまで解説!

創業手帳

会社の規模に問わず経営戦略は必要!


企業がビジネスで利益を上げていくためには、経営戦略を立てることが大切です。規模が小さい会社でも経営を継続するためには、経営戦略をしっかり練らなければなりません。
経営戦略は、会社の規模や自社の文化、風土などに合わせて立てる必要があります。しかし、具体的にどう戦略を立てていけばいいのかわからないという方もいるでしょう。
今回は、小さい会社における経営戦略の立て方やポイント、事例などをご紹介します。

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小さい会社における経営戦略とは


経営戦略とは、組織が経営の目的を達成するための総合的な方策のことです。
主に企業全体の方針となる指標や方針に基づいた活動を実現するための体制づくりなどを指します。
例えば、ヒト・モノ・カネ・情報といった自社の経営資源から目的の達成のために、どう適切に配分するか決定するのも経営戦略です。
ちなみに、経営戦略を実現する具体的な手段・手法を経営戦略と呼びます。

経営戦略は、規模を問わず必要になるものです。その理由は、経営資源は有限であること、そして企業には達成するべき目的があるからです。
特に小さい会社は、ヒト・モノ・カネ・情報といった資源が大企業と比べて不足している傾向にあります。
限られた経営資源を用いて目的を成し遂げるためには、どこにどれだけの資源をあてるか決めて、経営を進めていくことが求められます。
小さい会社が競争優位を高め、成長や存続していくためにも、しっかり戦略を立ててください。

小さい会社の経営戦略の成功事例


インターネットの普及や新サービスの増加などで、企業間の競争は激化しています。
そのような中、経営戦略の見直しによって経営を回復させた小さい会社の事例がいくつもあるので、参考にその一部をご紹介します。

株式会社若松

株式会社若松は、東京の中心部で「東京港醸造」を営む会社です。江戸後期に創業し、明治時代に一度廃業していますが、2011年から100年ぶりに酒造業を再開しました。
それにより、市場規模が縮小傾向にある日本酒市場に再参入しています。
若松は、小さなビル内に醸造所を構えており、即日販売や製造過程などに工夫を凝らすことで、エネルギーやスペースを抑えた製造ラインを実現しています。
また、「できたその日に新鮮なお酒が飲める」ことを全面的に打ち出して、商品価値を高めました。
自社の弱点を工夫して強みに変えるという経営戦略が功をなし、製造しているお酒は大手酒販店でも取り扱われています。

有限会社マトリックス

有限会社マトリックスは、神奈川県川崎市でビジネスホテルの「川崎ホテルパーク」を運営する会社です。
ホテルは川崎駅から徒歩10分程という、ほかのホテルと比べて不利な立地にあります。
しかし、競合との差別化や顧客満足度の向上に力を入れ、継続的に顧客を獲得しています。

立地面で不利という逆手を取り、メインのターゲット層を湾岸エリアで働く工事労働者に見直しました。
Webサイトでは、大型車向けの駐車場が利用できるなど工事労働者向けにアピールを行い、リピーターの獲得に成功しています。
ほかにもコミュニケーションを重視したフランクな接客対応が、利用者からも「温かみがある」と評判です。
口コミサイトでも良好な口コミが多く、評判の良さが集客につながっています。

カフェ・ミワ

カフェ・ミワは、千葉県市川市にて40年以上続く個人経営のコーヒー店です。市川駅前という好立地な場所にありますが、その周辺には大手チェーン店が数多く出店しています。
激戦区で生き残っていくために、「残すものは残し、変えるべきものは変える」という方針を掲げて独自の強みを創造しました。

例えばサイフォンを使った本格的なコーヒーや名物のヤキサンド、レトロな雰囲気の店内内装はそのまま残しています。
また、長年勤務しているスキルが高い従業員を継続雇用し、サービスの質や店の個性を保っています。

その一方で、現オーナーが著名なシャンソン歌手であることを活かし、店内の奥にスタジオを設けてシャンソン教室や定期的にライブの開催をはじめました。
人脈を生かして、落語やマジックなどのイベントを開き、お客さんを楽しませています。
新たな経営資源を活用した新しい付加価値を提供することで、新規常連客の獲得に成功しました。

小さい会社で経営戦略を立てる際の手順


経営戦略を立てるのにも手順が存在します。手順を無視すると有効な戦略を打ち出せない可能性があるので注意してください。
ここで、小さい会社が経営戦略を立てる際の手順をご紹介します。

1. 目標・期間を設定する

まずは、経営戦略を策定して何を実現したいのか、目標と達成までの期間を決める必要があります。
目標は、経営理念やビジョンに基づいて「いつまでにどうありたいのか」を考えてください。

企業理念やビジョンが定まっていない場合は、それを明確にするところからはじめます。経営理念は、簡単にいえば自社の使命やミッションのことです。
将来的に目指す社会像をイメージできたら、売上げやシェア率など具体的な数値を用いて目標を決めていきます。定量的に表現すれば、達成率を明確にすることが可能です。
達成までの期間は、実現性を高めるために3~5年を目安に設定してください。
あまりに長い時間だと会社を取り巻く環境の変化により、経営戦略が抽象的なものになってしまう恐れがあります。

2. 現状を分析する

次に、自社の内部環境や会社と取り巻く外部の環境を分析して、現状を把握していきます。内部環境は、ヒト・カネ・モノといった自社の経営資源のことです。
どれだけの経営資源を保有しているのか分析することで、自社の強みや課題が明確になっていきます。資源を有効活用する上でも内部環境の分析は大切です。

また、外部環境を分析することで、市場ニーズや機会、脅威などを見つけることができます。
多くの要素が存在するので、自社で統制が困難なマクロ外部環境と自社に直接影響を与えるミクロ外部環境に分けて分析を行います。

マクロ外部環境 経済動向・人口動態・技術革新・政治動向など
ミクロ外部環境 競合他社・製品関連技術・ステークホルダー(顧客・取引き先など)・需要動向など

3. 現状を踏まえた上で戦略を策定する

現状を把握できたら、目標との差を埋めるために戦略を立てていきます。
経営理念・経営戦略の目的、内部・外部環境の分析結果などを踏まえて戦略を考えることが大切です。
大きな変革が求められるのか、一部の課題を解消だけで良いのかなど、今の会社のポジションと目標の差によって戦略は変わってきます。

また、経営戦略は目的に合わせて複数のパターンを用意しておくのがおすすめです。
いくつかパターンがあれば、外部環境が急に変化した際など、状況に合わせた戦略を実施できます。

4. 課題とリスクの洗い出しをする

自社の課題とリスクの洗い出し、解決方法やリスクの対処方法を考えていきます。たくさんの課題が見つかった場合、一度にすべてを解決することは困難です。
そのため、課題に優先順位を付けて、重要課題から解決に取り組むようにしていきます。
現状一番困っていることや業績・業務の改善につながる課題を優先するのがポイントです。

また、課題はできるだけ細かく具体的に挙げることで、解決方法が見つかりやすくなります。
どのような解決方法にもメリットとデメリットの両面があるので、施策に対するリスクへの対処方法も検討しておきます。
想定されるリスクが生じた場合の対処方法が明確になれば、適切なリスク管理を実行することが可能です。

5. 経営計画を作成する

ここまでの経営戦略がまとまったら、経営計画を作成します。経営計画とは、経営理念・ビジョンや経営者が考える将来的な会社像を具体的に明確化したものです。
金融機関から融資を受ける際や、自社の方針を外部に伝える上でも重要なものとなります。
経営戦略が変われば会社と取り巻く環境も変わるため、経営計画に反映させる必要があります。
経営戦略を策定したら、収支予測・資金計画・部門ごとの目標などを経営計画に落とし込んでください。

6. 従業員に共有する

経営戦略は組織全体で取り組んでいくことになるので、従業員に共有しなければなりません。社内で戦略が浸透しないと人員的な問題が生じてしまう恐れがあります。
戦略を実行する前に、従業員に目標や課題、戦略などを共有して業務改善の意識の向上と統一を図ります。
従業員の意識を高めるためには、経営者から直接従業員に説明を行うことが大切です。

7. 戦略の振り返りを行う

経営戦略を社内で共有し、理解を得られたら実施となります。中長期にわたって実施される経営戦略は、実施する中でズレが生じることがあります。
そのため、実施後は改善が必要となるので、戦略を振り返り、再び現状の調査・分析、戦略の策定を行ってください。

経営戦略の全体像を再確認しておくと、見直す部分や新たに手を加える部分などが明確に把握しやすくなります。
経営戦略もPDCAサイクルを繰り返して、精度を磨き上げていくことが大切です。

小さい会社でも使える経営戦略の効果的なフレームワーク


経営戦略を策定する際、現状の把握と分析にフレームワークを活用することになります。ここで、小さな会社でも使える効果的なフレームワークをご紹介します。

SWOT分析

自社の事業環境を分析する際に活用するフレームワークです。自社の強み・弱み・環境変化による機会・脅威といった4つの要素を洗い出し、行動の方針を考えていきます。
自社の内部環境は強み・弱みから、市場・消費・需要の動向などの外部環境は機会・脅威から分析します。

しかし、ただ4つの要素を整理しただけで、細かな事業環境を分析できません。
そのため、4つの要素を組み合わせクロス分析から具体的な戦略を導き出すのが有効です。

強み 弱み
機会 機会×強み(積極的戦略) 機会×弱み(改善戦略)
脅威 脅威×強み(差別化戦略) 脅威×弱み(縮小戦略)

例えば、「機会×強み」なら今後の可能性やチャンスを逃さないために、強みを活かした具体策が必要です。
「脅威×弱み」では、今後脅威になりそうなリスクを打破するための具体策が求められます。

ファイブフォース分析

業界での収益性や業界内の力関係を分析するためのフレームワークです。業界の競争要因を、以下の5つに分けて分析を行います。

既存業者間の競合 同業界・市場で顧客を取り合うライバル企業の存在
新規参入の脅威 業界に新規参入しやすいかどうか
代替品の脅威 自社製品・サービスが顧客のニーズを満たしたほかの商品・サービスに置き換えられてしまうリスク
仕入れ先の交渉力 部品や材料など供給元の交渉力の高さ
顧客の交渉力 顧客の交渉力の高さ

上記の競争要因を分析することで、業界内の競争状態をある程度把握することができます。
そして、自社が優位に戦えるポジション取りが明確になり、どう戦略に活かすか考えやすくなるでしょう。

3C分析

3Cとは市場と顧客・競合・自社の3つの要素を指します。この3つ要素から自社の強み・弱みがわかるので、事業の方向性や指針を定めやすくなります。
小さい会社の場合、自社→市場・顧客→競合の順で分析するのがおすすめです。
はじめに自社が進むべき方向を明確にしたほうが、市場・顧客や競合の分析がスムーズになります。
3Cの分析内容や用いられる代表的な分析手法は以下のとおりです。

3C 分析内容 代表的な分析手法
自社 強み・弱みや顧客からの評価など SWOT(クロス)分析
市場・顧客分析 自社の顧客の属性・ニーズなど ミクロ外部環境の分析:ファイブフォース分析
マクロ外部環境の分析:PEST
競合 競合他社の現状・シェア・強み・弱みなど 4P(製品・価格・流通・促進)分析

PEST分析

政治・経済・社会・技術の4つの要素からマクロ外部環境を分析するフレームワークです。
自社で統制できない外部環境を多角的な視点から分析することで、未来の市場を予測し、対処が求める危機や活かすべきチャンスなどの対応策を検討できるようになります。

PEST分析を行うにあたって、分析をする目的を明確にすることが大切です。目的が定まったら、公的機関や専門家のレポートなどから情報を収集します。
集めた情報から事業活動に影響を与える情報を見極めて、整理してください。

VRIO分析

経営資源の強み・弱みを把握し、競合優位性を分析するためのフレームワークです。
VRIO分析では、企業価値・希少性・模倣困難性・組織の4つの視点から経済資源の競合優位性を判断していきます。

企業価値 経済資源に価値があるか
希少性 経済資源に希少性があるか
模倣困難性 競合が同様の経営資源を模倣する場合、その難易度が高いか
組織 組織内で経営資源を使うための方針・手続きが整備されているか

上記の要素をYES・NOで答えていくことで、競合に対する経済資源の優位性を分析するでき、戦略の方針が立てやすくなります。
解答に応じて、競争優位性は以下のパターンに分けられます。

企業価値の問いがNO 競争劣位
企業価値の問いがYES、希少性・模倣困難性の問いがNO 一時的な競争優位
企業価値から模倣困難性までYES、組織の問いがNO 持続的競争優位
組織まですべてYSE 競争優位(経営資源を最大限活用できている)

小さい会社の経営戦略を立てる際に注意するポイント


最後に、小さい会社が経営戦略を立てる上で注意したいポイントをご紹介します。

無理のない投資を心掛ける

小さい会社は大企業に比べて使える資源が限られています。一発逆転を狙ったような多額の投資は、成功する保証がありません。
そのため、自社の資金力を超過した投資戦略は避けてください。
投資に失敗した場合、資金繰りの悪化をはじめ、既存の販売経路の過失や人材の流出、信用低下などのリスクにつながります。
小さな投資でもその積み重ねからノウハウを蓄積し、少しずつ展開規模を拡大していくことがポイントです。

中長期的な視点を意識する

経営戦略は中長期で取り組むことを意識して策定してください。3~5年先のミクロ外部環境を予測した上で、持続できる戦略を選択することが大切です。
企業は、安定した売上げや利益を継続して出し続けなければなりません。
現状ばかり意識した経営だと、時代の変化やイレギュラーなことに対応できない恐れがあります。
そのため、中長期的な視点を持った戦略を立てることが、安定した経営の実現に欠かせないのです。

自社の強みを活かした差別化を図る

競合や大企業に勝つためには、自社の強みを生かして差別化を行うことが求められます。
独自の技術や企画力、展開スピードなどほかに負けない要素があれば、市場で優位性を保つことが可能です。
自社の強みを活かした経営戦略を練るためには、現状の分析が重要となってきます。上記で紹介したフレームワークを活用して強みを把握し、差別化戦略を考えてみてください。

小さい会社も経営戦略を立てて成長を目指そう

小さい会社も業界・市場で生き残っていくためには、経営戦略を立てることが重要となってきます。
目指す目標や現状の課題、自社の強み・弱みなどに基づいて戦略を立てていくことで、安定した経営の実現や自社の成長につなげていくことが可能です。
また、経営戦略は実施して終わりではありません。定期的に振り返って改善していき、戦略の精度を上げてください。

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(編集:創業手帳編集部)

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